第7話 歩き回るゾンビ

 いやー、本当に何もない。森の中を進むしかないが、たまにゴブリンとイノシシが出て来るぐらい。それ以上は出て来ることは無いが、代わり映えの無い日常を送っている。サザナミに話かけているが彼女はまだ喋る気配はない、彼女がどう思っているのか分からないが現在、俺の喋り相手になってくれるような存在はコイツしかいないのだ。


「ゾンビハ、進ムヨー、何処マーデモー」


 歌って気を紛らわせないと俺の気が触れそうになってしまいそうだった。マジ、キツイ。

 森の表面にまで出て来ると整えられた道が見える。その先はかなり遠いが街が見える。しかし、俺はあそこまで行けないだろう。途中で日に焼けて死ぬ。

 踵を返して森の中心を目指す。女騎士は俺が死んでいた街にでも向かっているかと思ったが、果たしてどこに向かっているのか。しかし、別れた以上は心配は無意味だろう。死体でもあったら祈りを捧げてやろう。


❖  ❖  ❖


 中心目指して走ってはいるが何も見えない、中心にいけば何かしらあるのかとも思ったがそうでもなさそうだ。出てくるゴブリンやイノシシは強くなっている、気がしないでもない。俺自身も強くなっているから差が分からない。ステータスを一回確認してみるか。


■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■

名前:なし疋嶋慎吾 種族:ゾンビ 状態:異常なし Lv50


称号:異世界転生者 森の狩人 悪知恵師 呑み師 変態ゾンビ


HP:600/600

MP:400/400

SP:1300/1300


コモンスキル

剣技(Lv7) 狩猟(Lv8) 飼育(Lv5) 痛覚無効(Lv7) 再生(Lv8) 悪知恵(Lv4) 健脚歩(Lv4) 移動(Lv2) 投擲(LvMax) 鑑定ステータス表示(Lv5)

固有スキル

吸収捕食(LvMax) 身体操作(Lv Max) サポート(Start-up) 風■■神(■■r■■)

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名前:サザナミ雪波陽子 種族:スライム 状態:従魔 Lv30


称号:異世界転生者 同行者 雑食 悪食


HP:320/320

MP:380/380

SP:800/800


コモンスキル

捕食(LvMax) 健脚歩(Lv1) 鑑定ステータス表示(LvMax) 魔力感知(LvMax) 五感補助(LvMax)

固有スキル

吸収捕食(LvMax) 擬態(Lv3) 大辞典(Lv6)

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 おお、成長している。サザナミも成長していてよかったな。擬態のレベルが3に上がってる。イノシシになれるかね?

 お、なってくれた。毛並みの色は青くなっているが、本当に猪みたいだ。乗って移動できるかね?


「フゴッ!」


 乗せてくれそうな感じだ。では、乗せてもらおう。よし、進め!


「フゴゴゴゴッ!」


 スピードに乗って猪サザナミは進んでいく。舗装されていない悪路だが、難なく進むサザナミ。吸収した猪の能力を貰ったのかもしれない。初めて見た擬態の能力だが、中々に使いこなしている。凄まじく揺れるので乗り心地は最悪だが。


❖  ❖  ❖


 今、俺は日光の弱点回復のための日光浴を行っている。正直、効果は薄い。スキルが手に入る予兆はない。ゾンビは日光に当たると砂になるとか聞いた事はあるけど俺は違うようだ、めっさ焼ける。

 サザナミは川沿いで給水している。彼女の休憩のためにと休んでその暇を潰すために身体を焼いている。焼いては日陰に、焼いては日陰にを繰り返しているが、スキルが習得できる気配はなさそうだった。


「…………」


 いつの間にか、スライムの姿に戻っているサザナミ。彼女も擬態の能力を使うと疲れるのかもしれない。暫くは休ませておいた方が良いのかもしれないと思ったので、休ませよう。

 長閑な時間だ。川のせせらぎとそよ風の暖かい空気、可愛いペットの感触、焼け焦げる人間の肉の匂い。長閑な時間はゆっくり過ぎていく。この体になって初めて睡眠が取れそうだった。

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