第2話 えちえちイラストレーターは金髪美少女

 突然の繭梨先生からDMに固まる俺。


 …………まじで? これ、断る理由ある? なんといっても俺の性癖にぶっ刺さるイラストを描く先生だぞ? 絶対話が盛り上がるに決まってるじゃないか!


『初めまして。こちらこそいつも素晴らしいイラストをありがとうございます! お食事のお誘いもありがとうございます。是非、よろしくお願いしたいです!』

『いえいえ。描けたのは先生のしっかりとしたイメージのおかげです。それでは次の土曜日、○○駅の近くの懐石料理の【蛍の彩り】って店に予約入れておきますので、その日に』

『わかりました。ありがとうございます』


 そこでやりとりは終了。


「おっしゃぁぁ! 絶対サインもらお! 先生の描いてたエロエロな同人誌も俺持ってんだよな〜。これに書いてもらおう。ってかどんな人なんだろ? 繭梨って言うくらいだから眉毛無いとか? SNSもフォローしてるけど、投稿してる内容が歳上っぽいんだよな。予約した店も懐石料理だし。失礼がないようにしないとだな」


 この時、俺の頭の中から1つの可能性が抜けていた事に気がつくのは、約束した当日になってからだった。


 ◇◇◇


 そして繭梨先生との約束の日。

 少し早く着いた俺は店の外で待ってたんだけど、先生から少し遅れるって連絡が来た為、先に店内で待つことになった。受付で予約名の【繭梨】って言

 のは少し恥ずかしかったけど。


 その後、個室に通されて椅子に座って待つことしばらく、俺を案内した人の声と足音が聞こえた。どうやら来たみたいだな。


「こちらの部屋になります」

「ありがとうございます〜」


 ……ん? 女の声? ん?


 俺の頭の中が疑問符で埋め尽くされていると、目の前の戸が開いた。あ、挨拶しないと……


「お疲れ様です。今日はお誘いありが…………へ?」

「あ、空園先生初めまして〜♪ 遅れてすいません。イラストレーターの繭梨です。今日はよろしくお願いしますね〜♪」


 俺の目の前でそう言いながらニコニコと微笑む。部屋の照明で輝く金色の髪に青い瞳。スラッとはしているけど、出るとこは出ていてメリハリのある体。

 どう見ても男ではない。ん〜?


「空園せんせ? どうしました?」

「あ、その、えっと……繭梨、先生? ですか?」

「そうですよ? さっきも言ったじゃないですかぁ〜」


 そう言ってケラケラと笑う目の前の金髪美少女。


 いや、女の子だなんて聞いてないんですけどぉぉお!? え? この子があのえちえちイラストを描いてるってマジ!?




 俺の視線の先では繭梨先生が着ていたコートを脱いでハンガーに掛けている。その下に見えるのはボディラインを強調するぴっちりめのVネックカットソー。素晴らしい……じゃなくて!


 え、いや、ちょっと待って? 予想外の事すぎて脳内の処理が追いつかないんだけど? これどういうこと? 目の前のパツキン(死語)美少女が繭梨先生なの? ホントに? 俺騙されてるんじゃないの?


「あ、ちょっとお手洗いに行ってきますね」


 脳内で高速状況確認をしていると、目の前の美少女が部屋から出ていく。

 俺はすかさずスマホを取り出して今日のことを相談していた友人にメッセージを送った。


『待て。なんかめっちゃ美少女来た。うそやん』

『は? それちょっと詳しく。つーか予想ではむさいオッサンじゃなかったのか!?』

『全然違う。天使。もうよくわかんない』

『よし、お持ち帰りだ』

『もうそんな余裕ない。出たとこ勝負でいく。つーか俺が気になってる人のことお前知ってるよね!? ねぇ知ってるよね!?』

『……生きて帰ってこいよ?』

『不安すぎて震える』


 そんな返信を返した所でドアが開き、繭梨先生がトイレから帰ってきた。


 ひいっ! これホントどうしたらいいんだ!?

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