第19話 お帰りなさい

 ◇◇◇◇◇◇


 ミレッタの一撃により始まりの災厄ディノケンタウルフが撃破された瞬間、頭に声が響いた。




 ──ワールドクエスト終了

 勝利条件を達成しました。

 貢献度上位者は以下の通りです。

 1位:フィン

 2位:ミレッタ

 3位:マリエラ

 4位: ──以下該当者なし


 ワールドクエストにて貢献度1位を獲得しました。


 以下から報酬を選択して下さい

 ●ユニークスキル⦅全身全霊⦆の獲得

 ●スキル⦅怪力⦆の獲得

 ●スキル⦅強靭⦆の獲得

 ●スキル⦅駿脚⦆の獲得

 ●スキル⦅軽技⦆の獲得

 ●スキル⦅隠身⦆の獲得

 ●スキル⦅自動HP回復:小⦆⦅自動MP回復:小⦆の獲得

 ●スキル⦅体力増大:小⦆⦅魔力増大:小⦆の獲得

 ●耐性⦅痛覚5⦆⦅熱5⦆⦅冷気5⦆の獲得

 ●耐性⦅痛覚5⦆の獲得

 既に獲得済みのスキル・耐性は関連既存スキルと統合されます。


 ⦅全身全霊⦆…次の一撃だけ自身の攻撃力を倍化する


 ⦅怪力⦆⦅強靭⦆⦅駿脚⦆⦅軽技⦆⦅隠身⦆…攻撃、防御、敏捷、技力、隠密を一時的に1.5倍にする


 ─────




 フィンの目の前に、メッセージウィンドウが表示される。


 フィンの貢献度は、ミレッタを抑えて1位であった。フィンはそのことに少し考えを巡らせるも、今はまずスキルを選ぶことにした。


 並んだスキルはどれも有用なものばかりであるが、中でも⦅全身全霊⦆、⦅自動HP回復:小⦆、⦅自動MP回復:小⦆の3つはかなり良いスキルであるように思えた。




 ──だが、フィンは迷わず⦅駿⦆を選択する。



 ◇◇◇


 スキル⦅駿脚⦆が選択されました。

 本当によろしいですか?


 ◇◇◇



「──それで頼む。」



 ◇◇◇


 スキル⦅駿脚⦆を獲得しました。

 同種スキルの競合を確認したため統合します。

 ユニークスキル⦅韋駄天⦆を習得しました。


 お疲れ様でした。ではまた、でお会いしましょう──。


 ◇◇◇◇◇◇



 その言葉を最後に、声は聞こえなくなった。



(とりあえず、ここまでは予定通り、いや、だ。まさかこんなに早く⦅韋駄天⦆が手に入るとは思わなかった……あとは──)




「おめでとうフィン。そしてお疲れ様、流石は⦅パートナー⦆だわ……」



  ミレッタがフィンに声をかけながら近づいて来る。



 まだ彼女の⦅覚醒状態⦆は解けていない──




「ああ、だが災厄を倒せたのは間違いなくお前のお陰だ。ありがとうミレッタ」



「うふふ。いいのよ……ところで私──⦅ご褒美⦆が欲しいって、言ったわよね?私が欲しいものは、情報よ。

 だから、教えてくれないかしら──あの時なぜ、私の前から消えてしまったの?随分探したのよ?」



 ──やばい


「消えた……何のことだ?あれは、たまたま⦅したに過ぎない。俺も随分探したぞ?」



「あらあら……⦅転移⦆が失敗するだなんて……。


 うふふ、転移について一番詳しい私に対して、あくまでそんな嘘をつくのね。じゃあ、質問を変えるわ。」




 ──やはり、こいつは……




「……貴方は誰?どうしてフィンの姿を、フィンのをしているの?私のフィンは、何処にいるの?」


 そう言って、ミレッタはフィンの瞳を深く覗き込む




「……何を言っているか全くわからないが……」



「ふぅん、そう……」




 ──気がついている。




に用は無いわ。そして、このメッセージをに伝えて──」



「愛しのフィン、必ずまた会いましょう。」




 ミレッタがその手をフィンに翳したところで、フィンの意識は完全に途切れた。






 ◇◇◇◇◇◇






 床も壁も天井もない白い空間で、俺は目覚める。ここは──



「くそッ、やっぱ詰んでたか…」


  どうやらフィンはあの魔女ミレッタに消されたらしい。せめて痛みなく一瞬のうちに消滅させてくれたことが、救いといえば救いであった。



『おかえり〜。割と、頑張ったんじゃない?速攻で帰ってくると思ってたからお茶用意してたのに、もう。冷めちゃったじゃん』



 ルシフェルがそんな風に声をかけながらフィンに近づいてくる。



「──ルシフェルっ!あんなの聞いてな……いって、ルシフェル!?」




 フィンは振り返って仰天する




『──ん?』




 彼は、三対六枚の翼を持つ姿──いわゆる使の姿でフィンの目の前に現れたのだった。




「ん、じゃねぇ!びっくりさせんなよ!」




『……ああ。これ?


 おっと忘れてたよ、あんまり遅いから、ちょっと世界へ出かけてたんだった。』




「それが、本当の姿?」




『ううん。違うよ?あれ、違わないのかな?ん〜どうだろう?』




「いや、俺に聞かれても……」




『僕はね、⦅必要な時⦆に、⦅必要な姿⦆になれるのさ。』




「じゃあ今、俺にそれを見せたのも……必要だと感じたから──ってことか?」




『ふーん。どうしてそう思うのかな?』




「いや、ルシフェルがそう言ったからだけど?」




『──ぷ、あはははは!フィン!君は本当に面白いねぇ!』



 その後もしばらくルシフェルは笑い転げている。どうやらフィンの返事がよほどツボにハマったらしい。二度目の⦅死⦆を迎えて帰ってきたフィンを前に、自然体そのものである。



 もう少し遠慮ってものを──いや、それは俺も同じこと。平然と自分の⦅死⦆を受け入れられているのだから。




「そりゃまぁ、葬式みたいな顔されてても困るわな。」



 フィンはボソリとそうつぶやく



「──え!?いまなんて?葬式だって!?」



 それは気が付かなくてごめん、ご愁傷様──なんて言いながら、ルシフェルの大笑いはまだまだ終わらないのであった。


 神様の笑いのツボってのは、全く理解ができないな。と、フィンは一人思うのであった。



 ◇◇◇◇◇◇

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