第2話「忙しなく過ぎ去る日々…」①

※場所は佐賀県武雄市朝日町たけおしあさひちょうエスカンパニー事務所内。第1話⑩のあと。9月最初の週あたり。被災より1週間程度経過。時間は13時頃(※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーションです。★は出来ればお願い項目。傍点は佐賀弁。


エスカンパニーに前に駐車するADKエーディーケーの軽バン。ドアが開き、志織しおりが車から降りる>


志織しおり:「社長、只今、帰りました。」


エスカンパニー外で災害ゴミのまとめているゆう。作業を一旦止め。自分の傍らに近づいた志織しおりに身体を向ける>


ゆう:「ありがとう志織しおりちゃん。蒼羽あおばくんはどうだった?あと、お昼ごはんどうする?」


志織しおり:「社長、蒼羽あおば専務はバイトの子たちが、お客様よりも多い位だから、社長には心配ないって伝えてと伝言を受けました。あと、お昼ごはんは専務が作った…から揚げがマシマシで盛ってある”から揚げブラックカレー店長スペシャル!”なるものをご馳走になりました。美味しかったんですが…量がさすがに多くて…」


ゆう:「”店長スペシャル”って、いかにも蒼羽あおばくんがつけそうなメニューの名前ね(※ふふふと優しく笑う)…。志織しおりちゃんはお昼ごはんは食べたみたいだし、今日は炊き出しの何かが公民館あたりに来てないかな…。」


志織しおり:「社長の最近の楽しみですもんね。炊き出し。」


ゆう:「人の善意は遠慮なく受け取らないと。(※しばらく間をあける)いつかは返さないといけないけどね…。今は、その善意を受ける時なの。」


志織しおり:「あの日からずっと避難所になっている小学校の体育館に行けば、何かはいただけるかとおもうんですが…。自衛隊の人たちも体育館前に仮設のお風呂まで作ってくれて、ずっと支援作業されてますよ…」


ゆう:「そうね…。自衛隊の方達には本当に感謝の気持ちしかないわ。24時間ずっと交代で避難所で避難している人達の支援をしてるし…。あ、あとそう…今は心のケアまで体育館の裏に仮設テントを張って行ってるそうよ。心のカウンセラーのお医者さん達が来て、被災で受けた被災者のみんなの心の傷のケアをしてるのよ…」


志織しおり:「ウチは酷いと思ってたけど、それ以上の体験をした人や、住む場所もお風呂も、どうにもできない人が沢山いるのよ…。」


ゆう:「あ、それと社長的には残念かも知れませんが、専務より差し入れです(※ハハハと小さく苦笑)」


志織しおり、タッパーに入ったご飯と発泡スチロール製のカレーが入った容器を優に手渡す。>


ゆう:「ま、まさか…これが蒼羽あおばくんの"店長スペシャル"?」


志織しおり:「違います。普通の"前線カレー"ですよ。専務、社長はどうせ、炊き出しを当てにして何も食わずにいるだろうから…と。」


ゆう:「おー!蒼羽あおばくんは良く私の動きを察してるわね。今日は炊き出しのキッチンカーも近くの自治公民館や隣の神社までは来てないみたいだし…ありがたくいただきましょうかね」


志織しおり:「お店の中で"前線カレー"は人気があるみたいですよ。あの、バイトの子…沙希さきちゃんだったかな…。その沙希さきちゃんにカレー持たせて写真を撮って、お店のPOPにしてから、急に売れ始めたみたいです。」


ゆう:「(※ゆっくり味わいながら…)そうなのよ。"前線カレー"の味は文句の言いようはないし、しかも価格もワンコインにしてるし…。そして、可愛い女の子の写真を使った相乗効果!人気はでるとは思ってたわよ!ただ…」


志織しおり:「ただ…。社長何ですか?」


ゆう:「相変わらず暇ではあるのよね?鹿島かしまのお店の方は…(※ハハハと苦笑する)」


志織しおり:「徐々に同じ方ばかりですが、常連さんは増えてるみたいです。バイトの子の祈里いのりちゃんが、商店街の皆を元気にしたい。この商店街を盛り上げたいと言い出して、アイドル活動もはじめたみたいで、ウチの理名りなも振り付け指導者としてお手伝いをしてるみたいです。「おとぎ前線」というグループ名だそうですよ。"前線"って何?って感じでしたが、観光地にしては珍しい傾向ですよね。観光地のお店って大体、1度観光に行ったら、それで終わりじゃないですか?頑張ってるみたいですよ!」


ゆう:「まあね…。アイドルか…。(※ぷぷぷっと思い出し笑い)グループ名は「おとぎ前線」。(※ひそひそ声で)そのままじゃん。」


志織しおり:「社長、私に何か?」


ゆう:「ゴメンゴメン。私の独り言だから気にしないで。お店の事は、そこまでは私も考えてなかったけど、結果的には良い方向に進んでいるみたいで良かった。コスプレ喫茶兼お土産屋さんというコンセプトで考えて、オープン前にバイト募集かけても、ま~ったくぜ~んぜん誰もこなかったけど…。ちょっと強引だったけど結果、オープン前に沢山、バイトの子が入ったしね。しかも狙い通りの(※してやったり風にふふふ…と笑う)。持つべきものは"古い友"っていうしね。"友達"に感謝!(※フ~と一息)そして、ご馳走さまでした。蒼羽あおばくんにも感謝!」

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