第5話 スキル{破壊者}

まずいまずいまずい!

いつも冷静に戦いに挑めたのは、レベルを上げ、スキルを習得し、

何度も魔王との戦いであいつの戦闘も見てきたから、

毎回万全の状態で出陣だったから、

だが現在対処法が分からない!!


最強クラスの魔王の{ブラックホール}

君島の{翻訳}

俺の白い渦が出る{ホワイトホール}と

一番強そうで何も起きない{破壊者}


こうしてる間にも魔王の{ブラックホール}は縮んでいく。


「ねぇ!!龍一君!!私たち死ぬの?!ねぇ!!」


君島が取り乱すが、俺も内心焦っている。

落ち着いて考えたい!

こうなれば半分やけだ。

先程出した{ホワイトホール}に手を入れてみる。

何か手に当たる!

取り出すと、

日本でお馴染み【キュウシン】という動悸を抑える薬が出てきた。


「なんじゃこりゃー!!」


どうやらこの{ホワイトホール}

そのとき使用者が欲するものを渡してくれらしい。


「龍一君!!こんな状況でも余裕だね!さすが元勇者!!」


いや、そうじゃないんだが?!

俺は再びホワイトホールの中に手を入れ、{ブラックホール}を消せるものを欲した。

が、何も手に触れなかった。


もともと{ブラックホール}は全てを飲み込み、【無】にするスキル。

俺が持っていた{森羅万象}は【物事全てを存在させる】スキル。

つまり{ブラックホール}に飲み込まれても唯一復元可能なスキルだった。


さすがに{あれ}を消せる【もの】はない。



「…あれ…?{ブラックホール}…どこ…?!」


いつの間にか雲一つない快晴が広がっていた。


もう渦も見えない。

点になれば近くても何も見えないそこはただの空間になる。


まずい!!スキルが発動する!!


【あのブラックホールさえ消えてくれれば…!!!!】


…………




何も起きない?


目の前の宮殿も、後ろの森も、青い空も、

遠くで叫んでいるオークキングも、

横にいる君島も無事だ。


「もーーーっ!!脅かさないでよーーーっ!!!」


君島が怒った顔でこちらを向く。

俺もからかったわけじゃない。

生き返って早々に死ぬかと思った。


でもこれで分かったことがある。

スキル{破壊者}は、詠唱ではなく、対象を思うだけで破壊できる。

しかもスキルまで。


「はぁ…おーい!!!…はぁはぁ…どうなってんだ?!スキル発動しなかったのか?魔王様はどこだ?」


オークキングが走って帰ってくるなりそう尋ねた。


「スキルは俺が発動させなかった。まぁ運だったけどな!」


「えっ?!運だったの?!」


君島が驚いた顔でこちらを振り向く。

俺は愛想笑いで誤魔化した。


気が緩んだそのとき、雲一つない空から龍一に一つの影が伸びた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る