誰? あなた……。

⋄◇冒険者ギルド本部、会議室◇⋄


 帝都プラムドにある冒険者ギルドの本部の会議室では、お偉いさん方による緊急会議が開かれていた。


 長方形に並んだ机を囲んで20人くらいの人が座っている。


 そこに1人の秘書らしき女性が現れ、ドアの前に立つと頭を下げる。

「皆さま、お集まりいただきありがとうございます。私は今回、司会を務めさせていただきますニウム・デルフィといいます」


 続けて、

「今回の議題は、プラムドで前触れもなく出現した突然変異したホーンラビットと、それを冒険者になりたての2人組が倒したことについてです」

 と、説明するとザワザワと室内が騒がしくなる。


「ニウムくん! そ、それは本当かね!?」

 長方形に並んだ机の角に座っている太った男が目を丸くして言う。


「はい。片方は着ている服装からして元傭兵か何かでしょうが、もう片方は天然なだけの一般人のように見えた、とプラムド支部の受付嬢が言っていました」

その言葉によってさらに室内が騒がしくなる。


「ばかな!」

「初心者が突然変異種を倒すなど!!」


 さらに、ニウムが今までの情報に付け加える。

「そして、その突然変異種との戦場と思われる場所が森の中だったのですが、まるで、大魔法でも使ったように周りの木が穴だらけになっていました。しかし、魔力の痕跡は一切検知されませんでした」


「初心者が大魔法!?」

「不正だ! 不正に決まっている!」


 全員が好き勝手に発言する中、冷静にみんなに語りかける声が響いた。

「まぁまぁ。みなさん一旦落ち着きましょうよ」


 その発言に1人の男が口を開く。

「では、ギルドマスターには何かそれを確かめる手段はあるのですか?」


 ギルドマスターと呼ばれた男はそれに対して意見を言う。

「う〜ん、そうだねぇ……。じゃあこうしよう! 情報屋を雇って様子を見よう! 不正かどうかの判断はそれからでも遅くない。もちろん経費は僕持ちでね」


⋄◇一日後◇⋄


「と言うわけで……」

 真夜中、いつもの宿の私たちの部屋に来ていた縄に巻かれたショートヘアーの若い女性が言う。


「つまり、あなたは私たちが不正をしたのかを確かめるためギルドマスターに雇われた情報屋ってこと?」

 まぁ、初心者が突然変異種を倒したら不思議がるのも当然か。


「は、はいぃ……」

 おいおい泣いちゃったよ……。


「あのねぇ、いくらなんでも情報屋が玄関から『こんばんわー!』なんて言いながら入ってきたらバレるでしょ!」

 そう。コイツは数分前に玄関から元気に入ってきのだ。


「まぁ、不正なんてしてないけど」

 それ用の言い訳も用意してあるし。


「えー。でもー、立場的にその言葉を信じて帰るわけにもいかないんでー」

「まぁ、それもそうね」

「これから一緒に行動してもいいですか?」

 おいおい。情報屋がすごい度胸してるな。


「いいけど、邪魔はしないでよね? 念のため縄は解かないから」

「えーそんなぁー」


 真夜中に女性の叫び声が響く中、カトレアはこう思っていた。

『またクセの強いやつが来た!』と。

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