第39話 知り合いには苺ジャムを

 採れ初めの一粒二粒の苺は酸っぱくても珍しくて味見と称してすぐに無くなってしまいます。


 それが一掴みになり、一袋になると切り刻んで砂糖をまぶしジップ付き保存袋に入れ冷凍。牛乳に混ぜて飲むと美味。


 例年ならそのくらいで済むはずの畑の苺。


 何がどーした。2袋になるとさすがに持て余し保存のきくジャムでも作るかと家にあった空き瓶を集めて煮沸消毒。苺を綺麗に洗ってヘタをとり半分にし約半分の重さの砂糖を混ぜ苺から水分が出たら、火にかけ、クツクツ。レモンないから酸っぱめのオレンジ絞って入れちゃえな適当な苺ジャムが初回。


 それからは2日で1キロ溜まる苺のために、瓶を買い、ペクチンとレモンを常備しペクチンの箱に書いてある通りに真面目にジャムを作る日々。


 ペクチン無しだと苺ソースになりフランスパンの穴から赤い液体がだだ漏れの流血事故的になります。ジャムと言えばの『アオハタ』と『食品開発ラボ』というホームページによると、ペクチンは果実の皮などから採れるもので、酸と加熱してもゲル化(ゼリー状になること)させる事ができるため、ジャムなどを作る時に用いられるらしいです。


 そして苺ジャムの消費を迫られている家族の中で、


「はい、コンタミ〜。もうそれはパン専用のスプーンね。別のスプーン出して!気をつけて!」


コンタミという言葉が飛び交います。コンタミネーション(contamination)の訳で、汚染を意味します。まあ、もう滅菌されてないスプーン突っ込むだけでいや、滅菌室ではない所で蓋を開けた時点でいや、瓶を素手で触った時点でそもそもにアウトでありますが。(科学的な汚染、コンタミを深掘りするとキリないです……)


 苺って増えるんですって。


「なんか今年は苺多いね。沢山植えたの?」


呑気な質問に苺を取ってくる人はこう答えました。


「初めは貰った苗をちっと植えただけさ。あいつら(苺のこと)地面を這って腕伸ばして増えるのさ。」 


思わず調べました。ランナーとかほふく茎とかいうらしいです。


そして苺取り人はさらにいいつのります。


「熟れるまで置いとくと蟻がウワーッと集るたかるし、鳥やらトカゲやら敵が凄いのよ。」


もう、敵にくれてやって構わないのさ。苺鍋をかき混ぜながら脳内で呟くも


「やつらは、わたしと違って暇だから常に見張ってっからね。大変さ。ま、負けないけどね。」


と闘志をもやす負けず嫌いな方に、「きっと暇なのではなく、それで生きてる」とか「もう負けていい」とか白旗を勧めていいものか。はてさて。


 


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