第41話 猫貴族、光の神獣と邂逅する


「儂は光の契約者じゃ」


陛下の一言で部屋が沈黙に包まれる。

驚き過ぎて言葉を発せない中、クリスの方へ目線を向けると、一体何を言っているんだと言いたげな顔で困惑している。


「クリスよ、神獣という存在は聞いたことがあるじゃろう?」


「父上から聞いたことがあります。確か8つの属性を司る神獣がいると。そしてその神獣に認められし者は上位魔法を扱えるようになるとか。…まさか光と闇のってことはお爺様とルークは…」


「正解じゃ。儂は光の神獣と契約し、光の上位魔法である【神聖魔法】が扱える。ただし、これは儂が特別だから契約出来たのではない。初めに契約したのは初代様で、その初代様が建国したこの国を守護者としてずっと見守って下さっておるのじゃ」


「つまり歴代の王が契約者ということですか。それで次期王である父上にしか話すなと」


「そういうことじゃのう。光の神獣であるハク様はこの王宮の離宮から王宮全体を結界で守って下さっておる。そのため王宮内部のことは全てハク様に…っと噂をすればなんとやらじゃ」


いきなり陛下の隣に真っ白の光が集まり、徐々に神獣のシルエットが明らかになってくる。

これは馬?の神獣?


『ヒヒーン、どうやら僕の噂をしているようだから来てみたよ。はじめまして、闇の契約者君とメイソンの孫』


「う、馬が喋った」


『僕はペガサスだ!メイソンの孫だから許すけど、気を付けてね』


角と羽があるからそうではないかと思ったがペガサスらしい

しかもどうやら馬と間違られるのは彼?にとってはタブーのようだ。

なんだか少し仰々しくて疲れそうだが、確かに王家を見守ったりしてそうだと妙に納得してしまった。


「はじめまして。僕は闇の神獣であるクロエと契約しているルーク・ロッソ」


『おや?出てこないのかい?影にいるんだろう?闇よ、ヒヒン』


なんだかヒンヒン言って笑ってる。

ちょっと変態っぽいなこの神獣。

まさか結界内で覗きとか…いやこれ以上はやめよう。


『相変わらず気持ち悪い笑い方にゃ』


そう言いながらクロエが僕の影から出てくる。

実は今日は学園から急遽王宮へ来ることになったので影にいたクロエを置いてくることが出来ず、影で大人しくしてもらっていたのだ。


『どうやらかなり弱っているようだね。君が弱っていると僕たちも困るし、魔力を分けてあげよう。感謝したまえ、ヒヒン』


そう言いながらハクがクロエのおでこに前足をかざす。


『これで契約者以外とも念話で話せる程度には回復しただろう、ヒヒン』


「えっ念話って契約者としか話せないんじゃないの?」


『ん?そんなことはないさ。契約者の傍にいる時はその周囲にいる者とも念話で話せるさ。魔力量が多い生物とは契約者を介せずに念話が成立することがあるけどそれは例外だね』


『一応礼は言っておくにゃ。これで全盛期の半分ぐらいには回復したにゃ』


『他の神獣たちにも会いに行くんだろう?なら彼らにも協力してもらえばいいさ。まぁ素直に協力してくれるかどうかはわからないけど、ヒヒン』


「今回ルークに話したかったもう一つの要件がまさにそれじゃ。ハク様から聞いたのは、何十年か前より闇の神獣様の存在を感知出来なくなり、それと同時に世界の魔力が不安定となってしまい、魔物の狂暴化などの問題が発生しておると。そんな中、先日のお披露目会でルークから闇の神獣の気配がすると念話を頂き詳しい話を聞かねばならんと思っておったのじゃ」


『ずっと感じられなかった闇の気配をまとった少年が現れたのには驚いたね。ところで闇のはどうしてそこまで弱ってたんだい?』


「それは寝て『不意打ちにゃ!不意打ちで傷をおったにゃ』」


クロエがこちらに何やら目で訴えながら必死に寝ていたら襲われたという間抜けな事実を隠そうとしている。

仕方ない、ここは黙っておくか。


『どうせ君のことだから大方どこかで居眠りでもしてたんだろう』


正解です。クロエも目をスーッと逸らしているが、それじゃバレバレだよ?


「でじゃ、今日ルークの影から感じる闇の神獣の気配があまりに弱っているため、他の神獣に会いに行き魔力を分けてもらうつもりじゃろうと推測を聞かされておったんじゃが、それで合っておるかの?」


「単純に女神様から神獣に会いに行って世界各地の魔力の淀みの解消を手伝ってくれと言われたので会いに行くつもりでしたが…どうやら他の神獣と会うことでクロエに力を取り戻させるのも目的のようですね」


「女神様じゃと?まさか神託が下ったというのか?」


これまでに無いほど興奮した様子の陛下が椅子から立ち上がり僕の肩をガクガクしてくる


「ちょ、ちょっと話せませんって、陛下」


『なるほど。エステル様のご指示か。確かに漆黒魔法なら魔力溜まりや淀みを解消させるには適任だろう。でもエステル様の加護を授かっているならどうして僕に感じ取ることが出来ないんだ』


『主は特別だからにゃ。主は身体そのものが神様たちが手を加えたものにゃ』


『身体自体が加護で保護されているから感じ取れないと。なるほど納得したよ。ならせっかくだし他に居場所が分かっている神獣を教えておこう。エルフの国に行くといい。あそこには地の神獣がいるはずさ』


エルフの国か。そういえばエルフの知り合い…いたな!

これはエル婆に会いに行かないとな!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る