ブランドニューオブアメリカ

リュウタロウ

第1話











         ブランドニューオブアメリカ

















 あらすじ

ブランドニューオブアメリカは、ごく普通のテーマパークである。開園当時から、多くの来場者を獲得してきたが、他の新しい形のテーマパークに越され、集客が見込めず売り上げが落ちていた。運営会社であるジョイイマジネーションはこの状況の脱却を図ろうとするが、開園設立に関わった幹部たちの「伝統」や「継承」を崩してはいけないという所から、すぐに新たな形でテーマパークは変わらなかった。そんな中、たまたまアルバイトの募集を見ていた主人公の高校一年の向山夢遊(むあ)は、カフェ・レストラン・本屋などアルバイトの面接に落ち続けていた。最後の望みとして、ブランドニューオブアメリカの面接を受けることにした。元々接客や人を楽しませるのが好きな彼女にとって、これは本当に行きたいと思っていた。しかし、夢遊はブランドニューオブアメリカの現状をまだよく知らなかった。晴れて合格した彼女は、アルバイト先がテーマパークであるというのが嬉しくて仕方なかった。ブランドニューアメリカのキャストとしての身だしなみやキャストとしてあるべきサービスやミッションなどを勉強して、マニュアルなどが叩き込まれ、やっとの思いで現場に立つことができた。先輩キャストのトレーナーの基に座学で学んだことを活かすようにした。彼女がゲストをアトラクションへ誘導をしている中、ゲストから「つまらない」「なんかもう少し面白みがほしい」という会話を耳にした。夢遊はそのことを知り、心の中にとどめておいた。キャストの、他の仲間たちもとても楽しく個性もあった。佐山正樹は、同じスタッフでゲームやアニメ、映画が好きで常に好きなことをそれに投じている。上司であるテーマパーク社員スーパーバイザー若木創太は、帰国子女で語学が得意であり、ゲストへのサービスなどもとても良い。もう一人のテーマパーク社員スーパーバイザーである神谷大介もさまざまなことを勉強しながらテーマパーク社員としてのプライドなどを持っていた。彼女と同い年の先輩である高野冴姫は接客コンテストで毎年優勝するという実力の持ち主でもあった。夢遊が心にとめて置いたものを彼らたちはどう思っているのか?というのがちょっと気になっていた。ただのキャストではあるが、できるものなら、ゲストのそういう話をなくすために何かできないか?ということを考えた。こんな大きなテーマパークを変えるのはなかなか難しいことかもしれないとも感じていたが、ゲストのために何かしていきたい想いで日々の仕事で考えることにした。キャストの人数もかなりいる中、協力を仰ぐことも良いかもしれないとも感じた。自分たちができることで少しでも変われば楽しいテーマパークになるとも感じた。いつものように働いていた彼女は、ブランドニューオブアメリカの来場者数が減少傾向にあることを携帯の記事で知ることになり、キャストの解雇の可能性も視野に入れているというブランドニューオブアメリカの現状を目の当たりにしていた。これをきっかけに彼女は目の前のお客様のことを考えると同時に、この大きなテーマパークを変えていくためにテーマパークスタッフとしてできることを行動に起こすことにした。ブランドニューオブアメリカを変えるために、向山夢遊は動き出すことにした。



ブランドニューオブアメリカは、毎年大人気で来場者数は、日本一であった。

しかし、その翌年、ブランドニューオブアメリカは開園した2001年度はかなり好調だったものの翌年の2005年度は集客が見込めなかった。なんとかして、運営会社であるジョイイマジネーションは脱却を図ろうと、新たな取り組みを考えて実行しようとするが、なかなか収益にはつなげられなかった。

 

10年前

「このままだとうちは、他のテーマパークに追い越され経営破綻になりますよ?」

 ブランドニューオブアメリカの幹部がかなり焦燥している様子であった。

「前年度の入場者数はかなり好調でしたが、今年度はかなり下がりましたよ」

「やはり新たな取り組みをしていくことを」

「何を言ってるんだ 君は、このテーマパークの根底をくずしたら設立当初の伝統が」

「伝統は大事ですよね」

「当たり前だ」

「とりあえず今いるスタッフに頑張ってもらうことで、サービスを売るしかないだろ」


 経営企画部の幹部と社員たちが今後のテーマパーク経営について話していた。今後の方針については、もちろんすぐに決まることはなく、延々としばらく行われていた。


 



「はあ、なかなかアルバイト決まらん、早く決まらないとお金が」

 北鎌倉高校一年の向山夢遊は、この一週間学校が終わったらすぐにアルバイトの面接を受ける日々が続いていた。

「本屋、カフェ、レストランと全部落ち続けている私は向いてない?とか」

 夢遊は、アルバイトの面接にここの所、全部落ちているので、自分にそう問いかけていた。

「よし、今日も放課後また行くか」


「あれ夢遊?何してるの?」

 彼女に話しかけてきたのは友人である佐竹華美だ、いつも笑顔で優し多くの生徒が癒されている。

「あっうん、まあアルバイトの面接を今日の放課後も受けようと思ってて」

「なるほどね、アルバイトいいな、今は特進クラスの勉強についていかないといけないしな」

 華美は、特進クラスなので、今は勉強についていくので精一杯でもあった。


「そうなんだね、特進クラスだとアルバイトする時間ないよね」

「だね、ああいいな 普通進学クラスで」

「私の方が羨ましいよ、特進だと華美もいるしクラス同じだしさ、内申点があと5点足りてれば今頃」

 夢遊は中学時代の内申をちょっと気にしていた。

「まあ、今はもう仕方ないじゃん とりあえずさ 私も放課後アルバイト探してあげるよ

 もちろん今日も面接があると思うから、練習も付き合うよ」

 華美はそんな中学時代の内申なんてどうでもいいよという感じで夢遊に言った、華美はアルバイトをするために頑張っている夢遊のために協力することなども提案した。

「えっ華美いいの?ありがとう」

「いいってことよ、職員室に志望校の過去問の宿題だけ提出するから、職員室だけ寄らして」

「ありがとう分かったよ」



 そして放課後になり、夢遊と華美は学校を出た。

 

「面接は何時から?」

「17時からだね、とりあえずカフェかどこか店に入ろうか?」

「そうしよう、どこのカフェにする?」

「なるべく駅近がいいな、実は今日の面接場所はアパレル系で駅ビルの中だからさ」

「あっそうなんだね、じゃあそこにしよう」


2人は話しながら歩いて行った。


「そういえばさ、華美は勉強で忙しいと思うけどアルバイトとかしたいとかあまり思わない?」

 夢遊が華美に短刀直入に聞いた。

「まあしたいけど、特進クラスの勉強が忙しいからね、課題の量も多いしさ、自然と勉強しないといけなくなるから本当にそこが問題だね 私だってアルバイトしたいなと思うのよ」

 華美は夢遊に自分の中で感じている心境を伝えた。


「そっか、特進クラスだと聞いてる限り本当厳しそうだよね、あっカフェはここでいいかな?カフェブラウン」

 夢遊は華美に確認してみた。

「うん、いいよ、ここってさ雰囲気いい感じだよね、夢遊は良く行くの?」

「まあ行くかな、ここでよく勉強したりするからさ」

「そうなのか、じゃあ今度一緒にやろうよ」

「いいよ」

 華美は今度夢遊と勉強する約束をした。


2人は席を取り、商品を注文しに行った。


「よし、じゃあ席取ったから商品注文しに行こうか、夢遊は何よく飲むの?」

「私は、アイスコーヒーとかカフェラテかな」

「そうなんだ、私はコーヒーとか飲めないからなカフェモカとかにしようかな」

「カフェモカおいしいよ」


「お次のお客様お待たせしました、いらっしゃいませこんにちはご注文をどうぞ」

 店員に呼ばれ2人は注文をした。

「一緒に注文をしちゃおうか」

「いいよ」

夢遊は華美にそう促した。

「アイスカフェラテ1つとアイスモカ1つお願いします」


「かしこまりました、アイスカフェラテとアイスモカ1つですね、お会計が570円です

当店のポイントカードはお持ちですか?」

「はい、持ってます」

 夢遊は自分のカードを差し出した。


そして2人は席についた、華美は夢遊のためにアドバイスをしてあげた。

「アルバイトの面接緊張するよ」

「大丈夫だよ、夢遊のいつも笑っている笑顔と根気強さがあれば平気だよ」

「そうかな?」

「まあとりあえず自分を信じていくことだよ」

「華美ありがとう」

「いえいえ、挑戦することだけでもすごいよ、私も頑張らないといけないと思うしさ」

「華美はそういうの一番よく分かってそうだから大丈夫だと思うよ」

「私も案外抜けてるところとかあるからさ、思うほど完璧な人間ではないよ」

「そうなんだね、学校のみんなは完璧とか思ってたりする人いるだろうけども」

2人はお互いのことをいろいろ話していた。

「それはあるよね さてアパレル系の面接だとどんなこと聞かれるんだろうね?」

 夢遊は華美にあえて質問して聞いてみた。

「志望動機とかは必ず聞かれるとは思う、あとはどうして他のアパレルなのにうちなのか?みたいなね」

「あっなるほどね、たしかにそういうの聞かれそう」

「そうそう、でしょ 意外と聞かれそうだから来た時に答えられるようにしておいたほうがいいかもね」

華美は質問されそうな質問を夢遊に伝えてあげた。

「緊張するよ、これ試験前みたいな感覚」

 夢遊は、試験のように緊張していた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ、勇気持っていこう」

「分かったよ、ありがとう よしじゃあ 行ってくるね 華美ありがとう まだ華美はここいる感じ?」

「あっうんまあもう出るけど、ちょっとだけここいるかも」

「分かった じゃあ勉強頑張ってね」

「うん夢遊も面接頑張ってね」


2人はお互いに顔を見てから挨拶をした。


 夢遊はカフェブラウンを出てちょっと早めに歩いた。


「はあ、緊張するな」

夢遊は、歩いている途中に少しだけ一人事をつぶやいた。


「よし着いた とりあえず頑張ろう」

 夢遊は自分に鼓舞を与え言い聞かせた。


「すみません本日面接に来ました 向山です」

「こんにちは かしこまりました 少々お待ちください」


 夢遊は、アパレルスタッフの方に待つように言われ、そのまま待った。


「お待たせしましたこちらにご案内いたします」

「分かりました」

 夢遊は、アパレルスタッフに言われ、ついていった。



 「では、先に履歴書だけもらいますね」

 「はい、お願いします」

  夢遊は担当者に履歴書を渡した。

 「そうしましたら、書いていただくものがございますので 必要事項をお書きください」

 「承知しました」

 

 「よろしくお願い致します、10分くらいにまた声をおかけください」

 「分かりました」

  記入する紙を担当者に渡された。

 

 

 「とりあえず、書きますか シフトは週4日くらい? 収入は12万?とか」

 

  そして10分が経ち、夢遊は担当者に声をかけた。

 

 「すみません 書き終わりました」

 

 「ありがとうございます では今から行きますのでお待ちください」

 

  夢遊は担当者を呼びに行き、先ほど書いていた場所へと戻った。

 「ではこれから面接をはじめさせていただきます 私店長の河合と申します よろしくお願い致します」

 「お願いします」

  アパレルアルバイトの面接が始まった。

 「初めに自己紹介からお願いします」

 「はい 向山夢遊と申します 現在高校1年です 何事にも積極的に取り組みます

  よろしくお願いします」

 「はいありがとうございます 今はアルバイトとか何もやってないんだよね?」

 「何もやってないですね」

 「わかりました シフト週4日と書いてくれてるんだけど 結講稼ぎたい感じかな?」

 「そうですね、それくらい入れれば」

 「なるほど 12万って書いてくれてるんだけどうちはそんなにシフトとかたくさん入れるわけではないんだけどさ」

 「そうなんですか、でも大丈夫です」

「分かりました ちなみに今までどんな所受けてきた?差し支えなければ教えてもらえる?」

「本屋やカフェとかですかね」

「いろんな所受けてるね?じゃあ何でうちのアルバイトをやろうと思ったの?」

「アパレルに興味があり、よいサービスを提供していきたいということや服をまた

 買いたいと思ってくれる接客をしたいからです」

「それってさ うちではなくてもできるよね?」

「はいまあ」

「アルバイトの面接だからそこまで求めないけど、サービスを学びたいなら他のアルバイトとか、アパレルでサービスに力入れているところのがいいよ」

「そうなんですか」

「うん、うちは効率重視でいかにスピードよくお客さまに提供できるかだからさ」

「そうなんですか」

「そうだね、志望理由もなんか取り繕ってるというのが分かるしね」

「そういうかんじでしたか」

「そうそう、お金稼ぎたいからアルバイトの面接に来たんでしょ?普通に話していいよ」

「あっはい」

「でしょ?だから取り繕わなくていいよ 実際企業とかの面接じゃないからさ、志望動機とか取り繕ってるって分かっちゃうんだよね」

「そうなんですね」

「うん、あとはどれくらいやるの?まだ高1だからしばらくはやるとは思うけどそこらへんがちょっと不透明だよね?」

「はい、いつまでやるかはちょっと決めてはないですが できる限り長く続けていければと思います」

「なるほど 進路とか、そういう関係で辞めるとかもあり得るでしょ?」

「特にそこらへんは分からないですが、そういう可能性もなくはないかもしれないです」

「でしょ?軸とかある程度決めておいたほうがいいよ?」

「はい、そうみたいですね」

「うん 他の近隣の店舗の店とかフランチャイズでたくさんあるけど他の近隣の店舗の店とかの仕事の紹介とか希望しないと丸つけてあるけど 希望しないでいいのかな?」

「はい 希望は特にしないです」

「分かりました では面接は以上になります 採用の場合のみ来週の月曜までに連絡します」

「はい ありがとうございました」



夢遊はアパレルのアルバイトの面接が終わり、少しだけ変な気持ちになった。



「なんなの あの面接ちょっとバカにされた感あるし」

 

 夢遊は、面接終わりイライラした気持ちになっていた。面接終わったことを華美にチャット電話で報告した。


「ああ お疲れさん 面接どうだった?」


 「いや というよりまじむかつくあの店長 もう合否どうでもいい てか行く気なくしたわ」

  夢遊は面接終わったあとの怒りの感情がそのままでてしまっていた。

 「なるほどね そうとう嫌な面接だったんだね」

  華美は夢遊を落ち着かせる感じで話を聴いた。

 「そうそう とりあえず何かまた違うのを探すよ」

 「うん それがいいよ まあそれにしてもそのアパレルショップきもいね」

 「本当きもいよ」

  夢遊は華美にアパレルのアルバイト面接のことを少し愚痴った。

 「新しいバイト探してみる」

 「頑張ってね」

 

 

 

  翌日

  夢遊は、行きつけのカフェブラウンで新たにアルバイトを探すことにした。

 「なかなか 見つからないな もうどうしよう」  

  するとたまたま見ていた携帯のアルバイトサイトの広告に夢遊は目が止まった。

 「えっテーマパークのアルバイト? 大変だけど楽しそう」

 

  夢遊はテーマパークのアルバイトに少し興味を持った。

 

 「とりあえず応募だけでもしてみるか」

 

  夢遊はテーマパークのアルバイトに応募だけしてみることにした。

 

  その日の夜、夢遊は華美に電話した。

 

 「あっもしもし華美今大丈夫?」


 「うん大丈夫だよ どうしたの?」

 「実は テーマパークのアルバイトに応募してみた」

 「あっそうなんだいいね 楽しそうだね」

 「うん前から興味はあったんだけどね」

 「そっか なら今回やれるならいいじゃん」

 「そうだね まあ受かったらの話だけど」

 「自信持って頑張ってよ いつもの自信はどうしちゃったの?」

 「いや何ていうか アルバイト落ちてばかりだから今回もダメかなと思ってしまったりするからさ」

 「それはあるよね 私が思うに諦めるか諦めないかのどちらかだと思うんだよね」

 「諦めるか?諦めないかか」

 「うんそうそう だって結局さ諦めずにやって来られた人たちがどんな失敗でも乗り越えてきてさ、はじめて獲得できるじゃん だから何も挑戦しないよりずっとましだよ」

 「そうだね ありがとうね その言葉でなんとか頑張るね」

 「うん夢遊なら大丈夫」

 「ありがとう じゃあまた学校でね」

 「うん また学校で」

 

  夢遊と華美は電話の会話を終えた。

 

 

  


そして夢遊はテーマパークのアルバイトの面接の日を迎えた。

  

  

 「ついに今日だ 緊張する」

  夢遊は起きた直後から緊張感があった。

 

 「夢遊朝ごはんもうすぐできるわよ」

 「はーい分かったよ 着替えて顔洗ってからすぐ行くよ」

 「早くしなさいね」

 「はいよ」 

 

  母親から少し急かされたので、ちょっとイライラした。

「もうすぐ行くのに」


「じゃあ行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


母親から見送られ余裕を持って家を出た。


 夢遊は、華美にチャットアプリで今日が面接ということを伝えた。


 その後に、華美から「頑張ってね」というメッセージが届いた。

 

夢遊は華美からのメッセージに自信を持った。


(うん、頑張るよ)

 心の中で夢遊はそう思った、その後に「ありがとう」という返信をした。


 揺れるバスの中で、テーマパークのアルバイトまでにモチベーションを作ることだとも思った。


 夢遊はようやくテーマパークへと着いた、行きのバス電車合わせて40分くらいだが行く距離は学校とそんなに変わらなかった。テーマパークのアルバイト面接会場へ向かった。


「ここか しかもホテルみたいな所でやるんだ」

 

「テーマパークのアルバイト面接会場はこちらです」


  大きな声で運営の男性スタッフが案内をしていた。


「さすがテーマパークのアルバイトだな やっぱり人は多い」


「受付表を持ってお並びください」

  他の女性も同じように呼びかけていた。

  約1000人くらいの人たちが受付表を持って並んでいた。


(ここか、こんな人数いるなら私可能性ないでしょ)


 夢遊の出番になり受付表を女性の受付スタッフに渡した。

「では受付表をお願いします」

「はい、お願いします」

「ありがとうございます 先に身体測定を致します 3番の列にお並びください」

「分かりました」


 番号ごとに分かれており、夢遊は3番の列だ。


(身体測定か、何のだろう)


「ではこちらに立ってください」

「はい」

「ありがとうございます そうしましたら次は4番の列へとお願いします」

「分かりました あのこれは何の測定ですか?」

「あっこれはユニフォームのサイズです 先に計るんですよ 事前に把握できて支給できるようにしています」

「そういうことなんですね」

 夢遊は何で身体測定をしているか気になったので運営スタッフに聞いてみた。

「こちらの席に座りお持ちください」

 夢遊は運営スタッフに待合イスへと案内された、5席用意してありその前の所では10くらいのブースで一人一人面接をしていた。

(こうやってやってるんだ 本格的だな)

 夢遊は面接の雰囲気に圧倒されていた。

「では次の方どうぞ」

 夢遊は次の番だったので、我に返りすぐに行った。

「はっはい」

 緊張のためか返事が少し変だった。


(緊張する)


「ではこの度は面接にお越しいただきありがとうございます 私面接を担当します坂倉明美と言います よろしくお願い致します」

「はい お願い致します」

「そしたら事前に予約時にフォームで記載していただいた情報の確認からしていきますね」

「分かりました」

「向山夢遊さん 今は高校1年生ですね」

「はい高校1年です」

「高校生だとシフトはどれくらいをご希望ですか?」

「そうですね 週4日くらいですかね」

「それくらいですね 土日含めた週4日ですかね?」

「はい それで大丈夫です」

「分かりました お住まいは大船と書いてありますがここまではどう行かれる感じですか?」

「最寄りまではバスでその後は電車です」

「バスと電車ですね」

「はい」

「分かりました 時間はどの時間ご希望ですか?オープンかクローズ、ミドルなど」

「平日はクローズで、土日はオープンとかでも可能ですか」

「はい大丈夫ですよ、平日がクローズで、土日祝日がオープンですね」

「それでお願いいたします」

「分かりました 基本的に繁忙期はシフトになるべく出てもらっています ゴールデンウイーク 年末年始は出れますか?」

「はい出れます」

「分かりました 希望の職はありますか?フード アトラクション スーベニア商品 パーキング ピクチャーなどですね」

「そうですね」(これは迷うな)

「よろしければ特に希望がなければどれでもよいという形でもできますが そうされますか?すぐにご案内が早いというわけではありませんが空きがあるエリアのスタッフから補充をしていくので少し気持ち的には早いイメージですがね」

「そうしましたらそれでお願い致します」

「承知しました ではこちらからは以上ですが何か質問はありますか?」


「お金についての質問なのですが 時給はいくらくらいですか?」


「時給はエリアの職や時間によっても異なりますが 研修期間は900円ですね 研修が終了すると1010円です 昇給や年齢に応じて異なりますので頑張れば上がっていきます ただ向山さんは高校生ですので高校生のアルバイトの研修期間の時給は880円ですね 研修が終了すると900円以上になりますので比較すると少しだけ低くなります、あと昇給はしていくと また上がっていきます」

「分かりました ありがとうございます」

(時給コンビニと変わらないやん)

「ではこの条件を基に、お仕事を探させていただきます」

「分かりました よろしくお願い致します」

夢遊は面接がとりあえず終わり、なんとかほっとしていた。またもしかしたらだめかもしれないということを少し覚悟していた。けれども、もうすでに面接は終わってしまったので考えても仕方ないとも感じていた。

 

 「終わった いつもより遠いから疲れたな でもなんかこのアルバイトにかけたいな テーマパーク楽しそうだし」

夢遊は、テーマパークのアルバイトは今までの面接の中で、やれば絶対に楽しいとも思えた。

 「あんな笑顔でお客様を喜ばせたりできるのは最高だな」

  面接会場から歩いている途中に見えるテーマパーク、たまたま見えたスタッフの笑顔    に魅了された。

 「頑張って賭けてみることにしよう」

  夢遊は、とにかく願い その後、華美に連絡した。



「あっもしもし華美?お疲れ なんとか面接終わったよ」

 「夢遊 お疲れどうだった?」

 「まあ、なんとも言えない感じだな 絶対受かるとかという確信もないし」

 「そうだよね 面接とか試験終わるとそういう気持ちにはなるよね」

 「うんうん本当それ」

「今日は終わったばかりだからゆっくり休んでこれからのこととか考えていくといいんじゃないかな?」

 「そうだね そのあとゆっくり考えてみることにするよ」

 「うん そうだよ あれ今日は何かこのあと予定ある?」

 「特にないよ」

 「じゃあお茶でもしない?」

 「いいよしよう」 

 「分かった そしたら大船駅の改札で待ち合わせね 着いたら教えて」

 「はいよ じゃあまた後でね」

 「うんまた後でね」

  

  夢遊と華美は電話を終え、夢遊は大船駅へと向かい電車に乗った。

  華美も家を出るためにカフェへと向かった。

  

  

  

  

   夢遊は帰りの電車で一人面接のことを考えていた。


   本当に採用されるかという不安とまた新たなアルバイトを見つけなければならないストレスなどもあった。

   

  (本当に採用されるかな テーマパークの仕事本当に楽しそうだもん)

   

   帰りの電車でずっとそのことを考えていた。


   

   そして、電車で約50分前後でようやく大船駅に到着した。

   華美は改札前で余裕そうに待っていた。

   

  「夢遊お疲れ様 行こうか」

  「うん 行こう」

   華美と夢遊はカフェブラウンへと向かった、歩きながら華美は夢遊に面接の様子を聞いてみた。

  「面接緊張した?」

  「まあ緊張したよ てかかなりの人がいてさすがテーマパークの面接だなと思ったよ」

  「そうだよね テーマパークか なんか楽しそうじゃん」

  「楽しそうだけど まだ採用とかどうなるか分からないしさ」

  「そうだね まあとりあえずは待っていろいろ探しながら考えればいいじゃない?」

  「うん そうしてみる」

   話しながら歩いていると、カフェブランへと着いた。

  「よし着いたね」

  「だね」

  「じゃあ入ろうか」

   カフェブランへと着いたので、華美は入ることを促した。

   2人は、はじめに席を確認して、席を取ってから買いに行った。

  「ちょうど空いてたね 良かった」

  「いつも混んでそうなのにね」 

   夢遊が空いていたことにほっとして、そのあと華美も同じようにほっとしていた。

  

「いらっしゃいませ こんにちはご注文どうぞ」

 カフェ店員から注文を聞かれた。

「華美一緒に買っちゃう?」

「いいよ それで」

2人は一緒に購入することにした。

「じゃあ アイスカフェラテM一つと華美何にする?」

「私はアイスコーヒーMでお願いします」

「かしこまりました その他ご注文ございませんか?」

「はい 大丈夫です」

「かしこまりました お客様のお会計550円です アイスラテ アイスコーヒーお願いします」

「かしこまりました」

 

「ポイントカードお持ちですか?」

「はい 持ってます」

 夢遊がポイントカードとお金を差し出した。

「では1000円いただきます 450円のお返しです 右側からお受け取りください」


 2人は商品を受け取り席へと戻った。


「よしやっと休めるね」

「そうだね」

「どうしたの?うかない顔して」

「いや特にたいしたことないけど」

 華美が夢遊の様子を伺うように聞いた。

「その何ていうか あの店員さんちょっとサービスが悪かったような気がして」

「あらそうなの? そこまで細かくみてるのはすごいね どういう所がそう感じたの?」

「ちょっと笑顔ないなと思って」

「そういうことね よく細かい所気づいたね」

「そうね 私さ昔からよくサービスとかよく見てるからさ ちょっと細かいのかも」

「なるほどね まあそれでもさそういうのに気付くのはいいことだと思うよ テーマパークだって少なくとも夢遊が言ったサービス求められると思うしさ」

「そうだよね 華美はそこ分かってくれるか」

「もちろんだよ その他はなんか気づいたことあった?」

「その他はあまり丁寧じゃなかったな」

「えっそうかな?そこは普通じゃなかった?」

「うーんなんか微妙だったな」

「夢遊はそういう感覚なんだね」

「そうそう サービスとかで意識してしまうとそう感じるね」

「その感覚大事にしていかないとだね」

「うん もちろん」





 その頃、夢遊が受けたテーマパークであるブランドニューオブアメリカは、平日も同様に少し混んでいた。


「こんにちは何名様でしょうか?」

「3名です」

「かしこまりました 3番の列にお並びください」

「こんにちは何名様でしょうか?」

「2名です」

「かしこまりました 2番の列にお並びください」


テーマパークのアトラクションスタッフたちがアトラクションに並ぶお客様たちを次々ご案内していた。

ここのアトラクションは宇宙をテーマにした絶叫系室内アトラクションで、乗るお客様たちは、3Dメガネをかけることになっている。室内絶叫系アトラクションで3Dメガネをかけるところはここだけだ。


「お父さん これ落ちるやつ?」

「落ちないやつだよ かなりスピードが速い感じだよ」

「そうなんだ なら良かった」


 並んでいるゲストの間で親子で並んでたりもしていた。

 


「今から安全バーが装着されているか確認します」

 アトラクションキャストたちがライトを照らして確認していた。

「安全バーをしっかり持ち手を離さないようにお願いします 3Dメガネは乗車してからおかけしてお待ちください 手荷物などは足元に置いてください 帽子や眼鏡を飛ばされないようにお気を付けください では最高の宇宙の旅をお楽しみください それではいってらっしゃい」

 

  アトラクションスタッフが安全確認をしてから、スペースコースターを作動させた。

  その後、乗っていったゲストたちを見送った。


ピーガチャン

スペースコースターはハイスピードで走っていった。



スペースコースターはだいたい いつ1時間待ちくらいだった。スペースコースターのアトラクションスタッフたちはいつも焦燥している感じでもあった。

 

 「彩名さんもう少し笑顔でいきましょう」

  アトラクション担当のスーパーバイザーである加山紗也華がキャストに指導していた。

 「はい分かりました」

  彩名由香は指摘されてからしぶしぶ返事をした。

テーマパークスタッフたちの服はNASAをイメージした研究員のようなコスチュームだ。テーマパーク社員のユニフォームも少し似た感じでリーダーの証のような長い

首にかけるものをかけており、手首のあたりに3本線がついている。


加山もアトラクションが安全に動いているかを確認したり、キャストの様子を見ていくキャストモニターやゲストの様子を確認したりするゲストモニター、テーマパークを全体的に見ていくテーマパークモニターをするのも仕事だ、その他にシフト作成やキャストの育成などのマネジメント業務など多岐に渡る、ゲスト対応なども社員の仕事の一つであるがゲスト対応ばかりやるわけではない。

 「待ち時間延ばします」

  全員がつけているシーバーで加山はそれを伝えた。

 「分かりました」

 「分かりました」

 「分かりました」

  キャストたちがぞくぞくと返事をした。

  

  スペースコースターでキャスト全員が奮闘していた。


  






 夢遊と華美は約2時間くらいずっと話していた。


「あっという間に2時間経っちゃったね」

 華美がそのように言うと、夢遊も頷いていた。

「だよねもっと話したいね 今何時?」

 夢遊が時間を華美に尋ねた。

「今はまだ19時前だね」

「まだそれくらいか カラオケ行っちゃう?」

「今から?」

 夢遊がそのように聞くと、華美はいやいやながらも行くことにし、返事をした。

「まあいいよ」

「よしじゃあ急ごう」

 夢遊はうきうきし、その後2人はカラオケへと向かった。








次の日、いつものように夢遊と華美は、学校で休み時間に話していた。


「はあまだ結果来ないかな」

 不安そうに夢遊は結果を待ち望んでいた。

「まあそのうち来ると思うよ 一週間待ってみれば?」

 そんな不安そうな夢遊に華美はポジティブに声をかけた。

「そうだね 様子見るよ」

 華美からの声かけに夢遊はほっとし待つことにした。

すると、たまたま携帯を見ると、知らない番号からの着信があった。

「あれ着信が来てる」

  夢遊がすぐに気づき、電話に出ることにした。

「ちょっと出るね」

  夢遊は、電話にすぐに出ることにした。

「はい、もしもし」


「こんにちは 私ジョイイマジネーションの上島と申します 向山さまのお電話でお間違いないでしょうか?」

    電話越しからの女性から自分の名前を確認され、とっさに夢遊は返事をした。

   「はい そうです」

   「かしこまりました この度はジョイイマジネーションのアルバイトにご応募していただきありがとうございます 実は今回お仕事のご紹介をさせていただきたくお電話致しました」

   「そうだったんですね」

   「はい それでですね アトラクションキャストのお仕事をご紹介させていただきたくですね 向山さんとしては今回のお仕事いかがでしょうか?」

    電話で念のため、夢遊はアトラクションの仕事は良いかを確認された。

   「そうですね テーマパーク業界が初めてなので いろいろ仕事をやっていくことを考えると 経験の一つなのでぜひやりたいと思います」

     夢遊は、いきいきと元気よく答えた。

   

    電話が終わり、夢遊は華美にさっそく報告した。

   

   「華美なんと」

   「決まって良かったね まあ言わなくても電話聞いてれば分かるよ」

   「そうなんとか決まって良かった」

   「本当良かったね」

   「まあこの後いろいろ手続きとかあるみたいだし、めんどうだけど頑張るわ」

   「そこを乗り越えれば楽しい世界が待ってるからいいじゃん」

   「まあそうだけどね」 

    

    入社手続きなど、いろいろめんどうだと思っている夢遊に、華美は夢遊を後押した。

   

   

    放課後、夢遊と華美はいつも通り、カフェへと向かった。

   「じゃあ今日もカフェ行きましょう」

   


夢遊が華美に提案した。

「いいよ 行こう」

   夢遊は学校が終わり、いつものようにカフェに向かうことが嬉しくテンションが

 高かった。カフェに着くと、はじめに席を取った。ドリンクを買い、席に着き、華美はトイレへと行った。


「私 トイレに行ってくるね」

「うん行ってら」

  夢遊はスマホを確認し、メールが来ていることに気づいた。

 「あっメール? ジョイイマジネーションからだ」


  メール内容

   この度は、ジョイイマジネーションの面接にお越しいただきありがとうございます。

    第一回オリエンテーションの日程・時間をお選びください。

   

    当日は持ち物として、筆記用具・印鑑・通帳となっております。

    

 「日程いつにしようかな 平日の学校終わりか土曜かな」

  オリエンテーションの日程を迷っていると、華美が戻ってきた。

 「何一人言 言ってるの?」

 「えっあっそのオリエンテーションの」

 「そういうことね」

  ひとり言を言っていた夢遊に華美がすかさずツッコんだ。

 「テーマパークからメールがさっき届いてね オリエンテーションの

  日程を決めないといけなくてね」

 「そうなんだ 大変だね」

  アイスコーヒーを飲みながら、華美は夢遊の話を聞いていた。

 「まあね はあテーマパークでアルバイトしたら学業の両立もしないとだし」

  夢遊はちょっと勉強のことを少し心配していた。

 「大丈夫だよ なんとかなるよ」

 「そうかな」

  心配している夢遊に華美は前向きになれるような言葉をかけた。

 「その他にも女子高生は意外と忙しいし」

「まあそうだよね」

 「あっ話変わるけど今カウンターで買ってる女子高生の子かわいい

 スカートもなんか短くておしゃれだし」

「本当だかわいい」

「やっぱりさ 女子高生ってさ ああいう感じじゃないとだね」

「いきなりどうしたの?」

 突然の話の展開に華美はびっくりしていた。


「いやー何ていうか他の女子高生の制服見るとさ うちの学校のもいいけど

 かわいいなとか思うんだよね 青春というかさ」

「まあねそれは分かるよ 制服かわいいし」

「だよね 華美も制服おしゃれだよ 丈もちょうどういいし足細いしさ」

「あっありがとう 夢遊も全然かわいいよ」

「えっあっそう?ありがとうまあかわいいよ 私は」

「自分で言うな」

 たわいもない会話をして2人はカフェで楽しんだ。



 夢遊が配属されるテーマパークのキャストたちはいつも通り、働いていた。


「こんにちは何名様でしょうか?」

「3名です」

「かしこまりました では3番の列にお並びください」


 ここのアトラクションはゴーストタウンと呼ばれるエリアにある場所で、ゲストたちが

 トロッコに乗りながら、ゲームをクリアするように体験していくアトラクションだ。


「やばい怖そう」

「大丈夫よ そんなに怖くないみたいと書いてあるわよ」

 4歳くらいの男の子が少し怖がっている様子であったが、母親がなんとか怖くないことを子供に言い聞かせた。




「佐山君休憩行っていいよ」


「分かりました ありがとうございます」


  佐山に休憩の指示を出したのがゴーストタウンのアトラクション担当のスーパーバイザーである若木創太だ。彼は、帰国子女で語学が堪能であり、お客様のサービスもまた良いという評判でもある。新卒でジョイイマジネーションに入社した。最近は、シフト作成も担当しており、日々忙しい日々を送っている。



