新シーズン

多くの合宿や短い休暇が終わったかと思えば、すぐにジュニアグランプリシリーズが始まる。


しかしそれもあっという間に過ぎ去って行く。


ジュニアとして初めての国際大会を一通り終えた銀河、まち、冷生は日々練習に打ち込んでいた。

リリィも来る国内大会に向けて絶賛練習中だ。


銀河は最初レークプラシッドで開催された大会に出場し、7位となった。


十分高い順位に思えるが、ジュニアのグランプリシリーズには実に多くの国から多くの選手が参加する。

ものすごくスケートがマイナーで通常の大会には出てこないような国からも出ていたりする中で日本はトップ選手を多く出している国。


スケートの練習環境が恵まれている国の代表でありながら表彰台圏内に入れないというのはなかなかに厳しい状態と見做されるのだ。

シニアのグランプリシリーズと違ってジュニアの大会は一戦目の結果によって二戦目の有無が決められる。


それ故に銀河は帰ってきてからも落ち込んでいたし、もう二戦目はないだろうと言っていた。

しかしその後、怪我をした別の選手の代わりとなって二戦目の出場が認められた。


結果はショートでステップアウトして点数を落としてしまったもののフリーノーミスで挽回し、5位に立った。

望まれた順位ではないかもしれないが、最初より点数も順位も上がったこの結果は銀河にとって自信の一つになったようで、次の大会を心待ちにしていた。


まちは最初グランプリシリーズに補欠で入れられていたものの、なんとか一戦トルコで開催された試合に出場して5位に入っていたが、厳しくも二戦目には派遣されなかった。


冷生は一戦目のフランス、クールシュヴェルで開催された大会で見事2位に入ってみせた。

すぐに二戦目が内定し、クロアチア杯へ出場した。


そのクロアチア杯では4位となって惜しくもグランプリファイナルを逃してしまったが、笑顔で帰ってきた。


しかし冷生にはコーチ以外は把握していない不安がひとつあった。

というのも、実は一戦目のフランス大会で喘息の発作が起きかけていた。


幸い吸入薬がしっかり効いてなんとか大事にならずに済んだが、今後試合で喘息発作が起こることが無いとは言えない。


しかし、今後何年続くか分からない選手生活に影を落としてしまったのは言うまでもない。

分かっていことではあるが、勝手知ってる日本国内で発作が起こるのと、何も分からない海外で発作が起こるのでは不安の度合いが違う。


そんな仲間の不安や期待を横目に、今度はシニアのグランプリシリーズが迫ってきていた。


聖子のシニアデビューはグランプリシリーズの最初、スケートアメリカ。

柚樹は二番目のスケートカナダでシニアデビュー。


このリンクからシニアの国際大会に出場するのは、安村コーチ以来2人目と3人目になる。


シニアのグランプリシリーズに参加出来ることが確定した日は二人とも泣いて喜んでいた。

それ程までに、世界中のフィギュアスケーターが憧れる舞台。



今このリンクには綺麗に選手のレベルが分かれているような感じだ。


レベルを上げながら数年後に控えたノービスへ着実に準備していく優香


まずはなるべくたくさんの国内大会への出場を目指すリリィ


ジュニアの世界舞台に足を踏み入れ始めた銀河、まち、冷生


シニアの舞台に参戦し始めた柚樹と聖子


全員が必死に前を向いている。

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少女銀盤 藤宮藤子 @Fujinana_2727

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