第4話【Y&S】会話劇 その②(上)告る攻め

最多登場カプ――言うて二組しか出とらんが――の両片想いから一歩進んだ時の話。

なれそめはそのうち出せたらいいね。


【設定】

感情を押し殺し慣れた実は愛に飢えてる年下SE

        ✕

愛破れ世間に敗れ新天地で独り生きる年上柔整師


匿名による職場への暴露により暫しの欠勤を決めた年上柔整師のもとにスポーツ中の怪我で経過観察中の年下SEが買い出しに付き合うよう強引に押しかけてひと通り歩き回った果てにおっさん二人が青春胸キュン映画を鑑賞した後。


―――って、解説が長いわっ!

まあ、ネタ帳なんで。(←便利な言葉)


以下、会話のみ。


◆ ◆ ◆


「想像以上のアオハル映画でしたね」

「サブの叶わぬ想いってのはツラいもんだ」

「そっちですか、過去の恋愛をまだ引き摺りまくりなんですね」

「ちっ、噂話を真に受けんな」

「いいんじゃないんですか、無理に忘れなくても」

「ほぉ、寛大だねぇ」

「30歳過ぎればある程度許容しないと相手にしてもらえないでしょう?」

「達観しちゃってんなぁ、まだ早くねぇか?」

「これくらい悟らないと振り向きそうもないんで」

「ははは、居るんだ、そういう人。いいねぇ、それこそアオハルじゃねぇかよ、羨ましいねぇ」

「あなたですよ」

「はい?」

「アオハルの相手、あなたです」

「何だ、それ……あぁ、職場にアウティングされたヤツへの憐憫の情ってヤツか?」

「そう取りますか」

「生憎だが周知済みなんで何のダメージもねぇし、『自分は味方』的な勘違いも甚だしいし、ヒトの気も知らねぇで気ぃ遣われんのもありがた迷惑でしかねぇな」

「その〈ヒトの気〉を分かち合えるのは俺しか居ないと言ってるのですが?」

「おちょくってんのか、お前……怒りが爆発する前に終わっとけ、でないと殴るぞ」

「施術の指名を悉く拒否られた俺にとって、それだけ距離が縮まるのなら本望です」

「あのなぁ! ……いや、もういいわ」

「今回は拒否らない、という事は可能性があると自惚れていいんですかね」

「何でそうなる!」

「はぁ、ウダウダと面倒臭いんで単刀直入に言います。あなたが好きです。人間的なライクじゃなくてガチのラブでヤりまくりたいヤツ」

「きゅんドラマからの生々しさ……あのなぁ、ゲイのおっさんを弄んで何が面白いんだよ」

「変わらない身の上なので茶化しは皆無ですよ。それにしても、その口はマジでヤバイですね。今から想いの丈を伝えるのでヒヨコにして黙らせよう、ムニュ」

「んー! むむむんむむん何すんだよ! むーむーんーはーなーせー!」


「ひねくれた言葉でイライラさせるくせに気遣う言葉をぽろぽろ溢すこの口。本当は弱いくせに悪態ばかりついて虚勢を張りたがるこの口。これ以上ない程愛しくて堪らない。虚勢、いいじゃないですか。それで自分を保てるなら。保てなければこの口から出して荷を軽くすればいい。ついでに愛でも囁いてくれれば万事OKですよ」

「むむん……」

「それと、その胸の奥に誰が居ようと気にもしません。その人が出来なかった以上にあなたを愛しきるしその自信も有るんで」

「……」

「何か反論が有れば今のうちにどうぞ。無ければこのまま抱き締めます。この隙にどうあってもあなたを得たいんで。あぁ、忘れてた、このままでは話せないですね、手を離しますか」

「ぷはっ! ……あのなぁ、そういう事をサラっと言えるような若者について行けるわけねぇだろ」

「35歳も40歳も変わらないでしょうが、何を躊躇う必要が有るんですか。いいですか、何度でも言いますよ、何なら世界の中心で叫びますよ」

「例えば千歩譲って聞き入れてやるとして、お前は俺にそのケツを貸せんのかよ?」

「それは無理です、あなたがみゃ~みゃ~鳴いてください」

「はぁ? 何で俺が生き方変えなきゃならねぇんだよ、年長者を敬え!」

「恋愛は対等が常、どうして年下ばかりが折れなきゃならないんですか、それこそ年少者を慮って譲るべきでしょう?」

「……あぁ言えばこう言うの、スゲェ腹立つな」

「クソ生意気なのはご存知でしょう?」

「あぁ、この数ヶ月で良く分かったよ……お前は……オレの好みじゃねぇ。だから金輪際近付かないでくれ」

「……分かりました。今日は強引に連れ出してご迷惑おかけしてすみませんでした。もう二度と付き纏いません。が、足が完治するまでは経過観察をお願いします。では……俺はこれで帰ります」


「待てよ、怪我した足で歩き回ったんだ、送るわ」

「いや、フラレた身でキツイので結構です」

「今後の足の経過に影響が出たらマズイだろ、それとこれとは別物と考えろ、ほら、つかまれ」

「罪なヒトですね、こっちが腹立つ」

「うるせぇ、柔整師としての義務だ」

「こんな時だけ建前押し付けるの、やめてくださいよ」

「はいはい、足の状態見たら即帰るから辛抱しろ」

「あなたから早く離れて忘れたいのに、嫌がらせにも程がある」

「こういうヤツだとご存知だよなぁ? 諦めろ」

「……帰宅したら襲ってやる」

「有段者に勝てるかよ、逆にシメテやるわ」

「もういい、離せ!」

「支えてるこの腕を解けねぇ時点で詰んでんだよ、さあ、帰りますよ高市タケチさん」

「……絶対にヒイヒイ言わせてやる!」

「熱くなんなよ。そもそも……好みじゃねぇって言ってんのに従うかっつーの」

「本当に……頭にくる、何で……」


((―――何でこんな男に惚れたんだろう))

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