 「さて今日もゲームをやるか」

  休憩時間や休みの日の唯一の楽しみであるゲームをやるのが楽しみな佐山正樹は、今日もそのゲームをやる準備をしていた。彼は、ゲームやエンターテイメントが好きで、ジョイイマジネーションが運営するブランドニューオブアメリカでアルバイトをしようと思った。


 

  休憩室にて

  「佐山くん相変わらずゲームが好きだね」

  「あああ神谷さんお疲れ様です」

   突然、誰かに声を掛けられて気づくと、同じアトラクションエリアのスーパーバイザーである神谷大介が佐山の席の前にいた。

  「ゲームってやっぱり最高なツールですし」

  「なるほどなんかゲームしている君がいきいきしてる感じだよ」

  「なんかお褒めの言葉ありがとうございます」

  「いえいえ 自分も休憩だからここにいるよ」

  「分かりました」

   神谷大介は、日々いろんなことを勉強し、オペレーションなど指示などが分かりやすい。また彼は中途採用でジョイイマジネーションに入社し、前職の経験が活かされている。前職は警備員であり、警備の部署かと期待はしていたが、運営部のアトラクション担当になった。

  「てかさ 新しい子入るらしいよ」

  神谷が、佐山に身を乗り出しながら話した。

「そうなんですか 入って辞めてみたいな人たち多いですよね」

  佐山は、聞いた瞬間そんなに驚かずにいた。

「まあね意外ときつい所もあるしね」

 「どんな子か楽しみですね」

  2人は新たな新人が誰かを気になりながら休憩時間を過ごし話していた。

 



 ブランドニューオブアメリカへの入社が決まった夢遊は、前日の夜わくわくしていた。

 

 「よし明日から新たな場所へ 楽しみだな 私がテーマパークのキャストだなんて あっ準 備してなかった 忘れないようにしよう」

  

  夢遊は、てっきり浮かれていて準備を忘れそうになった。


 

 

 

 

 入社日当日

 

  ちょっと混雑している電車を乗り、なんとか到着した夢遊は、少しだけ疲れていた。


 「疲れたわ やっと着いた あと少し」

 

 

  あらかじめ地図を渡されていたので、すぐに場所が分かった。ブランドニューオブアメリカの建物前にはコスチュームを着て手にはバインダーを抱え 髪を後ろに束ねた女性が立っていた。

 「あのすみません本日入社手続きに来た向山です」


「かしこまりました 確認致しますので、お待ちください」

 「はい 分かりました」

 

  5分間くらい夢遊はドアの前で待ち、その後 先ほどの女性スタッフがやってきた。

 「向山さまお待たせしました 確認が取れたのでご案内いたします」

「ありがとうございます」

  確認が終わり、担当の女性キャストの案内に続いて夢遊はついていった。

 

  女性キャストが番号を入力し、ドアを開け中へ入ると、今まであまり見たことがない通りになっており、少し暗い雰囲気にもなっていた。夢遊は思わず声を上げた。

 「わっすごい」

 「そう?すごいかしら?」

「はい あまり通ったことがない道なのでちょっと驚いています」

「そうなのね なかなかこういう所に来ることないから驚くわよね」

「はい もう言葉が出ないほどです」

 案内してくれている女性キャストと歩きながら話をして楽しんだ。

「もう着くわね」

 暗い雰囲気の場所を歩き、夢遊は見渡していた。

 白い壁が一連に続き、さらに他のキャストの姿も見受けられていた。


「すみません A651のコスチュームです」

「分かりました ありがとうございます」



 他のキャストが、コスチュームを借りるために、番号が書かれていた番号の紙を言い、担当の人に渡していた。


「あそこでコスチュームを借りたり、戻したりするのよ」

「そうなんですか」

 大切なことだったので、たまたま通りかかったのもあり女性キャストが夢遊に説明していた。


「着いたわね 今から開けるからもう少し待っててね」

 いたるところで番号式のドアになっているので、女性キャストが改めて番号を押し開けた。中は、さまざまなテーマパークのことが一面に壁に貼られており、テーマパークの世界観がこの部屋で感じられる雰囲気でもあった。


「じゃあちょっとここで待ってて もう少しで担当者が来ると思うから」

「分かりました ありがとうございます」

 夢遊は部屋の奥にある巨大スクリーンと椅子がある所に案内され、そこに座った。


 緊張しながら椅子に腰かけて、担当者を待った。


さらに、また一人のキャスト候補の子が男性キャストに案内され座っていた。

「ではこちらでお待ちください」

「ありがとうございます」

 もう一人の子は女の子だった。ちょうど隣の席であったので、夢遊はあえて話かけようとした。


「あの今日から入社する方ですか?」

 夢遊は、緊張しながらも話しかけた。

「はい 今日から入社する川本梨菜と言います お名前は何て言うんですか?」

「あっあの 私は向山夢遊と言います よろしくお願いします」

「珍しい名前ですね」

「よく言われます」

「今って学生さんですか?」

「はい 今は高校1年です 川本さんもですか?」

「私も高校1年です 良かった同い年の人がいて はじめてテーマパークでアルバイトするので不安だったんです これからよろしくね」

「私もです こちらこそよろしくお願いします」

 2人が、話している間に、担当者がやってきた。


「ではこれから説明会を始めていきたいと思います 私担当の若井雄介と申します お願いします」

担当の男性は、20代後半くらいの人であった、右側のポケットの所にネームプレートがついており、さらに着ているコスチュームは白と青だ。着ている服装が白で、履いているパンツは青だった。テーマパークらしいコスチュームで明るかった。

「これから皆さんにわがテーマパークであるブランドニューオブアメリカのサービスやミッションなど、入社に関わるビデオを見ていただきます 終わりましたらまた別の場所へご案内いたします」

 

 ブランドニューオブアメリカのビデオが上映された。

 

 アナウンスの声

  アメリカができてから 244年の歳月が経ち アメリカの国に私たちが行くことがすでに当たり前になっている そんなアメリカという国の歴史を今後も忘れないでほしい

はじめの導入で、男性のアナウンスがあり、黒白の映像でアメリカの映像が流れた。そのあとすぐに新たな映像が流れ、女性のアナウンスに変わった。

  

ここはアメリカをテーマにしたテーマパーク ブランドニューオブアメリカだ アメリカというのを新たにこれからも切り拓いていくということで ブランドニューオブアメリカという名前になっている まずはキャストの皆さんには 働く上で知っておい       こてほしいことをお伝えしていこうと思います。

はじめに職場に行くまでのことについて説明します

駅に時間指定で来るバスに乗ってください


「バスが来るんだ すごい」

   夢遊はつい見ていたら一人言のように発し、口にしてしまった。

 

   バスは一時間に一本しか来ませんので 乗り遅れないように注意してください

   その際は必ず証明書を見せてください

   

続いて職場に到着したあとについてです

   職場に着いたらはじめにコスチュームセンターに行き 自分の番号とコスチューム番号を伝えてください こちらについてはのちほど説明があります

   

   続いて出勤についてです

   出勤はコスチュームに着替えて15分前に打刻をしてください 退勤時間についても同様となります

   

   続いては朝礼についてです

    出勤したら朝礼があります 朝礼は基本 オープン ミドル クローズなど どの時 間帯でも行います 朝礼前に今日のテーマパークの状況と売り上げや新たな情報などが書かれていますので朝礼前に読みましょう 朝礼は先輩キャストや担当のスーパーバイザーにお願いしてください

   最後にミッションについてです

    私たちブランドニューオブアメリカは、多くのゲストに楽しんでもらうために日々エンターテイメントを提供し続けています その心を忘れずにぜひここでの感動体験を一緒に作りましょう

   

    ブランドニューオブアメリカのロゴがアナウンスのあとに流れ、ビデオは終わった。

   

    「皆さまお疲れ様でした ではこの後は各部署に沿ってご案内となります 担当のキャストが皆さんをご案内いたします」

   

    「川本さんはどこのキャストさん?」

    夢遊は一緒かもしれないと感じたので聞いてみた。

    「私はアトラクションだよ 向山さんは?」

「えっ偶然 私もアトラクション 一緒だったらいいね」

「だね まあここ広いからね アトラクションの数も多いから違うエリアもあるかもね」

「たしかに まあそういう可能性もあるよね」

 同じアトラクションではあったが、お互いはもしかしたら違うアトラクションエリアの可能性もあることを予測はしていた。





夢遊たちが、テーマパークの説明を受けている中、今日のテーマパークもにぎわっていた。各エリアにポップコーンのワゴンやドリンクワゴンが置かれていた。そんな中、一人のビジネスカジュアルのような服装をしている男性がキャストたちに指示をだしていた。


「ここのポップコーンをもう少し補充して」

「はい 分かりました」

 1人の女性キャストが返事をした。

「そしたら他のワゴンに行ってきますね」

「了解しました」


 この男性は、主にフード・ドリンクワゴンを担当しているテーマパーク社員のスーパーバイザーだ。彼の名は本間瑞樹という名前で、前職は航空自衛官をしていた。もともとはテーマパーク業界には興味なかったものの、自衛官時代に多くの人を助け感謝される経験から、より多くの人を笑顔にしたいと思い、退職した。最後は円満退社だったので、今でも親交がある。なんとかこのテーマパークを運営しているジョイイマジネーションに転職することができた。


「お疲れ様です ゲスト状況からすると まだたくさんいらっしゃるので補充をお願いします」

「分かりました」

「分かりました」

 2人の女性キャストに、また指示を出した。

「鴨居さんバイトどうですか?楽しいですか?」

「はい 楽しいです」

 本間は、まだ入って1週間の鴨居小海という女性キャストに、そのように言われた。

「それなら良かった テーマパークは楽しい場所だからね 自分が楽しむことだからさ」

「そうですよね ありがとうございます」

「ここからは各セクションごとに分かれて担当の方に改めて説明を受けてもらいますのでよろしくお願いします」

 先ほど案内してくれた女性キャストがやってきて夢遊たちに伝えてくれた。

「途中まで一緒に行こう」

「うん そうだね 行こう」

 夢遊が梨菜に一緒に行こうと言った。

たくさんの新人キャストがずらっといて、それぞれ分かれてから行くようになっていた。

「これからテーマパークで働くことに実感がまだわかない」

「それうちもだよ 夢遊ちゃんテーマパーク雰囲気的にあってる」

「えっそう?ありがとう 梨菜ちゃんもだよ」

「ありがとうお互い頑張ろうね」

「頑張ろう」

 2人はお互いに励ましあった。話している間に、あっという間にそれぞれのセクションの裏ステージに着いた。

「じゃあ 私ここだからまたね 終わったらさ 待っててくれる?」

 夢遊は梨菜に終わった後に、集まる約束をした。

「うん いいよじゃあ あとでね」

 終わった後に合流する約束をし、夢遊は自分が配属されたアトラクションの場所に行った。

「ではこちらです ここの部屋でお待ちください では失礼します」

 夢遊は軽く会釈をしてそのまま座って待っていた。

先ほどと同じような雰囲気の場所になっており、テーマパークらしい雰囲気の部屋になっていた。いろんな貼り紙も貼られていてまるでオフィスのような感じでもあった。しばらくすると、1人の男性がオフィスに入ってきた。

「失礼します」

「こんにちは」

夢遊は、入って来たと同時に、挨拶をした。

「はじめまして 私アトラクションエリアの担当をしている社員スーパーバイザーの若木創太と申します よろしくお願いします」

「はじめまして本日から入社した向山夢遊と申します よろしくお願いします」

「お願いいたします ではさっそくなんですが入社書類の記入などをやっていきたいなと思いますので 本日印鑑などはお持ちですか?」

「はい持ってきました」

 スーパーバイザーの若木から尋ねられ、夢遊は答えた。

「はじめに誓約書や守秘義務などルールについての所をお読みになってサインをお願いします」


夢遊は読んでいると心の中で、厳しいなと思いながら読んでいた。


(これは厳しいというかテーマパークだから当たり前だよねというのが本音だけども

髪型髪色や眉毛、爪などこういうのは基本的なことか テーマパークのサービス基準もきちんと守りながらいつでも笑顔で多くのゲストに接するなども これもやっぱり当たり前なことか)

 「テーマパークルールなどいろいろ書いてありますが基本的なことは身だしなみとかですかね」

  スーパーバイザーの若木は、そこを強く強調しているようにも思えた。

「あとはSNS関係ですね ゲストに情報が出る前にそれをつぶやいたりとかやめてください 以前ここでSNS関係で問題が起こりました 最近やっている人たち多いみたいですが そこらへんは気を付けていただければと思います」

 「分かりました」

 「少し話変わりますが ここのテーマパークには来たことはありますか?」

 「はいあります 中学生の頃によく来てました」

 「そうだったんですね どこが一番好きとかありますか?」

  スーパーバイザーの若木からちょっとした質問をされて答えていた。

 「ナイアガラの滝のアドベンチャーエリアですかね」

 「おおうちの人気アトラクションじゃないですか ちなみにここのアトラクションはどこのエリアか分かりますか?」

「えーとちょっと分からないですね」

 「ではちょっと出てみましょう」

 「あっはい」

  アトラクションの話をしていて、どこのアトラクションかというのを教えるために若木は、夢遊を連れてテーマパークの外に出た。

 「わっかなり暗いですね」

 「はい 暗いですよ ここはゴーストエリアですからね ニューヨークの街並みを意識したところなのですが リアルに再現されてます ちなみに担当してもらうのはゴーストコースターとゴーストハウスです」

 「2つも担当するんですね」

 「はい そうですね エリア自体が近いので交代とかしながら担当してもらう形になりあす」

 「楽しそうです 早く働きたいです」

 「楽しいですよ 新たな仲間が増えるので僕も楽しみです」

 「あそこは何ですか?」

 夢遊があたりを見渡していると気になった場所があったので若木に聞いた。

「あそこは ゾンビホスピタルシティです かなりここでの人気アトラクションでして

 いつも120分待ちです ゴーストエリアの中にさらに小さいエリアがあるので子供

 から大人までたくさん来られますね」

「すごいですね 着る制服もなんかかっこいいですね」

「おお制服はたしかにいいですね ゴーストエリアはわりかし暗い感じの雰囲気にしてい

 るので キャストにも人気です」

「そうなんですか 早く着てみたいです」

「ワクワクしますよね」

「はい テーマパークのユニフォームはなかなか着れないのでいい機会だなと思うので」

「そう言っていただけて光栄です 一通り回ったので一旦オフィスに戻りましょう あっ

 その前に働く仲間たちを紹介しますね」

「分かりました」

 若木は、配属部署であるアトラクションの場所に夢遊を案内した。

「今ちょうど空いてるかもなので 挨拶だけでもしちゃおうと思います」

「分かりました」

「ここです あっいたいた佐山君ちょっとだけいい?」

 アトラクション担当である佐山を若木は呼んだ。

「はい 大丈夫ですよ」

「新しく入社することになった向山夢遊さんです」

「こんにちは 佐山正樹です よろしくお願いします」

「向山夢遊です よろしくお願いします」

「ちなみにコースターの機械の後ろに立ってるのは僕と同じスーパーバイザーの神谷大介

 さん」

「そうなんですか」

「うん他の部署にも社員さんいるからね じゃあオフィス戻ろうか」

 若木と夢遊はオフィスに戻った。

「さてじゃあ最後にシフトなんだけどいつ次来れる?予定とか確認できたら教えてもらえる?」

「はい 平日だと学校なので来週の土曜日でお願いします 時間は何時でも大丈夫です」

「分かった ありがとう そしたら今日はこれで終わりね 制服なんだけどまだできてないから 来週までに発注して そしたら来週くらいに着てもらう形になるから もう少しお待ちを」

「分かりました 楽しみです」

「だよね やっぱりさ女の子は制服が楽しみだよね」

 夢遊は笑みを浮かべながらワクワクしたような顔つきであった。

  若木も制服を来週着るのが楽しみな夢遊の姿を親が子を見守るかのような感じでもあった。

 

  そして、夢遊の入社の手続きが終わり、待っていた梨菜は夢遊に声をかけた。

 「お疲れ様」

 「ああお疲れ様 意外とさ 時間短く感じたね」

 「そうだね 意外と短く感じたね 夢遊ちゃんどうだった入社手続き?」

 「なんとか入社手続き終えたからとりあえずほっとしてるよ 楽しみ」

  梨菜は夢遊の様子を伺って聞いた。

 「梨菜ちゃんは?」

 「私も早く働きたいなと思った テーマパークのアルバイト応募して良かったと思ったよ」

 「そっかやっぱりそうだよね ちなみに梨菜ちゃんはどこのアトラクションエリアなの?」

 「私はNASAとかがあるスペースのエリアかな」

 「おおそうなんだね そこもなかなかいいね」

「そうだね なんかさ他のエリアとかセクションとか手伝いに行くこともあるみたいだよ」

 「らしいね 言ってたわ」

  夢遊と梨菜は、これから働けることにワクワクしていた。2人は顔を見合わせながら、誇らしげに話していた。

 「てかあたりこんな真っ暗だね 明日の課題もやらないといけないのに」

 「あっそうなんだ 私もだ 夢遊ちゃんなら大丈夫だよ」

 「ありがとう頑張ろう」

学校の課題をやらないといけない焦りもあったが2人の帰りは、どこか楽しい雰囲気でもあった。

  

  平日の夜のテーマパークも意外と混んでいたが、土日や休日ほどでもなかった。夜の20時で、あと2時間くらいで閉園だ。そんな状況で各セクションのテーマパークキャストたちが、点検や確認なども徐々に始めていた。

 

 「本間さんあと20本くらいでチョロスステイックが完売してしまいます もちますかね?」

 「そうね まああと二時間で終わりだし大丈夫だよ」

  ワゴン担当のキャストがフード担当のスーパーバイザーの本間に尋ねた。

 「分かりました ありがとうございます」

 「うん それでよろしくね そしたらアメリカンフォレストレストランに行ってくるね」

 「はい 了解です」

本間は周辺ワゴンを見たあとに、もう一つの管轄であるレストランへと向かった。



「まーくん 高野ちゃん見なかった?」

「いや見てないですよ」

 スーパーバイザーの神谷が佐山に同じアトラクション担当のキャストである高野の居場所を聞いた。

「そっか 休憩かな?」

「どうでしょうね おそらく」


「ああ神谷さん ゲスト対応してました」

「おお良かった いたいた」

「かなりやばかったですか?いなくて」

「いや大丈夫だよ 言うてもう あと一時間半で閉園するしさ」

「それなら良かった てか聞いてくださいよ」

「あっゲスト来たからまたあとで」

「分かりました」


「こちら3番の列にお並びください」


 テーマパークもあと少しで終わりなので、ゲストの数も少なく話すくらいの余裕もあった。






「よし課題終わった テーマパークのアルバイトができる楽しみでモチベーションが上がってる」

 いつものカフェブラウンで、英語の課題を終え、終わった達成感で夢遊は一人事を言っていた。

 そんな中、華美がやってきた。

「お疲れ えっ何してるの?」

「課題やってた」

「明日の?てかまだやってなかったの?」

「まあね 終わってなかった 忙しいからさ」

「言うて アルバイトでしょ?」

「そうだけど 入社手続き今日終わったからさ 帰りにカフェ寄ってやろうかなと思ったんだよ」

「なるほどね」

「そうそう てか華美相変わらずスカート丈短いじゃん」

「いやあんたもでしょ?この前スカートまくってるところみたけど」

「どこ見てんのよ」

「いやいやたまただし でもスカート短い方がさかわいいし 長いと格好悪いしさ」

「分かるけどね 先生もたまに確認してくるからめんどいけどね」

「たしかに こんな話題で盛り上がるとは」

「そうだね 女しかできない話題かもね」

 制服のスカート丈の話で2人はカフェで盛り上がっていた。





「よしじゃあまーくん上がっていいよ」

「分かりましたお疲れ様です」

「うんありがとうね また頑張ろう」

「はい頑張りましょう」

 神谷が佐山に退勤することを伝えた。


「そういえばさ 高野ちゃんさっき話そうとしてたこと何?」

 神谷が先ほど話そうとしてた高野の話題を尋ねた。

「ああ なんか新しい子入ってくるという話です」

「えっ高野ちゃん知らなかったの?」

「はい えっみんな知ってるんですか?」

「うんもうかなり前に」

「教えてくださいよ」

「知ってるかなと思ったんだよ」


 新たな新人が入ってくることを知らなかった高野は自分だけ知らなかったことにちょっと笑いながら悔しがっていた。

「あとは高野ちゃんトレーニング担当だからよろしくね」

「私がですか?」

「そうそうもうベテランだし大丈夫」

「まじですか頑張ってみます」

 トレーニング担当になり、少し緊張気味でもあった。

「トレーニングプランシートで教える内容まとめてみて これね」

神谷にトレーニングプランシートを渡され、高野はトレーニングで教えることをまとめることになった。


「どんな子なんだろうとちょっときになったりしませんか?」

「まあ気になるよね ああ自分はもうすでに挨拶してるから知ってるよ」

「えっ神谷さん会ったんですか」

「そうだよ この前入社手続きの時に挨拶したからね」


 高野は神谷に、新人で入ってくる予定である夢遊について聞いてみた。

 会ったことはない前提で話を進めていたが、神谷はすでに初日に会っていたので、そこについての共感は少し持てなかった。

「どんな子でした?」

「女の子だったよ たしか高野ちゃんと同い年じゃないかな」

「まじすか やった」

 高野は嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「これから楽しみだね」

「はい 楽しみです」




夢遊は、その日の夜にテーマパークのキャストとして立つまでに、サービスやおもてなしについての本を読むことにした。

「これからテーマパークのキャストとして役立てるために自分なりに勉強しておこう」

 家で、一人でノートに書きながら読み進めていた。


 夢遊は、アルバイトで、ここまで勉強したのは、はじめてだった。今までたくさんの失敗もありながらも、何事も諦めずにやってきた、そこの強みは自分でも分かっていたし、華美もよく理解しているところでもあった。


「よし 今日はここまでとりあえず明日も早いからもう寝よう」


 明日の学校に備えて寝ることにした。


 神谷が、今日のパーク運営状況を若木と共有した。

「今日はちょっとアトラクション自体の運営がうまくまわせてなかったところありましたね」

「ですね オペレーション変更します? ゲストが少し困惑しててスムーズにご案内できなかったので」

「やっぱり中番の時間はそういう感じでしたか とりあえず明日のオペレーション変更の伝達書いておきます」

「若木さんありがとうございます お願いします」

「了解です 後シフトがまだ出てない人いるんですよね」

「そしたらその伝達は書いておきますね」

「お願いします ありがとうございます」


 スーパーバイザーである若木と神谷はパソコンを操作しながら、アトラクション全般についてのことを話し合っていた。

「これから繁忙期にも入りますしね シフト的な部分はちょっと早めがいいですよね」

「その方がありがたいですね」


「お疲れ様です ゲスト対応してました」

「ああ高野ちゃん まだパークいたんだね」


「はい ちょっと困っているゲストがいたので案内してました もうクローズしたので ゲストはさきほどご案内した方が最後でした」

「おおなるほどね ありがとう」

高野がゲストを案内して、戻ってきた。お困りのゲストの方がいらっしゃったので、案内をしていたのだ。

「神谷さんあといつからトレーニングというか新人さんの研修やるんですか?」

「そうだね 若木さんいつからでしたっけ?」

「今確認しますね」


 高野からトレーニングの日程を聞かれたので、若木が確認して伝えた。

「現場研修は来週あたりになってるね 初日の出勤は座学だからさ」

「分かりました ありがとうございます」






1週間が経ち、ついに夢遊の出勤日となった。


「よし今日から出勤だ頑張るぞ」

支度をしながら、初日出勤ということで、意気込んでいた。


駅まで歩き、その後は電車へと乗って向かった。自分が今まで遊んでいた場所が、今度は職場になるということに驚きを隠せない感じでもあった。


携帯をいじりながら、電車を待った。自宅からブランドニューオブアメリカまでは、意外と近いので、交通の便としては良い環境にあった。


最寄り駅に着き、テーマパークキャスト専用のバスをバス停で、待ち、ようやくバスが到着したので乗り込んだ。証明書を乗ったら見せることになっていたので見せた。


行く途中までは、遊びに行くような感じであったので、慣れてしまえば、ここはもう当たり前になってしまうかなとも夢遊は感じていた。


10分程で、従業員専用の場所に到着し、降りた。

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 続々と、他のキャストたちが運転手にお礼を言って降りていった。

「ありがとうございました」

 夢遊も、同じようにお礼を言い降りていった。


エントランスの場所は少しばかり、狭い扉みたいなイメージではあったが、そんなに入れなくなる感じでもなかった。

受付のスタッフがいたので、そこで証明書を見せた。

「お願いします」

「あっもしかしてまだもう一つの証明書などは完成していない感じですか?」

「証明書ですか?」

「はい 今見せていただいてるのは基本バスなどに乗る時に使用するので 来館用と中に入った時に食事などをする時や、買い物などをする時に使用したりするものなのですが」

「なるほど また別に証明などのやつがあるんですね」

「はい そうですね 担当のセクションのスーパーバイザーの方に聞いていただければと思います 本日は仮証明書を発行しますね」

「ありがとうございます」

夢遊が見せた証明書は、バスなどの時だけに必要なので、基本はテーマパークに入った時

は、必要はなかった。今回は仮証明書を発行してもらうことになった。

「こちらですね 退勤する際に受付で返却をお願いします」

「分かりました」

「あっここにタッチをお願いします」

「はい ここですね」

「はい ありがとうございます 本証明書が発行になりましたら 出勤でタッチするだけで大丈夫です」

「分かりました ありがとうございます」


エントランス時の出勤のタッチを忘れると遅刻扱いになるということもあるので、気をつけないといけないと思った。しかも部署でも出勤の打刻が必要なので、それも大変だと思った。

「よし ユニフォームを取りにいこう」

 夢遊はコスチュームセンターに行き、ユニフォームを取りに行った。コスチュームセンターまでは、しばらく歩く。そういう意味では、あまりギリギリに来れないのがちょっときついとも感じた。

「少し遠いけど頑張ろう」

 夢遊は、一人事を少し言いながらコスチュームセンターへと向かった。


 

 3分程度で、コスチュームセンターに着き、夢遊はコスチュームと引き換えする紙を見せた。

「すみません コスチュームお願いします」


「はい かしこまりました A-G0221ですね お待ちください」


コスチュームセンターの受付の女性キャストにコスチュームと引き換えに必要な紙を見せた。受付の女性キャストも左側に名前のネームプレートをつけていた。

「こちらですね ではそのままロッカーがつきあたりにあるので そちらで着替えてから行ってください」

「はい ありがとうございます」

「ここで働くことは楽しいと思いますので 新人さん頑張ってください 新しいユニフォームだったので新人さんだと思いました」

「あっそうだったんですね ありがとうございます」

受付の女性キャストは、夢遊が新人であるので丁寧に教えてくれた。

そのままロッカーへと向かい始めた。歩いていると、自動販売機やアメリカなどの展

示などテーマパークならではのものがたくさん展示されていた。

「すごいな」

 思わず口に出してしまうほどであった。

「ここがロッカーか あれ番号って知らないな」

夢遊はロッカーの番号が分からず少し戸惑っていた。すると、他のセクションの女性キャストがやってきた。

「ああもしかしてここの番号分からない感じですか?」

「はい ちょっと分からないです」

「分かりました じゃあ開けますね 番号は0117です」

「ありがとうございます」

その女性キャストは夢遊が入る予定であるアトラクションセクションである高野だった。

   高野は笑顔で挨拶をして、自身のロッカーに行った。

  

   夢遊はロッカーに行き、荷物を置いて、ユニフォームに着替えた。


  

   時間までは少し余裕があるが、ここから少し歩いた先に夢遊のセクションであるアトラクションのオフィスがある。

  「ここからまた少し歩くのか」

   すると見たことある女の子に出くわした。

  「夢遊ちゃんじゃん お疲れ」

  「梨菜ちゃん久しぶりだね」

   以前入社手続きで一緒だった川本梨菜だった。

  「まさか会うとは驚きだね」

  「本当にね 夢遊ちゃんは今日が初日?」

  「うん 今日が初日だね 梨菜ちゃんは?」

  「私は今日で2日目かな 学校ある日だったけどシフト入れたんだよ」

  「それはすごいね どうだった?」

  「いやいやそんなことはないよ 緊張したけど 次のシフトから現場もう出れるから

   楽しみなんだよね」

  「いいな それは楽しみだね 頑張ってね」

  「ありがとう 夢遊ちゃんも頑張ってね」

  「頑張ります」

お互い昔からの友人に会ったかのように、仲良く話をしていた。

「じゃあまたね」

「またね」

 梨菜と夢遊は挨拶をして別れた。


そしてまた、夢遊はアトラクションの場所に向かって歩いて行った。


「よし頑張ろう」

 自分に言い聞かせて、アトラクションのオフィスの扉を開けた。

「お疲れ様です」

 夢遊は開けたと同時に、「お疲れ様」という挨拶をした。

「あっお疲れ様です」

はじめに、お疲れ様の挨拶をしたのは、スーパーバイザーである神谷だった。

「こんにちは はじめまして こちらのアトラクションのスーパーバイザーをやっておりま す神谷大介です」

「はじめまして 本日今日から勤務する向山夢遊です よろしくお願いします」

 夢遊はスーパーバイザーの神谷に挨拶をした。

「よろしくお願いします そうしましたらもう少しで打刻ができます すでに向山さんの打刻カードがありますので そちらのカードでタッチをお願いします」

「分かりました」

 夢遊は、そう言われると打刻カードでタッチをした。

「今日は現場に出る前の事前研修をはじめに行います 担当は私がやりますのでついて来てください」

 勤務の初日なので、事前研修を行うことになっている。さまざまな業種がたくさんある中で、テーマパークという職種は特殊である、そういう意味では、この事前研修も大きな研修である。


「では 別の場所で行うのでついてきてください」

「はい」

オフィスの中に、さらに部屋があった。一体どれくらいの部屋があるのか少し疑問に思っていた。

「ここでやりますね 下ざわざわしていますが、アトラクションのすぐ近くの部屋なので

 ざわざわしています」

「そうなんですね」

「そうです 後ろの窓みたいな所ありますよね その下をすぐ見るとアトラクションです」

「たしかにもうコースターの場所ですね こんなの初めてです」

「ですよね ここの眺め意外といいんですよ」

「いいですよね」

 初めて見る景色に、夢遊は、ワクワクしていた。

「では 研修始めましょうか」

「そうですね」



事前研修が始まった、約1時間くらいやる予定だった。





「こんにちはようこそ どうぞごゆっくり見ていってくださいね」

 1人の女性キャストがゲストに声をかけていた。ここの店舗はハリウッドをイメージした店内になっており、まるでアメリカにいるような感じだ。


「ご自宅用でしょうか?」

「はい 自宅用です」

「かしこまりました ではお会計が1970円です」



するとオフィスカジュアルの服を着た男性が1人店内に来た。

「田部さん あそこの新商品のブースに補充してもらえるかな?」

「分かりました」

 1人の女性キャストに指示をしたのは、商品部に所属しているスーパーバイザーだ。

 彼の名前は、長谷山 樹だ。まだ経験が浅い新卒ではあるが、最近は少し慣れてきた感じだ。



その店の前のすぐ近くにあるワゴンのお店があった。2人の女性キャストが会話をしていた。


「てか外暑いね」

「夏だしね」

「ゲスト今少ないよね」

「うんうん 分かるよ」

 たわいもない会話をしていた2人の女性キャストは、本間が見ているエリアのワゴン

働いている。1人のキャストの名前は松山里菜 もう一人の女性キャストの名前は、

 児玉真央だ。

 いつも2人でいて仲が良い。

「てかさ 里菜 課題終わった?」

「まだ終わってない」

「終わってない感じなんだね てかさ大学生って課題多いとか本当言われてるけど 本当だね」

「それね うちさお母さんにバイトしすぎとか言われてるわ」

「えっそうなの?まあたしかにシフトたくさん入ってるのは 確かだけど」

「一応稼ぎたいし」


「お疲れ様」

「あっお疲れ様です」

「お疲れ様です」

 里菜に続いて、真央も挨拶をした。

本間がワゴンのお店に来た。

「補充終わってます」

 児玉が本間に伝えた。

「分かった ありがとう 19時からパレードとショーが始まるから 少し買いに来るゲスト少なくなるかも」

「分かりました」

「分かりました」

「2人って同じ大学だっけ?」

「そうなんです 偶然にも同じ大学なんですよ」

 里菜が答えた。

「ちなみに高校も同じです」

「すごいね 高校から大学まで同じなのは」


「頑張ったんですよ 勉強 里菜は英語足引っ張ってたよね」」

「それ言わなくていいよ」

「僕もあまり英語得意ではないからさ」

3人は、たわいもない会話をしていた、いつの間にか楽しい雰囲気になっていた。





「ここのカッコに入るのはゲストを常に見ていく」

「そんなに長くですか」

「そうだよ」

「かなりサービス力いれてますね」

「そうだね 日本一のテーマパークだからさ」

「いいですね」

「あとで実際にアトラクションの所に行って現場を見にいこうと思います」

「分かりました」

 実際の現場に出る前に座学の研修を受けていた。



「この座学の研修を乗り越えればあとは、もう現場に出るだけだからね」

「そうなんですか」

「うん そうだよ あとは現場の先輩方に教えてもらうことが多くなったりするかな」

「そういう感じなんですか」

「そうそう とにかく楽しく働いてね その方がモチベーションも上がるしね」

「分かりました ありがとうございます」

夢遊は、スーパーバイザーの神谷に、そのように励まされた。





「川本さん次のゲスト誘導してもらえますか?」

「はい了解です」


スペースコースターの所に並んでいるゲストがたくさんいたので、先輩キャストからの指示で、誘導していった。

「1番の列にお並びください 何名様でしょうか?」

「4名です」

「かしこまりました 3番にお並びください」

梨菜は、ゲストを誘導していった。

スペースコースターは3Dメガネをかけて楽しむアトラクションで人気アトラクションでもあった。新人の梨菜にとっては、少しばかり大変であった。




「3Dめがねをつけてお乗りください では行ってらっしゃい」

 キャストのよいかけ声で、ゲストを送ることができた。

 ブランドニューオブアメリカのテーマパークは、どのアトラクションも人気ではあった。




 座学の研修が終わった夢遊は、神谷に連れられて、アトラクションの現場に行った。

「ここがゴーストコースターの場所だけど 辺りはちょっと暗くなってるから気をつけてね」

「はい 分かりました ありがとうございます」


「どうしましたか? 秋谷さん」

 耳につけている神谷のシーバーに他の女性キャストがとばした。

「シングルライダーを使いたいけど どうしてもお連れ様と隣の席になりたいということですね そしたら一緒にしてあげていいですよ もしすでに座席にご案内していたら 笑顔で席の交換をする旨を他のゲストにお伝えしてくださいね」

