第2話「忙しなく過ぎ去る日々…」⑦

※場所は佐賀県武雄市朝日町たけおしあさひちょうエスカンパニー前。第2話「忙しなく過ぎ去る日々…」⑥の翌々日9月25日。時間は14時30分頃(※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーションです。★は出来ればお願い項目。傍点は佐賀弁。


ゆう:「はい。はい。分かりました。宜しくお願いします。(※しばらく間をあける)勿論、います。一応、会社なので誰かは居ると思います。」


志織しおり:「しゃ、社長…。どこからのお電話だったんですか?」


ゆう:「レッカー屋さんよ!今から来るんだって!遂にこの廃車置き場と化しているエスカンパニーの駐車場が…。この中が泥水まみれの車達を毎日毎日、見ていると何だか悲しくて…。」


志織しおり:「そうですね…。社長は晴れの日になる度に、この並んだ車のドアを開けて乾燥させていらっしゃいましたし…。(※しばらく間をあける)それでどうなんですか?修理とかは出来そうなんですか?」


ゆう:「そ、そうね…。もう、諦めた方が良いとは思うけど…。(※寂しそうに)まず、このハイブリッド車は絶対無理ね…。」


志織しおり:「ハイブリッド車に問題があるんですか?」


ゆう:「ハイブリッド車は現代工学の結晶なのよ!確かにコンピュータで制御されて安全装置もついてるし、燃費もとてもいいわ!でも、あらゆるところに配置されたセンサーや、エンジンを補助するモータ…。それを動かしているのがリチウム電池…。それこそ、"志織しおり"ちゃんの方がADKえーでぃーけー(天乃電装あまのでんそう工業こうぎょう)だから、"自動車電装じどうしゃでんそう"には詳しいと思ったんだけど…。」


志織しおり:「いえいえ…。私は全然、機械には詳しくないですよ。実家の家業の事も車に付ける何かを扱う会社位で…。危ないからって余り近寄らせてはもらえませんでしたし…。」


ゆう:「そうなのね…。兎に角、ハイブリット車やEV車(または電気自動車)にとって、水は最大の弱点なの…。例えるなら、防水されていないスマホと同じよ。1度水に入れてしまうと全てダメになる…。特にリチウム電池は発火して爆発する可能性もあるらしいから…」


志織しおり:「ああ…、それなら何となく分かります。基盤がショートするとかそんな言い方ですよね?」


ゆう:「(※ハハハハと苦笑い)まあ、そんな感じ…。あとは、このハイブリッドでもなんでもない軽の営業車の方は動いてくれればいいけど…。(※しばらく間を空ける)修理に出したとしても、年式も古いし…買い換えた方が良いっていわれそう…。」


志織しおり:「そうですね…。私的にはかなり愛着がある1台だったんですけど…。」


<1台の赤いレッカー車が切り返しした後、バックしながらエスカンパニーの敷地内にはいってくる>


叶恵かなえ:「社長、車がきましたよ!」


ゆう:「叶恵かなえ、ありがとう!(※しばらく間を空ける)えええっと…。どれから出してもらった方がいいかな…。(※しばらく間を空ける)ちょっと、レッカー屋さんに尋ねてくるから…。志織しおりちゃんも叶恵かなえも、運んでもらう車の周りに貴重品とかあるなら、片づけておいて!」


志織しおり:「わ、わかりました!叶恵かなえさんもお願い。」


叶恵かなえ:「分かりました。志織しおりさん!」


<志織と叶恵かなえの2人が、無造作に置かれた、レッカーされる車の周りにある災害ゴミを、建物の隅に集め始める…。ゆうはレッカー車から下りてきた男性のところへ歩き出す。>


レッカーサービスの男性:「緒妻おつまさんのお宅、あと、エスカンパニーさんで宜しいでしょうか?」


ゆう:「はい。会社の事務所兼自宅なので間違いないです。」


レッカーサービスの男性:「車は3台ですね。軽自動車2台が自家用と営業用…。あとの1台は普通車の営業用ですね。」


ゆう:「"自家用"と"会社"で自動車の保険会社が違うので、てっきり違う方が来るかと思ってました。」


レッカーサービスの男性:「いえいえ、どこの保険屋さんも今回の"豪雨災害"で、レッカーサービスする会社を躍起になってさがしている位ですから…弊社も同じです。複数の保険会社さんが依頼されています。偶然、お客さんの自家用でかけている自動車保険と、会社でかけている自動車保険のレッカーサービスの委託先が弊社だったって事です。(※ハハハハと苦笑い)」


ゆう:「それじゃあ、どうしたら良いですか?」


レッカーサービスの男性:「今回は車によってもレッカーする場所が違うとお聞きしましたが…。軽自動車の方は田島自動車たじまじどうしゃ整備工場さん、ハイブリッド車の方はディーラーさんですね!確かに…ハイブリッド車ですから…どうなるか分かりませんしね…。最近、突然、発火して爆発した車もあったそうですし…。」


ゆう:「そ、そういえば、ニュースになってましたね…。やっぱり電池が膨張してですか?」


レッカーサービスの男性:「私も詳しくは分かりません。ただ、ハイブリッド車の方は普通乗用車でもありますし慎重にお運びします。レッカーの順番は道に近い方から運びましょうか…。最初はシルバーの軽自動車から…。」


ゆう:「はい。宜しくお願いします。」


<赤いレッカー車がシルバー色の営業軽自動車にバックで近づいてくる…。一旦停止し、レッカー車よりクレーン部分を操作する男性>


レッカーサービスの男性:「ちょっと危ないですから離れておいてください!」


志織しおり:「わ、分かりました!叶恵かなえちゃんも向こうに行こうか?」


叶恵かなえ:「はい。志織しおりさん、分かりました。社長も一緒に…。」


ゆう:「そうね!業者の方にお任せしましょう…。」


<手際良くレッカー車に繋がれるシルバー色の営業軽自動車。ちょうど、小学校から下校して帰ってきた"いつき"と"まさる">


いつき:「ただいま~。」


まさる:「お母さん、ただいま~。志織しおりさんも叶恵かなえお姉ちゃんも!」


ゆう:「"いつき"と"まさる"、おかえりなさい。ちょうど今、水害にあった車を自動車屋さんへ運んでもらってるから、ちょっと危ないから…。私達とここでみてて!」


いつき:「うん、わかった!」


まさる:「"いつき"、車が引っ張られている凄いね~♪」


<何度か外れないように調整するレッカーサービスの男性…>


レッカーサービスの男性:「お客さん、とりあえず、まずはこの車から持って行きますね!持っていったら、また戻ってきます!」


ゆう:「宜しくお願いします。」


<シルバー色の営業軽自動車がレッカー車に引っ張られて運ばれていく…>


いつき:「じゃあね~♪車さん、ありがとう!」


まさる:「ばいばい!車さ~ん♪」


ゆう:「(※悲しそうな声で)子供は本当に無邪気ね…。今まで本当にお世話になってきた営業車が去っていく…。何だか寂しいわね…。」


志織しおり:「社長…。」


ゆう:「さあ、悲しんでいても仕方ない。今日はあと2回、レッカーが来られるから…。兎に角、危ないし邪魔になるから"いつき"と"まさる"は家の中にいること!志織しおりちゃんも叶恵かなえも今日のゴミ捨て作業は終わり…。15時だし、しばらく休憩しましょうか!」

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