マルちゃん家族② 赤と緑の称号。終末赤緑問題!

最時

カンナ来宅

「うん。わかった。待ってる」

 電話を切った。

 年末、地元に帰省してきた幼なじみが久々にウチに来ることとなった。

 リビングで家族に報告する。

「カンナちゃん来るの。久しぶりね」

 と母。

「カンナちゃん♡ お姉さんが一肌脱いだかいがあったわ💕」

 一肌脱いだかは別として、こうなったのは姉のおかげではある。(マルちゃん家族より)それにしても

「ツバサ姉はカンナ好きだよね」

「当たり前じゃない! ほんとにかわいいから❣」

「まあまあ」

「それにカンナちゃんはあの終末赤緑問題に終止符を打つ子だと思うの」

「何?」

 ツバサ姉はたびたび訳のわからないことを言う。

 今更だがウチに呼んだのは間違いだったか・・・


「こんにちは」

「どうぞ」

「お邪魔します」

「カンナちゃん。久しぶりね」

「ご無沙汰でした」

「カンナちゃん❣」

 ツバサ姉が飛び出してカンナにハグをする。

「ツバサさん。お久しぶりです」

「久しぶりね。会いたかった。またかわいくなっちゃって」

「ツバサさんこそいっそう綺麗に」

「もお、カンナちゃんウチの子になりな」

 ハグしたまま頭をなでて、こっちに視線を向けてウィンク。何が言いたいのだろう。

 この程度で済めばいいのだが、もはやイヤな予感しかしない。


 自室でカンナとこたつに入って卒アルを眺める。楽しいひととき。

 ふと顔を上げると間近で目が合った。少しずつ顔が近づいていったそのとき、扉がノックされた。

「失礼します。お茶をお持ちしました」

 ツバサ姉だった。

 お茶はありがたいのだが、うれしくないお決まりのタイミング。

 それに無駄な丁寧語に危険性を感じた。そしてそれはすぐに恐怖へと変わった。

「お茶? ホットワインでなくて?」

 どう見てもお茶には見えない深紅の液体がカップに注がれた。

「私のローズヒップティー」

「・・・」

 私のが気になる。どれだけ濃縮すればこの色に。何が入っているかわからないし。

「ツバサさん美味しい」

「えっ」

「でしょー」

 よく飲んだな。しかし急にカンナから笑顔が消えた。

「大丈夫か?」

「ツバサさん・・・ このお茶・・・」

「カンナちゃん気づいたね。そう、このお茶には極微量の赤いきつねのスープが入っているの。ゴメンね。だけどこれだけは確認しておきたかったの」

「大丈夫です。当然のことです」

 恐る恐る一口飲むと意外にも普通のローズヒップ。さらに飲んでみるがもちろん赤いきつねのスープなど感じない。

「流石、緑のカンナね。今回の薄さは私でもギリギリわかるくらいだったんだけどね」

「謙遜しないでください。噂に聞いた赤のツバサさんなら100倍薄くても気づけるはずです」

「ふふ。そうかもね」

 二人は薄い笑みを浮かべて見つめ合っている。

 何なんだ? カンナに視線を向けるとこちらに微笑んだ。

 まあ、なんでもいっか❣


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