神谷は冷静に対応した。

「ちょっとすごい暗くなってる」

「そうなんですよ ゲストがあそこに並んでいるので 失礼しますと抜けていってください」

「はい 分かりました」

 神谷と夢遊が通ってる所は夏休みや長期休みなど、繁忙期によく使われる場所で並ぶような通路だ。もう少し先に行くと、ゲストがたくさん並んでるので夢遊に神谷がそう言った。


「すみません失礼いたします」

 ゲストが並んでいる間を通って行った。

「すみません失礼します」

 神谷の後に、夢遊が後に続いた。

「一応 今回は全体から見てもらうためにここを通るけど これから働くようになったらアトラクションから近いドアを使い通ってもらうことになるから めったにここはゲスト対応などをする時以外は、基本通らないようにしてね」

「分かりました それにしてもゲストの数多いですね」


「そうだね かなり乗る人多いからね あとアトラクションを出発させる機械は

 研修やった中で教えていきます アトラクションは安全に運営していくことだから

けがとかしないようにすることを大切にしてるからさ」

「分かりました たしかに安全に乗ってもらうこと大切ですもんね」

神谷に案内されながら、夢遊はアトラクションの現場を見ていった。多くのゲストが、たくさんいて子供から大人までたくさん並んでいた。

「すごい数のゲストでやっぱり驚きます」

「だよねテーマパークだからこれくらいはたくさんいるよね」

神谷と話しながら夢遊は、オフィスの方に向かって戻って行った。





オフィスでは、高野がパソコンで作業をしていた。

「若木さん 新人の女の子のアトラクションの研修の日にちってあと少しですか?」

「えーと シフト次第だけど 具体的にはまだ分からない」  

「分かりました ありがとうございます」

「もうすぐオフィスに帰ってくるから その時に聞いてみるといいよ」

「分かりました」



すると神谷と夢遊がオフィスに戻ってきた。

「よしじゃあ最後に次のシフト確認して退勤しよう あっそうだ そこの今パソコンに座っている女の子が向山さんのアトラクションの研修をしてくれる高野さん」

「初めまして 高野冴姫と言います あれもしかしてさっきロッカーで困ってた子?」

「あっはい そうです あの時はありがとうございました」

「いえいえ まさかここで一緒になるとはすごいね」

「私もびっくりです 向山夢遊と申します」

「あれ2人ともなんか知り合いみたいな感じだね」

神谷が聞いてきた。

「実は向山さんがロッカーの番号が分からなくて困ってて それで番号を教えたんです」

「そういうことね ごめんね 女子ロッカーの番号伝えてなかったね」

「大丈夫ですよ」

「とりあえず向山さんよろしくね」

「はい お願いします」

「さっそくだけど次の出勤はいつとか希望ある?」

「シフトは来週の火曜日でお願いします」

「火曜日ね 学校とかあるけど大丈夫そう?学校終わったあととか?」

「はいもう午前授業で学校も少ないので 終わったあとに行きます」

「そういうことね あれ今何年生?」

「高一です」

「そうなんだ じゃあ私と同じ年代だね」

「そうなんですか 今じゃあ高一とかですか?」

「ううん私実は高校行ってないんだよ」

「そうだったんですか」

 高野は高校に行ってないことを話の中で、うち明けた。

「やりたいことがあったからね 高校も1つの選択肢だったけどね」

「いいですね」

 夢遊は、そのことを聞いて驚きながらも目を少し輝かせていた。

「うん じゃあまたシフトの時によろしくね」

「はい お願いします」


「そしたら 向山さん着替えたらオフィスに戻って退勤カード押しに来てね」

「はい分かりました」

神谷が、向山にそのことを伝えた。


夢遊は、会釈をしてオフィスを一旦あとにした。


オフィスを出た後、夢遊はついにテーマパークでの仕事が始まるんだという実感があった。


 ロッカーに着いた夢遊は、ユニフォームから私服に着替え始めた。

 着替えていると、けらけら 笑う声が聞こえてきたので、少しその声の先を見た。


「真央さやっぱり私服少し変だよ」

「はあ何それ意味わからないわ そんなこと言うなよ」

 フードキャストの真央と里菜が仲良くロッカーの所で話していた。


「いいな なんか楽しそうだな はっくしょん」

夢遊がたまたま1人事を言っていて、同時にくしゃみをしてしまった。すると、2人にたまたま目があってしまった。1分くらい沈黙が続いた。

「あっいやすみません何でもないです」

 夢遊はそのまま目をそらした。少し恥ずかしがっている様子でもあった。

「はははは」

「はははは」

 2人はなぜか楽しそうに笑い出していた。

「はあ」

夢遊は、その状況が分からずに少しばかりきょとんとしていた。

「こんなに笑うことなんてないのにまさかね」

「里菜の笑いうるさいよ」

「えっ真央だって」

「何のキャストさんなの?」

真央が夢遊に流れを変えるために尋ねた。

「あっえっと私はまだ入ったばかりなのですがアトラクションです」

「アトラクションなんだ セリフとか覚えないといけないから大変だよね」

「そうなんです ちょうどゴーストエリアとかの所なんで」

「えっゴーストエリア?」

里菜が驚いたように質問した。

「はいあの暗い感じの雰囲気の場所です」

「そっか私たちはフードキャストなんだよ 自己紹介してなかったね 私は松山里菜 隣が児玉真央ね よろしくね」

「あっよろしくお願いします 私は向山夢遊です」

「よろしくね 良かったらid教えて交換しよう」

真央が交換しようと言った。

「いいですよ」

「夢遊ちゃんでいい?呼ぶの」

里菜が聞いた。

「はいなんでも大丈夫です お2人は今何年生何ですか?」

「今は大学1年生だよ」

真央が代わりに答えた。

「えっすごいお姉さん」

「ちなみに夢遊ちゃんは何年生なの?」

 すごいお姉さんと言っていたので、その流れで里菜が質問した。

「私まだ高一なんですよ」

「そうなんだ だからすごいお姉さんと言ったんだね まあでも年齢気にしないから仲良くしようね」

「はい よろしくお願いします」

 広々としたアメリカ風のロッカールームが雰囲気と共に和やかな感じに包まれていた。


「まーくん来週の火曜日 アメリカンダイニングという店にヘルプとか行ける?」

「えっ違う場所にですか?」

「そうそう 今人が足りなくて1日ずっとそこなんだけどいけそうかな?」

「はい ああまあ大丈夫ですよ」

「おお分かったありがとう そしたらさ 担当のスーパーバイザーの人に伝えておくから」

「分かりました」


他のテーマパークのセクションで人が足りなかったので、神谷が正樹にヘルプをお願いした。テーマパーク間で、人の補充をすることもある。そういう意味では、常に他のセクションの情報も仕入れておかないといけないのだ。




 お客様から見たら、社員なのかアルバイトなのかというのは分からない、むしろ働いている人たち全員が社員と思ってしまったりもする。社員とアルバイトを支える仕事もテーマパークの中には存在していて、その人事部と言われる内部の仕事である。その人事部ではあることが話合われていた。


「セクション異動通知文書をセクションマネージャー宛にメールで送付お願いします」

「分かりました」

「現時点である程度の人事の異動は決定ですが、まだ決まってないセクションもありますので、そこも含めて決定したら送付お願いします あと必ずPDFファイルにしてパスワード付きでお願いいたします 他のキャストもPCなど使うこともありますので 気を付けてください」

「分かりました」

「分かりました」

 男性の人事部長が、人事部に所属している社員に話していた。


 白い壁に机が並べられている、いかにも会社という感じの雰囲気になっていた。








「てかさ人事異動とかこのタイミングであったりしないよね?」

「どうだろう 2年とか3年だからありそうだよな」

「お前そろそろ異動じゃない?」

「勝手に異動にすんなよ ただでさえ飲食大変なんだからこれ以上異動したらやばいよ」

「お前飲食だもんな 俺は商品だからまだましだわ」

 20代の若い社員が従業員の通路で、話をしていた。



 フードオペレーション部所属のスーパーバイザーである本間が休憩の帰りに歩いている時に、その会話を耳にした。

(異動か そういえば、まだ意識してなかったけど異動誰かする可能性あるのかな?)

 本間は1人で考えていた。



 オフィスに戻り、PCでログ入力とオペレーションノートを書いていた。

「今日はキャスト全体のサービスが良かったな かなり売れ行きいいよね」


 すると、本間の所属しているセクションマネージャーと言われるセクションを管理しているマネージャーに声をかけられた。

「本間くん今いいかな?」

「あっはい大丈夫ですよ」

 セクションマネージャーに談話室のような場所に案内をされた。


「はいどんな話でしょうか?」

「うん そうだな 話というか報告かな」

「はい」

 どんな話か本間は少し気になった感じであった。

「その前に最近フードオペレーションのワゴンやレストランの様子を聞かせてくれるかな?」

「今はかなり売れ行きも順調で、キャストも良いサービスをしていますワゴンもレストランも」

「そうかそれは良かった もっと最高なサービスをするにはどうしたらいいかな?」

「キャスト自身が高いサービスをする意識を持ってスーパーバイザー1人1人がモチベーションをつくることですかね」

「なかなかいいね 実は人事内示が出たんだ」

「内示ですか?」

「私も驚いてな 君は今月の下旬からテーマパークマーケティング本部に異動することになった」

「えっ異動ですか?フードオペレーション部に来たばかりなのに」

「うん そうなんだよ あとここからが重要なんだよ 異動と共に マーケティング本部長にも任命になったんだよ」

「僕が昇格ですか?こんな早く」

「そうなるな あと君はここのセクションマネージャーの昇格になる予定だったらしいのだが キャリア採用での入社や今までの経歴 これまでのフードオペレーション部の実績なども含めて ここで上がるより他のセクションに異動して貢献する方が会社としては良いと考えたんだろうと思う 私は異動ではなくなり ここのセクションマネージャーとしてまだ残ることになっている」

「そういうことなんですね」

「うん 大丈夫本間くんならやれるさ 残り期間の仕事も頼むよ キャストにはまだ口外はしないように頼んだ 1週間前に掲示に貼るから そうしたら言っても大丈夫だ」

「分かりました 失礼します」


 本間は、異動と共にかなりのプレッシャーもあった。本間自身はフードオペレーション部でキャストの育成やゲストサービスをすることにやりがいもあった。楽しさもあり、なによりキャストやゲストたちとの時間が喜びでもあった。


「異動か まさかの」

 誰もいないオフィスで1人口にするほど気持ちがでてしまった。






 テーマパークの初日の帰りに夢遊は帰りの電車でうきうきした気分になっていた

「楽しかった」

「楽しかったの?」

「えっ華美?何でここに」

「いやちょっと今日出かけてたからさ」

「そうだったんだ いいね」

「どうだったの?」

「うん緊張したけどなんとか頑張ったよ これから楽しみかも」

「それは良かった」

「うん アルバイトがこんなに楽しみになるってなかなかないことだからさ」

「まあね でも楽しそうで良かった」

 電車の中でたまたま華美に会い、会話をした。

「勉強との両立頑張るわ」

「おお頑張れ 明日は数学小テストだったね」

「ああそうだった」

 テーマパークという夢の場所から出た瞬間に、一気に現実へと引き戻された。




「高野ちゃん明日シフトのびれたりできる?」

「明日ですか?はい大丈夫ですよ」

「ありがとう助かる」

 若木がアルバイトのシフト担当なので、こういうシフト交渉もよくやっている。

「次のシフトで 新人の向山さんの研修だね」

「はい 人に教えるのはなかなか難しいなと思ってます」

「まあはじめはそう感じるけど 慣れていけば楽しいよ その回数を増やしていく感じだね」

「アドバイスありがとうございます」

 人に教えるのが不安という高野に対し、若木がアドバイスをした。

「頑張ろうね」

「はい」




 本間は、帰りにテーマパークの様子やゲストの様子を見るためにテーマパークの中を通ってきている。その帰りに1人でつぶやいていた。

「俺に何ができるんだよ 一体」

 自分が任命されたのがいまだに咀嚼できない気持ちのイライラと、今の職場を離れる寂しさがあった。


「テーマパークの仕事って?人を楽しませるってなんだよ」

 自分が本来やってきたことが違う形で喜ばせるという感じも分からずにはいた。本間はテーマパークのベンチで1人考えていた。




ゲストもかなり少なくなり、閉園前に帰るゲストが多くいた。


「楽しかったね また行きたいね」

「うん また行こう」


「今日すごかったな アトラクションもパレードも」

「おお良かったよな」



 たくさんのゲストたちの声が飛び交っていた。


「お気をつけてお帰りください 足元が暗くなっています」

 セキュリティというテーマパークの安全・運営を見守るスーパーバイザーの乾が帰って行くゲストに声をかけていた。


「乾さん ゴーストエリアとハリウッドエリアモニター完了してます」

「ああ ありがとう」


セキュリティキャストのモニターが終わり、スーパーバイザーの乾に報告した。


ゲストがいない場所でも裏で支えている人たちがたくさんテーマパークには存在する。




「まーくん ゲストの数少なくなってきたから最後のご案内してくれる 閉園時間前になってきたから」

「分かりました」


 正樹は、神谷に指示をされ最後の案内に向かった。




「ゴーストエリアのゴーストコースター最終のご案内をしております お早めにお願いします」

正樹の案内で、ゲストが続々と並び始めた。


「すごい数だね」

  高野がゲストの様子を見て、少し驚いた。

 「だね こちらですスタンバイエントランスから並んでください」

 


 「アトラクションの受付終了となります ご了承ください」

 

若木が出てきて、ゲストたちに声をかけた。

「えっもう終わりなの?まだ入れるんじゃないの?」

「申し訳ございません 受付は終了いたしました またお待ちしております」

 若木は、申し訳ございませんとゲストに謝った。



テーマパークが閉園となり、いつものように各セクションは、クローズ作業に入った。

「神谷さん明日って休みでしたっけ?」

「はい 明日は休みですね」

「そうですか」

「どうかしました?」

「いやキャストの欠員が出てしまって 明日中番からで出勤可能ですか?」

「明日ですね はい大丈夫です」

「ありがとうございます そしたら明後日は休みで大丈夫ですので」

「分かりました」

「あと来週ってスーパーバイザー研修ですよね?何やるかとか神谷さん知ってます?」

「いやなんか聞いたら ゲストサービスのこととテーマパーク運営のことをやるみたいだよ」

「そうなんですか そうすると入社した頃みたいなやつをもう一度やるみたいなかんじですかね?」

「まあそういう感じですね」

「ちょっとめんどくさそうですね」

「スーパーバイザーだからね こういうの聞いたら多いらしいよ」

「ですよね これから異動して新たなセクションに行ってもその新たなエリアの仕事の内容の研修もあるとも聞きましたし」

「だよね 先輩スーパーバイザーからいろいろ聞くけど 同じ内容に近いとか言ってたの聞いたんだよね」

「えっそれならやる意味ないですよね」

「たしかに それはありますね」

  神谷と若木は、業務についてのことやこれからの研修についてのことを話していた。




「ねね 真央火曜日にさ セクションマネージャーから話があるらしいよ」

「えっまじ?何だろうね」

 里菜が携帯を見ながら、真央に話していた。

「なんとなくだけどさ もしかしたらさ」

「何々?」

 里菜が興味津々に話を聞いた。

「いやなんか聞いた話なんだけど 本間さん異動?とかじゃなくて?」

「えっ真央知ってたの?」

「なんかたまたまさオフィスにさ 異動するみたいな紙置いてあったからさ それかなと」

「なるほどね 異動するとは そうすると社員は大変だよね」

「たしかにね 社員はセクション間の異動は毎回あると聞いたことはある」

「頻繁に異動するとさ 仕事覚えるのがね 社員はそれを教えるのが仕事だしね」

「キャストの方がそうすると楽だしね」

「それにしても本間さんが異動というのがまだ信じられない」

「私もだよ」

 里菜は本間の異動が少し信じられなかった、真央も同様にそのことが信じられなかった。







「まーくんお疲れさま」

「神谷さんお疲れ様です」

「あっ神谷さん明日シフトとかのびた方がいいですか?」

「そしたら明日1時間だけ延びれる?」

「1時間だけですね 分かりました」

 高野は1時間シフトを延びることになった。




その日の帰り正樹と高野は帰りが同じ方向だったので一緒に帰った。


「まーくんアトラクションまた人増えたよね アトラクションってただでさえ人多いからね」

「そうだよね どんどん人増えるから大変そうだよね」

「たしかにそれはあるよね まーくん明日いる?」

「あっうん明日いるよ 14時からクローズまで」

「私もだ じゃあ頑張ろう まだ未成年だから言うて22時までだけどね」

「うん まだクローズ後の作業まではさすがにできないよね あとさ来週の火曜日にさ アメリカンダイニングという店にヘルプで行くことになったんだけどヘルプとか行ったことある?」

「あああるよ ちなみにそこに私もヘルプで行ったよ」

「おおそうなんだ どんな感じだった?」

「かなりゲストが来るところで忙しいから レジの注文はよく聞いていくのと レジ以外にもフードを渡したりするから ゲストのレシートを確認して商品を渡す感じだね」

「アトラクションより大変そう」

「まあね 大丈夫だよ トレーナーとかその日のスーパーバイザーの人が教えてくれるからさ」

「そうなんだね 教えてくれてありがとう」


 高野と正樹は、帰りの駅までの道を歩きながら話した。





 火曜日になり、夢遊の2日目の勤務が始まった。


「バスになんとか乗れた 社員は羨ましいバス乗らなくて」

「社員もバスに乗りますよ」

「えっそうなんですか?」

 突然同じバスに乗っていた男性キャストに話しかけられた。

「はい 社員は本社オフィスからそれぞれのエリアに向かうバスに乗ってパークに行きます」

「そういう感じなんですね」

「はい 経営幹部や本社の方もパークを見たりしてまわったりするので その関係でバスに乗ったりします」

「それは初耳です すごいです」

「ですよね あっ僕の名前は若槻 奏多と言います よろしくお願いします ちなみに商品販売のキャストです」

「よろしくお願いします 私は向山夢遊と言います アトラクション担当です まだ入ったばかりで分からないことも多いです」

「ですよね いろいろ先輩に聞くといいと思います」


 バスがパークのキャスト通用口に到着した。

「着きましたね」

「早いですね」

「ちょっと僕先行きますね」

「分かりました お疲れ様です」

 先ほど会った若槻は遅刻しそうだったので、急いだ。

「よしじゃあ私も急ぐか」

「ああ待ってよ夢遊ちゃん」

「梨菜ちゃん久しぶり」

「久しぶりだね夢遊ちゃん」

「今日夕方からなんだね」

「そうそう 学校終わってから来たんだよ」

 偶然梨菜がバスに乗っていた。

「クローズまで頑張ろうね」

「うん頑張ろう」

 2人は、話しながらロッカーの方へと向かった。



「今日はちょっと余裕持って着いて良かったよ」

「そうだよね 学校終わりに向かうとなるとさ 時間気にしないといけないからきついよね」

「分かるよ それ 梨菜ちゃんどちらかと言えば 早そうなイメージだよね 着くの」

「そんなことないよ この前なんて ギリギリで着いてちょっとだけ注意されたしさ」

「それは意外だわ」

 ロッカーで着替えながら会話をしていた。




それぞれのアトラクションのオフィスに入って待機した。

「おお向山さん早いね」

「はい 遅刻しないように来ました」

オフィス内にすでにいた神谷が向山に話しかけた。

「今日は現場デビュー?かな」

「はい 今日がもう誘導とかやるみたいです」

「楽しみだね」

「はい 早くゲストにサービスしていきたいです」


 夢遊は、出勤前からワクワクしている感じだった。

 打刻の15分前になったので、夢遊は打刻をして準備をした。






フードオペレーション部では、連絡通りキャスト・他のスーパーバイザー全員が集まった。


「今日はみんな集まってくれてありがとう 実はうちのスーパーバイザーである本間くんが異動することになった」


「えっ嘘でしょ」

「えっ最悪」


「まじかよ」

「えっ」

 男性キャスト 女性キャスト全員が驚きを隠せなかった。


「ほらやっぱり」

「本当だ 真央の言った通り」

「でしょ」

 真央と里菜は、以前から知っているような感じの反応であった。


「じゃあ本間くん一言みんなに」

「あっはい 短い間でしたがお世話になりました 入社してから5か月で 本当はみなさんともっと一緒に働いてゲストサービスをしたかったのですが 突然の異動が決定してしまいました 僕も正直言うと みなさんと同じように驚いています 今度の部署は テーマパークマーケティング本部という部署になります はじめてやる仕事なのでまだ全然ですが 現場経験を活かして頑張りたいと思います 残りの期間も全力で頑張ります」


 キャスト スーパーバイザーから拍手をされた。


「みんな今日は本当ありがとう この分の時給はでないけど 本間くんの最後のスピーチが貴重な財産となればいいかな?」


「別に大丈夫ですよ」

「最後なんだし こんな機会ありませんから」


 何人かのキャストがここに来たことによる時給より本間のスピーチの方が大切だと言っていた。


「じゃあ本間くん今日も頼んだよ 俺ちょっと出てくるから」

「はい 頑張ります」

 セクションマネージャーの太田は、オフィスをあとにした。

「本間さんがまさか異動とは驚きですよ」

「行ってほしくなかった」

 何人かの女性キャストたちは嘆いていた。



 その近くにいた真央と里菜は、涙を抑えながらまたパークへと戻って行った。




「夢遊ちゃんついに現場デビューだね おめでとう」

「ありがとうございます」

「楽しみにしてたとか神谷さんが言ってたからさ」

「そうだったんですか 広まるの早いですね」

「そうだよ すぐ広まっちゃうよ」

「なるほどです」

「そうそう 余談だけど恋愛ネタとかね」

「さすがに恋愛だと広まるのは早いですよね」

 オフィスで待機しながら、話をしていた。

「そうだよ みんなそういう話大好きだからさ」

「ですよね」

「恋愛はそうだよ じゃあ時間になったからそろそろパーク行きましょうか」

「行きましょう」

 高野は、夢遊に持ち物の確認をして、オフィスを出た。



「アトラクションから近いドアから抜けるからね」

「はい 分かりました」

 夢遊は高野から案内され、アトラクションから近いドアを抜けてアトラクションへとたどり着いた。



「こんにちは 何名様でしょうか?」

「3名です」

「かしこまりました 3番の列にお並びください」




「あそこでご案内している女の子がゲストに何名か聞いて 列にどんどんご案内

 していくんだけど 基本は3人以上が3以降とかの列とか 少ない人数の時は

 前からとかあるけど その時によって変わるから臨機応変に対応してね」


「分かりました」

 高野から夢遊は、アトラクションのゲスト対応について教えてもらった。


「じゃあさっそくやってみようか」

「もう今からですか」

「そうだよ 実践あるのみ あの女の子にフォローしてもらえるように頼んでくるね」

「分かりました ありがとうございます」



「新原ちゃん 新人の子がこれから誘導をやるからフォローしてあげてね」

「分かりました」

 新原という女性キャストが夢遊をフォローすることになった。


「じゃあ新原ちゃんの所に行ってね」

「分かりました」


「向山です お願いします」

「新原です お願いします」


 女性キャストである新原と夢遊はお互いに自己紹介をした。


「一応 私がはじめに実践するから それでやってみましょう」

「分かりました」


ゴーストコースターが戻ってくるタイミングで、はじめに新原が実践して見本を見せた。

「こんにちは 何名さまでしょうか?」

「2名です」

「かしこまりました では1番の列にお並びください こんにちは 何名様でしょうか?」

「4名です」

「かしこまりました 5番の列にお並びください」

 新原は、実践してみた。


「じゃあ次コースター来たらやってみましょうか」

「はい 頑張ります」

 夢遊は、実践してみることにした。

「こんにちは 何名さまでしょう?」

「3名です」

「かしこまりました(あれ右か左どっちに流すんだっけ)」

 新原が左手で左という合図を出し、夢遊がそれに気づいた。

「3番の列にお並びください」


 夢遊は、ほっとして、なんとか次の案内をすることができた。




 2時間が経ち、一旦休憩しに、高野と夢遊はオフィスに戻った。


「よしじゃあ夢遊ちゃん休憩行こうか」

「はい分かりました」


その頃、同じアトラクション担当の正樹は、アメリカンダイニングというお店に、ヘルプに行っていた。

「こんにちはスーパーバイザーの片山です」

  フード担当の女性スーパーバイザーが自己紹介をした。

「佐藤くんだね アトラクションのね 今日はありがとう」

「いえいえ」

「そしたらゲストからレシートを見せられたら 確認してお渡しする感じね

 先輩キャストがたくさんいるから何か分からないこととかあったら教えてくれたりするから聞いてね」

「はい 分かりました ありがとうございます」

「私は他の店を見てくるね」

「分かりました」



 「とりあえずお疲れ様 どうだった?」

 「なかなか楽しかったです」

 「それは良かった 今度はエントランスあたりの誘導でゲストサービスをしていくから」

 「分かりました」

 「一度全部通してやってみて徐々に慣れていく感じになるね」

 「そういう感じなんですね」

 「うん そうそう」

 

 

休憩が終わり、アトラクションエントランス場所へと向かった。


「相変わらず すごい数のゲストですね」

「そうだよね 平日なのにこんなにいるとは」

「驚きます」

「だよね 入ってくるゲストに こんにちは こちらはゴーストコースターですスリル満天で、恐怖のゴーストから逃げていくアトラクションになっています」

 「かなり長いセリフ」

 「そうね まあセリフというかちょっとしたトークだね たくさんの人に来てもらえるうに」

 「なるほどです」

  


  すると、ゴーストコースターを乗り終えたゲストたちがたくさん出てきた。

 「やばかったね」

「すごいアトラクションだったね」

  10代の女子高生2人組のゲストが、話しながら出てきた。

 

夢遊は、そういう声を聞いて、楽しんで乗ってくれたことに感謝をした。


  

  そのすぐ近くで、アトラクションを乗車してないゲスト2人が、その近くで話をしていた。

  彼女たちは、小学生くらいの女の子2人で、ベンチに座って話をしていた。

 

「ここのテーマパークなんかつまらないな」

「そうだね お兄さん お姉さん笑顔なくて怖いよね あと面白くないし」

  夢遊はゴーストエリアのすぐ近くのベンチで、そんな会話を聞いてちょっとその言葉

  の方が、先ほどの良かったと言ってもらえた言葉より重みがあり心にぐっと来てしまった。


「夢遊ちゃんどうしたの?」

「あっいやなんでもないですよ」

「そっかなら良かった」

ゲストへの誘導や案内が続いた。




 勤務が終わり、オフィスに戻った。

「夢遊ちゃん 今日はお疲れさま どうだった?」

「はじめてのことばかりだったけども たくさんのゲストにサービスなどすることが

 できたので楽しくやれました」

「そっかそれならよかった よしそしたら次のシフトはいつかな?」

「次はまだ分からないです なのでちょっと予定確認しますね」

「分かった そしたらチャットアプリのID教えてくれる?そこに候補日を送ってくれれば 私も合わせられるから 若木さんにもそのまま伝えられるし」

「分かりました」

夢遊は高野とチャットIDを交換した。


「じゃあ勤務の候補日教えてね」

「分かりました」

「そしたら退勤していいよ 神谷さんたちもそこで分かるから」

「分かりました お疲れ様でした」

「お疲れ様」


 ロッカーへと向かい、夢遊は、さっきのゲストの言葉を考えていた。

「つまらないか 面白くない 私たちの笑顔が怖い なんか自分が言われている感じだな」


「お疲れ様 夢遊ちゃんじゃんなんか久しぶりな感じがするけど気のせいかな」

「気のせいだよ」

「なんか1人事言ってたけど なんかあった?」

「あの実は」

 ロッカーでたまたま、梨菜に出くわした。





「なるほどね そんなことがあったんだ」

2人はいつものカフェブラウンで話していた。

夢遊は先ほど1人で考えていたことを、梨菜に話した。

「そうそう その子たちさ 小学生くらいの女の子で まさかそんなこと言うと思ってなかったけど そう感じたんだろうなと思ってね」

「子供がそこまで感じるのってなかなかだよね」

「うんうん つまらない 面白くない おまけに笑顔が怖いのこの3つだよかなり胸が痛いよ」

「そっか 夢遊ちゃんが気にすることないよ その子たちはどこでそう思ったか知らないけど 違うセクションのキャストがそういう光景だったとかね」

「ああなるほど そういうことか 実は私もちょっとだけどその辺うすうす感じてんだよね」

「えっそうなの?」

「そうそう 例えばさ 台本見ながら真顔でゲストに向かって話すし あとはなんかさゲストが話しかけて話そうとしてるのに少し塩対応だったりして ここで働いてるの本当キャストかよと思ったんだよ ちなみに まだその辺改善されてなくてね」

「そうなんだ それ聞くと小学生の子たちもそういう風にとらえたのかもね」


「きっとそうだよ」

「うんうんだよね 夢遊ちゃん自身はなんか変えたい感じとか?」

「うーんできたら変えたいなとは思うけどすぐには難しいよね しかも大きな会社だし

 私の力ではなんとも」

夢遊は、自身では、変えたいと思うものの自分の力ではどうにもならないことに戸惑いがあった。

「まあね いい方向に進みたいよね」

 夢遊と梨菜はカフェブラウンを出て、解散した。


 その日の遅番で、本間はフードオペレーション部での最終勤務を終えた。


「本間さんお疲れさまでした」

「お疲れ様みんな 本当寂しいよ」

「私たちもですよ」

 里菜と近くにいた3人のキャストが泣いていた。


 何人かのキャストが本間のために作った色紙とプレゼントを渡した。

「本間さん次の所でも頑張ってください」

「頑張ってください」

「頑張ってください」

代表で真央と里菜が色紙を渡し、もう一人の女性キャストの野島がプレゼントを渡した。


「わっありがとう いや僕も寂しいよ」

 本間も雰囲気にのみ込まれ泣いてしまった。

「本間さん泣かないでくださいよ」

雰囲気にのみ込まれ泣いてしまった本間に、里菜はなぐさめの言葉をかけた。

「いや僕こういうの弱いんだよ」

「またパークのお店たまに見に来てくださいよ」

 真央が来てほしい旨を本間に直接伝えた。

「行くよ もしかしたら企画のために 現場たまに行くかもしれないし」

「えっ楽しみにしてますね」

 真央はワクワクした感じの表情だった。

「その時までみんなの成長した姿をぜひ見せてもらうよ」

「はい」

 そこにいたキャスト全員が、返事をした。

「写真撮りましょうよ」

野島が提案して、みんなで写真を撮ることになった。

そこからは、各自写真を撮って最後の勤務に良い思い出をつくることもできた。



夢遊は、自分でできる範囲で、ブランドニューオブアメリカをちょっとずつでも変えることができないか?ということを行きつけのカフェブラウンでちょっと考えてみることにした。

  「どこから変えるかだよな 難しい サービス?私ができることなんて限られてるしな しかも社員ではないということで それもそれで難しいし」

  

  「何一人言 言ってるの?」

  「わっ華美じゃん 何でここに」

  「何でって勉強しに来たの 特進だから課題が多くて」

  「大変だ 私特進じゃないからあまり課題 出ないんだよね」 

  「いいな 羨ましい」

   たまたま課題をやりに来ていた華美にカフェブラウンで、出くわした。

  「ところで 何を考えてたの? 1人言言うくらいだから何か真剣に考えてたの?」

  「そうだね ちょっとテーマパークのことをね」  

  「最近アルバイトのことなど いろんなこと考えてるよね まだそんなにシフト入ってない感じ?」

  「うんちょっといろいろあってね シフトもまだそんなに入ってないね」

  「なるほどね どんなことがあったか聞いていい?」

  「いいよ」

   華美にどんなことがあったかを聞かれたので、話すことにした。

  

  「実はね たまたま今日勤務で ゲストサービスをしていたんだけど 小学生くらいの女の子2人かな?その子たちが2人で話してたんだけど つまらない 私たちキャストの笑顔が怖いとか言ってて その言葉がちょっと私の中で引っかかっててね」

  「そういうことか まさか夢遊がそこまで考えてると思わなかったよ」

  「そう?」

  「うん だって夢遊ってそういうことあまり考えてなかったじゃん それも1つ成長だけどね その小学生の子たちのそのちょっとした言葉を受け止めて自分がどうしていくかとか考えるのとかね 普通の人なら もしかしたら 考えないかもしれないしさ」

  「そっか たしかにそうだよね」

  「うんうん だからここからどうするかとか頑張って考えていくといいんじゃないかな? 自分ができるところから」

  「うんそうだね 考えてみるよ」

   夢遊は、華美に励まされ、モチベーションを上げて頑張ることにした。



ブランドニューオブアメリカのオープン前、多くのオープンのキャストたちが、ゲストが

 来る前の準備をしていた。


「渡辺さん そこの新商品全部出してくれる?」

「はい分かりました」

 商品販売部の男性スーパーバイザーの田村健昇がキャストに指示を出していた。商品の

 陳列や品出しなど、商品を扱うお店は朝からも忙しい。


「ちょっと在庫確認と発注などをやるので オフィスにいますね なんかあったら聞いて

 ください」

「分かりました」

渡辺の他にも、6人くらいのキャストがいた。平日なので、人員不足にはならずにすんでいる。


 ブランドニューオブアメリカのオープンに備えて、多くのキャストがたくさんいろんな準備をしていた。

 


