9話 光線と炎

夕夏ゆうか……」


 最後のお友達も消えたんで、リーダーさんは呟いて震えてるッス。


 気持ちは分かるッスが……、その一方で変な雰囲気ッスね。


 これは、なんか仕掛けてくるかもしれないッス。


 その前に決め……!


「うわああああああ───────────────!!!!!!」


 くっ……。


 リーダーさん、天に向かって絶叫なんッスが、裂くような殺気を伴っているんで、気張ってないと身体からだが切られるッス。


「ああああああ───────────────!!!!!!」


 しかも、背中からもう一組、赤くてでっかい翼が生えるように現れたッス。


 リーダーさんの翼魔さんは、他のみなさんとはちょっと違うッスからね。


 どうやら本当の姿を現したみたいッス。


 これはきてるッス。


 大小、赤白の二枚一組の翼を広げて、禍々しいかんじのオーラを全身からのぼらせている様子から、激怒モードに突入ってかんじッス。


「許さない……、許さないんだから!!!!!!」


 ギッと睨みつけるると、両手を突き出すリーダーさん。


 同時に三十本近い光線を放ってきたッス。


「っく……」


 思いっきり右横へ跳んで、前回り受け身をし、そこから魔力を使って、手すりをジャンプ、ジャンプ、ジャンプ!


 一番上、四階の廊下まで跳んで床に転がったッス。


 私を狙う光線の群れをギリギリかわして、ここまで逃れたッスが、すぐに追ってくるッスね。


 おまけに持ってたクロスボウがなくなって、手から矢ではない光線にして放ってたッス。


 これはたぶん、武器としての必要がなくなったから。


 最初は、戦ったことがないみなさんがイメージしやすいように、翼魔さんが武器を持たせていたんでしょうが、リーダーさんの強い感情から、直接、撃てるようになったんだと思うッス。


「ジュマ」


「ジュマ!」


 私はスピールをパイソンからハローに持ち替えて構えたッス。


 おっと。


 下の吹き抜けから飛んできたリーダーさんは、私がさっきいたところへ向けて光線の群れを撃ったッスね。


 確認もせずにやったみたいッスが、光線は魔力を主成分としてあって破壊の効果がほとんどない、生物に対する攻撃に特化したかんじ。


 だから、ババババババッとおっきくて青白い火花が派手に散っているッスが、柱や壁、絨毯が壊れたり裂けたりしてないッス。


 まあ、私は私でリーダーさんの背中に向けて引き金を引くッス。


 パラララララララ……。


「!……」


 気がついたみたいッスね。


 連射これ、一発の魔法は小さい威力ッスが、それが連続になると侮れないッスよ。


 弾幕を張って動きを封じつつ──!


 ババババババ!


「と、は」


 撃たれても関係なく撃ってきたッス。


 たしかに、リーダーさん自身は痛くもかゆくもないし、うざったく感じなければいいッスもんね。


 横っ飛びで回避したあと、私はすぐに起き上がって廊下を駆けていくッス。


 とにかく撃ってきているんで、動いていないと的になるだけだし、柱なんかに隠れては逃げようがなくなるッス。


 ただ、このまま駆けていてもいずれやられるんで、何かしないとやばいッス。


 そう。


 たとえば、防御しながら攻撃するかんじで。


「……」


 あれ、やるッスか。


「ジュマ」


「ジュマ!」


 私はハローのマガジンを魔力がフル充填されたものと交換。


 強射に切り替え、リーダーさんに向けて突き出した左手にハローをあて、引き金を引いたッス。


 ブオオオォォ─────────────────!


 私の左手から巨人のような炎の手が伸びて、そのままリーダーさんを掴んだッス。


 手を広げて伸びたもんッスからね。


 防御もかねられているッスよ。


 タタカイノキオクからのものであり、私の経験からのものでもあるッスけどね。


 そんで、効果はバッチリ。


 リーダーさんの身体を両腕ごと握って拘束しつつ、金色の炎が翼魔さんを焼いているッス。


「こ、このー!」


 おっと、いい暴れぷりッスね。


 でも逃がさないッスよ。


 私の手と連動してるんで、力を入れれば炎の手もギュッと握ることができるッス。


「くう……」


 動けなくても、リーダーさんにダメージのようなものはないッスから、おとなしくしてほしいッス。


 それに、これは常に魔力を流し込んでるんで長いことやってると、底をついて私がぶっ倒れるッス。


 少しでも早めるためにこうやって、左手にハローを当てたまま引き金を引いて、追加で金聖魔法を発動させるッス。


 ハローのマガジンには魔力が別に充填されているんで、問題ないッスよ。


 ドン、ドン、ドン……。


 脈打つかんじで炎が揺らめき、増した火力で、翼魔さんの白い翼は焼滅しょうめつ


 大きな赤い翼も順調に焼け落ちていってるッスね。


 仮に、特殊能力とかそういうのがあったとしても、それを使われる前にたおしてしまうッス。


 ピク。


「う、うおおおおおおー!」


 と、これは……、赤い翼がリーダーさんに魔力を流して、瞬間的に強化。


 握る手を一瞬、押し返して緩んだ隙に抜け出し、こっちへ突っ込んできたッス!


 やばいッス。


 魔法は発動中。


 いま急いで切っても、この体当たりは防げないッス。


 こうなれば──。


魔彩マーヤ!」


「うむ」


 私のツインテが赤くなったッス。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る