リアルのラブコメに困惑中ですが、これってノンフィクションらしいです〜片思いの先輩と男だと思ってた美少女イラストレーターが俺の両隣から離れない〜

あゆう

第1話 ラブコメ作家ですこんにちは

『みなさんのおかげで既刊全て重版する事が出来ました。ありがとうございます! 本日発売の最新刊もどうか宜しくお願いします!』


 投稿っと。


「あ〜疲れた。とりあえずこれで今日発売された本も重版すれば続刊できるか? 知らんけど」


 俺はそう呟いて最近買い換えたばかりのゲーミングチェアの上でぐーっと伸びる。

 締切に次ぐ締切。それをなんとかクリアしながら店舗特典のSSも書いた。もう指が限界だ。手足の生えたキーボードが俺に迫ってくる夢を見た時はどうしようかと思った。

 だけど念願の書籍化を叶えたからには全力でやらないといけない。後で後悔はしたくないからな。

 だからSNSでの販促活動もしっかりやった。まぁ、反応してくれた人達の何割が買うのかはわからないけど、0より1。1より2だ。無駄にはなってないはず。

 とりあえず担当さんから連絡来るまでは自由だな。


 そんな事を思っていると、机の上に置いていたスマホに一件の新着メッセージの通知。

 見てみれば相手は高校の時の先輩である野杁のいり悠華ゆうかさんからだ。まぁ、ただの先輩じゃなくて、なんだけども。そして現在は新人声優として頑張っている。


「えっと、なになに……『今から放送するアニメに出るから見てね!』だとぅ!?」


 俺は急いで部屋のテレビを付ける。ちなみに今は深夜一時半。いわゆる深夜アニメ枠だ。

 そして教えてもらったチャンネルに回して教えてもらったアニメを見ていると、先輩の声が聞こえた。

 先輩の役は深夜アニメの名前もない女子高生役。実年齢を知ってる側としては「んん?」ってなるけど。声優って仕事な以上幅広い世代を演じなくてはいけない。そして「んん?」ってなってると再び先輩からメッセージが届く。


『どう? どう? 可愛くない!? 25歳の声には聞こえないでしょ? 「んん?」ってなってたりしないよね!?』


 なってました。その真っ最中でした。だけどそんな事は言わない。言えない。だから俺はその旨をしっかりと伝える。


『そんなわけないじゃないですか。あ、収録中に高校の時の制服着たらどうですか? コスプレって最高ですよね!』

『コスプレって言うなぁ〜!!!!!』


 楽しい。先輩と話してるのはホントに楽しい。だけどこんな風に連絡取るようになったのも最近なんだよな。先輩が卒業してからだから大体7年ぶり?


『あっ! そう言えばキミの出した本全部買ったよ〜! 小説書いてるのにはホントビックリしたんだからね? しかもちゃんとした作家になってるなんて思わなかったや。ってコレは前も言ったよね』

『ありがとうございます。今度サインでも書きましょうか?』

『いいの!? やったね! じゃあそれまでに全部読んでおくからね?』

『それはやめて。恥ずか死ぬ』

『え〜? それはなんでかなぁ〜?』

『わかるでしょう!? 知り合いに自分の書いたラブコメ読まれるとか拷問じゃないですか!』

『wwwwwwwww』


 そう。俺の書いた小説が書籍化して、それを教えたのが昔にみたいに連絡を取り始めたきっかけだった。先輩が声優として活動しているのは前々から知ってはいたから、もしかしたら相手にされないかもと思って少し躊躇したけど、気が付いたら送信していた昔の俺グッジョブ。ただ、まだ会えてはいないんだよなぁ……。


『そうそう。来週久しぶりに声の仕事の方もバイトも無い休日が取れそうなんだよね。だから良かったらご飯食べに行かない? サインも書いて欲しいし』

『是非っ!』

『返信早いよw じゃあまた後で連絡するね! 今日はもう眠いからおやすみ〜! ?』

『待ってます。おやすみなさい。そしてペンネームで呼ぶのやめて』


 そう送ってスマホを置く。そしてそのまま天井を見上げる。ちなみに空園冴そらぞのさえというのは俺の作家としのペンネーム。本名の久我朋也くがともやで出す勇気は無かった。


「……まじか。会えるのか。やばいな。今日はテンション上がって寝れないかもしれない。よし、なんか新作のプロットでも練るか! なんかいいの思いつきそうな気がする!」


 俺はカップに半分程残っていたすっかり冷めたコーヒーを飲み干すと、パソコンに向かった。




 翌日、どうやら寝落ちしていたみたいで昼頃に椅子の上で目が覚めた。とりあえず固まった体を少し伸ばしてスマホを手に取る。

 ほぼ毎日起きてからする日課。それは前日のSNSに投稿したやつの反応を見ること。あとエゴサ。もし買ってくれてる人がいればお礼のコメントを書き込むのだ。

 今日もそれをしようと思ったんだけど、その前に指が止まった。


「…………繭梨まゆなし先生からDMだと!?」


 繭梨先生は俺のラノベの表紙イラストや挿絵を描いてくれてる人。頂いたイラストに何回悶えたかすらわからない上に、どれだけ頭を下げても足りないくらいだ。ぶっちゃけ先生のおかげで売れたと言ってもいい程。

 なんといってもイラストがエロい。これ大事。最高。

 ただ、今までは担当さんを通じてしか連絡を取ったこと無かったんだよな。どうしたんだろ? もしかしてもう描きたくないとか? そんなこと言われたら俺泣くぞ?

 だからそんな心配をしながら恐る恐るメールを開くと、そこに書かれていたのは──


『初めまして空園先生。繭梨といいます。いつもお世話になっております。この度は重版、最新刊の発売おめでとうございます。私も嬉しいです。つきましては、お祝いにお食事でもいかがでしょうか?』


 …………え?





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