「今日から本間さんいなんだよね」

「里菜 そうだよね モチベが」

「てかさ新しいスーパーバイザー誰来るんだろうね」

「たしかにまだ決まってないしね 何も聞いてないな」

「めんどうそうな人だったら嫌だよね」

 里菜と真央は、本間がいないということで、ちょっとモチベーションが下がっていた。

 次のスーパーバイザーが一体次は誰が来るんだろうという疑問がありつつフードワゴンの準備をしていた。




 本間は、今日からテーマパークマーケティング本部所属になり、そこの本部長をやることになる。

「今日から本社勤務か頑張るか 出勤前に少しだけお茶できるから悪くないけど」

 出勤のちょっと前に、カフェに寄り、お茶をしながら本を読んでいた。

 



  本を置いて、本間は少し考え事をした。自分がこのテーマパークを集客できるかできないかを、さまざまな形で判断しないといけないというプレッシャーもありつつ、大きなお金を動かしていることにも緊張が走った。今まではいくつかのお店を管轄して、売上を上げていた、そんな自分が今度はテーマパークの全体を見て、ここを新たにつくるか、壊すかを決める、もちろん楽しみな部分もあった。新たな場所で活躍している姿を、早く前に所属していた仲間たちにも見せていきたい思いもあり、本間のモチベーションがそこに変わりつつあった。そういう思いを持ちながら、今日の出勤を頑張ることにした。




「よしそろそろ行くか」

  本間は立ち上がり、ジョイイマジネーションの本社へと向かった。

 






「高野ちゃん向山さんの次のトレーニング計画書の記入終わった?」

「はい 終わってます」

高野は神谷に夢遊のトレーニング計画書の記入について聞かれた。

「ありがとう ゲストサービスとかはさ 高野ちゃんから見て向山さんはどんな感じ?」

「いろんな方にゲストサービスはできていますね 笑顔もあったのでそれを続けていくことですかね」

「おおなるほどね さすが接客コンテスト毎年優勝している実力の持ち主だね」

「いえいえ そんな高く上げないでくださいよ」

  高野は、神谷に毎年出場している接客コンテストのことを持ち上げられた。

「おはようございます」

「若木さんおはようございます」

「おお高野ちゃん早いね 何時から?」

「オープンの準備からですよ」

「そうなんだ いつもありがとうね」

「いえいえ」

「若木さん 今日休憩どういう風にまわします?」

「そうですね 様子見てまわします 平日なのでゲストの来場者数が少ないかもなので」

「そうしましょうか」

「はい 神谷さん今日って他のアトラクションのモニターもするんでしたっけ?」

「たぶん行くかもしれないです 少しだけですが」

「分かりました」


 神谷と若木は、今日のパーク運営についてのことを話していた。


「社員って大変そうですね」

「そうかな?時間変わるけど意外と面白いよ そうですよね?若木さん」

「まあそうですね ただ異動などもあるからそこが大変かなと 飲食とか商品扱う所にも行ったりするかもだし」

「いろんな仕事やるんですね」

「そうそう まだ僕と神谷さんも異動はないけどね」

「アトラクションがはじめての所だったんですね」

「そうなんだよ 高野ちゃん興味あるの?」

「うーん少しかな まだ一番やりたいとかではないけども」

「そっか まあキャストを育成とかもあるし 高野ちゃんならやれそうだと思うけど」

「そうですか?ありがとうございます」

 若木に高野は褒められて、嬉しそうにしていた。








携帯目覚ましの音 ピーピーピー

「起きないと あれ今何時? やばいもう7時だ」

夢遊は、7時に起きて支度し、学校へと向かった。学校が終わったら、そのままバイトがある感じだ。パジャマを急いで脱ぎ制服のスカートをはき、シャツを着て、ネクタイをした。






「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


母から見送られ、家を出た。学校から家までは2駅くらいだ。わりかし近いから通いやすい。


いつもならカフェに行くのだが、今日は、少し遅く起きてしまったので、そのまま学校へ行くことにした。


スマホを持ち、手でいじりながら電車で過ごしていた、夢遊は、前回のテーマパークで起きたゲストのことも頭の中で常にめぐらされている感じだった。



電車の中で、夢遊と華美は偶然出くわした。

「おはよう夢遊」

「おはよう華美」

「まさか夢遊と同じ電車に乗るとは」

「だよね華美と同じ電車とは偶然だよ」

 夢遊と華美は、同じ電車に鉢合わせていた。

「今日もバイト?」

「そうそう 今日もね 行くのが楽しみになったよ」

「もうすっかりテーマパークスタッフだね 例のあのやつも考えてるのいろいろ?」

「スタッフじゃなくてキャスト そうだね 勉強以外に常に考えてるよ」

「えっ従業員にそういうちゃんとした呼称あるんだね 偉いね」

「そうだよ 私ができることを少しずつね ありがとう」

「ということは お客さんにも? 大きなテーマパークを何か変えることできたらいいよね」

「あるね ちなみにゲストという言い方をするよ 変わればいいとは思ってるよ」

「すごい なんか他のテーマパークとレベルが違いすぎて驚きしかないよ 夢遊の行動力次第だよ」

「そうだよね 私もこんな大きなところで働けるとも思ってなかったからさ

私の方が驚いてるよ 今までアルバイト落ちてたしさ 自分ができることを信じてみるよ」

 夢遊は、華美が、テーマパークの従業員にキャスト、お客さんにゲストと呼ぶことに驚いてるのと同じように、夢遊も、今までアルバイトにたくさん落ちていた自分が今、テーマパークという大きな場所でやれていることに対しても驚いている。もう一つは、前回自分自身が感じていた、ゲストからの「つまらない」「お兄さんたち笑顔がなくて怖い」ということなどだ。夢遊はできることを信じて何かやってみることにした。





「おお あっという間に駅着いたね」

 夢遊は、電車のアナウンスにすぐ気づき、華美に言った。

「だね 今日も頑張ろう」

「頑張ろう」

 2人は、学校へと向かった。







「この度 フードオペレーション部から来ました 本間瑞樹です よろしくお願いします」


 本間は、今日から新たな部署であるテーマパークマーケティング本部の人たちに挨拶をした。

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 全員がすでに揃った状態であったので、緊張していた。そしてここの責任者になるという

 こともあるので、なおさらプレッシャーもあった。

「そしたら 引継ぎ書などやこれは絶対に必須というやり残し業務はありますか?」

「すみません 実は前回ここにいたテーマパークマーケティング本部長が他の部署へと異動になりましたが その方が自己都合で退職になりまして 引継ぎが不明確になっています」

「えっ本当ですか まさかの退職」

「はい 詳しいことは分かりませんが 体調を崩し 長期だと戻るのが難しいかもと考え

 人事から退職を勧められ そのようになりました」

「依願退職ですか」

「そうですね 本人ともよく相談して そうなりました」

「なるほどです 分かりました」

37くらいの女性社員が詳しく教えてくれた。

「そしたら一度ミーティングをしてもよろしいですか?」

「えっミーティングですか?」

「はい 一度新たな体制になるということで全員の共有をしておきたいので」

「分かりました では皆さんに声をかけます」



「こんにちは ようこそゴーストコースターへ 恐怖のライドとなっています スリル満天のアトラクションです」


 若木がゲストサービスをしていた。


「すみません トイレはどこにありますか?」

「トイレは右奥ですね」

「ありがとうございます」

 若木がゲストサービスをしている時に、ゲストからトイレの場所を聞かれた。

 ゲストモニターをしながら、ゴーストエリアの来場者も見ていた。



「まーくんお疲れ様 今ここ立ってくれる?」

「分かりました」

 正樹が休憩から戻り、そのあと正樹はエントランスの場所で呼びかけをすることになった。




「座席に着いたら 必ずシートベルトを締めて 安全バーをおろしてください おろしたら

 キャストが確認しに行きます」

他のキャストがライトを照らして、確認し始めた。

「お客様奥までバーをお願いいたします」


 キャストがゲストの安全バーの確認が終わったので、合図を出した。


「スリル満天の恐怖のコースターゴーストコースター発車します ではゴーストにはくれぐれもお気を付けて」

キャストの顔がこわばっている感じであった。ゲストはその恐怖の雰囲気にのみ込まれている様子でもあった。


コースターが、動き出し、キャストは次のゲストを案内しに行った。


ジョイイマジネーションの本社のテーマパークマーケティング本部に異動した

 本間は、テーマパークの地図を見ていきながら、集客の人数やさまざまなアトラクションや施設などの来場者人数を見ていった。


「ゴーストコースターがたくさん入っているんだ ハリウッドエリアの場所もショーも意外とゲストが来ているな ただ西武エリアがちょっと微妙だな」


 本間は、ちょっと悩んでいた、さまざまなアトラクションや施設がある中で、新しくするべきもの、取り壊さないといけないものなど、いろいろ考えないとだめだった。


「みなさん 本日会議やっても大丈夫ですか?」


「えっ今日ですか 今日は難しいかと 皆さん他の業務で忙しいかもしれませんし」

 本間より年上の30代後半の社員が驚いたような顔つきで言っていた。

「そうなんですか 忙しいかと思うのですが そこをうまく調整していただいて

 PCで できる業務はなるべく明日や明後日にしてもらえると幸いです 会議を

 13時から始めたいと思います」


本間は、そう言うと一度オフィスから出た。




「何で急に会議をやるわけ?」

「それね 先に言っといてくれればいいのに」

「前の本部長の方が先に言っといてくれたし PC業務だけじゃないし」


40代の3人の女性社員が、口々に本間の愚痴を言い始めた。


「まあまあ彼もまだ若いのだから でもあまり調子に乗られちゃ困りますよね」

「本当ですよね」

1人の40代女性社員である山田が言った。

「本当なら林さんがここの本部長になる予定だったはずですよね?

 何で急にあの人が」

「それが分からないんですよね 僕もそういう風に感じていたのですがね」

「人事も何でそういう風にしたのかわからないわよね」


「ちょっと制限させてやりましょう あまりあいつの指示で 動きたくはないので」

「そうね 私も協力するわ」



40代くらいの年齢である男性社員林と40代くらいの女性社員である山田が、

本間に対して、なんやら悪だくみを考えていた。






「よし学校終わった」

「お疲れ もうバイト行くでしょ?」

「うん そうね もう移動しないといけないかも」

「そっか 頑張ってね 私は英語の資格試験の勉強で まだ学校いるから」

「ありがとう 華美も頑張ってね」

「ありがとう あの私もいろいろ考えてみたんだけど 夢遊が常におもてなしと最高なゲストサービスを見せていくことも必要かなとも思う そうすればみんなも変わっていくし あとは夢遊が自分で考えているプランを実践していったりね」

「華美ありがとう」

華美が、夢遊にアドバイスを送った。


 夢遊は、学校を出て、ブランドニューオブアメリカに向かった。







「そう言えばまーくんさ この前のアメリカンダイニングのヘルプどうだった?」

「混雑でやばかったですよ いろんなキャストの方に助けてもらいました」

「そうだったんだね ヘルプは大変だよね」

神谷が、以前正樹がヘルプに行ったので、それについて「どうだった?」という感じで、さりげなく聞いてみた。

「はい しばらくヘルプは厳しいかもです」

「そんなこと言わずにちょっとは 入ってよ」

「あっはい まあ考えますね」

 正樹は、苦笑いではあったが、多少あれば入るような意欲であった。

「言うて 毎回あるとは限らないからさ」



「お疲れさまです 今日もいつもの一日が過ぎますね」

「おお高野ちゃんお疲れ様 休憩?」

「そうです なんか最近モチベーション上がらなくて困ってます」

「モチベーション?高野ちゃんらしくないな」

「私もずっとやってるとモチベーションが上がらない時あるんですよ

 高野は、モチベーションが上がらずにいた。毎日のように働いているので

そういう時も少なからずあった。

「まあ少しリラックスしていくのがいいかもね 甘いものを休憩時間に食べるとかね」

「ああそれいいですね じゃあ神谷さん今度チョコレート買っといてください」

「え 俺が買うの?」

「はい 社員ですし」

「まあそうだけど どこのチョコレート?」

「Gチョコ?とか」

「それ高いな」

 神谷が高野とチョコレートの話題で盛り上がっていた。すると、誰かが走ってくる足音が聞こえた。

 

 若木がオフィスの扉を急いで開けた。

「はあはあ」

「若木さんどうしたんですか?かなり息きらしていますが」

 神谷が心配したように言った。

「今日テーマパーク内で取締役がパーク内を巡回するらしくて エリアごとに分かれているらしいから 来たら挨拶をと言われました」

「えっまじすか?いつもスーツ着ている人たちですね?」

「そうです あとバインダー持っているみたいです」

「取締役の方々が来るんですか?」

 一緒に聞いていた高野が反応して質問した。

「そうそう 来るみたい なんかやりにくいかもな」

「偉い方々が来るということですもんね」

「ちなみに何のために回るかは言われてません」

「若木さんありがとうございます」


ブランドニューオブアメリカを運営するジョイイマジネーションの取締役たちが、各エリアに行く準備をしていた。


「本日ハリウッドエリアに行く方々は何人でしょうか?」

  副社長が取締役に尋ねた。

「ハリウッドエリアは私入れて8人です」

「分かりましたありがとうございます 続いてワシントンDCエリアは6人でお間違いありませんでしょうか?」

「はい 大丈夫です」

「ありがとうございます ネバダ州エリアのゴーストタウンのエリアは5人でしょうか?」

「はい大丈夫です」

「ありがとうございます それでは各エリアのアトラクションと施設につながるバスにそれぞれ乗っていただきます お待ちください 私と社長はのちの最終バスに乗りますのでよろしくお願い致します」


  それぞれの取締役が、エリアに直結するバスに乗った。そこからさらにエリアの施設やアトラクションに直結するバスに乗る。バスの正面の点灯ライトでそれぞれの行き先が表示されていた。基本これは社員しか乗れない、ある意味特別なバスだ。


  本社から取締役が巡回する旨は文書の通達で知らされていた。



  

夢遊は、キャスト専用バスに乗り、ブランドニューオブアメリカへ向かった。



  ブランドニューオブアメリカに着き、そのまま急いでロッカーへと急いだ。

 

「よし急ごう」

「あっ夢遊ちゃん」

「久しぶりです真央さん 今日は里菜さん休みですか?」

「今日はなんか予定あるらしくいないんだよ」

「えっ珍しいです」

「そう?私も今からだよ 仕事は慣れた?」

「いつも里菜さんといるイメージですし まあ少しは慣れたかなと」

「そっかそれなら良かった これから頑張ろうね」

「はい 頑張りましょう」

 ロッカーで、たまたま真央に会い、着替えてる時に話した。

「私今日はクローズまでなんだよ 夜遅くまでだから本当きつい」

「クローズまでなんですね」

「そうそう 夢遊ちゃんは?」

「私はまだ未成年なので働けるのは22時までですね 22時以降は働けないので」

「そうだよね そうするとその時間までしか働けない感じになるんだね」

「はい 18歳になるまで頑張ります」

「だよね その年齢まで待たないとだよね」


 着替え終わり、2人はそれぞれの部署に向かった。


「じゃあ夢遊ちゃん頑張ってね」

「真央さんありがとうございます」







ワシントンDCエリアの場所にある、NASAのスペースコースターで梨菜が、案内をしていた。

「1番にお並びください」


 そのすぐ近くにスペースコースターの担当であるスーパーバイザーの彩名由香がアトラクションのモニターをしていた。

「4番にお並びください」

 彩名も一緒にゲストを誘導し、案内していた。


 スペースコースターには、多くのキャストがたくさんいて、案内をしている様子であった。

「彩名さん今大丈夫?」

「はい 大丈夫です」

彩名は、セクションマネージャーの高山にオフィスに呼ばれた。


「もうすぐ取締役の方々がパークに到着して それぞれのアトラクションや施設を巡回しに来るから 来られた際に 僕が対応しないといけないから この時間もモニターお願いね」

「分かりました そうすると次の時間のマネジメント業務はどうしますか?」

「それは 明日か今日のクローズ作業でやってくれればいいよ」

「分かりました」

「じゃあよろしく」

 オフィスにセクションマネージャーと話した後、彩名はまた戻った。





  ジョイイマジネーション本社からパークに取締役が乗ったバスが到着した。

 

 「ではみなさんよろしくお願いします」

  副社長が取締役たちに伝えた。

 「私と社長はあとから向かいますのでよろしくお願いします」

 「分かりました」

 「分かりました」

 「分かりました」

  それぞれの取締役たちが返事をした。

 

  スーツを着て続々とパークの中へと向かい始めた。






 

 「もう16時半なのに まだみんな来ないな」

 

「あっもう会議始まってますか?」

「まだですが 時間にはスタートさせたいので早めに来ていただけると助かります」 

「分かりました」

 20代の若い社員が本間に指摘され、納得していた。

 

 そしてようやく会議を始めることになった。

「それでは会議を始めていきたいと思います 皆さん時間で始めたいと思いますので

 時間になったら必ずお集りください」


「分かりました」

「分かりました」

「分かりました」


何人かの社員が、返事をしたが全員が返事をしているわけではなかった。



「本日の定例会議で話し合いたいのは いくつかのアトラクションについてです これから新しくリニューアルさせるかということや新たなアトラクションをつくるかなどを考えたいなと思っております」


「えっなんで急にそんなことを?」

「そうですよ そんなのすぐには無理ですよ」


「今リニューアルオープンさせたり 新たに新たなアトラクションをオープンさせないと

 ブランドニューオブアメリカは厳しくなってくると考えました」


「その理由はなんなのよ」

 山田がツッコんだ。


「ついこの前まで僕はフードオペレーション部にいましたが ゲスト1人1人の様子を見ていると 楽しんでいない方もいました そこで感じたのは、ちょっとしたマンネリ化があると感じました なので新たに形にしたいとも考えました」


「本間さん では聞きますが 具体的にどこをどうするかを考えていられるのですか?」

 林が本間に質問した。

「ハリウッドエリアに日本エリアを作りましょう」


 本間からそれを聞いた瞬間に社員一同は、唖然としていた。

「ハリウッドエリアに日本エリアなんて作ったら アメリカらしさがなくなるじゃない?」


「そうですよ ここはアメリカをテーマにしたアトラクションなんですよ」

「今の状況を見ている限り 一部のアトラクションに集中してしまっている感じがあります 新たな風を吹かせることで ゲストがマンネリを感じなくてすみます」


全員は、少しだけ黙り込んでいた。


「ここのテーマパークの名前はブランドニューオブアメリカですよね 真新しいアメリカを目指すことじゃないですか?どうしてこの名前になったか詳しくは分かりませんが

 その名前のようにしていくなら 新たに何かを作るべきだと考えます」


「予算とか あとは作ったとしてあまりゲストが来なかったらどうするんですか?

 そしたら本間さんの責任になるんですよ」

 20代の社員が本間に立ち向かって言ってきた。

「まず来ないと思うものは作りませんよ それをどうしていくかを考えていくのがこの部署の仕事です」

 本間は、20代の社員に、強めの言葉で返した。

「なので 僕のプランは変わりません 来週までにどのような感じにしていくかを考えてきてください 今日の定例会議は以上です」

 会議を終えて、本間は部屋から出て行った。


「なんか勝手に進めてるじゃない?」

「あいつがこのまま暴走されたら困るしな」

 山田が林に、本間のことで愚痴った。

「食い止めないと」

「だよな」


「やっぱりなんか嫌だよな あのプラン」

「だよな 他の社員みんなどう感じてるだろう」

 その近くに座っていた20代の男性社員2人が話していた。


テーマパークマーケティング本部には、ちょっと異様な雰囲気が漂っていた。


「お疲れさまです」

  夢遊が大きな声で挨拶をした。

「お疲れさま 今からなんだね」

「はい 今からですね」

「もうだいぶ慣れてきた?」

「少しは慣れてきたと思います」

若木が「お疲れ様」と挨拶し、夢遊にちょっと仕事が慣れてきたかを聞いてみた。

「それは良かった その調子で今日頑張ってね」

「はい 頑張ります(前回のあれ言おうかな) あの若木さん」


「若木さん すみません今よろしいですか?」


「はい大丈夫ですよ」

 夢遊に名前を呼ばれた若木は振り向いたが、違う女性キャストがオフィスに来て、かぶってしまった。そして、若木はアトラクションの場所へと行った。


「ああタイミングが なんかもやもやするな この感覚」

 すると、高野がオフィスに入って来た。

「お疲れ様です ああ夢遊ちゃんお疲れ様」

「お疲れさまです」

「今日も頑張ろうね あれなんか考え事してた?いつもと顔つきが違う感じだったから」

「そうですか?」

「そうだよ まあ何かあったら言ってね」

「分かりました」

 高野は、ちょっと夢遊を心配している様子であった。


「今日は違うアトラクションの研修やるよ」

「えっ今日違うアトラクションに行くんですか」

「そうだよ 他のアトラクションも人員とかもあるけど組まれたりするんだよ」

「なるほどです でも楽しみです」

 他のアトラクションの研修に行くということで、ちょっと夢遊は、ワクワクしている感じであった。

「じゃあもう少し待っててね」

「はい」

 その後、高野はオフィスを出た。



「パーク限定のストロベリードリンクいかがでしょうか?」

「真央ちゃん今日なんか元気ないよ」

「そう?最近疲れてるかも」

 同じ部署の女性キャストに真央は少し心配されていた。

「(本当は本間さんがいないからだけどね)」



  すると、取締役たちが、パークを巡回していた。

「ねね あの人たち例の取締役かな?」

「たぶんそうだと思う」

 その女性キャストは真央に取締役かどうかを確認して聞いた。

「なんか一瞬にして緊張してきたんだけど」

「分かるわ 美鈴ちゃんも?」

「そうだね いつも通り とりあえずやろうか」

 緊張しながらも、2人はいつも通り、ゲストサービスをすることにしていた。


 黒いスーツを着た、取締役たちの何人かがパークを歩いていた。キャストや社員たちには、なぜ巡回をしているのかを知らされてはいない。




「お疲れ様です」

 正樹が、アトラクションを巡回しに来た、1人の取締役に挨拶をした。

 取締役は、少し会釈をするだけだった。

「社員はどこにいるか分かるかな?」

「あっえっと今どこにいるかは分からないです」

「分かった 少しオフィスにいるので 会ったら伝えてください」

「分かりました」

1人の取締役は、ゴーストコースターのオフィスに行った。



「神谷さん 取締役の方が来ています」

「あっ分かったありがとう」

 正樹から、そのように言われると神谷はオフィスへと向かった。



「夢遊ちゃん そしたら行こうか ごめん待たせて ゲスト対応してたからさ」

「大丈夫ですよ」

「ごめんね 少しだけ歩くよ」

「分かりました」

 ゲスト対応をしていた、高野が少し遅れてきてオフィスに戻ってきていた。


 ゴーストホテルに向かう途中に、何人かの取締役たちが、歩いていた。

 黒いスーツを着た人が多かったので、夢遊が高野に質問した。

「今日なんであんなに黒いスーツを着た人がいるんですか?」

「あっそうだ言ってなかったね 今日は取締役の方々がパークを巡回しに来てるんだよ」

「巡回ですか」

「そうそう だからもしうちのアトラクション来てたら挨拶をしてと 神谷さんと若木さんが言ってた」

「なるほど ちなみに何で巡回してるんですか?」

「それは社員もキャストも知らされてなくて ただ通達に巡回しに来ることしか書かれてないらしい」

 夢遊は、理由も分からないのに、なぜ巡回をしに来ているかを疑問視していた、何かあるということを直感で感じていた。


「まあ気にしなくていいんじゃない そのうち分かると思うし」

「そうですね」

  高野から気にしなくていいという風に言われたが、夢遊の中では、前回のやつのように少し心の中に残っている感じであった。

「よし着いた ここがゴーストホテル 意外と大きいでしょ」

「確かに 大きいです」

「ちなみにここのアトラクションは 歩いてからアトラクションに乗るタイプのやつで

 行くまでドキドキするんだよ セリフもしっかりあるから覚えてきてね」

「分かりました」

「じゃあ今日はちょっと見ながら ゲスト対応する感じになるけど 次回からは誘導から頑張っていこうね」

「はい 分かりました」

 前回のアトラクションの研修と同様に、誘導からやっていく、そこからステッアップしながら徐々に仕事をやっていくイメージだ。




「ちょっと暗いから気を付けてね」

「はい 気を付けて歩きます ありがとうございます」


 高野と夢遊は、ゴーストホテルに入った。






 取締役たちに副社長がシーバーで様子を聞いた。

「みなさん巡回の様子はどんな感じですか?」

「今まだ巡回中です(シーバーから)」

「もう終わります(シーバーから)」

「分かりました」


「社長 巡回はあと少しで終わるみたいです」

「分かった ありがとう 「伝統」と「継承」は 大切にしたい

 これだけはやはり変えたくないな」

「そうですね きちんとそれをやっていくことで何も変えずにこのまま現状維持ということで 社員とキャストがきちんとやっているかなど何か新しいことをやっていないかの確認ということですね?」

「まあ そうだな でもそんなことはいちいち伝えなくていいからな」

「そうですね」

ジョイイマジネーションの社長と副社長が会話をしていた。

「伝統」と「継承」を大切にする経営者と現場の社員とキャストでは、考え方がまるっきり異なる。





「どうしよう 社員たちの反応が」

 本間は少しパークに出て、考えていた。


「あっ本間さん」

 本間の姿に気づいた真央が声をかけた。

「おお真央ちゃん 久しぶり」

「本間さん久しぶりです 新しいセクションはどうですか?」

「うん まあなんとか頑張ってるけども社員の人たちがなかなか聞いてくれなくて」

「えっそうなんですか それは大変ですね」

「うん どうしよう」

「悩んでますね もう一度伝えたいことを伝えるのがいいのではないでしょうか?」

「もう一度伝える?」

「そうです 本間さん私たちに教えてくれたじゃないですか 自分が一番伝えたいことを伝えていくことを まだ来たばかりなのもありますし 予想ですが もしかして何か新たな提案とかをしている感じですか?」

「あっまあそうだね 真央ちゃん 勘がいいね」

「分かりますよ 新しいアトラクションとかを作る感じとかですか?」

 真央が本間に、新たな提案についてのことを少し聞いてみた。

「まああまり細かいことは言えないけど ここだけの話 新たに作ろうと考えているよ」

「おお それはすごいですよ 頑張ってくださいよ 私楽しみですから」

「ありがとう真央ちゃんにそう言ってもらえるとモチベーション上がるよ ちょっとさ自分も まだ来たばかりだから焦ってたかもしれない」

「良かったです」

 本間は真央に励まされ、少し元気が出た。新たな部署になったばかりで、ちょっと元気がなくなっていたのかもしれない。

「じゃあ 休憩終わるのでまた ご飯今度行きましょうね 里菜にも伝えておきます」

「うん 行こう よろしく言っておいてね」

 2人は、挨拶をして別れた。


「よし ここからだ」

 本間は本社へと戻った。











  夢遊と高野は、オフィスに戻った。


  オフィスに戻ると、高野から次回の連絡事項を伝えられた。

「とりあえず 次回から本格的に新たなアトラクションなどで誘導したりするから

 よろしくね」

「はい 頑張ります(ここで打ち明けるべきかな)」

「大丈夫そう?まあやっていくうちにできるようになってくからね」

「本当そうかなと感じます あとちょっと私から言いたいことがありまして」

「うん?なになに?」

「実は この前ゲストの方のネガティブな言葉を聞いてしまいまして「面白くない」「お兄さんたちの笑顔が怖い」という言葉を耳にしたんです たしか小学生くらいの女の子でした」

 「そんなことがあったんだね」

  夢遊は、これまで抱えていたちょっとした悩みを打ち明けた。

 「はい なのでもうちょっと全体的に変えていきたいなと思って」

 「そういうことね そう言われてしまったらなんか気にしちゃうよね」

 「はい なんか私たちでできることないかなとか思ってて」

 「私たちにできることか 考えるとなかなか難しいよね ちょっとさ神谷さんたちに聞いてみるのはどう?」

 「ですかね 聞いてみます」

  夢遊は、神谷、若木に少しだけ相談してみることにした。

 

 「戻ってきますかね」

 「うん 戻ってくると思うよ ちょっと待ってみようか」

 

5分後


「お疲れ様です」

  神谷が入ってきた。

 「神谷さんお疲れ様です」

  高野は神谷がオフィスに入って来た瞬間に、挨拶した。

 「お疲れ様です」

  その後、夢遊が言った。

 「あの神谷さん話がありまして」

 「話?」

  神谷が少し驚いた顔つきで言った。

「実は この前ゲストの方のネガティブな言葉を聞いてしまいまして「面白くない」「お兄さんたちの笑顔が怖い」という言葉を耳にしたんです たしか小学生くらいの女の子2人でした」

 「そんなことがあったんだね そのあとはどうなったの?」

 「アトラクションの研修で誘導してたので そのあと、その子たちはどこかに行ってしまいましたが それでもその言葉が心の中に残ってしまうくらいになりました」

 「そっか そういうことね」

 「それで私ちょっとずつでも変えていきたいなと思ったんです 私たちができることを新しい形で」

  夢遊の熱い想いを聞いたあと、神谷の顔は、申しわけないという顔つきになっていた。

 「何か新しいことはできたらいいよね 実は少し言いにくいんだけど 本社からこんなのが届いたんだ」

  神谷は、本社から届いた「通達」と書かれた紙を夢遊と高野に見せた。

 「何ですか?これ?」

 「実は今日の巡回終わってすぐ届いたんだけど ブランドニューオブアメリカの「伝統」と「継承」を大切にしていくことをモットーと考えるのが幹部たちの意見で これは何を言いたいかというとね 今までやってきたことを変えずにやって 新しいことを取り入れないということなんだよね 向山さんの熱意は俺も応えていきたいなと思ったんだけど これが出てしまったから厳しいよね」

 「えっじゃあその女の子たちの意見はどうなるんですか?」

  夢遊は、強めの口調で言ってしまった。

「そういうゲストにはとりあえずマニュアル通りに対応していくことなのではないかなと思う」

 「そのマニュアルで対応してもダメだったら?」

 「それがだめだったらまた考えるしかないけど マニュアル通りなら大丈夫なんではないかな?」

  夢遊は、それを聞いた瞬間、沈黙した。

 「マニュアルじゃなくゲストの期待に応えることが私たちの仕事じゃないですか?

