第4話 ~形~

僕は野良だ


好きに眠って

好きに働く


今日は主様に会いたいな

主様は元気かな

僕はいつも そんな時

手土産を持っていくんだ


所詮 ただの猫だから

大したものはないけれど

それでも僕は色んなものを

獲っては主様の元へ行く


だって主様が大好きだ

猫は言葉が話せない

だったら解ってもらうには

贈り物をするしかないでしょ?


「おお、嬉しい」

「面白いじゃん」

「うわ、いらねぇよ」

「持ってくんなよこんなもん」


色んな反応をするけども

それでも楽しそうに眺めては

綺麗な手で僕を撫でてくれる

「ありがとう」って言ってくれる

言わない時もあるけどさ( ・᷄д・᷅)


主様はとても我儘だ

気に入らないものは要らない

気に入ったものは欲しい


僕は不細工だし

人間でもない

たぶん僕のことだって

そんなに好きでは無いはずだ


それでも主様は薄く笑って

「こうしてくれるお前は良いな」

こう言って優しく傍らに

少しだけ居させてくれるんだ


人間たちは言葉を持っていて

本当に便利だよね

主様の事を好きな人達は

「好きだよ」って言えるもん


言うだけなら

いくらでもできるんだ

主様はそれに

うんざりしてるけど


僕だって言えるもんなら

たくさんたくさん言いたいよ


主様の事が大好きだよって


僕は黒猫だ


幸福も持ってこれるんだ


主様が本当に幸せになれるまで

僕は 僕にできることを

たくさん たくさんしたいんだ

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