第7話 犬神様の謂れ

犬神様がなぜ犬神様なのかはよく知らない。


「犬の神様なのだ」

爺ちゃんはそういうだけだった。


「えらいの?」

幼い頃は不思議に思ってそう訊いてみたが


「偉いわけじゃないんだがの」

爺ちゃんは当時の柴犬型だった犬神様を撫でながらそう言った。


「ただまあ、なんとなく幸せになれるよ」

爺ちゃんは曖昧な説明をしてくれたが、まあ分からんでもない。


「少なくとも飼うには困らない」

それが父の言葉だった。


「いや違うな、これこそご利益なのかな?というか犬神様の都合?」

聞いた時は良く分からなかったが今はなんとなく分かる。


「今時珍しくペット可なアパートだし、家賃安いのに便利だし」

おまけに飼ったら即リモートワークである。ありがたやありがたや。


「わんわん」

犬神様も嬉しそうに吠えながら尻尾を振った。


「まあ犬神様の都合なのかもね」

本当につい最近、道路の向かいにペット用具屋ができたのだ。


「マイペースな神様だねえあんたは」

そう言って頭を撫でると嬉しそうに頭を擦り寄せてきた。

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