  神谷さんもその仕事をするために転職してきたんですよね?」

 「まあそうだけどね」

「ゲストの笑顔を少しでも増やしていけない仕事なら私やめます」

 「ちょっと夢遊ちゃん」

 夢遊は、オフィスから走って出た。高野は、オフィスから出た夢遊を追いかけに行った。

 

  神谷は、黙ったままであった、夢遊のその言葉をちょっと考えてもいた。


「よし とりあえずまたいろいろ練り直してもう一度伝えるしかない」

  本間は明日の会議のために新たなアトラクションについての提案を改めて考えることに決めた。

 「やっているとワクワクするな 近況として上司の山本さんに伝えるか」

  少しまとまったことを、本間の上司である山本に報告することにした。

 

 

 「失礼します 山本さん今大丈夫ですか?」

 「うん 大丈夫だよ どうしました?」

 「ちょっとお話したいことがありまして」

 「話か?うんどんなことかな?」

 「実は ハリウッドエリアの所に新たに日本エリアをつくりたいと思いまして」

 「なるほど」

 「はい まあこれからいろいろまとめていきますがどうでしょうか?」

  本間は、上司の山本に近況の確認をした。

 「本間くん すごい申し訳ないのだが 取締役から通達がでたんだ」

 「通達ですか?」

  山本は、「通達」と書かれた紙を本間に見せた。

 「何でこんな通達が出たんですか?」

 「知っているとは思うが 実は取締役が今日パークの巡回をしたんだ 取締役たちは ブランドニューオブアメリカの「伝統」「継承」を大切にしていき 今までのやり方で 新しいことを取り入れないという考え方らしいんだ つまり君が考えているテーマパーク構想も 今の所できないということだ 君のその提案には応えていきたいが」

 「えっでもここのテーマパークマーケティング本部の役割を果たせなくなりますよね?」

 「まあ ここの仕事はそうなると 今あるテーマパークの施設やショー アトラクションをどれだけ盛り上げることができるかだな 新たなアィディアを取り入れることができないから 毎回今あるものを改善することを話し合うということなのではないかな?」

 「でもゲストはこれで満足するんですか?」

 「そこは私にも分からない 現場にいたのもかなり前だからな」

 「でもそれではゲストを楽しませられないはずでは」

 「まあ大丈夫だとは思う とにかく頑張ってくれ」

  山本は、その後部屋から出た。

  

  本間は、その悔しさをどこかにぶつけたい感じであった。(今はとりあえず落ち着かないと パークに出て 何か飲んで休もう)



「これください」

「ありがとうございます あっ従業員の方ですね お疲れ様です 割引で300円です」

「はい カードでお願いします」

「かしこまりました カードお入れください」

「はい」

「ありがとうございます カードのお返しです お疲れ様です」

「ありがとうございます」

 本間は購入したお茶を飲みながら、空いているベンチに座って考えていた。

 

なぜ「伝統」と「継承」にこだわる? 新たなものを取り入れない?そのことが疑問に感

じていた。自分の思い描くテーマパーク構想が実現できないのか?異動したことが無駄

になってしまうではないか。そう思う度に、本間はイライラの感情がこみあげてきた。


「最悪 本当むかつく」

 本間のすぐ横のベンチに、夢遊が座っていた、彼女は先ほどの「通達」のことをイライラ

 している感じだった。すぐ横で聞こえる感じに言っていたので、本間には聞こえていた

けれどもそこまでは気にとめはしなかった。何か彼女も会ったんだろうという感覚だけ

であった。

あの後、高野は夢遊を追いかけて行ったものの、夢遊を1人でそっとしておこうという

ことになり、結局オフィスに戻った。

 

「何なのあの「伝統」「継承」を大切にするとか バカでしょ」

 その言葉を聞いて、本間は彼女がここの従業員ということを理解した、この「通達」は社

員だけ知っているのか?キャストも知っているのか?その疑問が頭の中で、よぎった。


「あの すみません もしかして社員さんかキャストさんですか?」

本間から夢遊に声をかけてみた。

「あっはい キャストですよ キャストの方ですか?」

 本間に声をかけられ、特に嫌な雰囲気を見せずに話した。

「いいえ 僕はここの社員です」

「社員さんなんですか?スーパーバイザーとかですか?」

「それは前やってたんですが 今は異動して本社勤務なんです」

「そうなんですか 今は休憩ですか?」

「今は勤務ですが ちょっと落ち着かないので パークに気晴らしに出ているだけです」

「そういうことだったんですか もしかして何かあったんですか?」

 君の方こそ何か合ったんじゃないか?ということを聞きたかったが、先に聞かれたので答えることにした。

「まあ そうだね 部署が変わり 今はテーマパークマーケティング本部というところにいるんだけども 考えていたアイディアが実行できないということになり少し悩んでたんだよ」

「なるほど それってもしかして「伝統」「継承」は大切にするみたいなやつですか?」

「ああまあそうだね ちょっとそこが引っかかってね 君もその言葉さっきなんかいろいろ

 言ってなかったけ?」

「言ってました? 私もちょっと悩んでて」

「どんなことを?」

「ゲストサービスしてた時に、ゲストの方が「面白くない」「お兄さんの笑顔が怖い」とかというのをたまたま話してたのを聞いてしまったんです」

「そんなことがあったんだね」

「はい そういうのをなんとかして変えたいなと思って ちょっと提案したら「伝統」「継承」

 を大切にするというバカ取締役のせいで ゲストの期待に応えられないという感じでして」

「なるほどね すごい気持ちが分かる パークで働いているとき 間近で感じていたからね」

「ですよね もうなんか何もやる気が起きないです やめますと言って飛び出してきちゃいましたし」

「そういうことね 何かできることないかもう一度考えるのはどうかな?」

「それもいいですね 確かに」

 本間は、希望を失ってはいたもののまさか自分と同じ境遇に立っている人がいたことに驚いていた、その希望もちょっとはよみがえってきた。

「もしよければ一緒に協力していくのはどう?」

「協力ですか?」

「うん できることをやっていけたらとは思っているからさ」

「はい やりましょう でも何からやっていくかですよね」

「それなんだよね あっ君は高校生とか大学生かな?」

「高校1年です」

「まだ高校1年なんだね 情報交換しないかな?連絡先良かったら教えてくれる?」

「いいですよ」

本間は、とっさに連絡先を聞いて、情報交換することにした。特に下心があるわけではなかった。

「とりあえず頑張りましょう」

「頑張ろう」


 2人は、頑張ってなんとかして進めることにした。




次の日、本間はいつも通り会議をやった。前回の日本エリアについての話し合いだが、

他の社員たちは、「通達」のことは知らない。


「本間さん考えてきましたよ」

「私もです」

「僕もです」

 この前の雰囲気ではない空気になっていた。しかし、本間は社員たちに、なかなか言い出しにくい感じであった。

「ありがとう みんなまさかアィディアを考えてきてくれるなんて」

「いえいえ 何ていうかちょっと挑戦していきたないと思ったんです」

「私も同じです こんな大きなプロジェクトに関われるなんてなかなかないですし」

20代の3年目の女性社員と2年目の男性社員が本間に、その想いを伝えた。


「みんなのそのアイディアを大切にしたい でもね」

 でもと聞いた瞬間に、雰囲気が一変とした。

「実は「通達」で「伝統」と「継承」を大切にしたいというブランドニューオブアメリカのモットーを崩したくないということで新たなことをするのができなくなったんだ」


「えっちょっとまじですか」


「そうなんだよ」


 本間のことをバカにしていた林と山田も、そこについては把握していなく、ちょっと驚いていた。


「前回 取締役たちが巡回したの覚えてるよね? あれはパーク内できちんと「伝統」や「継承」など同じやり方でやっているかという巡回だったんだ」


「どうして急にそんなことを」

 20代の男性社員が、質問した。

「そこは僕にも分からないけど 巡回をしたりするのも仕事だからね」

「なるほどです」

「これからどうするんでしょうか?」

 20代の女性社員が本間に聞いた。


「いろいろ考えたんだけども この計画はとりあえず進めようかなとは考えてるよ」


「えっでも新たなことをしてはいけないんじゃ?厳しくないでしょうか?」


「これは経験上だけど 確かに現時点で計画を実行するのは厳しいかもしれない けれども

 とりあえず計画だけ進めておけばいつでもいざとなった時に計画が実行できるかもだから計画は進めようと思っている」


「そういうことですね」

「いいですね」

 20代の男性社員と女性社員が納得していた。

 他の社員もはじめのうちは、ちょっと反対していたが徐々に、少しずつ本間の方に傾いてきた。林と山田は相変わらず、本間をバカにするような目でみていた。


「とりあえずはなんとか進めていけるように頑張りましょう」

「はい」

「はい」

「はい」


 何人かの社員が続々返事をした。


林と山田は少しだけ気まずい表情をしている感じだった。












 「さてどうするか またいろいろ考えていこう」

 「また1人事言ってるし」

 「えっ華美またいたの?」

 「いたよ 勉強しに来てたんだよ」

 「そうなんだね」

 「またテーマパークのやつ考えてたの?」

 「そうそう テーマパークを変える計画ね」

 「テーマパーク変える計画?」

 「そうそう 実はさ 面白いことがあってね」

  夢遊が、目を輝かせながら華美に話した。

 「ブランドニューオブアメリカの社員さん?その人とテーマパーク変える計画を試みて るんだよ」

 「なかなかすごくない? なんか話が壮大しすぎてついていけないんだけど」

 「まあそうだよね うちのテーマパークさちょっと言うてるわりにかたくてさ「伝統」と

  「継承」とかを大切にするとか分からないこと言ってるし」

 「なんか学校みたいな所だね」

「本当それ思う その言葉聞いた瞬間思ったからね」

  華美はブランドニューオブアメリカがまるで学校みたいという本音を言った。

 「テーマパーク変える計画のためにと言っても ゲスト側の視点を知らないともいけないしな 華美さ今週の土日空いてたりする?」

 「今週?土日のどっち?」

 「えっと日曜日」

 「日曜日?いいけど どこに行くの?」

 「まあこの流れだから分かると思うけど ブランドニューオブアメリカに行こうと思っててて 良かったらどう?」

 「なるほどね 大丈夫だよ 時間は?」

 「また連絡する」

 「了解 テーマパーク変える計画のためにテーマパーク行く行動力がすごいよ 私なんてそんなこと考えたりできないし 行動力とかもないからさ」

 「まあ私もとりあえず初めてだからね あっどうしようまず謝らないといけないことがあったんだ」

 「えっ何があったの?」

 「いや実はさ この前さ この提案を社員に相談したらさ「伝統」「継承」を大切にしなきゃいけないという「通達」を提示されたから それでちょっと口論?みたいなのになってしまってね ちょっと気にしてて」

 「そういうことね とりあえず謝りには行った方がいいんじゃないかな? そういう

  誠意も意外と大切なんじゃない?」

「だよね」

「うん 私は気にしちゃう人だから 謝ったりしちゃうからさ」

「そうだよね 華美はいつも繊細だし 好きな人から返信来なかったりした時

  気にしてたもんね」

「それはいいよ 言わなくて もうかなり前の話なんだから」

「まあそうだけど」

 いつものようにカフェで、2人はいろんな話をしていた。






本間は、定時を過ぎたあとも、新エリアの場所の確認などして どのあたりにしていくかなどを、考えていた。バインダーにはさんだテーマパークマップを見ていき検討していった。


「なかなか難しいな それにしてもどこがいいのか」

 1人で見にいき、少し悩んでいた。


 そのすぐ近くをすれ違ったのは、神谷だ。神谷は、ゴーストハウスのアトラクションの様子を見に行っていた。歩いている途中で、前回の夢遊のことについて悩んでいた。


(前回のこと向山さん怒ってるかな?あれで辞めたりとかしないよね 悩む)

 そう考えて歩いているうちに、ゴーストホテルの場所へと着いた。


「着いてしまった 切り替えて頑張ろう」

 神谷はとりあえず仕事に集中することにした。









「若木さん 繁忙期のシフト提出ってあと少しですよね?」

「あっうん そうだね 早めに提出してもらって作成したいからさ」

「分かりました」

「夏休みは みんなにたくさん入ってもらいたいしね」

「たくさんゲスト来ますしね」

「だよね 社員はなかなかこの時期とか定時で上がれないからさ」

「社員ってやっぱり忙しいんですね」

「そうだよ いろいろやることあるし」

「そうなんですか 大変だ」



 高野と若木が、シフトの話などをしながら、いろんな会話をしていた。




 正樹が、オフィスに休憩で戻ってきた。

「あれ高野ちゃんお疲れ様」

「おお まーくんお疲れ様 休憩?」

「そうそう 私も休憩中」

「そっか なんか最近ゲスト数少ない感じなんだよね」

「そう?平日だからじゃない?」

「そうなのかな?」

「うん そうだと思うよ だからあんまり気にしなくて大丈夫だよ」

「だよね まあ気にしないようにするよ 次高野ちゃんゴーストコースターの所だよね?」

「うん そうだよ まーくんも同じ所のはず」

「おお 一緒か」

「あと神谷さんも戻ってくるから4人体制かな 1人エントランスで案内と誘導してるから」

「分かった」

  休憩時間に、次のアトラクションのそれぞれの場所についての確認をお互いしていた。配置というのは、大切なことでもあった。






 「今日はこの辺でいいかな もうすぐ閉園で暗くなるから帰るか 続きはまた明日にしよう」

  本間は、帰り支度をして本社を出てパーク内を歩いていると、見覚えのある顔が本間へと近づいてきた。

 

 「あれ?本間さんじゃないですか?」

 「本当だ 本間さんだ」

  本間と以前同じ部署であった真央と里菜だ。彼女たちはいつも仲が良く、ほとんど時間共に過ごしている。

 「おお久しぶりだな」

 「久しぶりです まさか本間さんに会うとは」

  里菜が、驚いた様子であった。

 「てかこの前会いましたよね 本間さんに」

 「会ったね それ以来か」

 「そうですよ 今日は悩んでないですか?」

 「まあ大丈夫だよ 今日は」

 「そっか良かったです 今日とかご飯とかどうですか?」

 「ああうんいいよ 行こう」

  真央に誘われ、3人でご飯を食べに行くことになった。

 「てか本間さん話いろいろ聞いてくださいよ 悩んでることあって」

 「里菜なんか悩んでるの?」

 「はい 詳しくはまたあとで話しますが」

 「ああうん いいよ」

  里菜が何かに悩んでいたので、快く悩みを聞くことにした。3人は、何を食べるかを悩みながら、歩いていくことにした。

 「本間さん新しい部署どうですか?」

  里菜が、気になっていたことの1つなので、聞いた。

 「ああまあまあかな」

 「やっぱり仕事の内容とか違いますよね?」

 「うん だいぶ違うね 事務的な業務とかが多いからね パークのような現場職の仕事も少ないから ちょっと退屈な所はあるかな」

 「なるほどです ちょっと真央から聞いたんですが 大きな仕事をこれからやるとかどうとか?」

 「そうそう いろいろ計画しててなんとか頑張ってるよ ここだけの話さ 日本エリアを作りたいと思ってて」


「えっそれはすなかなかすごいですね」

「ああまだ企画段階だけどね 詳しくはあとで話すけど」

「分かりました 楽しみにしてますね」

 里菜は、楽しみにしている感じだった。

「とりあえずどこで食べますか?」

 真央が、里菜と本間に食べたいものを聞いた。

「じゃあ焼肉行こうか 今日は出すからさ」

「えっまさかのおごりですか?」

「うん いいよ 全然」

「えっありがとうございます」

 真央は、嬉しい感じだった。

「ありがとうございます」

 里菜も同じように、ワクワクしていた。


 3人はしばらく歩いて焼肉店へと向かった。





「華美に当日のことを連絡しないと 当日はオープン前に駅集合で よろしくと」

「これで完了」



 夢遊は華美に、ブランドニューオブアメリカに行く連絡をチャットアプリでしていた。








 焼肉店に着いた、本間と里菜、真央はたくさんいろんな話をしていた。


「じゃあもしかしたら 日本エリアができるかもなんですね」

 里菜が興味津々に聞いていた。

「うん そうだね できる可能性はある ただね ちょっと問題があって」

「問題?」

「問題?」

2人は、同じ感じのタイミングで質問した。

「そうそう 問題があってね 「伝統」「継承」というのをどうやら上の人たちは大切にしたいみたいでね 簡単に言うと新しいことをするなということなんだけど だから今それを悩んでて」

「そういうことだったんですね それで悩んでいたりしたんですか」

 真央は本間がなぜ悩んでいたのかを理解した。

「そうそう これからどうしようとか悩んでた」

「まさかそんなことで悩んでるとは驚きましたよ」

 里菜は、本間が、そのような大きな問題を抱えていたことに驚いていた。

「私たちでよければいつでも 言ってくださいね」

 里菜が本間の力になりたいと感じ、伝えていた。

「ありがとうね よし肉次何頼もうか」

 本間が次の注文を聞いた。

「じゃあ牛肉で」

 とっさに、真央が牛肉を注文した。

「だね 私も牛肉がいいかもです」

「分かった じゃあタッチパネルで注文するね」

「お願いします」

「お願いします」

3人は焼肉屋で楽しく過ごした。










 その日の夜、若木と神谷は、クローズ作業をしていた。


「今日のアトラクションの運営状況どうでしたか?」

「今日は 意外と少なかった気がして なんかここの所 減少してる感じがあるんですよね」

「そうなんですか?」

「そうですね なんかそういう感じが最近していて 何でかはちょっと分からないですが」

「なるほど 何が原因とかなんですかね」

「それはあまり何が原因とかは考えたことはないですね キャストのサービスの質とかというのも考えられますが そこがどうかは微妙ですね」

「ですよね 日々キャストモニターした時に サービスについてのフィードバックはしてますからそこは大丈夫だろうとは考えますが」

「はい たしかにそこはそうですよね 今一度キャストモニターした時にも 確認していきましょうか」

「そうしましょう」


 神谷は、ゲスト数が少ないことに疑問を抱いていた。キャストのサービスの問題かと神谷は感じたが、日々のキャストモニターという、キャストの監督で、ゲストサービスなどは確認して、フィードバックなどもしてはいるので、そこが原因ではないと思った。けれども、もう一度念のため、キャストモニターをして確かめることにはした。


「遅番キャストが今遅番の片付けしてるので 僕行ってきますね」

「ありがとうございます 神谷さん」

「いえいえ ちょっと確認してきますね」

「お願いします」

 神谷はクローズ作業の確認しに行き、若木は、シフトの作成とシフトを早めに出す文書を作成していた。









「よし 里菜ちゃん 真央ちゃんお疲れ様」

「えっもう帰るんですか 次行きましょうよ」

「そうです 次です」

「次ってどこに?」

「あそこですよ」

真央が次もどこかに行きたいといい、里菜も同じような感じで言った。

「どこだろう もしかして」

 「何ニヤニヤしてるんですか いやらしいこと考えてるんじゃないですか?」

  本間がちょっとにやっと笑った感じだったので、里菜がツッコんだ。

 「いやそんなことはないぞ とりあえずどこに行くの?」

 「カラオケですよ」

  真央があそこしかないだろうという感じで、答えていた。

 「ああカラオケね まあ明日休みだからいいか 真央ちゃんと里菜ちゃんは?」

 「私たちは遅番からなので大丈夫なんですよ」

 「そうなんだね まあカラオケ代はちょっとしか出せないけど大丈夫?」

 「カラオケ代は私たちが出すので本間さんはいいですよ?」

 「えっそんないいの?」

 「はい 大丈夫ですよ「

 「はい 大丈夫ですよ」

 

 

 「よしじゃあ行きましょう」

  里菜が仕切ってカラオケ店へと向かった。














 日曜日になり、ついに夢遊と華美が、ブランドニューオブアメリカに行く日になった。



「華美遅いな どうしたんだろう」

 先に、瀬谷駅の改札前に着いていた夢遊は、華美が、まだ来ていないことをちょっと気にしていた。


「ごめん夢遊 お待たせ 待った?」

「待ったよ 10分 連絡してよ」

「10分ぐらいだからいいかなと思ってね」

「もう会社とかなら連絡しないとだめだよ」

「もうかたいな」

「うるさいよ」

 いつも通りのやり取りのあと、ブランドニューオブアメリカに向かった。


「よし待ちに待った ブランドニューオブアメリカ 楽しみ」

「夢遊 すごい楽しみだったんだね 」

「まあ勤務ここの所ずっとしていたしね」

「だよね お疲れだね 今日はおもいっきり楽しみなね」

「うん 楽しむよ まあ目的は忘れないようにはしたいけどね」

「そうだね まあ見ながら行こう」

「おお」


 改札を抜けて、ブランドニューオブアメリカに向かうまでは、歩きでも行けなくはないが、

 少し時間がかかるので、上瀬谷ラインを使い、向かうことになる。上瀬谷ラインには、ブランドニューオブアメリカのキャラクターたちの絵が上瀬谷ラインの全面に描かれていた。

「これに乗っていきます」

「なんかすごいね ブランドニューオブアメリカのキャラクターたくさんいるし」

「そうなんだよ ハリウッドくんがかわいくて好き」

「なかなかすごいね」

「すごいよ 大きなテーマパークだから」

「言われてみればそうだね」

上瀬谷ラインに乗り、2人は向かった。



上瀬谷ラインからの眺めと、多くの人が通るたくさん賑わう街並み この近くにテーマパークが完成しているなんて信じられなかった。


「降りる駅は ブランドニューオブアメリカステーションね」

「うん 分かった」

 いつも夢遊は、バスだが今日は上瀬谷ラインだ、実際勤務前に毎回バスに乗ってるので、

 今日くらいは、違うものに乗っていきたいと思っていたのだ。


「いつもバスだからさ 今日はバスには乗りたくなくてね」

「そうなんだ 専用のバスがあるわけ?」

「あるよ それに乗って行く職場向かう感じだね」

「なるほどね 凄そう」

「キャスト専用だからね」



車内アナウンス

「次はブランドニューオブアメリカステーションです(英語のアナウンスも流れる)お降りの際は 足元にお気をつけください」


「よし 着いたね」

「だね」


 ブランドニューオブアメリカに着き、エントランスへと向かった。日曜日だったけれども、

 入場者が意外に少ないと夢遊は感じていた。


「夢遊なんか日曜日なのに人が少ない気がするんだけど」

「ああたしかに これだと平日並という感じだね」

「平日ってこんな感じなんだ」

「まあそうだね これくらいの人だね」

「なるほどね まあ少ない日もあるよね」

「うん あるある」

「気にしないで行こう」

「そうだね」


入場者が少ないと感じていたが、こういう日もあるということで、特に気にしないことにした。

「今日さ私従業員パスで払えるからちょっと休めになるよ」

「おお そうなんだね」

「そうそう いつも勤務している時は ゲスト数が少なかったら無料で遊べるけどね」

「そういうのがあるんだね」

「そうそう 私としてはそういうのありがたくて好きだわ」 

「働いてる人にとっては いい特典だね」


  並んでいる間に、2人は会話を楽しんだ。


 

 「こんにちは2名様よろしいでしょうか?」

 「はい2名です」

  ガラス越しの受付からチケットブースの女性キャストが聞いた。

 「かしこまりました 本日は学生さんでお間違いないでしょうか?」

 「はい学生です」

 「かしこまりました 学生証の提示お願いします」

  夢遊と華美は、学生証を提示した。

 「ありがとうございます」

 「あのこれ使えますか?」

 「はい大丈夫です お疲れ様です」

 「では料金が変わりまして 4200円です」

 「すごい安いね」

「だね 従業員割引だしね」

 「本当にそう思う」

 

  安い料金で、テーマパークに入れることに2人は感心していた。


 

 「よしチケット持って中に入るぞ」

  夢遊は、うきうきしている感じだった。

 「すごいテンション上がってるね あっあとで写真アップするから一緒に写真撮ろうよ」

 「うん いいよ 撮ろう」

  華美は、写真をアップしたかったので、写真をエントランス前で撮ることにした。

  アメリカの大きな国旗とハリウッド、自由の女神が大きく回って、多くの人が写真を撮っていた。

 

「なかなかすごい この辺りで撮ろうか」

「うん いいよこの辺にしよう」

  華美は定位置を決めた、そして2人は写真を撮り終え、ブランドニューオブアメリカに入るための、キャストが立っているチケットブースへと向かった。


「ようこそ ブランドニューオブアメリカへ 最高な瞬間、最高な時間を過ごしてください」

 キャストのアナウンスがパーク内を響き渡っていた。

「こんにちは チケットかざしてください」

「はい」

「ありがとうございます 次の方もお願いします」

「はい」

 夢遊の後ろに、並んでいた華美が続いてチケットを通した。

「ありがとうございます 行ってらっしゃい」

 女性キャストが笑顔で、出迎えて、手をふり「行ってらっしゃい」と言っていた。


「あのキャストさんなかなかすごいね さすがテーマパークの人という感じがあるね」

 華美は、エントランスのチケットの場所を担当していた、女性キャストに感心していた。

「ああいう笑顔ないとなかなか働くの難しくはなるよね」

「たしかにね」



夢遊はパークのマップを持ちながら、どこのアトラクションに乗ろうか迷っていた。


「はじめは何乗りたい?華美が行きたい所あればそこ行くけど」

「うーん 悩む 自然の?ネイチャーアドベンチャー?というの面白そう」

「おおいいねここにしようか ちょっと待ち時間調べてみようか」

 ネイチャーアドベンチャーというアトラクションに向かうつもりにはなったが、パークに設置してある待ち時間の掲示板を見て確認した。


「20分待ちみたい かなり早く乗れるみたい」

「だね よしじゃあ向かおうか」

 ネイチャーアドベンチャーへと向かった。


 ネイチャーアドベンチャーミシシッピエリアにある、ボートに乗り、アメリカの自然を感じることができ、自然だけではなく、動物などもリアルに作られている。子供から大人まで人気のあるアトラクションにもなっている。


「よし少し距離あるけど 歩こう」

「うん 頑張って歩いて行こう」

 夢遊は、ワクワクする感じで、テンションが上がっていた。

 華美は、なんとか夢遊のテンションについていき、頑張った。

 

  本間は、休日出勤していた。エリアの場所を確認して、さまざまな所を検討していた。

 

 「ここ写真撮っておかないとな」

  1人事を言って動いていたので、ゲストにちょっと怪訝された顔つきをされた。

  バインダーにはさんだマップを見ながら確認し、新エリアをつくるために歩きまわった。

  

  

 「すみません 12時半から行われるアメリカンドリームデイのショーはどこらへんでやる感じですか?」

 「ちょっと確認しますのでお待ちください」

  本間は、急にゲストからショーについて聞かれ、驚いていたが、ショーの場所をきちんと確認して答えた。

 「ここの大きなラグーンで行われるので どこからでも見えます ラグーンの近くに行っていただけると より近い位置からショーを楽しむことが可能です」

 「分かりました ありがとうございます」

 「いえいえ 行ってらっしゃい」

  ゲストから「ありがとう」を伝えられると、本間は笑顔で「行ってらっしゃい」という

  現場で言っていた言葉を伝えた。この「行ってらっしゃい」という言葉が、ゲストが気持ちよく、アトラクションやショー、買い物、食事など楽しめるように見送る言葉でもあった。久しぶりにゲスト対応をして、嬉しかった。

  






アメリカでも有名カフェである、ここブランドニューオブアメリカに入っている。


「こんにちは ようこそ レジごとにお並びください」

  青のエプロンで白のシャツを着ているキャストたちが、元気にゲストサービスをしていた。

「こんにちは ご注文をどうぞ」

「ストロベリーミルクラテを1つとアップルミックスジュースをください」

「かしこまりました お会計が550円です」

  娘を連れた母親が商品の注文をしていた。 

「次の商品はできていますか?」

「まだです 次すぐ作れます」

 ここのカフェのスーパーバイザーである小笠原美香が商品をつくるキャストに聞いていた。

「ゲストがナンバーモニターの下に待っていますので 注文きたらすぐ作るようにしてください」

「分かりました」

「分かりました」


  ここのカフェには社員やキャストなどが、休憩時間にも利用するほど人気でもある。

 

「てか里菜と休憩かぶって良かった」

「そうだね 真央となかなかかぶらないよね」

 里菜と真央はドリンクを飲みながら、ここのカフェで会話をしていた。

「あと3時間か 長いけど頑張ろう」

「うん 頑張ろう このあとさ 里菜終わったら商品買う?」

「買おうかなと思ってるけど 新商品っていきなり買えないよね? 新商品のマグがほしくてね」

「なんかあったね 発売日は買えないけど 3日間くらい?経ってからなら大丈夫だった気がするな」

「そうだっけ なら良かった まあ今日は違うの買おうかな」

里菜と真央は、勤務後にお土産の店で、買い物をすることについて話していた。

 

 

「夢遊ここだよね アメリカで生まれた有名なカフェ」

「そうそう ここよし入ろうか なんか 入場者数少ないわりにさ ここだけ混んでいるのがちょっと変だよね」

「たしかに」

「ちょっと席見てくるね」

「うん 分かった 並んでおくから」

「ありがとう」


 夢遊は、席を確認しに、カフェの奥へと向かった。


「あれ夢遊ちゃんじゃん」

「あっこんにちは真央さん あと里菜さんも」

「お疲れ様 今日は休みなんだね」

「そうなんです 休みなので遊びに来ました」

「いいな 私たち最近休みないからさ」

里菜は、ちょっとうらやましそうに感じていた。

「たまたま今日が休みでして 今日 2人は何時まで勤務なんですか?」

「今日は16時までだね あと15分で休憩終わり」

 真央が、代わりに答えていた。

「そうなんですか 頑張ってくださいね」

「ありがとう」

「ありがとう 席さ奥いっぱいでしょ?私たちもう行くからここ使っていいよ」

「えっいいんですか? ありがとうございます」

 里菜が、気を利かせて席を譲った。

「じゃあまたね」

「はい お疲れさまです」

 真央が夢遊に挨拶をした、流れで里菜も手を振っていた。



「夢遊 結局買ってしまったから あとでお金ね」

「分かったよ ありがとう」

「まあいいけど 2つともアイスラテにしたから」

「おお分かったよ てかさここのカフェさ」

「うん?どうしたの?」

 夢遊は、小声で、華美に話しかけた。

「なんかみんなやっぱり笑顔がないというか怖い」

「やっぱり? 私も さっきお会計の時に 店員の人 笑顔がなくしかも丁寧じゃなかった」

「そうなんだね なんか嫌な感じだね ここ利用する気うせるね」

「そうなるよね 少ししたら出ようか」

「そうしようか」

  夢遊と華美は、ここのカフェのゲストサービスで気分を悪くしたので、早めに出ることにした。


夢遊は、ここのカフェ以外にも、まだこういうちょっとした良い感じではないゲストサービスがあるとも少し感じていた。ゲストに最高な1日を過ごしてほしいという願いがあってのテーマパークキャストなのだからやはり良い時間を過ごすことを願うという気持ちを持つことが大切だろうと感じていた。



「次はどこに行こうか?」

  華美が、夢遊に聞いた。

「あっえっとそうだね どこ行こうか」

  1人で考え事をしていて、華美から急に、次はどこに行こうか聞かれたので、少し

  戸惑った感じになっていた。

「じゃあ私の配属されているアトラクションに行こうか」

 「おお 夢遊の配属先のアトラクション?か いいね」

  華美は夢遊の配属先のアトラクションに行けることに、少しワクワクしていた。

 「よしじゃあ行こうか」

 「うん 行こう なんか華美かなりノリノリになってきたね」

 「まあちょっと楽しくなってきたからさ」

 「華美が楽しそうにしてくれて良かった」








「神谷さん シフト提出忘れてしまったのですが 提出とかできますか?」

「うん 大丈夫だとは思う 若木さんにも一応伝えておくから まだ作成はしてないとは思う」

「わかりました ありがとうございます」

 

  1人の女性キャストがシフト提出を忘れたので、神谷にシフトのことを聞いていた。神谷にシフトのことを伝えたあとは、オフィスをあとにしていた。 


「はい 了解です 今から行きますね」

神谷は、キャストにインカムで呼ばれ、アトラクションの方に向かった。







「こんにちは こちらでアトラクションのご案内をしております」

 若木はキャストモニターとゲストモニターをしながら、ゲストサービスもしていた。



「ここだよ 華美」

「おお ここか 夢遊が働いているアトラクションは」

「そうそう ここ」

 たまたな若木がいたので、夢遊は声をかけた。


「若木さん お疲れ様です」

「おお 向山さん 今日は遊びに来てたんだね」

「そうです 休みを利用してきました」

「いいね 楽しんでいってね 今から行くのかな」

「はい ゴーストコースターに乗ります」


若木は、夢遊と華美を笑顔で見送った。2人はそのままエントランスへと向かった。


「そうだ 私あとで謝らないといけない人がいるんだよね 今日いるか微妙だけど」

「ああこの前行ってた人ね」

「うん でないとすっきりしないからさ」

「謝った方が気持ち的にはいいよね」

「そうだね」

 夢遊は、神谷に前回のことで謝りたいなと感じていた。自分の中で、もやもやしている感じがあり、頭の中で整理できていない感じでもあった。

「それにしてもさ 中暗いね」

「ゴーストコースターというアトラクションだからね 中は暗い雰囲気にはやっぱりしてるよ」

 華美は、ゴーストコースターのアトラクションの中に少し興味を持った。


「ここをずっと進んでいきます」

「おお ここをずっとね では案内を頼みます」


夢遊は、華美を案内して行った。




「なんかここ ごみ多くない?どうなってんのかしら」

「あらたしかに多いわね」

 一般の女性ゲストが、ちょっと不満を漏らしていた。

「せっかくテーマパークに来たのにちょっと嫌な光景をみてしまったわね」


すると、すぐそばでたまたま歩いていた梨菜がちょっとその事を耳にしていた。


(もしかして 夢遊ちゃんが言っていたことってこういうこと?ゲスト不快に感じるようなこと)

梨菜は、夢遊の言っていたことが改めて。実感した。

「夢遊ちゃんが言っていたことってこういうことか なんかゲストに申し訳ないなと思うな」

 梨菜が1人事をとっさに言っていた。梨菜は、その言葉を聞きながら、自分のアトラクションの方面へと向かって行った。




 本間は、エリアの確認をして行き、写真もいくつか撮り、本社へと戻った。


「さて戻るか」

 戻る時に、パークを歩きながら周りを見渡した。新たな形で、より多くのゲストの笑顔を見たいなと改めて感じた。

「やっぱりゲストの笑顔のために頑張りたいな この笑顔をなくさずにもっと増やしていきたい」

 本間は、ゲストの笑顔のために頑張ろうと感じた。


「あれ本間さん」

 たまたま真央が見かけて声をかけた。

「本当だ 本間さん」

 里菜も同じように声をかけた。

「また会うとは驚きだな」

「金曜日会ったじゃないですか」

「まあたしかに会ったね」

 真央が、すかさず、「会ったでしょ」という雰囲気のツッコみをしていた。

 本間と里菜、真央は、金曜日に会ったばかりだ。最近この2人にはよくでくわすなということも感じていた。

「仕事は順調かな?」

「まあまあですよ そんなに変わってませんがね」

里菜は、そんなに変わった様子もないけれども、あえて近況をちょっと伝えた。

「そっか でも2人がいきいきと働いているならそれで十分だよ」

「急にどうしたんですか?」

「たしかに急に真面目な感じになったし」

 真央が先に驚いてから、里菜がそのあと同じように驚いていた。

「まあ 現場がやっぱりいいなと思うよ 多くのゲストにたくさんのゲストサービスができるし キャストにもいろんなこと伝えられるしね」

「本間さんはやっぱり現場が好きなんですね」

 里菜は、本間が現場が好きだということを知っていたので、笑いながら「好きなんですね」と言っていた。

「そうだね 感動のある仕事だしさ」

「本間さんのこれからやる仕事も感動のある仕事じゃないですか これからの新たなことなども含めてですが」

「まあ 確かにそうだね」

「ここでの経験がきっと役にたつはずですよ だから大丈夫ですよ」

 里菜が熱く本間に鼓舞を与えた。

「まさか君たちにもう一度励まされるとは ずっとそういう気持ちを持ち続けていくようにするよ 現場のキャストやゲストのために頑張るよ」

「頑張ってください」

「頑張ってください」

  3人のいつものような和やかな雰囲気が、本間が現場にいた時のようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢遊ゴーストコースター怖かったけどなかなか良かったよ」

「でしょ?このアトラクション人気だからね」

「また乗りたいな」

「そしたらまた来た時に乗ろう」

「そうしよう 夢遊そういえば なんか社員さんに謝るとかのことは大丈夫?」

「あっそうだ でもいなかったからな まあでもちょっとの距離だし戻ろうか」

「うん 大丈夫だよ こういうのは早くの方がいいしね」

「そうだね 私もこういうのは早めにしていきたいしね」

 2人は夢遊のアトラクションの場所であるゴーストコースターへと向かった。

 3分くらい歩いた場所だったので、そんなに距離はなかった。

 しばらく歩いて、夢遊は、神谷がいないかを確認しようと思った。たまたま高野がいたので、高野に聞いた。

「高野さんお疲れさまです」

「ああ夢遊ちゃん?今日来てたんだね」

「はい 今日休みだったので遊びに来たんです」

「そっか休みだっだんだね」

「はい あの神谷さんってパーク戻って来ますか?」

「ああ神谷さんなら あと少しで来ると思うよ あとでパークに行くと言ってたから

 今オフィスで作業してると思うから」

「あっ夢遊 私そこのベンチで待ってるね」

「うん 早く行くようにするから待っててね」

 華美は、場の雰囲気を読み、そこからとりあえず離れることにした。


「それにしても夢遊ちゃんの方から用があるなんて珍しいじゃん」

「そうですか?そんなたいしたことじゃないですが」

 高野は、もしかしたらという感じで、夢遊に直接聞いてみた。

「もしかして「伝統」とか「継承」のあの件で言いすぎたから謝りたいとかそういうの?」

「はい まあそうですね」

 高野から、その件を言われ、図星であった。

「やっぱりか まあそんなことじゃないかなと思った 私はあの時いたからね」

「ですよね あの時はいろいろ迷惑かけました」

 夢遊は、その後高野に前回高野も見ていて、迷惑をかけてしまったことに謝った。

「気にしてる感じだね 夢遊ちゃんはやっぱり人のことを常に気にしてあげれる

 人だよね」

「私がですか?そんな繊細な人間じゃないですよ 現にうざかった大人も友人にも強い言葉とか言えちゃうので 人の気持ちなんてあまり考えられないというか」

「その何ていうか なかなかそういう人いないなって思ったしさ ゲストのためを思って

 神谷さんにそういう風に前回言ったんでしょ?」

「はいまあ そういう感じですね」

「うん だから神谷さんも怒ってないし大丈夫だと思うよ 実は神谷さんも

 ちょっと話聴いてあげればとかあのあと言ってたし 本当に辞めたらどうしようってね」

「えっ神谷さんがですか」

「うん そうそう とりあえずは今日 すっきするといいね」

「はいですね」

  2人が話している間に、神谷がパークに戻った。


「お疲れ様高野ちゃん それと向山さんも」

「お疲れさまです」

「あっお疲れさまです あの神谷さん前回いろいろ言ってしまいすみませんでした」

「ああそんなわざわざこのために来たの?」

「いえ 今日はちょっと休みとかだったので遊びに来ました でもこの前のことが気になってしまい やっぱり謝りたいなと思ったので」

「そういうことね 僕は全然気にしてないよ むしろ向山さんが辞めてしまうかとか

 気にしてしまった方だよ まああとはもう少し話聴いても良かったなと思って」

「そうだったんですね」

 高野が言っていた通りになっていたので、ほっとした。




「向山さんがいろいろ考えているのは伝わったよ その想いは大切にしてね

 これからどう行動するかは分からないけど 実際どう行動するかは 向山さん

 次第だよ」

 その言葉を聞いて、夢遊は、自分の気持ちがみなぎった。人にそういう風に言ってもらえることは、ありがたいとも感じ、言われた言葉を考えながら大切にしていきたいとも思った。


「ありがとうございます」

 夢遊は、「ありがとうございます」と神谷に直接言った、そして華美の所へと戻った。




「華美お待たせ」

「お疲れ ちょっと遅かったじゃん」

「意外とかかっちゃった」

「そっか もう1900前だけど どうする?」

「あっ実はさ 私最後乗りたいやつがあって」

「あっそうなの?何乗りたいの」

「スペースコースターというやつNASAのエリアにあるんだけど それ乗りたいと思ってね」

「おお いいね じゃあ行こうか」

 最後は夢遊が乗りたいアトラクションをリクエストした。


「すごい絶叫とは聞くけど どうなのかあまり見たことなくて あれ?」

「どうしたの?夢遊?」

「いやあれってさ たしかキャストかなと思って」

「キャストの人なの?あのたばこ吸ってる人たちは」

「うん あそこ喫煙エリアじゃないのに あの3人はちょっと気になるわ」

 夢遊は、喫煙ではないエリアで、男性キャストらしき人たちがたばこを吸ってる光景を見た。彼らは上着を着てはいたが、ゲストからは分からずとも、キャストが見たらすぐ分かる感じの格好ではあった。

「スーパーバイザーに見られたらやばいのにな」

「だよね 夢遊あの人たちはどこのキャストかだいたい分かるの?」

「うん 分かるよ あの人たちはさっき行ったネイチャーアドベンチャーのキャストだね」

「あっさっきのアトラクションのね」

「そうそう これは報告しないとやばいかも」

「たしかにね でもとりあえず発見できて良かったね」

「なんとかね」

 話しているうちに、スペースコースターのアトラクションに着いた。

「夢遊 そうこうしているうちに着いたね」

「早いね よし最後思いっきり楽しむぞ」

そういう風に楽しもうとした矢先に、また思わずことある光景を見てしまった。


「華美 これはゲスト全員が気にしているか分からないけどさ」

 ゲストもほぼいなく、アトラクションの中に入って並んでいる所を歩いていると

 すぐに乗車の場所に行くことができた。

「うん?今度はどうしたの?」

「いや あのキャスト紙持ってセリフ話してるし しかもゲスト対応がてきとうなんだけど」

「ああたしかに 何で紙見ながらなんだろうね」

「そうそう 見てて笑顔がないし テーマパークのキャストとしてこれはどうなのかな?

