第2章 10話

ばらばら死体のあった席は、まさに、ばらばら死体の生徒の席であった。


「うーん……嗚呼、そうか。そうであるか! 流石、私は名探偵である……名推理である!」


暫し考え込んでいたクンツァイトが突然手を打ったので、銃声と誤って、ジェードは飛び上がってしまった。勘弁して欲しい。


「つまり、こう言うことではなかろうか」


「こう言うこと、とは?」


「あの虐待児の席は、実際は、非常に後ろだったであろう? それを前方に変えることにより、より教師であるジェードに、虐待児の存在を印象付けようとしたのではないだろうか?」


そんなことをして何の意味があるのか――それは、問わなくても直ぐに理解できた。


「ばらばら死体となった生徒の殺害の時間を作るため」


「また、その生徒を殺害したことにも、被害者があの席でなくてはならなかった理由があるからではないか?」


「あの席でなくてはならない理由……」


「この席の子供が入れ替わっていたのであるぞ? この席で子供が殺害されたことには意味があるに決まっているであろう! 意味もなく子供を入れ替える道理がない。それなりに手間もリスクもあるしな」


「そして、六花美織は、席を入れ替えさせるくらいの権力を、教室の子供たちの中で持っているということになる」


 ジェードとクンツァイトは職員室を後にした。

 たった一つ確かなことは、ジェードの担当する教室に、六花美織はいるということだ。身を潜めているということだ。

 そして、かなりの高確率で、再び事件は起きるだろう。気を引き締めていかなければ、とジェードは険しい顔でポケットに手を突っ込み、廊下を進むのだった。


 しかし――

 どうして最近の子供って言うのは、ルールすら守れない馬鹿なんだ?


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