料理とお酒と親友と…

式波優心

幼なじみ



≪さえの深いため息≫


さえ:最近しんどいなぁ…なんかいいことないかな…

しおり:いいこと?いいことは自分で探すんだよ!楽しいこととかさ!

さえ:楽しいことかぁ…しおりの楽しいことって何…?

しおり:私?今は、新しいことに挑戦してることかな…

さえ:新しい事って?

しおり:例えば今はね、料理かな!

さえ:へぇ!しおりが料理…

しおり:なによ。私が料理してるのがそんなに変?

さえ:いや…あんなに学生の頃調理実習で火傷だったり指切ったりしてたしおりがね…

しおり:あの頃はあの頃!今は社会人で一人暮らしだし、自炊くらいはしますよー!

さえ:んじゃぁ得意料理は…?

しおり:得意料理かぁ…オムレツかな?

さえ:へぇ~意外と女子してるじゃん!

しおり:意外とって何よ!私は女子です!!って…私の事じゃなくて、さえの話でしょ?何か趣味とかないの?

さえ:趣味ねぇ…趣味って程じゃないけど…私も料理は好きなんだよね。

しおり:そういえば昔から料理してたね!さえのご飯、結構美味しいんだよなぁ…

さえ:しおりは何料理が好き?

しおり:私はねぇ!自分で作るなら卵使った料理かな…作ってもらうなら…なんでも食べたい!!

さえ:…ふふふ…!しおりって、食べることには昔から変わってないね…(笑いながら)

しおり:なんかその言い方…私が大食い!って言ってるみたいじゃない!

さえ:でもそれって羨ましいことだよ?私なんか自分で作ってもそんなに量食べれないからねぇ…

しおり:あー…作っても無駄になっちゃう…?

さえ:無駄にはならないように作り置きはしてるんだけどね…一人で食べてても…おいしくないし…

しおり:そぉ?私は自分で作って、今日はおいしくできたって思うと嬉しい気持ちになってまた作ろう!ってなる!

さえ:私も最初はそうだったよ?一人で作って一人で食べてごらんよ…つらいぞぉ?

しおり:…ん?なんか変だなって思ってたんだけど…さえ…彼氏は…?


≪間≫


さえ:…それ…聞いちゃう…?

しおり:え?だって!一週間前に彼氏が家に来てるとか…言ってたじゃん…

さえ:昨日…別れました。

しおり:えええ?!き…昨日…

さえ:そうよ…昨日!最悪よ…彼とは2年付き合ってたけど、ずっと二股かけられてた感じで…それが昨日判明したのよ…

しおり:…だよね?!2年前に彼氏が…って話してて…結構長いから結婚するのかと思ってたんだけど…二股?!

さえ:なんか同じ会社の同僚の女の子だったらしくてね…その子と私会ってるのよ何回か…

しおり:ちょ…ちょっと待って…情報量がすごくて…えっと…2年前にさえに彼氏できて、その頃から二股かけられてたってこと…?

さえ:そう。

しおり:んで…その二股の相手が彼の会社の同僚でさえも会ったことがある…

さえ:うんうん

しおり:んで昨日その二股が判明して…別れた…と。


さえ:そうよ…1週間前から彼が家に来ててさ、一昨日ねたまたま彼の携帯の画面が目に入ったの…そしたら「りょう君…会いたいよ」って言う文字がね…その返事に彼が「俺もだよ…花音かのんに会いたい…でも今、出張…」って…彼女のところにいる、じゃなくて嘘つくのに出張?!って…

しおり:…さえ…そこじゃないでしょ…出張の部分も引っかかったけど…まずそこじゃなくて…

さえ:…わかってるわよ!!私だってそんな会話見たの信じたくなかったし…最初は目を伏せてたの…でも、私にも嘘ついてて、その花音ちゃんにも嘘ついてたのが許せなくなって…昨日問い詰めたの。

しおり:さえがそういうので問い詰めるって…珍しい…

さえ:でしょ?私はどうでもいいけど、花音ちゃんが可哀そうじゃない?なんでそういう嘘ついてるの。って…

しおり:……

さえ:そしたら彼なんて言ったと思う?…「俺は、さえの事も大事だし、花音の事も大事なんだよ!」って…私はこんなことろにいないで花音ちゃんのところに早く行ってあげて!って追い出したの。それが昨日。

しおり:…さえ…?突っ込みどころ満載なんだけど…ちょっといい…?

さえ:え…?


≪態勢を整えるしおり≫


しおり:まず…さえは亮君の彼女なのよね。

さえ:…うん…

しおり:花音ちゃんって子は…?亮君の彼女なの…?同僚って言うだけでしょ…?

さえ:いや…私とお付き合いする前から付き合ってたみたい…

しおり:えええ?!どういうこと…ちょっと待って…彼女居るのにさえと…ってこと?

