第1章 覚醒~脱出 3 仲間 1
「食事だ」
そう言って兵士達は台車を部屋に入れると、繋がれている皆の前にトレーを各々置いていきます。
パンにシチューと水の入ったコップですね。
食べ盛りの子供には物足りないけど、文句を言う雰囲気では無いですよ。
兵士達は無表情で怖いですからね。
でも食事を用意してくれるという事は、・・・フム。
「食べ終わったら食器は扉の前にまとめておけ」
そう言って部屋から出ていく兵士達の背に声を掛けてみます。
「あの、後でお医者様に来ていただけますか?怪我の具合を見て欲しいのですが・・・」
振り返った兵士に無表情で睨まれると、震えてしまうけど。
「上に報告しておく」
そう言葉を返して出ていく兵士達を見て、ホッと一息つけました。
「セラちゃん!」
マリに抱きつかれて人肌が恋しいのにも気が付きましたね。
「セラ、気が付いて良かった。怪我の具合はどうなの?」
ミルお姉さんこと、ミルライースは少しぶっきらぼうだけど、面倒見が良くて大好き。
女の子達の最年長で8歳。
肩までの髪を翻す様は女子中の格好いいお姉様といった感じですね。
「痛むけど、それ程でも無いから心配しないで下さい。私よりダンお兄さんは大丈夫なのですか?」
体のあちこちに包帯を巻いているダンクロックお兄さんは最年長の9歳。
体格が良くて前世での高校生位に見えますよ。
見た目のとおり勇敢だけど思慮が足りないと皆が言う。
つまり脳筋?でも私には優しいから好き。
「おう、大丈夫だよ姫さま。こんなのかすり傷みたいなもんだ。痛いっ!」
「もう馬鹿言って無いでよ。触っただけで痛がってるじゃない。ホントに馬鹿なんだからお兄は・・グスッ・・・」
ダンお兄さんの横に繋がれて泣いているのは、ダンお兄さんの妹で、私より一つ上のネネちゃんことネネモリナお姉ちゃん?
いや、やっぱりネネちゃんだな。
「大丈夫だよネネちゃん。姫様が頼んでくれたから、後でお医者様が来てくれるからね」
ネネちゃんを慰めているのがルイ兄さんこと、ルイスラッド。
ダンお兄さんの一つ下で、出来る優等生といった雰囲気で、気配りが出来てスゥお姉さんと共にみんなのまとめ役。
私にも優しくて好き。
「しかし、姫さんはすげえな。よくアイツらに声を掛けられたな。俺なんか恐くてブルッてたのにな」
私に称賛の声を掛けて来たのは、二つ上のジル兄こと、ジルバート。
やんちゃな中坊みたいで、いつも陽気なムードメーカーと言うのか、気が楽になるので好き。
お兄さん達は私の事を、姫様とか姫さんて呼ぶ。
いつの間にか姫様呼ばわりされてたけど、母様が巫女姫様と皆に呼ばれていたからかな?
「ホントにそうだね。セラが声を掛けた時はドキッとしたよ。危ないと思わなかったの?」
ミルお姉さんも聞いてきましたね。
抱きついているマリも頷いているのが気配で分かります。
「一応手当もしてくれましたし、食事も用意してくれるのなら、私達を死なせないのが彼等の方針だろうと思いましたから。今のところはですけど」
みんながちょっと驚いているのが判りますね。
理路整然としすぎましたか。
パンパンと手をたたく音がした。
「食事が冷めてしまうわ。話は後にしましょう」
スゥお姉さんの言葉でみんなはハッとして食事に手を伸ばし始める。
マリも私から離れて食事に取り掛かる。
私も食べ始めましょう。
シチューは美味しそうですけど、パンが固いですね。
「セラ、マリ、食べれますか?パンはシチューに浸けると食べやすくなりますよ」
スゥお姉さんこと、スゥールパーナは、静かで物識りで良く気が付いて世話を焼いてくれるから大好き。
長い髪を束ねてミルお姉さんと仲良くしている様はやっぱり女子中のお姉様達といった風情ですね。ジル兄と同い年とは思えませんよ。
私でも食べきれたのだから、みんなには物足りない量だった筈ですけど文句も言わずに食べ終わると、リレーで食器を扉の前に集めておきました。
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仲間の紹介。
セラは前世の記憶を取り戻して考え方が大人寄り。でも隠す気は無い。
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