終冊目 クリスマス・テロル invisible×inventor その二

 姉妹は面白かったって言えば面白かったけれどすごく反応に困るみたいな反応をして私を困らせました。

 こうも言われました。

 わたしへの風評被害が酷い(風評じゃねえよ事実だよ)。とか。

 お姉ちゃんに比べてわたしのキャラ薄いから書き直して(そこは本当にごめん。どうにもならなかった。あなたの姉が濃すぎ)。とか。

 形式真似はともかくとして、クラシックを最後に入れておけばIWGPっぽくなるかなあというあなたの安易な考えが透けて見えるわ。実際はこの放送、童謡の七つの子なのに。石田衣良先生と原作ファンであるわたしに謝って(石田衣良先生すいませんでした)。とか。

 それと、昼飯喰いながら駄弁ってるだけじゃんなんて元も子もないことも言われました(ひどい!)。


 だから私はやってやることにしました。

 世間に発表してやるのです。

 この小説を。多少の憂さ晴らし、もとい復讐の意を込めて。双子姉妹の自分勝手っぷりを世に知らしめてやるのです。

 せっかく書いたって想いもあるけれど。

 投稿し、この小説でなんらかの賞に引っ掛かれば……。

 それこそ、私のささやかだけど晴れやかな復讐でもあり、且つ二人への感謝の印にもなると思うから。

 積もり積もった恨みつらみと、溢れんばかりの感謝が入り混じった二人への。

 成長へ導いてくれた二人への。

 これ以上ないプレゼントになると思うから。

 そしたら、あの姉妹なんて言ったと思う?

「こういう既存作イジくるのってもう死んじゃった著作権切れてる昔の大家(たいか)みたいな人でしかやっちゃいけないんじゃないの?」

 言い方言い方……。他にもこういう作品あるでしょ。

 ほら、作中で挙げたのだと京極夏彦のどすこいとか……ええっと、あとどすこいとか? 他になんかあったっけ……。アンソロジーは違うよね……。

「そりゃやってる作者が大御所だから許されてるんじゃん?」

 うーん。そうかな? そうかな……そうだな……ごもっともな意見かな……。

「それとこれめっちゃ重要なんだけど……、わたし、お姉ちゃんと違ってそんなに復讐される要素なくない?」

 等価交換って言葉知ってる?

 なら、からあげ一個の重みって分かる?

「こんなやりたい放題やってるだけの作品、どこも取らないと思うわ。懐が広いように見えて意外とそうでもないライトノベル系の賞はもちろんね。

 ただそうね……受賞作家たちがやりたい放題やってるメフィスト賞か星海社にでも送ってみたら鼻で笑ってもらえるくらいはしてもらえるんじゃない?」

 言い方言い方……。いや、うーん、なんも言えない。たしかにそうかも。鼻で笑ってもらえれば御の字――いや、


 嗤われるくらいが関の山かもね。


 あとはそうだ。章作ね。記念すべき終作目を冠する小説のことにも触れておかないと。

 って言ってもこればっかりはあんまり言及できないんよね……。自分の目で確かめてみて下さいとしか言えませんですはい。

 クリスマス・テロル〈invisible×inventor〉

 重は――じゃなかった佐藤友哉著。

 メフィスト賞受賞作、フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人から連なる鏡家サーガの四作目。鏡家サーガとしては番外編的位置づけでもあり、番外編的位置づけでありながら超問題作。

 終作目を冠する作品としてはこれ以上ない作品であり、ぶっちゃけて言えばこれしか思いつかなかった作品。

 以上。

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