 とちょっと疑問に残る所あるな」

「夢遊よく気づいたね こういう細かな所に気づくのはすごいよ」

「そう?それはどうも」

 すると、梨菜が夢遊に声をかけてきた。

「あれ夢遊ちゃんじゃん 今日遊びに来てたの?」

「わあ梨菜ちゃんこんな所で会うなんて驚き」

「まあね ここは私が働いてるアトラクションのところだしね」

「まあそうだよね」

「うん じゃあまた勤務の時ね 私は外で案内だから」

「うん またね」


「あの子は仲良くなった子?」

「そうそう 入った頃に仲良くなってね」

「そういう子いるとなかなかいいね」

「うんうん 安心するし よし最後のアトラクション乗りましょう」

「だね 最後楽しもうね」


 2人は最後のアトラクションを楽しんだ。



「楽しかったね スペースコースター」

「だよね 働いていると行けないから今回行けて良かったよ」

「うんいい思い出だね あといろいろ発見できたんじゃない?」

「そうだね 今回の目的がそれみたいなもんだしね」

「そうそう 今日か明日にはまとめていきたいな」

「凄い体力だね」

「まあ 最近は いろいろモチベーション上がってるよ」

「いいね 夢遊の最近を間近で見ていると 私もなんだか元気が出てくるよ」

「そう?まあそのモチベーションをちゃんと維持できればいいなと思うけどね」

「モチベーション維持は大切だよね」

  パークの出口を目指し、歩きながら話して行った。





「よし とりあえず今日の確認した場所をまとめるか」

  本間は、閉園になったあとの本社でパソコン作業をしていた。


「日本エリアをつくるのだとやっぱり西部エリアのショーを

 取り壊さないといけなくなるな どうしようか」

  日本エリア新設にあたり、本間はいろいろ悩んでいた。

  改めて、ブランドニューオブアメリカのマップを見て検討することに

 決めた。日本エリアの新設という初の試みは本間にとって、はじめてのことであるので、慎重になっていた。けれども もう一つ悩んでいることがあった。進めていくのは、良いが結局これが白紙になったらどうしようかというのも悩みであった。


 自分にできることをやろうという気持ちで、本間は進めていった。






「お疲れ様でした」

「お疲れ様 梨菜ちゃん」

 梨菜は、スーパーバイザーに挨拶をし、勤務が終わった。早歩きをしてブランドニューオブアメリカを出る所だった。

 

 

  梨菜は、パークから出るまでの間、ちょっと考え事をしていた。

 

「やっぱり 私もゲストの今日の発言気になるな ごみが多いって確かにと思ったし」

 梨菜は、ちょっとベンチに座って休んだ。

「なんかもやもやした気持ち 私が意識してもこういうのってすぐに変わるわけじゃないけども」



「てか真央 その写真意味わからないから消せよ」

「いいじゃん 面白いんだから」

 里菜と真央は、2人でいつも通り、ふざけあっている感じだった。仕事が終わり、夜になっているが、ブランドニューオブアメリカに残っていた。



(にぎやかだな こういう楽しい感じなの羨ましい)

 梨菜は、真央と里菜の様子を見て、そう感じた。



「あっすみません なんかうるさくして」


「大丈夫ですよ」

  真央が、梨菜に声をかけて、ちょっと気づかっていた。梨菜は、見ていて楽しそうにしていただけだったので、特にうるさいとは感じなかった。


「あのすみません もしかしてキャストさんですか?」

 真央の方から声をかけた。

「あっはいそうですよ」

「わっやっぱりそうだったんですね なんか見たことあるなと思ってて」

「そうだったんですね キャストさんとか何ですか?」

「はい 私たちも実はキャストなんです ちなみにワゴンでドリンク売ってます」

「そうなんですか 楽しそうですね」

  梨菜が真央と里菜たちが聞いた感じで、キャストかどうかを聞いた。

その後に、真央が、自分たちもキャストであるということを言った。

 


 「ちなみに私の名前は児玉真央と言います」

 「私は松本里菜です」

 

 「私は川本梨菜と言います」

 「えっまさかの同じ名前 こんなことあるんだ すごい」

 「本当だね まさか里菜と同じ名前って」

 「そうですね これからよろしくお願いします」

 「こちらこそよろしくね 今は何年生なの?」

 「私は今高校1年です」

 「そうなんだ 高校生なんだね」

 「里菜さんと真央さんは何年生なんですか?」

 「私と真央は今大学1年だよ」

 「そうなんですか すごい年離れてますね」

 「そうだね まあ年齢なんて気にせずに仲良くしていこうよ」

  里菜が、梨菜に対して、言った。

 「はい こちらこそ仲良くしてください」


  3人は、暗い夜のテーマパークで、笑いあいながら、話していた。

 

  次の日の朝、夢遊はいつも通り起きて学校へ行く支度をした。

 

  「よし今日はなんとか早く起きれた」

 

  「夢遊?起きれた?早く準備しなさい」

 

  夢遊は、前日、遊んでいたが、なんとか起きれた。夢遊の母親が、心配して起きているかを確認した。

  「起きてるよ」

 夢遊は、起きてることを母親に言った。

  パジャマのまま洗面所へ行き、その後は、部屋に戻り、着替えた。パジャマから

  制服のスカートに着替え、シャツを着た。そのあとネクタイを締めて、着替えを終えた。

  夏服なので、半そででも良かった。夢遊は、制服は少し面倒だとも感じていた。

 

  学校までは、電車だと意外と近く、交通の便が良い、今の学校はむしろ距離的には最適である。

  

  夢遊は、支度をして、朝ごはんのパンを持って行きながら家を出た。

  「行ってきます」

  夢遊の母に、言って家を出た。

「行ってらっしゃい」

  母が行ってきますと声をかけた。

  

  夢遊が、早めに出るのは、カフェで少し作業をするためでもある。少し余裕を持ち、学校に行くほうが良い一日を過ごせるからだ。

  

  今は、テーマパーク変革プロジェクトという自分の中のその大きな課題が、夢遊の中で、

  一番大きなものだ、前回つながることができた本間の存在が夢遊の中で大きい存在だ。

  もしかしたら、あの大きなテーマパークを変えてしまうかもしれないというちょっとした期待感もあり、ワクワクもしていた。その反対には、このプロジェクトが、かたい人たちに見つかってしまったら、どうなるかというのもあり、リスクもあるとも感じていた。

  

  

  

電車の乗り、一本降りた駅で、カフェに寄った。


「よし着いた、じゃあ早く頼んで いろいろ考えて 学校の時間に間に合うように行こう」

 夢遊は、学校に間に合う時間までカフェで過ごした。





 本間は、早めに出勤して、日本エリアの新設について考えていた。自分の中で大きなプロジェクトでもあるので、今は進めておくことだけであった。


「やっぱり 西部エリアのショーを取り壊さないとだめよな ここの入場者数いつも少ないしな 人気がないのだろうか」

「あれ本間さん早いですね もうご出勤ですか?」

「ああそうだね まあやることあるからさ」

「そうですか あの例のやつですか?」

「うん そうだね」

 唯一、本間のプロジェクトに反対をしない1人でもある、小山田雄介だ。

「僕 むしろこのプロジェクト楽しみにしているので 成功できたらいいなと思ってるんですよ」

「そうか それはありがとう」

 小山田は、新卒で入社し、テーマパークマーケティング本部に入ることを希望していた。

 しかも、パークの現場経験なしで、テーマパークマーケティング本部に入っているので

 少し異例でもあった。パーク業務については、あまり詳しくはないが、テーマパークマーケティングについて勉強し、実力をつけてきた、大学時代にマクロなどを専攻し、マーケティングも勉強した、テーマパークマーケティンについては詳しくなかったので、そこを補い勉強してきたのは、なかなかすごいことだった。

「あのマーケティング的な視点でちょっと話しても良いですか?」

「うん大丈夫だよ」

「日本エリア新設についてですが これは僕もすごい良いなと思うのですが 他にも取り入れた方がよいと思うんです」

「なるほど どんなことかな?」

本間は、興味を持ちながら話を聞いた。

「新設エリアなのですが 飲食やお土産の場所などは視野にいれてますか?」

「一応入れているけど まだどうするかは決めてないんだよね」

「なるほどです 僕はやった方がいいかなと思うんです」

「そうなんだな それはちなみにどうしてとかあるかな?」

「僕も西武エリアの飲食店とお土産のエリアの入場者のデータ見たんです そしたら

 まあここは少ないと思って飽きられちゃってるかなと」

「そういうことか そうなるとかなり大きな形で進めていかないといけなくはなるな」

「そうなんですか」

「うん 1つ1つ進めていきたいからさ そこも視野には入れていきながらやっていこう

 ありがとう」

「いえいえ 僕の方こそ本間さんの役に立てるのならば 全然いいですよ」

「また何かある時はよろしくな」

「はい 喜んで」

 小山田は、とても喜んでいる感じだった。

 そして、本間は、日本エリ新設についてのプロジェクトに取りかかった。




「まーくん今日大学休みなの?」

「うん 今日は全休」

「いいね 大学って自由な感じだし」

「うん 大学はなかなかそういう雰囲気だからいいよ」

「そっか まーくんさ最近いろいろと違和感を感じることない?」

「違和感か うーんあの取締役とかが来てから まあなんとなくは

 雰囲気感じたけども」

「だよね まーくんあのこと知ってる?」

「あのことって?」

「夢遊ちゃんが違和感を感じていた 「伝統」「継承」のこと」

「ああなんか神谷さんから少し話を聞いた」

「まーくんもやっぱり聞いた感じか」

「うんそうだね まあ自分もあの「伝統」「継承」というのがなんかそんなに好きじゃない

 という感じだな」

「そうだよね なんとかできないかな 夢遊ちゃんさずっと考えている感じなんだよね」

「まじか彼女すごい いろいろ考えているよね」

「そうそう だからさ私たちもなんかできることないかなと思って」

「できることか 何ができるだろうか」

「そうだよね それがちょっと悩むよね」

 正樹と高野は、夢遊のやっていることが気になっていった。

 自分たちが普段考えないことなので、むしろやっていこうとも感じていた。

「お疲れ様 あれ2人で何話してたの?」

 神谷がオフィスに入ってきた。

「ああ神谷さんお疲れさまです あの例の夢遊ちゃんのやつです」

「あれね なかなか難しいよね たしかにたまに自分も引っかかることがある

 ここの会社動きにくいなと」

 高野が、神谷にどんな話か聞かれたので、高野が答えた。

「本当そうですよね テーマパークなのに こんなに固い雰囲気なんてちょっと変ですよね」

「まあね テーマパークの裏だしね しかも上の方だと年上の人で 年齢いっている人が多いし」

「そういう人たちが新たなことをやろうとせずに 今までのやり方だけで貫こうとしているから ここは変わらないということなんですね」


「それはあるね」

「ですよね ああ変えたいな」

「なんか高野ちゃんも向山さんと同じ考えになってる感じだね」

 正樹が、ツッこんでいた。

「たしかに そういう感じになっている感じはある」

「いろいろ影響されるよね」

「まあね」

「それでこれから動きだすの?」

 正樹から、聞かれて高野は返答に詰まった。

「うーん動き出しても良いとは思うんだけど 夢遊ちゃんがどういう形で動いているか分からないしね」

「そういうことか 自分も何かできることがあったら協力していくよ」

「ありがとうまーくん」

「高野ちゃん 自分も協力するよ」

「神谷さんありがとうございます」

 高野、神谷、正樹の3人は夢遊と同じように、何かできることを考えていた。




 ブランドニューオブアメリカ平日の朝の雰囲気は、いつもよりゆったりしている感じ

であった。キャストたちがいろんな準備をしながら、オープン時間に備えていた。

 

「真央冷やしたドリンクこれだよね?」

「そうそう あとはピークの時間に備えて補充するだけだね」

 「だね てかやっぱり平日のこの時間って落ち着いてて いいよね」

  里菜は、平和そうな感じで聞いていた。

 「うん いいよね でも大学の課題終わってないという不安がある」

 「真央終わってないの? 課題いつもギリギリだよね」

 「里菜もじゃん」

 「まあそうだけど てかさ来週だっけ?繁忙期のシフト提出」

 「だっけ?たくさん入らないといけないみたいだし」

 「マネージャーに言われそうだね」

  真央と里菜は、準備をしている時に、シフトの話をしていた。

 「そう言えば 梨菜ちゃんとか今日入ってるかな?」

  真央が里菜に、梨菜が入っているかを聞いてみた。

「どうだろうね 入ってたらいいよね 夢遊ちゃんも」

「そうだよね 入ってたらいいなとは思うな みんなでご飯とか行きたいし」

 真央がご飯を食べに行きたいという願望を持っていた。

「だよね 知ってる人が職場のシフトでいるのはやっぱり大きいね」

里菜が、真央に共感していた。

 「本間さんもどう?」

 「本間さんも誘いたいね でも梨菜ちゃんとか 夢遊ちゃんとか本間さん知ってるのかな?」

 「どうなんだろうね 知ってたらすごい感じだとは思うね てか真央さ本間さん好きだよね」

 「そんなことは 本当は里菜でしょ?」

 「さあどうなんでしょう」

  里菜が真央に、本間が好きなのか聞いたら、その後、真央が里菜に対しても本間が好きなのかを聞いた後、里菜がはぐらかしていた。

  

  

  

  

  

 「皆さんミーティング始めてもよいですか?」

  本間が、本社のテーマパークマーケティング本部の社員たちに尋ねた。

 「はい大丈夫です」

 「はい 大丈夫です」

  何人かの社員が、続々と返事をした。

 

  会議をする部屋へ、社員たちが移動し始めた。

 

 「では ミーティングを始めます よろしくお願いします 今日は前回から発案している日本エリア新設についてのことです 実はこの前の日曜日にハリウッドエリアを身に行き 確認などしに行きました」

  社員は、本間の話を聞いていた。

 「それで今回見に行きながら いろいろ考えて ハリウッドエリアで行われている西部エリアのショーの場所を日本エリアの場所にしようと思います」

 「えっあそこに新設するのですか?」

 「人気ショーで ブランドニューアメリカのメインショーとも言われてるのにここを日本

  エリアを新設するなんてありえないでしょう」

 「本間さんちょっと考えてくださいよ」

  たくさんの社員たちが反対をしてきたが、本間の意思は、変わらずに、それに対して反論した。

 「最近 実は西部エリアのショーの時間帯を見る限り 人が減ってるんです 同時に メインのショーと言われているけれども 他のアトラクションやショーにゲストは行ってることが多くなってます 今はかつての感じのように賑わいなども少しなくなってきている感じで寂しい感じにもなっています」

  本間から、その事を言われて、社員は、黙ったままであった。

 「アメリカらしさがなくなるし これはちょっと反対です」

  30代の女性社員が本間に不満をぶつけた。

 「皆さんの思っていることはよく分かります けれどもテーマパークというのは 少しづつでも新たな形で変わっていかないといけないんです そういう意味では 日本エリア新設というのは1つの挑戦です」

  少しの沈黙の後、本間はまた話し始めた。

 「アメリカらしさがなくなってしまい ブランドニューオブアメリカのテーマが変わってしまうという所に 皆さんは少し引っかかっているのでしょう「今までがこうだった」「ずっとこのやり方だった」など そういう風にやってきた方々がほとんどでしょう けれども それって結局は自分のことしか考えていないんです」


「もし皆さんが ゲストのことを思って考えているのならば 僕のこの提案に反対しないはずですよね?ゲストにとってテーマパークという場所は何なのか?夢のある場所にするにはどうしたら良いか?などそういうことを考えるのが僕らの仕事なのではないですか? 林さん山田さんは特に そういうの一番お分かりではないですか?」



本間は、話している間に、山田と林の名前を出した。2人は急に自分たちの名前を出されたのではっとしていた。

「テーマパークは常に変化しないといけない どんな会社も同じことだけをしていて生き残っているのは数少ない たくさんのテーマパークがある中 かつての「伝統」や「継承」だけでは生き残れません」


 本間は、なぜ日本エリアを新設していかないといけないのか?ブランドニューオブアメリカが変わっていかないといけない理由を社員たちに強い口調で説明していた。


 本間の説明が終わり、社員たちは沈黙のままだった。


「正直 このミーティングの時間にこんな話をするなんて想像もしていなかったですが 皆さんが新たなことにも取り組める覚悟を持っていただいたら またミーティングを再開したいと思います 今日はもうこれで終わります」


社員たちの気持ちを変わることを願い、本間は最後に言葉を述べ、会議の部屋を後にした。


 正直な気持ち、本間もこういう言葉を言うのは、ちょっと荷が重かった。自分より経験年数が高い人や、年数が低いが、本間より早めに入社している人たちに、伝えるのだから

 なかなか難しいことであった、ついこの前でいたフードオペレーション部の方がまだやりやすかったとも感じていた。


 ちょっと気持ちを整理するために、本間はパークを歩きまわった。




 「今日はバイトか 午前授業だから良かった」

 「最近よくバイト入ってるね 勉強とか大丈夫そうなの?」

 「まあなんとかね 一応両立はできてる感じ」

 「それは良かった 特進は毎日大変だよ バイト私もしたいのに」

 「そっか まあやりたいけど なかなか難しいよね」

  夢遊と華美は、たわいもない会話をいつも通りした、華美は、アルバイトをしたいと感じていたが、特進の授業で今は厳しいとも感じていた。

 「そうそう 落ち着いたらやりたいな」

 「うん 落ち着いたらやったらいいよ いろいろ視野広がるし」

 「なんかもう成功者みたいな言い方だね」

 「そんなことはないよ あっ電話だ」

  夢遊は、チャット電話の着信があったので出た。着信は本間からだった。

 「はい もしもし 本間さんどうしましたか? 久しぶりです」

 「向山さん久しぶり 突然電話ごめんね 今大丈夫?」

 「はい 大丈夫ですよ」

 「おお それは良かった 前回話した日本エリアの新設のこと話してたでしょ?」

 「はい 話してましたね」

 「なかなか進まなくてね 日本エリアの新設のことをこの前会議で話したんだげど 一部の場所を変えてなくすみたいな 話をしたら ちょっと反感を買ってしまって これからどうしようとか考えてしまってね」

 「そういうことですか うーんみんなやっぱり「伝統」「継承」が好きなんですかね」

 「どうなんだろうね 新たなことをしたくないというのは分かるんだけど こんなににも否定されるとは思わなかったよ」

 「その気持ち分かります」

  本間は夢遊に、電話越しで、前回会議で話した日本エリアのことを話していた。

 「向山さんは 最近どう?」

 「私は まあそんなに変わらないですけど うーん何ていうか テーマパークのことばかり考えてるというか」

「ほお どんなこと?」

 「どんなことかと言いますと ゲストが前に「キャストの顔が怖い」とか言ってたのを聞いたんですよ それを言ったのが小学生くらいの女の子でして それ聞いてちょっと気にしてしまって ゲスト視点も大切にしたいなと思い ゲストとしてブランドニューオブアメリカに行っていろいろ調査しに行きました」

 「すごいね その行動力 なんか発見できた?」

 「はい いろいろ発見できました 今度じゃあその発見できたことをお伝えしますね」

 「ありがとう じゃあまた楽しみにしてるよ お互い今やっていることは異なるけれど

  まあ なんか全てつながってくる気がするよ」

「そうですよね 全てつながってきますよね 今やっていることが報われるといいなと

  思います」

「だよね とりあえず自分たちができることをやろう もし可能なら近々集まる?」

「はい 大丈夫ですよ また連絡します」

「うん また連絡待ってるよ」

「はい ではお疲れさまです」

「お疲れ様」

  本間と夢遊の連絡が終わった。



「夢遊 電話意外と長かったね 例のテーマパークの社員さん?とか」

「そうそう あの例のテーマパークの社員さん」

「なるほど かなり大きなことやってるみたいだね」

「そうだね 自分でも分からないけど そんな感じはするよ これからどうなるか分からないけどね」

「まあ 大丈夫だよ 自分を信じるしかないよ」

「うん 頑張ってみるよ」


 夢遊は、ちょっとばかり今やっていることがどうなるか分からず不安だった、そんな夢遊 の様子を見て、華美は夢遊を励ました。


「じゃあ帰りますか 今日はバイト?」

「今日はないよ」

「じゃあ久しぶりにカラオケ行きますか?」

「うん いいね 行こう 私も久しぶりに歌いたかったし」

「よし決まり 行こう」


 放課後、華美と夢遊は、カラオケへと向かった。午前授業で、早めに学校が終わる時間を久しぶりに夢遊は、楽しめるので最高だった。









「こんにちは ようこそブランドニューオブアメリカへ」

 1人の女性キャストが、元気よくゲストに呼びかけていた。

 テーマパークらしいと言えば、テーマパークらしい雰囲気だ。本間は、日本エリアの

 場所に足を運びながら、他の場所もいろいろ見ていた。何かが物足りない、最近は

 ゲストも減少していると感じていたが、なんだかもの寂しさがあった。それは彼らの

 顔つきや1つ1つのサービスがなんだか、作業のように流している感じた。


「テーマパークってもっと楽しい場所のはずじゃ?何でこんな感じなんだろうか」

 1人事をつい本間は歩きながら口にした。

夢遊が言っていたことが、改めて体に染みついたような感じでもあった。

とりあえずは、もう少しいろんな所を見て回ることにした。



その様子を見ていた、本間と同じ部署の社員も何人か気にしている様子であった。



「本間さん パークによく出てるけど何してるのかな?」

「なんか考えがあるとかじゃない?」

「まあね 僕らも手伝う?」

「そうね 手伝いましょうか」

  男性社員2人と女性社員の1人は本間を手伝えないかを検討してみることにした。




 若木は、パークでいつものように、パークモニターをしていた。


「山本さん ゲストもうご案内していいよ チケットの時間を見て ご案内してくれれば」

 ファストパスと言われる事前のチケットがあり、ゲストが取得した時間で、入れるようになっている。


「お待たせしました 何名さまですか?」

「3名です」

「かしこまりました この先をゆっくり進んでください」

 キャストの山本は、ファストパスのゲストを案内していた。




 ゴーストエリアにゲストがぞろぞろ入って来た。中には、高野と神谷がいたが、

2人はゲスト数が少ないと感じていた。神谷は、ゲストを誘導しながらもアトラクションのモニターをしていた。


「何名さまでしょうか?」

「2名です」

「かしこまりました では3番の列にお並びください」

 高野が、ゲストを案内していた。


オフィスに戻り、神谷は、今日のゲスト状況についてのことを高野と話していた。

「高野ちゃん 今日のゲストの状況さ見ててどう感じた?」

「うーん少ないかなと」

「やっぱりそうだよね ゲストこんなに少ない感じだっけ?という疑問が浮かぶんだよね」

「私もですよ でもこれは平日だと普通じゃないですかね?」

「いや実はパークのクローズ業務してた時にセクションごとに入場者数の算出をするんだけどね 他のセクションの様子とパーク全体の様子を見たんだ そしたら 全体的に少なくて 平日とは言えない状況になっててさ」

「まじですか それはパークの危機」

「そう 本当それなんだよ だからやばいなって」

「ですよね 上がなんとかしてくれる雰囲気ってあるのかな?」

「そこは分からない所だよね」

 高野と神谷は、ブランドニューオブアメリカの危機を間近に少し感じている様子であった。

「そうなるとやっぱり 夢遊ちゃんがいろいろ考えていることを実現していくしかないということですかね?」

「うん 向山さんはゲスト数が少ないということを具体的には知らないと思うけど この前のゲストの話が結局さ こういうのにつながってるんじゃないかなと思うんだよね」

「そうですよね」

 高野と神谷は真剣にテーマパークが危機的状況にあるということを思い、これからどうしていくかを考えていくことにした。

「とりあえず考えていこう」

「ですね」



「てか華美 歌うますぎる」

「そう?そんなことはないよ」

「次 夢遊でしょ?もう曲入れた?」

「あっそうなんだけど ちょっとドリンク取ってくる」

「はいよ」

夢遊と華美は、カラオケにいた。最新システムのAI採点の機器の部屋だ。

  よくカラオケに行くことがあり、今日は夢遊が久しぶりの休みだったので、カラオケ行

けたので華美のテンションは高かった。


夢遊は、ドリンクを取ってくる最中にも、いつも考えているブランドニューオブアメリカのことを考えていた。

 (1人でいる時だと考えてしまうな 本間さんのあの件も気になるし ちょっと電話してみる?いや今は忙しいかな はあなんかもやもやが)

すると、夢遊は天気の確認をしていたら、ブランドニューオブアメリカのニュースを目にした。

「ブランドニューオブアメリカのニュースだ ちょっと見てみるか」

 興味本位で開くと記事の一面に大きく、ブランドニューオブアメリカ買収危機?

 従業員の解雇可能性視野? 契約社員勧奨も?という記事が書かれていた。思わず

 夢遊は声を出してしまった。

「えっ嘘でしょ?これって真実なの?まだ可能性だから大丈夫でしょう」

 夢遊は、半信半疑だった。そのニュースを知ったまま、夢遊は、カラオケの部屋へと戻った。部屋に入ると、華美は歌ってる最中だった。華美の歌声を聞いて、現実からカラオケのエンタメ空間へと引き戻された。

「よし終わった 夢遊遅かったやん 遅かったから私2曲も歌っちゃったよ」

「ああうん ごめん」

「うん?まあいいけどさ なんかさっきと顔つきが違うけどなんかあった?元気ないけど」

 華美はすぐに夢遊の顔つきが少し違うことに気づいた。

「まあたいしたことではないけども」

 カラオケの部屋では、カラオケチャンネルの音声が流れてはいたが、うるさくもなく静かでもなく、会話はできるレベルの状態だった。

「その何ていうかこの記事を見て驚いてさ 本当なのか?嘘なのか分からないけどさ」

「ブランドニューオブアメリカ買収危機?従業員解雇視野可能性? まじかこれは確かに

 真実かは気になるよね」

「そうそう これは萎える もしそうなったらどうしようと思って」

「うん まあとりあえずは まだこの記事だけで判断するのは難しいから様子を見ていくしかないんじゃない?」

「そうだよね これかなり大きなことだから心配」

  夢遊は、先ほど見た記事を華美に話して、気分をすっきりさせた。まずは様子を見るという華美のアドバイスを受け入れた。

 

「とりあえず 歌おうか」

  華美は、夢遊を元気づけていくために、歌うことを促した。

「そうだね まあ今日は歌うことにするよ」

 いろいろ考えてしまうが、今日仕事のことは忘れることにした。


「ある程度まとめていかないと分からなくはなるな でもその前にここの社員たちとの

  前回のことも未解決だしな これ終わったらパーク出るか」

  本間は、日本エリアの新設について前回写真を撮った部分と具体的にどんな内容になるかというプランを作成していた。テーマパークマーケティング本部の社員たちにな んとか理解してもらおうと奮闘していた。

 

「このプランうまくいくのか?というのも少しは不安だけども」

日本エリア新設について考えてはいるものの、これが果たして成功するのか?

