第1話「令和元年の涙雨」⑨

※場所は佐賀県武雄市朝日町たけおしあさひちょう。職員寮になっているアサヒメゾンにて。⑧の続き17時頃(※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーションです。★は出来ればお願い項目。傍点は佐賀弁。




<改修工事中のアサヒメゾンにADKエーディーケーの軽バンで到着する志織しおり理名りな




おばちゃん:「志織しおりちゃ~ん。久しぶりね~。」




志織しおり:「こんにちは。本当ですね。あれから工事が入って…なかなか来れなかったから…。


おばさんはですか?」




おばちゃん:「2階は運よく水がね。ウチの部屋は被害は。普段と変わらんよ」




志織しおり:「救助されたところが本当に"最大水位"だったんですね。」




おばちゃん:「うん、助かった!でも、1階に住んでるみんなは…。(※しばらく間を空け、その後、理名りなに気づいた様子で)あら、妹ちゃん、久しぶりね」




理名りな:「おばさん、お久しぶりです。姉がお世話になってま~す」




志織しおり:「1階のみなさんは、どうされてるんですか?」




おばちゃん:「う~ん。(※しばらく間をあけトーンが下がる)志織しおりちゃんは今、佐賀から通って?」




志織しおり:「とりあえず、実家から…。今は実家の営業車を借りて、会社に通ってます。」




ADKエーディーケーの営業車を指さして>




おばちゃん:「1階にある志織しおりちゃん以外の4世帯はみんな出ていくって。それぞれの親戚や、志織しおりちゃんみたいに実家に戻った人。"市営住宅"に市役所が特別に入れてくれてる人…。みんなだね…」




志織しおり:「わ、わたしはここに帰ってきますよ!会社が借りてる寮だし、会社にも近いですから…(※しばらく間をあけトーンが下がる)でも…他の1階の皆さんは出られるんですね…」




おばちゃん:「さすがに今回の水害は”平成2年以来の30年”に1度の大災害って言われてるから…。(※しばらく間をあける)ただ、もうないとは言えないからね…。みんな、どこかトラウマになってるんだと思うよ…2階のウチらは結果、助かったけど、ウチの2人の子供たちは、余り良い思い出ではないみたい。」




志織しおり:「そ、そうですよね…(※暗い声色で)私も、もうあんな思いをするのは嫌です。」




理名りな:「おー!お姉ちゃん。お姉ちゃんの部屋、奇麗になってるよ!壁も中身も!」




おばちゃん:「あと1か月位は1階の工事は続くみたいだけど…。ここの大家おおやさんは志織しおりちゃんのところの社長さんの親戚らしいから…。最初に志織しおりちゃんの部屋から改修してるみたいで、あと2,3日もすれば住めるんじゃないかね。」




志織しおり:「(※少し驚きの声で)そ、そうなんですか?」




おばちゃん:「緒妻おつまさんらしい心遣いってやつかね(※ハハハと笑う)。まあ、どちらにせよ、志織しおりちゃん以外はみんな、引っ越すんだし…。改修して、入居者募集しても被災物件ひさいぶっけんだから、来るかは分かんないしね。」




志織しおり:「ちょっと見てきます。」




<改修工事が続く部屋へ向かう志織しおり




志織しおり:「ご、ごめんくださ~い。って変な感じだけど…。(※驚いた声で)わーあ、本当に奇麗になってる。壁も床もお風呂も全部!新築みたい!」




<壁を打ち付ける作業をする若い女性。作業を一旦止める>




涼子りょうこ:「こんにちは。ここの部屋の人?」




志織しおり:「そうです。こんな奇麗になるなんて…」




涼子りょうこ:「これが大工の仕事だからね!それにあなた、緒妻おつまさんところの会社の人だろう?」




志織しおり:「はい。うちの社長をご存じんなんですか?」




涼子りょうこ:「そりゃ~あね。最近、塚原設備つかはらせつび塚原つかはら社長から紹介してもらったんだよ!面白いね~あの社長」




志織しおり:「(※少々困った声で)えっ…まあ…」




涼子りょうこ:「この部屋の改修は超特急でやってるから。でも、手抜きはしてないよ!ウチは技術と信頼性だけは、大手にも負けないからね!」




志織しおり:「あの…」




涼子りょうこ:「涼子りょうこ村下 涼子むらした りょうこ。」




志織しおり:「えっ!」




涼子りょうこ:「私の名前を聞きたかったんじゃあ?」




志織しおり:「い、いえ…私は、天乃 志織あまの しおりと言います。エスカンパニーの社員です。」




涼子りょうこ:「よろしく…。私と余り年は変わらないみたいだし、タメ語でいい?」




志織しおり:「いいですよ。でも、私はいつもこんな喋り方ですから…気にしないでください。」




涼子りょうこ:「OK!OK!改修部分を見ていって!私の自慢の技でもみてちょうだい。」




志織しおり:「あ、ありがとうございます。涼子りょうこさん…」




涼子りょうこ:「あ、それも涼子りょうこで良いから。私も志織しおりって呼ばせてもらうよ。多分、"長い付き合い"になると思うし…(※へへへと軽く笑う)」




志織しおり:「な、長い付き合いですか?」




涼子りょうこ:「聞いてないんだ。まあ、いいっか。ちょくちょく、エスカンパニーに来るってことで、(※キザっぽく)宜しく!」




志織しおり:「は、はあ…」




<改修された部分の部屋の中を色々眺める志織しおり理名りな




理名りな:「それにしても…本当、あの汚部屋おべやが(※冗談でハハハと笑う)。」




志織しおり:「(※やや怒声気味に)私の部屋がいつも汚いって聞こえるからやめて!」




理名りな:「(※反省してトーンを落としながら)お姉ちゃん、ごめんごめん。」

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