やっぱりどっちも美味しいね

◇「それじゃ、二人、オススメの赤いきつねと緑のたぬき、

 どっちも開けちゃいましょ〜!」

「「やった〜!」」

声色が分かりやすくテンションの上がる二人が、

それぞれお気に入りの方を持って駆け寄ってくる。

それを受け取り、「ちょっと待ってね」と二人に言い残して、

私がお湯を準備していると、二人はいつの間にやら、椅子に仲良くいつものように

横並びで大人しく座って待っている。

うーん!食べ物の力はやはり偉大だな〜とお揚げから滲み出てくるお出汁のように

ジーンと噛み締めています…


◇「じゃあ、これがまきの分でこっちがみきの分だよ〜」

「「二つー?」」

「そう、一人二つずつ〜!赤いきつねと〜!緑のたぬき!どっちも食べてみて!」

二人は顔を見合わせて、まだ湯気の上がる、熱々の麺をフーフーと息を吹きかけて、

冷ます。私は私で二人が食べやすいように一口大に切り取ったお揚げと天ぷらを

それぞれ載せて……

「「いただきます!」」

それぞれ、まずは、好きな方から口に目一杯頬張る。

「「美味し〜い!」」

「さぁさ、もう一つの方も、どうぞ!」

二人は固唾を飲み込んで、ただ食べるだけなのに、妙に緊張した面持ちで

フォークを取る。

「「いただきます…」」

そう言うと、口にそれぞれ、うどんと蕎麦を運ぶ。

「「……」」

まきとみきは無言で自分達のうどんと、蕎麦の装ってあるお皿を

じっと見つめています。

どうだろう…

少し心配になってきました。

「「……」」

二人とも無言でただただ、食べ進めてる…

「「うーん……」

ダメ?

「「お、美味しい……!」」

「でっしょ〜!」

何故か私が得意げに。

『年明けカウントダウン、せーの!さーん!』

そんな事をしていると付けていたテレビがカウントダウンを始める。

「「「始まった!」」」

『にーい!』

「「「にーい!」」」

『いーち……』

「「「いーち……!」」」

『ハッピーニューイヤー!』

「「「あけましておめでとう!」」」

「ただいま〜!」

同時に玄関の方から声がする。

「「パパ!」」

「おかえりなさい、あなた!」

玄関へ元気いっぱい走っていく二人の後を私もついていき、

みんなでパパをお出迎え。

「ただいま!おっ、いい匂いがするぞ〜、三人とも!」

「「パパも一緒に食べよーよ!」」

双子はパパの手を引く、が、パパは立ち止まり、目を閉じて、わざとらしく、

うんうん唸る。

「「「?」」」

「このあったかくて美味しそうな匂い。この日。この時間帯…

名探偵パパは赤いきつねと緑のたぬきだと推理します!」

二人は、腕をくねくねと丸とバツを行ったり来たりさせて、

「「ピンポーン!大正解〜!」」

パパは大袈裟にガッツポーズをすると、

「やった〜!さーてと、パパは、今日はどっちを食べようかな〜…」

「まきとみきは、どっちがいいと思う?」

あ、禁断の質問…!止める間もなく、パパは二人に問いかける。

二人は顔を見合わせると、堰を切ったようにふふっと笑い、満面の笑みで答える。

「「赤いきつねと緑のたぬき、どっちも、とーっても美味しいよ!」」

その答えに胸を撫で下ろすと、今度は、私に問いかける。

「「ねぇ、ねぇ、ママは〜?」」

「赤いきつねと!」

「緑のたぬき……!」

「「どっちの方が好き〜?」」

「ふふっ、ママはね〜……」

「秘密!」



◇また来年も赤いきつねと緑のたぬきで、年越し……

赤いきつねと緑のたぬきを仲良く食べるパパと少し成長した双子を

楽しみに待っています!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

似ているようで似ていない二人と赤いきつねと緑のたぬき みたらし団子 @mitarasidanngo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