というのは、本間自身も懸念していた。

 

「お疲れ様です」

「おお お疲れ 小山田は休憩だった?」

「いいえ ちょっと別の部署に用があって」

「そうだったんだな」

「本間さんずっとデスクワークですか?」

「そうだよ 日本エリア新設のプラン書を作成してて」

「なるほど それを作ってたんですね」

「そうそう ある程度まとめていかないといけないなと思ったからね このあとパーク

 出て ちょっと全体を見て取り入れられる所ないかをもう一度見ようかなと 小山田も行くか?」

「はいじゃあ僕も行きます てか本間さんよくパーク出ますよね」

「了解 そうだね パーク出てテーマパークの全体像を見ることで企画を生み出せるしね

 元々テーマパークオペレーション部にいたから パークに出るのが好きなのもあるな」


 「いいですよね テーマパークオペレーション僕も興味少しあったんですが 希望自体を

  本部希望で出してたから いきなりここだったので」

 「それはそれで すごいよ」 

 「そうですか それはありがとうございます」

  

 「戻りました 経理部行ってました」

 「僕もです」

  若手社員の古田萌香と唐崎幸助が戻ってきた。

 「お疲れ様 2人とも今からパーク出て日本エリアの新設の仕事をするけど行くか?」

 「えっパーク?」

 「いやいや遊びに行くわけじゃないから 僕は行けます」

  唐崎が即座にツッコんだ。

 「分かってるよ」

 「まあ楽しみながらパークに出て行くのが良いから 古田の考え方も良いけどね」

 「あっありがとうございます」

 「よしじゃあパーク行くよ」

 「はい」

 「はい」

 「はい」

  4人はパークに出た。

 

 「本間さん質問して良いですか?」

  テーマパークマーケティング本部のオフィスを出てからエレベーターに向かう途中に、

  唐崎から質問された。

 「うん いいよ どうした?」

 「その今日本エリアの新設計画立ててるわけじゃないですか その実際この前 全員が承 認得てなかったりして これから大丈夫かなと心配なんですが」

 「そういうことか まさか唐崎がここまで心配してるとは思わなかったよ 俺も不安だよ

  まだこれからどうなるか分からないことをやってるわけだしさ それでもできることを行動に移しておかないとこの先何をしてもダメな気がするからさ だから俺は日本エリアのプランを少しでも進めてる」

 「分かりました 僕も貢献できるように頑張ります」

  本間からの回答に唐崎は安心した。エレベーターの場所に到着し、4人は乗り始めた。

 


 「なんかパークに出るってなかなかないことなので 僕はなんか貴重です」

 「それは良かった 小山田頼んだよ 得意なマーケティングで いろいろなんかできることあったら言ってくれよ」

 「もちろんですよ 本間さん」

 

 「よし じゃあさっそく日本エリアの候補地に向かうよ」

 「はい」

 「はい」

 「はい」

 

 



「入場者数が減少しているみたいです」

「社長やばくないですか?」

「まあ今はとりあえず大丈夫だろ 人件費抑えるためにいざとなれば従業員解雇

 というのは視野にいれてる まあニュースで大々的にあそこまで書かれてしまったがな」

「そういう感じですか」

「あの記事の買収危機というのは実際どうなのでしょうか?」

「そんなに知りたいか?」

「はい」

「まあ 本当かもしれんな」

「えっ本当なのですか?」

「明確なことは言えないが それもありえるかもだ いろいろ発言を急かすな

 真実を知っているのは私だけだ」

「はい」

「いずれいろいろ知ることになるから安心してくれ」

「分かりました」

 社長と副社長はなんやらブランドニューオブアメリカのことをついて話していた。




「若木さん パークモニター終わったので このあとはとりあえずオフィスに戻りますね」

「分かりました 僕もこのあとオフィス戻ります」

「了解です 繁忙期のシフト伝達のことは 伝達はしてますよね?」

「はい してあります ただまだ少ししか集まってないので 作れてはいませんが」

「ですよね お疲れ様です」

「はい キャスト面談の日程も組み始めないといけませんね」

「確かに じゃあそれは 自分やっておきますね」

「ありがとうございます 助かります」

 若木と神谷は、オフィスワークについて話をしていた。

「若木さん 最近ゲスト数少ないと感じませんか?」

「まあ 少ないとは感じてました」

「ですよね 実はさっき高野ちゃんとも話をしてたんですが ゲスト数他のセクションも見てみたら ちょっとゲストの数少ないと思い なんかちょっとやばいなと思ってて少し危機を感じるねと話してました」

「まじですか 神谷さんがそんなことを」

「はい なんか大丈夫かなとか 経営者ではないからそこまで心配する必要があるのかはちょっと微妙ですがね」

「そうですよね まあちょっと様子を見てみましょう 僕たちができることをやっていきましょう」

「分かりました そうしていきましょうか」

  最近のことでちょっと心配になっていた神谷は、若木と話をして、今後のパークについて話をした。夏の日差しがパーク全体の活気を与えているようにも見えた。ゲストが少ないこの状況をなんとかしようと奮闘している若木や神谷は、一層パークの社員としての誇りでもあった。



  本間、小山田、唐崎、古田の4人は、日本エリアの候補の場所にたどり着いていた。

「ここが日本エリアの候補地ですか」

「そうそう ここだね」

  唐崎が、驚いた顔つきで聞いた。


 

「そうだよ まだこれからだから全然だけども アメリカの西部エリアを縮小だし 少し

  なくなるのもあるけども」

「でないと日本エリア作れませんしね」

  小山田は、本間にs少し共感していた。

「他の社員たちはなかなか ここに納得してくれませんね」

「そうなんだよ そこが悩んでるところだよ」

「ですよね どうにかして納得させないとじゃないですか」

「うん なんとか頑張ろう」

「本間さん質問なのですが」

「うん どうした古田?」

「日本エリアのキャラクターたちとかってどうするかとか決めてますか?」

古田が、本間に日本エリアが完成した場合、キャラクターたちを作るか?ということを

質問した。

「まだそこまでは決めてはないけども」

「そうなんですか キャラとかあとはストーリーとか考えてもいいですか ちょっと少し

  日本エリアの候補の場所見て参考にしていきます」

「分かった」

「じゃあ自分も行きますね」

  小山田と古田の2人は一緒に行動した。

「俺と唐崎はちょっと休憩しますか」

「ですね」

「何かドリンク買ってくるよ 好きなのあるか?」

「えっいいんですか?」

「うん いいよ 好きなの言ってくれ」

「じゃあコーラとか炭酸水で」

「分かったじゃあちょっと待っててくれ あいつらもすぐ戻ると思うから

 あいつらの分も買ってくるわ」

「分かりました ありがとうございます」

 本間は、ドリンクを買いに日本エリアから少し離れた。



「あれ本間さん また会いましたね」

「わっ里菜ちゃん」

 本間がドリンクを買いに行くと里菜の姿があった。

「本当よく会いますね」

「それは確かに思うね まあセクション変わってもテーマパークの中だしね」

「それはありますよね 最近はどうですか?」

「うん 最近かそんなに変わらないよ あの例のエリアのことで忙しいよ」

「頑張ってやってますね」

「なんとかね 自分が動かないと何も始まらないしさ」

「行動は大事ですもんね」

「そうだね 行動しないとだなと そう言えば 今日は真央ちゃんは休みなの?」

「ああ真央は今日いないですね ちょっと用事があるみたいで」

「そうなんだ 珍しいね」

「私もそう思います どうしたんだろうと」

「まあそういう時もあるよね」

「大丈夫だよ」

「ですね あっドリンク渡してなかったですね 何個でしたっけ?」

「大丈夫だよ 4つだね」

「4つですね 部署の方の分ですか?」

「そうそう 暑いし仕事頑張ってくれてるからね」

「優しいですね」

「そうかな?」

「はい 優しすぎます」

 本間は里菜に「優しい」と言われ、自分でも気づかないと所だったのでふと疑問に感じた。

「とりあえず頑張ってくださいね」

「ありがとう 里菜ちゃんも」

「はい あの今度」

「うん?」

「いえ なんでもないです」

「そうじゃあ戻るね」

「はい」

  里菜は本間の後ろ姿を見て、つぶやいた。

「気になるんですよ あなたのことが」




夢遊は、カラオケの後、パークの危機についてのことをいつものカフェブラウンでゆっくり1人で考えた。

「本当にブランドニューオブアメリカどうなるんだろう」

 1人で1言つぶやいていた。

「私がなんとかできるわけではないけども」


すると、どこかで見たことのある女の子が店内へと入って来た。その女の子はスカート丈が短い制服を着ていた。

「あれ夢遊ちゃん?」

 その女の子の姿は、梨菜だった。

「えっ梨菜ちゃんじゃん どうしてここに?」

「シフトのことでさっきブランドニューオブアメリカ寄ってた それでカフェ行きたいな

 と思って寄ったんだ」

「そっか でもいいところに来たかも」

「そうなの?とりあえず買ってくるね」

「うん 分かった」

 梨菜は、とりあえず飲み物を買ってくることにした。



 店内はがらがらであった、お客さんもそんなに店にいなかった。


「夢遊ちゃんお疲れ様 さっき話したいなと思ったことはどんなこと?」

「それは テーマパークのことで」

「テーマパークのことね うんうん」

「その 前回話したかもだけど ゲストが怖いと言ってたあの件のやつね」

「それね やっぱり夢遊ちゃん気にしてるんだね」

「なんかね気にしてしまってるね」

「実はさ 私も同じ経験をしてね」

「えっそうなの?」

「そうそう」

「どんなこと?」

 梨菜は、夢遊と同じような経験をしたことについて話し始めた。

「たまたまなんだけどね ゲストがさ パークが汚いと言ってて せっかく来たのにとか言ってたんだよね」

「うんうん なるほどね そんなことがあったんだね」

「そうそう そんなことがあった 夢遊ちゃんのことじゃないけど 同じ気持ちになったよ」

「そっか なんか共感してくれて嬉しいよ」

「それは良かった 夢遊ちゃんはこれからさやっぱり変えていきたいと思ってるの?」

「うん そうだね できる範囲のことをしていきたいと思う」

「そっか じゃあ私も協力してもいい?」

「全然いいよ むしろそういう方が私は嬉しい」

「やった じゃあ一緒に頑張って変えていけるように頑張ろう」

「梨菜ちゃんノリノリだね」

「そうかな?」

「うん そうそう なんかテーマパーク全体的にテーマパークらしさがないというか その何ていうか かたいというか」

「かたいね 分かるよ」

「だって知ってる?梨菜ちゃん「伝統」とか「継承」とかを大切にしてるとか言っててさ

 新しいこと受け入れないみたいなこと言ってたんだよ やばくない?」

「やばいね そのやっぱり改めて言うと かたいね」

「でしょ? かたいでしょ?」

 夢遊と梨菜は、ブランドニューオブアメリカの今の現状について語っていた。

「これから 夢遊ちゃんどう変えていく?」

「そこなんだよね 難しい所は」

「だよね やっぱりあの「伝統」と」継承」をぶち壊すことかなと思う」

「ぶち壊す?」

 梨菜は、いきなりの夢遊の発言に驚きながらも、少しだけ笑みを浮かべた。

「夢遊ちゃんらしいね」

「ありがとう だってむかつくじゃん あの変な「伝統」「継承」?とかみたいなの」

「たしかにね それはあるよね」

「うんうん 私たちキャストができることって だいぶ限られるでしょ?」

「たしかに それはある」

「大きなことはできないから 身近にあることから変える」

「それは例えばどういうの?」

「サービスとかだね 何をするにもマニュアル通りで こうでないといけないみたいなのがあるし ゲスト1人1人は違うからさ」

「そうだね」

「ここのテーマパークはゲストのためにと言ってるくせに 効率性みたいなのがあるし

 ただの作業になってる」

「それはたしかにあるね」

「でしょ? 臨機応変とか柔軟な対応もなかなかできないよね マニュアル第一主義のその伝統がやっぱりかせになってるよ」

「そうだよね」

「うん だって正直さロボットみたいな対応になってる感はあるかも」

「うんうん」

「そこがちょっとね きもいかもしれないし」

「なるほど よく伝わった そしたらどう行動していくかだね 他にも仲間いる?」

「うん いるはず 心強い仲間が」


 夢遊と梨菜は、カフェでブランドニューオブアメリカを変革するために、話し合っていた。

「なんか楽しくなってきたね」

「そうだね」

夢遊は、これからのことにワクワクしている感じでもあった。

「一応整理しておくとさ 梨菜ちゃんが言ってた テーマパークが汚いというのは すぐにできそうだよね」

「たしかに でも清掃のキャストっていなかったけ?」

「なんか廃止されたんだよね そこがないのがやばいけど」

「えっ知らなかった」

「そうそう そこは提案したいところだね」

 夢遊が提案をしようと試みようと思った。

「だよね そこ提案したらだいぶ変わるかもだしね」

「そうそう そこは絶対に提案したいし あとはキャストの表情が怖いと言ってたやつだね」

「でた あれね そこについてはさ 社員が言わないのが不思議なんだよね」

「それね そこまで重要視してないということもありそう」

「あるよね そういうの社員が言わないのがちょっとね」

「梨菜ちゃんもそう感じるよね キャスト全員とは言わないけど暗い感じはあるのは否め  ないんだよね」

「たしかにね」

「明るくはしたいし もっとエンターテイメントを感じさせたい」

「おお それいいね」

  夢遊は、自分の中で秘めていたアイディアを伝えた。

「だからそういうちょっとした所を変えていくことだなと思う 私たちが実行していくようにするとかね そのあと 他のキャストに働きかけていくのはありだと思う」

「じゃあそれでやってみよう」


   夢遊と梨菜は、自分たちがこれからやる計画をかためていった。まだまだ変えていくことは、あるかもしれないが、ちょっとずつやっていくことを心がけた。


2人は注文したティーを飲みながらたわいもない会話をしながら、時間を過ごした




「よし じゃあ今日は解散しようか 本社戻ろう」

   「ですね」

   「ですね」

   「ですね」

    4人は、本社へと戻った。

   「本間さん今日収穫ありました?」

    唐崎が本間に尋ねた。

   「まあ そんなにはないけどちょっとはあったかな これから進めていくというので

    進めやすくはなったかなと思う」

   「それは良かったです あと反対してる人たちのことはどう対応しますか?」

   「うーん どうしようか 唐崎から林さんと山田さんとか他の社員に話してくれないか?」

   「えっ僕がですか?」

   「うんそうそう」

   「いやーちょっと何言われるか分からないですし」

    本間は、唐崎が、本気で悩みだしたので、冗談ということを言った。

「まあ冗談だよ」

   「なわけないやん」

   「そうだよ」

    横にいた古田と小山田は笑っていた。

 笑いのある話題で盛り上がっていたので、あっという間に本社に着いた。

 

「本社着いたな このまま会議室に移動していろいろ決めていこう」

 「はい」

 「はい」

 「はい」

 「本間さん会議室は、うまってるみたいです」

 「ああまじか 何時くらいに空きそうか分かるか?」

  小山田が会議室の方に向かい、確認すると、重役が会議をしていた。

 「今の所は 時間が読めない感じですね」

 「そうか そしたら仕方ないな 空くまで待つしかないな」

 「そうですね」

  会議室が空いてないので、本間はどうしていくか考えた。

 

 「とりあえずは待とう」

 「分かりました」

 「分かりました」

 「分かりました」

  本間は、3人に待つように伝えた。

 

 

  すると、本間の上司である山本が本間の元へ来た。

 「本間君ちょっといいかな?」

 「はい」

本間は、山本に呼ばれ、部屋へと向かった。

  何で呼ばれたかというのが今だに謎であった。

 

 

 「本間くん 最近の現状報告を聞いてなかった 最近はどういう感じかな?」

 「そうですね そんなに変わりはない感じです」

  本間は、とりあえず今の現状報告だけであったからとりあえずはほっとしていた。

 「あと あれはやってないだろうな 日本エリアの構想などは ブランドニューオブアメリカの全体像や取締役たちが言ってたように「伝統」や「継承」を壊すことはくれぐれも

  進めるのはなしにしてくれ」

  本間は、そのように言われ、自分の中の怒りをおさえつつ、「はい」とだけ返事をした。

 「はい」

 「では 業務に戻ってくれ」

 「分かりました 失礼します」

  本間は、部屋から出て、オフィスへと戻った。

 

 「これから どうしようか」

  1人言をつぶやきながら、オフィスへと戻って行った。 

 

  重役たちの会議が終わり、重役たちが続々と会議室から出てきた。

 

 「ここはこれから会議で使うかな?」

  取締役の1人が、唐崎に尋ねてきた。

 「あっはい えーと 使いますね」

 「そうなんだね ちなみにどんな会議で使うのか教えてくれるかな?」

 「えーと その新たなエリアの話し合い?ですかね」

  唐崎は、なぜか取締役に緊張交じりに話していた。

 「そうか」

  その後、取締役たちは、重役の所に戻って行った。

 

 「本間さん お疲れさまです」

  小山田は本間が戻ってきたので、挨拶をした。

「おお お疲れ」

 「何で呼ばれたんですか?」

  唐崎が本間に単刀直入に聞いた。

 「いや そのたいしたことはないよ 最近の状況のこととかいろいろ」

 「そうですか なら良かったです」

  唐崎に聞かれて本間は、そのように答えた。

 「うん そんなに心配することではないよ」

  内心、本間は本当のことは言えなかった。ここまで一緒に協力してくれる仲間に、本当のことを言えない自分が情けなかった。

  

  

  

 「夢遊ちゃん じゃあとりあえず また話そうね」

 「うん ありがとう梨菜ちゃん」

  夢遊と梨菜は、カフェでブラウンで話した後、解散した。テーマパークで一緒に働いて

いる、仲間と共に話せたことで、少しだけだがモチベーションを上げることができた。買収危機というニュースに至っては、自身では心配したものの、今のところきちんとした情報が出てこないため、そこは気にしないことにした。明日から、また頑張ろうという気持ちにもなった。

  

 「若木さん シフト集まりました?」

 「とりあえず数人は あと5人くらいですね」

 「ですか シフト作成も大変ですよね」

 「そうですね シフト作成はどこのセクションでも大変だと聞きますしね」

  神谷が、若木に聞いた。

 「若木さん あと最近のテーマパークのゲストが少ないということですが やっぱり少ないと感じますよね」

 「まあたしかに 少ないですね」

 「はい なんかこの部分を脱却したいなと思ってて」

 「脱却ですか」

 「はい 高野ちゃんと前回話してて 僕も変えたいと思いました」

 「なるほど 僕も協力しましょうか?」

 「おお 頼もしい ぜひお願いします」

 「全然 高野ちゃんにも伝えて本格的に変える計画立てましょう あとまーくんもだ」

 「分かりました」

 「向山さんも何か進めているはずだからちょっと共有させてくれるかを聞いてみます」

 「了解です」

 「何というか きっかけと言ってもたいしたことではないですが やっぱり向山さんのそういう姿に心動かされたというのはあります」

 「なるほど そういうちょっとした意識って大切ですよね」

 神谷は、夢遊の姿に魅了されていた。

  

1人1人がテーマパークのちょっとした変化に気づき、変えようとする感じであった。

 

 「さっき あの若い社員が言っていた 新たな企画とは何か知ってるやついるか?」

 「分かりませんね」

  重役たちが、他の若い取締役に尋ねていた。

 「ちょっとマークしてみるか あそこの責任者はたしか 山本という男だった気がするぞ」

 「たしかそうでしたね」

 「あとは 最近なのかついこの前入った本間という男もマークしておくことだな ただあの男についてはよく知らない どう情報を仕入れていくかだ」

 

 「そんなことなら心配いりませんよ」

 「うん? 君は何者だ?」

 「すみません 急に話に入ってしまい 私はその本間と同じ部署におります 林幹夫と申します」

 「そうなのか ということは本間という男のことをよく知ってるということだな」

 「はい まあそれなりには」

 「今日ちょっと時間あるか?」

 「はい あります」

 「話をよく聞きたい」

 「はいぜひ」

「君たちは何を話しているのかな?」

 「社長 お疲れさまです」

「テーマパークマーケティング本部について私もよく話を聞きたいと思っていた」

 「社長 話をお聞きになってたんでしょうか?」

 「いいや むしろちょっと前から気になっている部署だ 何やら何か始めようと思ってる

  らしいからな」

 「社長 情報が早いです」

 「君こんなことくらい 朝飯前だぞ」

 「おっしゃる通りです」

 「まあ そこにいる彼によく話を聞いて情報を仕入れるしかないな」

 「はい」

 「はい」

 「よし じゃあ戻るぞ 君も念のため来なさい」

 「分かりました」

  林は、社長に呼ばれ、重役たちの部屋へと向かって行った。



「よし終わった 今日も長かった」

  里菜は、ロングで入っていたので、1人言のようにつぶやいた。

「あっお疲れ様です」

「おお 梨菜ちゃんじゃん ここでまさかダブル里菜になるとは あれ今日はバイトだったの?」

「いいえ 今日はなかったんですけど 忘れものをしてしまったので 取りに行ってたんです」

「そういうことね もう取りに行ったの?」

「はい 行きました」

「そっか良かった じゃあ一緒に帰ろうか」

「いいですね 行きましょう」

「うんうん」

 里菜は、梨菜に出くわし、一緒に帰ることになった。里菜は水色のミニスカートとトートバックをかけていた。

 梨菜は、短パンを履き、同じように、トートバックをかけていた。


「梨菜ちゃんシフト結構入ってる方?」

「学校もあるので 週1~2くらいですね」

「そっかそれくらいなんだ」

「里菜さんはたくさん入ってるんですか?」

「私は週4くらいかな」

「すごい入ってますね 大学終わりとかですか?」

「そうだね たまに午後から授業の時は 午前に入ってたりもするけどね」

「なるほど 大学生羨ましいです」

「そうかな?課題も多いし大変だよ」

「それは高校生も同じですよ」

「ああそっか それもそうだね」

 学校の話題をしながら、出口のところまで歩いて行った。


「ロッカーからは意外と遠いよね」

「それたしかに思いました」

 相変わらずロッカーから出口までは遠かった、出る前には、コスチュームセンター

 に行き、コスチュームを返却しないといけない。

「コスチュームセンターに行かないとだね」

「そうですよね」

2人は、ひとまずコスチュームセンターへと向かった。

「返却に来ました」

 はじめに、里菜が返却し、順に梨菜がその後、返却した。

「返却に来ました」

「はい ありがとうございます」

 

 

 コスチュームセンターの女性キャストが、受付をしていた。

 コスチュームの返却が終わり、出口へと向かった。

 

「さて じゃあご飯でも行く?」

「いいですよ 行きましょう」

 梨菜と里菜は、ご飯を食べに行くことになった。


「何食べますか?」

「そうだね 何食べようか てか家 横浜だっけ?」

「はい 横浜ですね でも横浜じゃなくてもいいですよ ちょっと違う場所がいいかもです」

「了解 そしたら大船とか?」

「おお いいですよ 大船ってたしか夢遊ちゃんの地元です」

「そうなんだ じゃあ誘う?」

「いいですよ 誘いますか」

「おーけー じゃあ連絡してみるね」

 里菜は、夢遊に電話してみた。


「あれ でない あっ夢遊ちゃん今日何してる?」

「里菜さん 特に何もしてないですが 今は家にいますよ」

「そうなんだ 実は今から梨菜ちゃんと私と3人でご飯行こうと思ってて誘ったんだけど良かったら一緒にご飯行かない?」

「ご飯ですか いいですよ 場所とかまた分かったら教えてください」

「おーけー そしたらまた後で連絡するね」

 夢遊もご飯に一緒に食べに行くことになった。すると、本社から1人の男の人が出てきた。


「あれ本間さん?」

「おお里菜ちゃん バイト終わり?」

「はい バイト終わりです」

「そうなんだ お疲れさまだね 横の子も同じセクションで働いてる子かな?」

「あっセクションは違うのですが キャストの子です」


「あのはじめまして アトラクションキャストをしている川本梨菜と言います」

「はじめまして 以前 里菜さんと同じセクションにいたテーマパーク社員の本間瑞樹と言います 異動して今は本社勤務をしています」

「そうだったんですか なんか本社勤務ってなかなかすぐに行けないと聞きました」

「どうですかね そこは人によってだと思いますがね」

「そうなんですか」

「そうなんですよ しかも僕はやっぱり現場職が良くて そこにいたいとも感じてたので 正直言って この異動はあまりうれしくなくて」

「そういう感じですか いろんな想いはありますよね」

「ありますね ゲストの方と話すのは楽しいですし」

 梨菜と本間は、初めてであったが、意気投合して話していた。


「あの本間さん実は これからご飯を食べに行こうと思ってて 良かったら一緒にいかがですか?」

 里菜が、途中で切り出した。

「ご飯かいいね どこに行くとか決まってる?」

「いいえ まだ特に決まってなくて」

「そっか どうしようか」

「その前に真央にも声をかけようと思ってて」

「了解 分かった」

 里菜は、真央にもチャットアプリを使って誘うことにした。

「とりあえず出ましょうか」

 梨菜が、ブランドニューオブアメリカから出ることを促した。


「待ち合わせ場所は大船駅の改札前にしましょうか?」

 里菜が提案した。

「大船にするのね」

「了解です 夢遊ちゃんにも連絡するね」

「あれ 夢遊ちゃん知ってるんだ」

「本間さんご存知なんですか?」

「うん 知ってるよ」

「そうなんですか それは驚きです」

 本間が、夢遊を知っているということに、梨菜は驚いていた。

一同は、大船駅へと向かった。夏の日差しに照らされながら、歩いていた。


「それにしてもやっぱり暑いね」

「夏ですしね」

 里菜が、歩いている途中に、「暑い」ということを嘆いていた。

「でも夏ってよくない?」

「そうですか? 本間さんって夏がお好きななんですか?」

 里菜が本間に、質問して尋ねた。

「まあ好きだよ 夏のテーマパークの風景最高だしさ」

「いいですね そういうの」

 梨菜が、本間のロマンに共感していた。

 電車に乗り、人混みであったが、仕方なく乗った。



「テーマパークマーケティング本部が何かやろうとしているのを若手社員からぽろっと

 聞きました」

「どんな内容だ?」

 若い取締役の1人が、先輩取締社員に伝えていた。

「あのなんか日本エリアどうとかというのを」

「勝手にこんなことされては困る なんとかして止めなければならない」


「何を話しているのかな?」

「副社長 お疲れ様です 今報告させていただきます 実はテーマパークマーケティング本部が日本エリアを作る計画を立てているそうで」

「なるほど こんなことされては わがブランドニューオブアメリカのテーマパークブランドが落ちてしまう それはそれで問題だ 社長には私から報告しよう」

「分かりました」

「副社長何のことを私に報告したいのかね?」

「社長お疲れ様です」

 他の取締役も社長に頭を下げた。

「あのテーマパークマーケティング本部が日本エリアを新設するということを計画していて」

「そうなのかやはり何か始める感じか 彼らは今どれくらいそれに着手してるのか 情報はあるのか?」

「いえ まだ何も」

「何も情報がないと私らは何もできない しっかりとそいつらの情報をつかむことが

 できるのかね? 副社長」

「はい もちろんです」

「まあ 君を信じよう 実は今回はこの2人にも正式に協力要請した 入ってきてくれたまえ」

 男性社員らしき人1人、女性社員らしき人1人が入って来た。


「はじめまして テーマパークマーケティング本部の林幹夫と申します」

「同じく 山田恵子と申します」

「この2人が主にいろいろ情報を提供してくれる さっそくいろいろ聞こうじゃないか」

 取締役たちが、この2人から情報を共有した。




「夢遊ちゃん来た 夢遊ちゃんこっち」

「梨菜ちゃん さっき会ったばかりなのにね」

「たしかにね」

「夢遊ちゃん 久しぶり」

「本間さんお疲れさまです」

 本間と夢遊は会った瞬間にお互いに挨拶をした。

「あとは 真央がこのあとすぐ来るみたいですが遅れるみたいなので 先行きましょう」

 真央は、待ち合わせに遅れるかもしれないということだったのでそのまま食べる場所に行くことにした。

「何食べますか」

 梨菜がみんなに聞いた。

「ハンバーグかな」

「夢遊ちゃんかわいい じゃあレストランにする? そこで皆さんいいですか?」

 里菜が、全員に聞いてみた。

「いいよ そこで」

 本間が先に答えた。

「私もそこでいいですよ」

 梨菜が、そのあと答えた。

「よしじゃあ向かいましょう」

一同は、そこに向かった。駅から近かったので、かなり行きやすかった。


「てかあそこに行くんだよね?」

 夢遊が聞いた。

「そうだね めちゃくちゃ近くない?」

梨菜があまりの近さに驚いていた。


「着いたね お腹空いた」

 里菜は、すでに空腹であった。

「だね よしじゃあみんな お腹いっぱい食べよう」

 本間は、その状況を見て、席に着いたらいっぱい食べることを伝えた。


「いらっしゃいませ 何名様でしょうか?」

 店員が、やって来て人数を確認していた。

「5名です あとから1人来ます」

「かしこまりました お好きな席へどうぞ」

 4人は、席に向かった。

「やっと座れたね」

「はい やっと座れましたよね」

 本間と梨菜は隣に座り、夢遊と里菜が隣に座っていた。

「あとさ今日俺おごるよ だから金額関係なく好きなの頼んでね」

「えっいいんですか?」

 夢遊がとっさに質問した。

「なんか申し訳ないですよ」

 梨菜が申し訳ない感じにしていた。

「大丈夫 大丈夫」

「本間さんありがとうございます」

「えっ里菜ちゃんはどうしようかな」

「そんなこと言わないでくださいよ」

「いやいや冗談だよ 好きなの頼みな」

 本間が、少しだけ里菜をいじった。


「やっと座れましたね」

 夢遊が、みんなに言っていた。

「そうだね 良かったよね」

 同時に、梨菜も言っていた。

「私はチーズインハンバーグにします」

「分かった 里菜ちゃんはそれね」

「私はしょうゆラーメンにします」

「オーケー もう一人の梨菜ちゃんはそれね」

「私は目玉焼きハンバーグにします」

「分かった 夢遊ちゃんはそれね」


「ごめんお待たせ」

「真央遅いよ」

 真央が、遅くなったが到着した。

「ごめんごめん おおみんな揃ってるね」

「真央ちゃん今日は自分がおごるから何でも好きなの頼んでね」

「えっ本間さんのおごりですか?」

「うん そうだね」

「ありがとうございます」

 一同は、注文した。

「よしじゃあドリンクバー取ってくるね みんなの取ってくるよ」

「里菜さんありがとうございます 私はカルピスで」

「夢遊ちゃんはカルピスね」

「ありがとうございます 私は温かい紅茶で」

「梨菜ちゃんは温かい紅茶ね」

「里菜ありがとう 私はコーラで」

「真央はコーラね 本間さん何か決まってますか?」

「自分はホットコーヒーで」

「ホットコーヒーですね 持ってきます」

 里菜は、みんなのドリンクを聞いて、ドリンクバーに向かった。


「それにしてもまさかこのメンバーで集まるとは驚きですね」

「そうだね 夢遊ちゃんにここで会うのも驚きだし」

「そうですよね」

「本間さん夢遊ちゃんのこと知ってたんですか?」

「まあ そうだね 知ってたね」

「もしかしてナンパですか?」

「いやいや違うよ」

「なんか話すと長いけど」

「えっ聞きたいです」

 真央が、前かがみになりながら聞いた。

「分かったよ まあそのたまたまベンチに座ってて お互い同じような悩みで

 悩んでて そのあと何か同じような言葉を口にしてからちょっと意気投合した感じ

 だね」

「なるほど そういうストーリーがあったんですね てかその同じように悩んでいたもの

 って何ですか?」

 真央は、本間が同じように悩んでいた言葉が気になり、質問した。

「ああまああまり興味ないかもだけども」


「皆さん持ってきました」

 里菜がドリンクバーからドリンクを持ってきた。

「おお 里菜ちゃんありがとう」

「里菜ありがとう」

「里菜さんありがとうございます」

「里菜さんありがとうございます」

 梨菜、夢遊が順番にお礼を言った。


「では皆さん乾杯といきましょう」

 里菜が、仕切り始めた。

「おお 里菜ちゃんが乾杯をしてくれるのね」

「ええ はい 私でよければ では乾杯」

「乾杯」

「乾杯」

「乾杯」

「乾杯」

 全員は、乾杯をして、自分のグラスをぶつけた。

「夢遊ちゃん乾杯」

「梨菜ちゃんも乾杯」

「本間さん乾杯」

「真央ちゃん乾杯」

「里菜ちゃんも乾杯」

「里菜も乾杯」


「それで 本間さんさっきの話ってどんなのですか?」

「おお それね」

 本間は、そのことを話し始めた。すると夢遊は、くすくす笑い始めた。

「あれどうしたの夢遊ちゃん?」

「いやまあ話を聞けば面白いこと分かるよ」

 夢遊は、自分は、今から本間が話すことを分かってるので、なぜか自然に笑いがこみあげてしまっていた。

「今働いているテーマパークあるでしょ? 俺もさ 正直 細かい詳しい話は知らないけどね たぶんこれみんな知ってると思うよ 何のことか想像してみて」

「はい」

「はい」

「はい」

 里菜、真央、梨菜の3人はうなずいていた。

「「伝統」と「継承」を大切にということで 新たなことは取り入れずに 今の現状を維持

 していくみたいなのが通達されたんだよ」

「ああ それか思い出した」

「だよね」

 里菜は、思い出したように真央の顔を見合わせて確認した。

「私も思い出しました」

 梨菜もその事を思い出していた。

「てかそれきもいですよね?」

 真央がテーマパークの「伝統」と「継承」をきもいと罵った。

「分かる きもい」

 里菜も同感していた。

「まあそのこういうことがあってね 俺と夢遊ちゃんは頭を抱えて悩んでいたんだよ」

「そうだったんですか でも何でそんなに悩んでたんですか?」

「実はさ 夢遊ちゃんさ今日 その想いをみんなにあえて話してみたら?」

「えっ私がですか?」

「うん 夢遊ちゃんがこうしたいとか思ってるわけでしょ? 俺の話はそのあとで言うからさ」

「分かりました あの実は」

 急に、夢遊が真剣な表情で話し始めた。

「私 このテーマパークを本気で変えたいと思ってて」

「えっこのテーマパークを変える?」

「夢遊ちゃん本気で?」

 はじめて、この件を知った里菜は、はじめに驚いた、その後、真央も驚いていた。

「はい」

「私は 夢遊ちゃんから話を聞いてました」

 梨菜は、すでに話を聞いていたので、驚きはなかった。


「本気で変えたいなと思ってて このテーマパーク最近やばいと感じてたので

 つい先日の話ですが たまたま研修の時にパークを歩いてて、小さい小学生くらいの女の子がキャストの笑顔が怖いと言ってて こういう話を聞くとなんかできることないかなと思って しかも友人とブランドニューオブアメリカに遊びに行って現状確かめに行きました そしたらやっぱり的中というか他の店も笑顔もなく怖かったんですよ アトラクションキャストもスクリプト見ながらで棒読みで ここのテーマパーク終わるなと思いました 一応テーマパークのキャストだからサービスとかキャストのふるまいとかよくしていかないといけないと感じました コンビニとかじゃないですし」

「なるほど 夢遊ちゃんの想いがよく伝わったよ」

「うんうん すごい伝わった」

 真央は、自分の中に夢遊の想いが伝わっていた、里菜も同様に伝わっていた。

「真央と私も何かできたらと思う」

「うん 私も何かしたい」

「えっ本当ですか?」

「うん だって私たち友達でしょ?」

「そうだよ 友達だしね」

 里菜が、夢遊に確認して聞いていた。

「はい そうですよね ありがとうございます」

 夢遊は、お礼を言った。

「どういう風にしていく感じ?」

 真央が、夢遊に聞いた。

「一応考えているのは できることをしていくことかなと思っていて」

「できることってどんなこと?」

 里菜が聞いた。

「例えば 私が考えているのはサービスをよくしていくところかなと思っています」

「サービスをよくしていくこと?」

 真央が、頭にはてなを浮かべたかのように夢遊に尋ねた。

「そうです サービスって言ったら幅広いですが そういう所から見直していくことかなと 例えば ここのテーマパークは 効率性みたいなのがあってゲスト第一に考えていない感じがするというか ゲストを大切にしてほしいと感じます」

「なるほどね たしかに夢遊ちゃんの言うように そういう所少なからずあるかもしれない」

真央が、夢遊の話に共感していた。

「実は 私も夢遊ちゃんの話に共感できる所があるというか 同じような体験を少し

 しました」

「えっそうなの?」

 本間が、梨菜に反応した。

「はい たまたま私もパークを歩いてた時ですが たしか40代くらいの女性だったと思います そのゲストの方々が パークが汚いと言ってて ごみなどが落ちていることに気分を害されていたんです 私は少しそれを聞いて 申し訳ないなと感じました」