さえ:…そうなるね…

しおり:んで…?さえとの関係は2年続いたのよね…その間は亮君に変なところなかったの…?

さえ:たまにあったよ。二人で群馬に旅行中、電話してくるって言って2時間くらい外に出て行ったり…うちに来てる時も毎日電話でちょこちょこ外出てたり…

しおり:なんでそこで問い詰めなかったの!!

さえ:だって…彼の事信じたかったし…

しおり:ちゃんと話さなきゃいけないのよ…それも信用につながるし…

さえ:話して嫌だって思われるのもさ…亮もそういう話一切しなかったし…

しおり:さえ…それさ…亮君に都合のいい、浮気相手の女って思われてただけだよ…?

さえ:え…?でもちゃんと好きって言ってくれてたし…嫌われたくないから…

しおり:そりゃ、都合のいい女だから離したくないから好きとかいうでしょうよ…

さえ:そういうもんなの…?

しおり:そうだよ。だって好きって言っておいて他の女の代わりになってるわけでしょ?それは都合のいい女って言うのよ。それと、ちゃんと話し合うのも大事よ?

さえ:都合のいい女…話し合う前に終わってしまったけど…離れてよかったのかな…?

しおり:それは良かったんじゃないかな…?このままだとさえが傷つくだけだったよ…?

さえ:まぁ…そっか…

しおり:あいつから連絡来てももう駄目だよ?

さえ:うん…


≪数日後≫


さえ:しおりの言ってた事…本当のところどうなんだろ…亮はどういうつもりで私と付き合ってたんだろう…連絡するなって言ってたけど…話し合いも大事だって言ってたもんな…どうしたらいいんだろう…


≪着信音≫


さえ:…?!びっくりした…ん…?亮…?…もしもし…

亮:あ…出てくれた。さえ…ごめんな…嫌な思いさせてて…

さえ:あ…いや別に私嫌な思いはしてないよ…


さえ(心):え…ちょっと…私何を言ってるの…


亮:そっか…よかった…連絡なかったしもう嫌われたのかと思ったよ…

さえ:だって、亮は花音ちゃんが居るじゃない…?そこを邪魔するのは違うと思って…

亮:さえ…さえがいつも我慢してて何にも言えないのは知ってた…俺がこんな最低な男だからさえの気持ち踏みにじってた…本当にごめん…

さえ:…いいよ。謝らないで。花音ちゃんとはいい感じなんでしょ…?それなら亮がちゃんと守ってあげないと。

亮:それが…花音とは別れた…

さえ:え…?

亮:俺もさえと同じだった…すごく嫌な気持ち分かったから…さえには謝りたくて…

さえ:…


≪間≫


亮:さえ…本当にごめんな…もう傷つけたりしない…

さえ:…なんで…

亮:え…?

さえ:なんで今更…せっかく亮の事吹っ切れると思ったのに…

亮:吹っ切れるって…俺はまだ、さえのこと…

さえ:≪被せ気味に≫いや!!…言わないで…気持ちの整理がつかなくなる…

亮:さえ…俺の事もう…なんとも…?

さえ:あんな思いしたんだもの。誰も信用出来るわけないじゃない。

亮:…

さえ:亮、あなたの事は一番理解していて信用もしていた、一緒にいて楽しかったし心から愛していた。…なのに裏切られた。

亮:…本当にごめん…

さえ:だからもう謝らないで。幼なじみで親友のしおりの事を裏切りたくない。だからもう…

亮:…(微笑しながら)ははは…一度失われた信用はもう取り戻せない…か…

さえ:あなたは強いし一人で生きていける。だって傷つけた彼女の前でそうやって笑っていられるし。

亮:そ…そういうわけじゃ…!

さえ:…じゃぁね。もう一切連絡してこないで。

亮:さ…さえ…!!


≪電話を切るさえ、間≫


さえ:はぁ…これでよかったんだよね…いつまでもウダウダしてても仕方ない。よぉし!明日からも仕事頑張るぞ…!!


≪次の日≫

≪しおりのスマホの着信音≫


しおり:ん…?あ、さえだ。もしもーし、さえ?

さえ:しおり、あのさ…今日夜ご飯一緒にどうかな…?

しおり:あら、珍しい!!家に誘ってくれてるのかしら?

さえ:うん!久しぶりにうちでご飯、どうかな…?って。

しおり:ふーん…うん!いいよ!仕事終わってからだから…そうだなぁ…18時くらいにはそっち着くと思う!

さえ:分かった!待ってるね!あ、お酒のむ?

しおり:おお!宅呑み!いいねぇ!私も用意して持ってくね!

さえ:あ、うん。しおりの好きなお酒持ってきて!

しおり:はいよー!んじゃ、また後でね!


≪しおり電話を切る≫


しおり:あの子…大丈夫かな…?昨日もしかして、亮君から連絡来て…んー…いろいろ話聞いてあげるか。


≪18時、さえ宅到着≫


しおり:お邪魔しまーす!

