第1話「令和元年の涙雨」①

※場所は佐賀県武雄市朝日町たけおしあさひちょうエスカンパニー職員寮にて。時間は朝5時頃。(※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーション、傍点は佐賀弁。




<滝の近くにいて滝が流れるよう音、ドドドドドドドドド…が静かめに聞こえている。鳴り続けるスマートフォンのデフォルト着信音>




志織しおり:「(※寝起き声で)も、もしもし…」




ゆう:「志織しおりちゃん、?」




志織しおり:「(※飛び起きて驚いた声で)しゃ、社長!私、遅刻ですか?」




ゆう:「違うわよ。まだ、朝の5時。というか…そこ?」




志織しおり:「大丈夫ってなんですか?」




ゆう:「外見てみて」




<ザーッとカーテンを引く音>




志織しおり:「(※非常に驚いた声で)な、な、なんすかこれは」




ゆう:「見ての通りよ。雨、凄い大雨。もう会社の前が川になって、私、逃げられないのよ。志織しおりちゃんのところは、逃げられそう?」




志織しおり:「に、逃げるって…(※しばらく間を置く)わわわわ…玄関のドアの隙間から水が入ってきてる…。」




ゆう:「テレビつけてみて…。」




アナウンサーの声:「今後の気象事態について気象予報士の関せきさんに解説ていただきます。こちらをご覧ください。北部九州、特に佐賀県を中心に観測史上例をみない…」




<パシッというテレビが消える音>




ゆう:「志織しおりちゃん、今、かなり!会社は平屋だからもう足の所まで浸水してる。消防に、電話かけたけど消防も混乱してるみたい…」




志織しおり:「(※焦り声で)社長、私、したら…」




ゆう:「兎に角、逃げる準備をして。大切なものはリュックに入れて、まずは2階の人の所に避難するのよ。北方町きたがたちょうでは2階まで水がきてるところもあるみたいだから、危なくなる前に、すぐに消防に連絡。じゃあ、もう切るからごめんね。」




志織しおり:「社長は?お子さんたちやご主人は?です…か」




<突如、プープープーという電話がきれた音>




志織しおりの心の声):「兎に角、お金は必要。通帳も、印鑑も、あとは服、下着、う~ん」




<バサバサと物をリュックに入れる音がしばらく続く…。>




志織しおり:「み、水がきてる!」




<ガタガタと避難準備をする音、そして、ドアの鍵の音がカチリとなる。>




志織しおり:「う、うそ!ドアが…お、重い…。(※力を込めたうなり声)ウーンショ、ウーーーン」




<ドアがゆっくりと開く音>




志織しおり:「ちょっと、これマジ!」




<水の中を歩く音が続き、長くつに水がいりこんでパシャパシャ音をたてながら、階段を上る音」




2階に住むおばちゃん(以下、おばちゃん):「し、志織しおりちゃん、だ、?早く家に、…」




志織しおり:「す、すいません。ですか?」




<ドアがバタンとしまる音。滝が流れるようなドドドドドドドドド…という音が次第に大きくなっていく>

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