さえ:上がって上がって!!

しおり:んー!いい匂いしてる!!

さえ:えへへ~!今日はねとっておきの作ったんだ!

しおり:いや~楽しみだなぁ!!(嬉しそうに)久しぶりのさえの手料理かぁ…!!あ…はい、ほらお酒!

さえ:あ!ありがとう!あ、座って待ってて!ご飯の準備するね!

しおり:うん!


しおり(M):やっぱなんか変だな…顔は笑ってるけど、さえ…元気ない…


≪間≫


さえ:はい!オムレツと、アヒージョ!あと…ちょっとオシャレに…チーズフォンデュ!

しおり:うわぁ…!すっごい!!あ~この匂いアヒージョだったのか!

さえ:そうなの!野菜もとれるし、海鮮も入れたから贅沢気分味わえるよ!

しおり:おいしそぉ~!!!よし、乾杯しよう!!

さえ:そうだね!んじゃぁ…かんぱーーい!!

しおり:かんぱーーい!!


≪間≫


さえ:なんか…久しぶりだね…こんな感じ…

しおり:そうだねぇ…お互いに忙しいからなかなかこういう事も出来なかったしね…

さえ:急に誘ってごめんね…

しおり:いいのよ!親友じゃない!たまには誘ってよ?

さえ:え…?いいの…?

しおり:当り前じゃない!!あ…前日とかに連絡くれたら嬉しいかな…

さえ:あ…そうだよね…ごめん…


≪間≫


しおり:…さえ?

さえ:…ん?

しおり:なんかあった…?

さえ:え…?

しおり:今日の電話の時もそうだったけど…なんか元気ないな、って思ってたんだよね。

さえ:あー…やっぱしおりにはわかっちゃうか…

しおり:ったく…いつもそう。

さえ:いつもって…?

しおり:私から聞かないと、さえって何にも話してくれないの。

さえ:…あ…

しおり:いいんだよ。なんでも話してよ。じゃないと私がいる意味ないじゃない。

さえ:うん…そうだね…

しおり:んで?昨日亮君から連絡きたの?

さえ:え…そんなことも分かっちゃうの?!

しおり:やっぱり…

さえ:すごい…サイコパス…

しおり:さえの声聞けば全部じゃないけど分かるよ?

さえ:もう…しおりが彼氏だったら良いのに…

しおり:やめてよw百合じゃあるまいし…まぁ、確かに?私が男だったら女の子絶対泣かせない自信ありますけど。

さえ:泣かせない…か…昨日ね…亮が花音ちゃんと別れたって言う電話来てね…

しおり:まさか…さえ、その言葉に甘えそうになったんじゃ…?

さえ:ちょっぴりね…でももう一切連絡してこないでって言って電話切った。

しおり:えらい!!!えらいぞぉ!!

さえ:亮が言いかけたんだよ…「俺まだ、さえの事…」って…揺らぎそうになった…

しおり:でもちゃんとさえは、嫌だって断ったわけだね!

さえ:…うん…(泣き出しそうになりながら)

しおり:いいんだよ、それで。さえは何も悪くない。

さえ:…うん…亮の声聞いてちょっと安心したのはあった…でも、あの人笑ったの…

しおり:笑った…?

さえ:…そう…「失われた信用はもう取り戻せない」って言いながら…

しおり:なんてやつ…!!!ぶん殴ってやりたい…

さえ:ここまでの事されて、笑われて…馬鹿にされてるとしか思えない…

しおり:あ~…でもさ、あいつはそんな男だったかもしれない。でも、そうじゃないからね…?さえの前にちゃんと理解してくれる人が現れるよ。

さえ:…しおりみたいな…?

しおり:そうね…私みたいな人かどうかは分からないけど、絶対現れる。…と自分も思ってる…

さえ:…ぷっ…(吹き出す)

しおり:な…?!なんで笑うの?!

さえ:ふふふ…いや…しおりもそうなんだって思って…

しおり:思っても笑わないでよぉ…私だって結構気にしてるのよ?

さえ:あ…そうだよね…でもよかった…しおり居なかったら私どうなることかと思った…

しおり:へへーん!頼りにしてくれるのは嬉しいよ!

さえ:いつもありがとうね。

しおり:そのセリフ、そっくりそのまま返します。


≪さえとしおり笑う≫


しおり:よぉし!おいしいご飯もあることだし、今日はのむぞぉ!!

さえ:明日もあるんだから、ほどほどにね…?

しおり:あはは!なんかさえ、奥さんみたい!

さえ:こんなに楽しい食卓久しぶりだよ!今日来てくれてありがとうね!

しおり:幼馴染の親友なんだから当たり前でしょ?

さえ:…そうだね!!これからもよろしくねしおり!!

しおり:こちらこそ!


≪終演≫

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