「そういうことがあったんだ」

 本間は驚いた顔つきをしていた。

「そっか 梨菜ちゃんも同じような体験をしたんだね」

 真央が、梨菜の話も共感していた。

「私たちに何ができるかな?」

 里菜が、2人の話を聞いて、これから何をすれば良いかというのを決めようとしていた。

「明るく元気のあるサービスをしていけばいいのではないでしょうか?」

 夢遊が里菜に、明るく元気のあるサービスをしていくことが良いと答えた。

「いいね なんかこれからやるなら楽しみになってきたかも」

「良かったです」

 夢遊は、安心した顔つきであった。

「本間さんも何かあるんでしたよね? もしかしてあの話ですよね?」

 里菜が、先ほど、本間が話そうとしていたことも、前回話してもらったので知っていたが、あえて確認するように聞いた。

「えっ俺?いやその あれを話すことはちょっとな」

少しばかり、本間は、ためらっていた様子であった。

「いいじゃないですか ここの人たち口かたいですし」

 少しの沈黙の後、本間は話し始めた。

「まあ じゃあ話すよ 夢遊ちゃんもすでに知っているとは思うから少々話飽きちゃうと思うけど」

「大丈夫ですよ」

 夢遊は、何回聞いても大丈夫という感じであった。

「もしかして私だけ知らないという感じですかね?」

  梨菜は、自分だけが本間のこれから話そうとすることを知らないということに気づいた。

「梨菜ちゃん 特にそこは気にしなくて大丈夫だよ」

 本間が、少しだけフォローした。

「ありがとうございます」

「実は 日本エリアを新設しようとこれから計画してて」

「えっすごい」

「てか 真央知ってるのにその反応なんだし」

「いやなんとなくだから 話続けてください」

「はいよ ハリウッドエリア内に新設を予定してるんだけど そこで着手できたらなと」

「なかなかすごいですね」

 はじめて話を聞く梨菜にとってこの話は、凄いという感じであった。

「自分も現場に入ってた時に ゲストの様子を見ていったりして 少しマンネリ化してると感じてたし 少し新たな風を吹かせたないと思ったからさ 夢遊ちゃんと同じようにね そういう所では 夢遊ちゃんと同じ気持ちなんだよね テーマパークを少しでもよくしていきたいからね」

  本間は、意気揚々とテーマパークの新設エリアについて話した。ここについては、同様 に頑張って進めていきたいからだ。

「なんか2人とも凄いですね」

 梨菜が、この話を聞いて本間と夢遊に感心した感じでもあった。

「新設エリアについては私たちに何かできることありますか?アルバイトなので ここについては何かできますかね?」

真央が、本間に確認して聞いた。

「できるよ 君たちのアィディアが必要だよ」

本間は自信をもって力強く伝えた。

「いいアィディア私たちも考えられるようにします」

 真央が本間に伝えた。

「うん 期待してる」




「まーくん何か飲む?」

「自分はメロンソーダかな?えっ高野ちゃん取ってきてくれるの?」

「うん 全然大丈夫だよ」

「まーくんは酒飲まないからな」

 神谷が正樹にツッコんだ。

「すみません飲めなくて」

 正樹が、申し訳なさそうに言った。

「まあいいけどさ そう言えば若木君はビール飲むの?」

「はい一杯だけ飲みます」

「まじか まあ自分はワインにしようかな」

「神谷さんもお酒好きですね」

「まあ好きだね でないとこの仕事やってられないからさ 休憩時間にすら飲めないしね まあ当たり前だけど」

「気持ち分かりますよ」



「あれ?もしかして?」

 夢遊は、聞いたことのある声がしたので、思わず声をだした。

「どうしたの?夢遊ちゃん?」

 梨菜が、夢遊の声に反応して聞いていた。

「いえ なんか知り合いかなと思ったから まあ多分気のせいかも」

 夢遊は、今の職場の人はここには来ないだろうと勝手に思っていた。

「そっか たまに知り合いとか来るときあるしね」

「そうそう 会う時は確かにある ちょっとドリンクバー行ってくるね」

 夢遊は、ドリンクを取りに行った。

「はいよ」


「あれ夢遊ちゃんじゃん」

「あっ高野さん?」

「まさかここで会うとは驚き 神谷さんや若木さん まーくんも来てるよ」

「そうなんですか ちょっと挨拶します」

「分かった じゃあ行こう」

  夢遊は神谷、若木、正樹がいるということで挨拶しに行った。



「皆さんお疲れ様です」

「おお 夢遊ちゃん」

「神谷さんお疲れさまです」

「まさか向山さんに会うとは」

「まーくんさんにも会うとはこっちが驚きますよ」

「夢遊ちゃんお疲れさま」

「若木さんお疲れ様です 相変わらずですね」

「夢遊ちゃんは今日誰と来てるの?彼氏とか?」

「違いますよ 今日は私もセクションは違いますがテーマパークの他セクションの人と来てます」

「えっそれはすごい偶然だね」

「そうですよね 私にも声をかけてくれれば良かったのに」

「ああごめんごめん 急に決まったことだからさまたみんなで行こうよ」

  若木が申し訳なさそうにして夢遊に言った。


「まあ別にいいんですけど」

「それより夢遊ちゃんどう?なんか変えたいと言ってたテーマパークのやつは」

「ああそれですね いろいろ進めようと思って頑張ってますよ」

  高野が興味本位で尋ねて聞いた。

「そっか なるほどね 実は私たちも夢遊ちゃんのその計画を一緒にやりたいなと思って て私たちも協力できないかなと」

「えっ逆にいいんですか?」

「うん 私たちでよければ ね?神谷さん」

「そうだね 実は俺たちもちょっと最近の入場者数が減少してることを気にしてたんだ」

「そうだったんですか」

「そうそう その原因ってじゃあなんだろうと思って考えてみたら、まあもしかしたら

  夢遊ちゃんが言っていることが考えられるのかなと思ってて」

  神谷が、テーマパークの現状のことと前回、夢遊が言っていたことを話し始めた。

 「まさかそういう風に考えていたとは不思議です」

「そう?なんかさ俺たちも夢遊ちゃんに感化されてしまってさ 俺たちもできることなら何かしたいなと思ったんだよね」

 「なるほど でも本当ありがたいですよ」

 「それは良かった まーくんもやる気あったもんね?」

 「ああはいまあ」

 「まーくんさんありがとうございます」

 「いえいえ こういうこと考えるの本当偉いなと思うよ 僕たちでよければぜひ協力するよ」

 「あっはい 逆にありがとうございます あのちょっと今一緒に来てる人たちにとりあえず話しますね」

 「うん 分かったよ」

夢遊は、テーマパーク変革プロジェクトについてのことを今日来てる本間と梨菜と里菜と真央に話すことにした。

  そのことに対して、神谷が代わりに返事をした。

  

  

「夢遊ちゃん遅かったね」

  本間が、夢遊が少し来るのが遅かったので気になっていた。

「やっぱり知り合いが来てて ちなみに同じセクションの人たちです」

 「おお 偶然だね」

 「さっきのテーマパークの人たちだったんだ」

  梨菜もさっき話してたのを思い出しながら「そうだったんだ」という顔つきをした。

「夢遊ちゃん顔広いね」

  里菜が、夢遊が意外にもたくさんの人と関わっていたことに気づいた。

「それうちも思ったかも」

  真央が里菜と同様の反応をした。

「いやそんなことはないですよ 今日いたのは同じセクションの人たちなので知っている人たちですし」

  少し否定しつつ、笑いながら言っていた。

「あのさっきまで話してたことの続きなのですが 今来ている同じセクションにいる方々も一緒に協力してくれるみたいです」

「おお そうなのか 日本エリアのことはまだ話してないんだっけ?」

「そこはまだですね 全体的に同じセクションにいる社員さんもちょっと入場者数が減っていることを気にしていました キャストの顔が怖いのが原因にもつながってるんじゃないか?というのを考えてました」

「なるほどね それでも動いてくれるのはありがたいね」

「仲間がたくさん増えたね」

  梨菜が嬉しそうに言っていた。

「たしかにそれはありますよね どう進めていくかですよね とりあえず今可能なら呼んできますか?」

「今?ああうん向こうの方が大丈夫ならいいよ」

「分かりました ちょっと呼んできますね」

  夢遊は4人を呼びに席へと向かった。



「あのよければ話したいので 今って席とか移動できたりできますか?」

  夢遊は、4人に声をかけに行った。

「うん 分かった でも席とかありそう?」

  神谷が夢遊に席があるかを確認していた。

「はい 今日席ガラガラだったので 空いてますね」

「分かった じゃあ移動しようか」

  神谷は3人に声をかけた。

  正樹、若木、高野の3人は移動した。


「なんか緊張するね」

高野が、はじめて会うという期待感と緊張感をなぜか持って行った。


「夢遊ちゃん お疲れ様 この方たちが夢遊ちゃんと同じセクションの人たち?」

「本間さん はいそうです」

「そっかじゃあ席横空いてるからそこに座ってもらおうか」

「はい わかりました じゃあ神谷さんたちその横の席でいいですか?」

「大丈夫だよ」

「自分はここで」

正樹がはじめに座り始めた。

「私はその横で」

高野がその横を座った。

「僕はその前で」

 若木は、高野の前に座った。

 

「じゃあ最初なので自己紹介からはじめますか」

 夢遊がみんなに伝えた。

「誰から自己紹介しますか?」

 真央が聞いた。

「そしたら私からいきますね」

真央に、誰から自己紹介するか聞かれたので、夢遊が答えた。

「向山夢遊と言います アトラクションキャストです お願いします」

 夢遊の自己紹介が終わり、次の人が自己紹介し始めた。

「はじめまして 児玉真央と言います フードサービスキャストです お願いします 次里菜だよ」

 小声で、真央が里菜に言った。

「はじめまして 松本里菜と言います フードサービスキャストです お願いします」


「はじめまして 川本梨菜と言います アトラクションキャストです お願いします」


「皆さんはじめまして 本間瑞樹と言います この度 フードオペレーション本部からテーマパークマーケティング本部へと異動となり 現在はその部署で本社にいます お願いします」


「はじめまして 神谷大介と言います アトラクション運営部のアトラクション担当の社員です よろしくお願いします」

「はじめまして 若木創太と言います 神谷さんと同じアトラクション担当の社員です

 よろしくお願いします」

「はじめまして 高野冴姫と言います アトラクションキャストです よろしくお願いします」

「はじめまして 佐山正樹と言います アトラクションキャストです よろしくお願いします」

 次々と全員の自己紹介が終わった。

「じゃあ本題を話していきましょうか」

 夢遊が、本題について話し進めていった。

「そうだね どこから話始める?」

 本間が夢遊に尋ねた。

「はい まずは現状変えていけるかなと思うのは サービスのところだなと思います」

 夢遊が現状サービスを変えていくところがはじめにするところだと話した。

「夢遊ちゃんサービスってどんなサービスを考えてたりする?」

 正樹が夢遊に質問した。

「そこなんですよね 私が悩んでるのは」


  夢遊は、サービスを変えていくとは言ったものの、なかなか悩んでいた感じであった。

「なんかやっぱ常に楽しく維持していくことじゃないかな?」

  それに対して真央が思っていることを話した。

「たしかにそれはあるよね パーク全体のキャストを見てても楽しそうでないというか 楽しさが伝わらないという感じはあるかも」

 里菜は、現状見ていて、楽しそうでないと感じていた。

「うんうん 楽しく維持していくのがゲストには最高だしね」

 

「ちなみにここのテーマパークのサービスってなんなの?」

「それ私も思いました」

  里菜が、ブランドニューオブアメリカのサービス精神がそもそもあるのか?というの疑問に感じた。その後、梨菜が同様にそのことについて同じように疑問に思っていた。

「その何ていうかおじぎの角度とか楽しそうな表情をするとか手を前にやるとかそういうのかな?あとはあまりないかな?サービスというサービスが でも現状ここは廃れ

  てきてるし でもかたい上層部はそこ大切にしてるみたいだし」

  本間が、現状のパークのマニュアルやルールについて話した。

「なんかかたくるしいですね」

真央が、本間の話していた現状のパークのマニュアルやルールなどについて、よく思っていなかった。

「自分もさ 本当そう感じたよ いちいち手を前にやるのは絶対みたいなのが必須とかみたいなのは変わってないし デパートみたいな考え方になってるし 本当バカみたいだよ」

「ですよね 本当バカみたいでかたいですね もう全体的に変えないとだめですね」

  真央は、本間に共感しながらサービスを変えていきたいと思った。

「他の方は何か意見あります?」

  夢遊は他の人に意見があるかを聞いた。

「特にないよ」

  高野が返事をした。そして、全員もうなずき、ないということを言っていた。

 「分かりました じゃあとりあえずは楽しくサービスを維持してしていく感じ

  でいきますか?」

 「そうだね それでいこう」

  本間がそのスタンスでいくように強調した。

 「ちなみにいつぐらいから開始するの?」

  正樹が夢遊に質問した。

 「シフトみんなそれぞれ入ってる日とかはバラバラだと思うので 今週とか入ってたら

  明日から始めましょうか」

  夢遊が明日からやっていこうというのを提案した。

 「明日 私真央と入ってる」

 「だね 里菜と入ってたわ」

 「2人とも入ってましたか」

 「入ってたよ 私たちよくいるからさ」

 「だよね 本当里菜とよく入ってるもんね」

 「1つ提案なのですが 実際やってみていろいろ共有したいなと思うのでグループ作りましょう チャットで共有していきましょう」

 「それいいアィディアだね」

  本間が、そのアィディアに感心した。

 「ありがとうございます さっそくグループ作りますか」

  夢遊が全員に提案し、夢遊がもともと知っている、本間、若木、神谷、高野、正樹

  里菜、梨菜、真央を招待していって作った。

 「これから本格的にやるけどできるかな?」

  若木が、少しばかり心配な表情をしいた。

 「大丈夫ですよ」

  夢遊が、心配する若木に「大丈夫」という言葉をかけた。

 「夢遊ちゃんこのあとどうする?少しまだ話進める?」

  真央が夢遊に質問して尋ねた。

 「そうですね もう20時ですしね 残りはグループで話し合ったりしましょうか」

 「分かったよ このあとさ もしあれならカラオケ行かない?」

 「カラオケですか?いいですよ 皆さんこれから行ける人いますか?」

 「夢遊ちゃん 私明日早番だから厳しいかも また誘ってね」

 「梨菜ちゃん分かったよ また誘うからさ」

「ありがとう」

「夢遊ちゃん私も明日早番だから 厳しいかも」

「高野さん分かりました また誘います」

「ありがとうね」

「あとの人はどうですか?」

「一応自分は明日10時出勤だから大丈夫」

「おお 本社勤務はそういう所がいいですね」

「本間さん本社勤務になって良かったですね」

真央が本間に言った。

「まあ こういう所に関してはね」

「若木さんと神谷さんは明日中番か遅番どちらですか?」


「明日は若木さんが遅番で自分は中番かな まあ中番といっても 結局クローズまでいてしまうけどね」

「分かりました じゃあ余裕ですね」

「そうだね とりあえず行けるよ」

「まーくんさんは行けますか?」

「うん 大丈夫だよ」

「分かりました 里菜さんも行きますか?」

「当たり前だよ 行くよ カラオケ好きだし」

「分かりました じゃあとりあえず出ましょうか」

「そうだね 出よう 今日俺払うからいいよ 出さなくて」

「本当にいいんですか」

  本間は、今日の代金は自分が払うとみんなに伝えた。

「いいよ 払っておくから先外出てて」

「分かりました ありがとうございます じゃあ皆さん先出ましょう」

  夢遊はとりあえず外に出ることにした。


「じゃあ夢遊ちゃんまたね」

  高野が夢遊に挨拶した。

「またね夢遊ちゃん」

  梨菜も同様に挨拶した。

「また職場で 高野さん 梨菜ちゃん」

 




  一同は、カラオケ店へと向かった。

 

 

「よしじゃあ部屋に行こう」

  カラオケの受付を済ませ、カラオケの部屋へと向かった。

「すごい広い」

  真央が部屋の広さに驚いていた。

「採点チャレンジ やりますか」

  夢遊が提案した。

「いいよ やろうやろう」

  里菜が、採点やることに賛成していた。

 「てか誰から歌いますか? やっぱり本間さんですかね?」

  真央が、誰から歌うかを聞いた、本間に歌うかをふった。

 「俺さ歌下手だし ここは若木くんに」

 「何で僕なんすか? 僕もそんなにうまくないですよ」

 「そうなの?うまそうだよ」

 「いやいややっぱり本間さんで」

 「もう仕方ないな 分かったよ」


「やった本間さんの歌聞ける」

  里菜が興奮したように言った。

 「そんな期待しないでよ」

  本間は照れながら、話していた。

 「とりあえず人気のグループである嵐の曲でいいかな?」

 「どうぞ」

 「どうぞ」

  真央と里菜は、ノリノリであった。

  この日のカラオケは、部屋に響き渡るほど盛り上がっていた。

  

  

  

  

  

  

  

  

 次の日、取締役たちは、改めてパークにもう一度足を運ぼうという計画を立てていた。



「社長またパークに出るのでしょうか?」

「そうだ もう一度パークに出る」

   取締役の1人が社長に尋ねた。

「社長のお考えは マニュアル通りにやっているか?というのが第一である あとは最近テーマパークマーケティング本部がなんやら勝手なことをしているということで少しばかりそこを気にされている」

「分かりました」

「副社長 今日はあの男は来てないのか?」

「あの男 テーマパークマーケティング本部の林のことでしょうか?」

「そうだ あいつを呼んでもらいたい」

「分かりました あの時間帯的には10時に来るということは聞いております」

「分かった 同じように今日行動を共にしていくことを伝えてくれ」

「分かりました」

「今日1日が楽しみだ 勝手なことはさせない」

 社長がいろんなことを企んでいた。





「眠い そして集中ができない」

「どうしたの?今日元気ないよ?」

 夢遊は、昨日の夜のカラオケからの学校なので、朝のホームルームが始まる前は少しばか

り眠かった。その夢遊に対して、心配していた。

「昨日ご飯のあと テーマパークの人たちとカラオケに行ったんだよ」

「なるほどね だから眠いんだね」

「そうそう」

「相変わらずだね そう言えばテーマパーク変革プロジェクトはどう?進んでる?」

「一応ちょっとは 実は昨日の人たちとそれを実行する計画を立ててさ」

「おおそれはすごいね よい進展だね」

「本当それ思った」



「なんとか頑張ってね 応援してるからさ」

 華美は、夢遊を応援していた。

 

 

 

 

「あれ梨菜ちゃん?」

「ああ高野さん」

「まさかここで会うとは」

 高野は梨菜に、キャストが使うカフェテリアで遭遇した。

「ですよね 偶然ですね 疲れとれましたか?」

「少しは でも楽しかったからまた行きたいなと」

 「私もです カラオケ行きたかったので」

「だよね 今度企画して行こうよ」

 「いいですね 行きましょう なんかモチベーション上がってきました」

  梨菜は、高野が企画する計画を楽しみにした。

「良かった 今日も1日頑張ろうね」

 「はい 頑張りましょう」

  2人は、共に1日の仕事を頑張ることにした。

 

 

 

 

 「若木さん 繁忙期そろそろもう始まりますね」

 「ですね もうかなりのゲストが見込まれますが 今回はどうなるかという」

 「やはり今見ても少ないから見込めませんね」

 「それはありますね」

  若木と神谷は、前回ゲストが少なかった件もあり、少しばかり繁忙期にゲストが来ることを気にしていた。

 「それにしても昨日の疲れが少し」

 「ですよね 中番 遅番でもなかなか体力が」

  神谷は昨日の疲れがまだあり、疲れが取れていない感じであった。

 

 

「真央 とりあえず今日やってみて夢遊ちゃんにいろいろ伝えてみようか?」

「いいね 楽しさを維持してゲストに伝えていくのだよね?」

「そうそう 1つ1つできることからやってみるのが大切だしさ」

「たしかにね やってみようか」

  真央と里菜は、昨日話した楽しさを維持して、ゲストに伝えるというのを実践してみることにした。


「こんにちは パークで人気であるナンバーワンドリンクのオレンジ―マウンテンいかがでしょうか?」

「里菜 いきなり声あげてきたね」

「うん こんな感じでいいのかな?」

「いいと思う 続けよう」

「いかがでしょうか?」

  パークの中心で、里菜と真央は、今までにない形のサービスを目指した。

「これ 人気なんですか?」

「はい 人気ですよ」

 里菜が声を出してから、1人のゲストが寄ってきた。

「このジュース買います」

「分かりました ありがとうございます お会計300円です」


夢遊が提案した 新たな感じでサービスをしていったら、ゲストがぞくぞくと来た。2人はこの調子で、なんとかゲストを惹きつけていった。



「若木さん なんか今日だと思うんですが 取締役たちがまたパークを巡回するみたいです」

「えっまじですか? また来るんですか」

「最悪ですよね」

「本当それです」

「何か少し企んでることがあるとかですかね?」

 神谷は、何かを疑っている感じであった。

「何かありそうですね」

 若木も神谷と同じように納得していた。

「ありそうですよね 取締役たちが来た際に普通にしていきましょう」

 神谷は、若木にそのように伝えた。



「日本エリアのことを進めなければ」

「本間さん今日は日本エリアの場所は行きますか?」

唐崎が本間に日本エリアの場所を見に行くかというのを尋ねた。

「今日は行けたら行くけども 一応話し合いがメインになるかな 前回行ったのを踏まえ

 ての」

「なるほど」

「そうそう まあ時間あれば行こう」

「分かりました」

 唐崎は、前回の日本エリアの視察が良かったので、また今日行けることを楽しみにしていた。


「本間くん ちょっといいか?」

「はい」

 本間は上司の山本に呼ばれた。

「最近はどうだ? テーマパークマーケティング本部での仕事は」

「特に変わらないですよ」

「そうか 例の日本エリアの話し合いなどはしていたりはしないか?」

  本間は一瞬、心の中で戸惑った感じであったが、「話し合いなどはしていません」と答えた。

「いいえ 話し合いなどはしていません」

「してないなら良かった 以前伝えているはずだが「伝統」「継承」」はしっかり守って

  もらわないと困る 君が何かを考えたとしてもそれが実現できる確率は低い 今ある施設やショーで考えていくことだよ」

  山本は、以前、伝えた「伝統」「継承」のことを、再度 本間に伝えた。

「分かりました」

  本間は、一瞬きれそうだったが、ここできれたら負けだと思い、きれることはしなかった。

「そうだ 今日取締役たちがパークに来るそうだ 本社の他部署にも来るみたいだから 一応伝えておく」

  山本は、取締役たちがパークと本社に来ることを本間に伝えた。

「はい 分かりました」




「本間さん お疲れ様です 日本エリアの話し合いやりますか?」

  小山田が本間に日本エリアの話し合いをするかを聞いた。

 「あっうん そうなんだけどもちょっといろいろ」

 「なんかあったんですか?」

  小山田が、本間に何があったか聞いてきた。

 「ここだと話しづらいから一旦パークに出てもいいかな?」

 「ああはい そしたらあの2人も呼びますか?」

 「うん そうしてくれる?」





 

 

 

 

 「なるほど 改めて山本さんに そういう風に言われてしまったんですね」

 「まあそうだね」

  小山田は驚きつつ、本間が、山本から言われたことを少し理解していた。

 「本間さんこれからとりあえずどう動いていくんですか?」

  古田が、本間に今後のことを聞いた。

 「どうしようか」

  本間は悩みつつ、どうするかを考えていた。

 「僕らの企画が水の泡になるのは嫌ですよね」

 「そうなんだよね ああもうどうしたらいいか」

 「あと 取締役たちが日来るとか聞いたのですが」

  小山田は、取締役たちがパークや本社に来ることを分かっていたので、そのことを心配していた。

 「そうだな 来るらしい あいつらに日本エリアのことを知られているかもしれないという不安もある」

 「ですよね もうどうしたらいいのか」

  唐崎は、この話を聞いて本間と同じように悩んだ。

 「俺はやっぱりこの計画を進めたい ゲストのために」

 「そうですよね 私も同じですよ」

 「僕もです 本間さん」

 「小山田 古田ありがとう 何としてでも進めよう」

 「はい」

 「はい」

 「はい」

 「ただ俺は気になることがある 取締役たちは何か企んでるかもしれないと」

 「何ですか?そのドラマみたいなこと」

  唐崎が、少し面白く本間に言った。

 「何ていうかさ 急にニュースでもブランドニューオブアメリカが買収とかどうとか書いてさ あれは何だったのか?とかそもそも本当に買収されるかもなのか?とか」

 「あのニュース見ました でも真相僕も分からなくて」

  小山田はそのニュースを見ていた。

 「だよな」

 「はい でも買収危機というのは本当のような気もしなくもなくて」

 「俺もそこは気になっていた あいつらの狙いは何なのか?」

  本間は、取締役たちの行動を疑った。

 「ですよね 本間さんもしかして 調べるんですか?」

 「うん 調べようと思う 何かあるかもしれない 何かの動きがあるのは確かだ」

  本間たちは、取締役たちの動きも調べていくことにした。

 「私たちは何をしていきますか?」

 「これからそれを練ろう」

 

 

 

「笹本さん 分かりました 計画は進めておりますよ」

電話もとで社長が話していた。

 

 「社長 失礼します」

  副社長が社長室に入出した。

 

 「おお どうした?」

 「取締役たちをパークに行かせました」

 「ご苦労だ 私たちもこれからいくか」

 「はい バスの準備もできております」

 「ありがとう じゃあ行くぞ」

 「はい」

  


 「これで計画をなんとか進められるぞ」

  社長が怪しい笑みを浮かべながら、副社長に話していた。

 「早く成功させましょう」

 「そうだな」

 「では行きましょう」

  社長と副社長は笑みを浮かべ、パークへと向かうバスに乗り込んだ。

  

  

  

  

 「夢遊 今日バイト?」

 「うん 今日ちょっと用があってパークに行くよ」

 「分かったよ 最近たしかにいろいろ動いてるしね」

 「そうだね ごめん」

  華美は忙しそうにしてる夢遊を見て、楽しそうにしている様子であると同時に、最近一緒にいれないのが少々残念ではあった。

  夢遊は、取締役たちの疑惑を神谷から連絡され聞いた。そのことで夢遊は、パークへと急いだ。


  

  パークに着き、オフィスへと足を急いだ。

 

 「お疲れ様です 神谷さん 取締役たちのこと何かありましたか?」

 「そうだね あっごめん取締役たちが今見回ってるからちょっと終わったら話そう

  若木さんや高野ちゃん まーくんたちも今業務しててさ」

 「そうだったんですね」

 「そうそう 取締役たちがパークを巡回してて」

「なるほど 巡回ですか 以前したばかりでは」

「そうなんだよ まあ深い意図があるかどうかは 分からないけどね でも取締役たちの動きがおかしいなと」

「なるほど」

「そうそう 何かはあるはず だから今いろいろ調べようと思ってて」

「そういうことですね ここも含めて調べていくことは必要ですね」

  取締役たちの行動に疑惑を持ち始めた夢遊は、調べていくことも決意した。

「とりあえず何から調べますか」

  夢遊が神谷に尋ねた。

「取締役たちが行ってからいろいろ決めようか」


「失礼します ここもいろいろ確認しても大丈夫ですか?」

  取締役の1人がオフィスに来た。

「はい 大丈夫です」

  神谷が取締役に緊張しながら言った。





「ここがテーマパークマーケティング本部ですね? いろいろ確認させてもらいます」

「はい」

  1人の男性社員が返事をした。


(あれ?林さんと山田さん?)

 本間は、林と山田が一緒に取締役たちと一緒にいることを不思議に感じた。

「林さん何してるのですか?」

 本間が林に声をかけた。

「一応ここを取締役の皆さんと確認しているんですよ」

「でもどうして?」

「ただ手伝ってるだけですよ」

「そうですか あと山田さんもいましたよね?」

「いましたね 彼女も同じような理由なので心配はいりませんよ」

  本間は林と山田を疑い深く見ていた。けれども林は、平然として答えていた。


 「本間さんなんか 検察官が調べている感じの光景に似ていませんかね」

 「そうだよな」

  唐崎が本間に言った。

 「本間さん ワンちゃん可能なら取締役たちの部屋に行って調べませんか?」

 「おい それはやばくないか?なんかばれたりしたら」

 「まあ そうなんですが でないと僕らが疑っている取締役たちのことが分からないです

  よ」

  小山田が、提案した。

 「まさか小山田からそういう風に言われるとは」

  本間が少しばかり驚いてた。

 「そうですよ 本間さんこのチャンスはないですよ」

  古田も同じように言った。

 「分かった じゃあ急ごう」

  本間たちは取締役たちの部屋に急いで向かった。

 

 

 

 

 

 「夢遊ちゃん 若木さん 高野ちゃん まーくんたちが来たら話すから」

 「分かりました 3人抜けて大丈夫ですかね?」

 「大丈夫 今日は人多いから あとは変わりの時間帯責任者のキャストもいるから」

 「それなら良かったです」

 「そうそう」

  

 「長かったわ あっ夢遊ちゃんお疲れ様 来てたんだね」

 「はい 来ました」

 「向山さん お疲れ様」

 「まーくんさんお疲れ様です」

 「お疲れさま」

 「夢遊ちゃんお疲れさま」

 「若木さんお疲れ様です」

 「お疲れ様」

 「さてじゃあ揃ったところで 話すね」

  神谷が顔をにやっとしながら話していた。

「これから自分たちが疑っている 取締役たちについて調べに行くよ」

「えっ今日ですか?シフトの時間内ですが」

  高野が驚きながら、質問した。

「うん そうだね 退勤きらずにそのままでいいよ」

「分かりました」

「神谷さんどう調べるんですか?」

「まーくんこれから話すね 取締役たちの部屋に行って調べようと思う」

「えっ取締役の部屋に行くんですか」

「そうそう」

「大丈夫ですかね?」

  若木が少し心配していた。

「まあ大丈夫でしょう」

「でもなんかワクワクしますね」

  夢遊が、少しばかり楽しみにしていた。

「夢遊ちゃん 喜びすぎ」

  高野がちょっとツッコんだ。

「とりあえず 取締役たちのパーク巡回時間は18時までだから その時間でなんとかして何かつかもう」

 神谷が時間を伝え、全員は急いだ。






「本間さん 取締役たち来ないか心配ですね」

「なんとか大丈夫だろ なんか見つかったか?」

  唐崎が心配していたが、本間は心配ないことを言った。

「いいえ 全然 机周りもないみたいです」


「本間さん なんかこんなの見つけました」

「おおなんだ それは?」

「なんか見た感じ M&Aのことみたいですが」

「買収合併か」

「はい でもこれがなぜここに?真相が分からないですね」

「分からないな」

 小山田がM&Aの書類を見つけた、本間もその書類を見たがなぜここにあるか分からなかった。


「本間さん これやばくないですかね」

「どうした古田?」

「ブランドニューアメリカのお金を使った記録があって しかも多額の」

「確かにこれはやばい 一応証拠押さえよう 小山田コピーできるか?」

「はい その2つの書類コピーしておきますね」

「頼んだ」

「原本はどうしますか?」

唐崎が聞いた。

「とりあえずそれも持ち出そうか」

「分かりました」

「本間さん誰かの足音が聞こえます」

 古田が反応した。

「まじか とりあえず隠れよう」

 4人は隠れた。



「着いた 意外と遠いですね」

「だね 社員でもここは行くことあまりないしさ」

 高野は到着して、ほっとした、さらに神谷もここは社員ですら来ることがないとも全員に言っていた。


「あれ神谷さんたちじゃないですか」

「本間さん」




「本間さん」

「夢遊ちゃん」


「本間さん知り合いなんですか?」

 小山田が聞いた。

「うん そうだね 彼らはアトラクション運営部の人たちだ」

「なるほど」


「本間さんたちがここにいるということは もしかして取締役たちのことを調べてるんですか?」

 

若木が、取締役たちのことで調べているかもということで本間に尋ねた。

「うん そうだね やっぱり疑い深くてね」

「でしたか」


「何か見つかりましたか?」

 夢遊が本間に尋ねた。

「一応 買収合併の書類と金関係などかな」

「なるほど 証拠を押さえたということですね」

「とりあえずね 他にも見つかるかもしれないし 少しだけ探そうか」

 本間が他の証拠も出るかもしれないということで、新たな証拠を探すことを提案した。


「取締役の人たち来ませんかね」

 正樹が少々心配していた。

「そうだね ちょっと心配になってきたね」

 神谷が正樹の心配している様子を聞き、神谷も少しばかり心配した。


「こんなのも出てきました」

 夢遊が、捜索して見つけたのは、広告会社にブランドニューオブアメリカが買収危機に陥るというのが書いてある下書きだった。

「何でこんなのがあるんだろうな」

 本間が、そのことを不思議に思った。

「分からないですね」

 夢遊も、首を傾げて分からない表情をしていた。



「そろそろ取締役来そうな感じしますね 急いで戻りましょう」

「そうだな」

 唐崎が、取締役がもうすぐ来そうな感じだったので、呼びかけた。

 全員は、急いで現場へと行った。


「とりあえず着いたね いや まじで焦った」

「神谷さんがまさかそんな提案するとは」

「若木さん かなりの賭けにでました」


「それにしても 取締役たちのねらいは何でしょうかね」

「狙いは何か自分にも分からないな」

 高野が取締役たちのねらいに対しても疑問に思った。

 高野の疑問に、正樹も分からない感じだった。


「あっ退勤時間過ぎてるね 10分くらいだけども 今から打刻していいよ 10分残業で書いておくね」

 神谷が、高野に声をかけた。

「分かりました お疲れ様です」

「高野ちゃん お疲れ様」

「自分も退勤なので帰りますね」

「おお 分かったよ お疲れ様」

 正樹も、打刻して一緒に退勤した。

「じゃあまーくんさん行きましょうか」

「高野さん私も帰りますよ」

「夢遊ちゃんは 確か勤務じゃなかったもんね よし一緒に帰りますか」

「はい 行きましょう」

 3人はロッカーまで向かった。


「なんか今日収穫ありましたかね」

 夢遊が、少しばかり心配していた。

「うーん 取締役自体が怪しいということが分かったから まあ収穫はあったかなとは

思うよ」

「ですか まあそれならいいんですけども」

 正樹が、心配する夢遊に、そのように言った。

「まーくんさん 早めに着替え終わったら エントランス前で待っててください」

「分かった」

ロッカーに着き、夢遊が正樹に言った。

「ではまたのちほど」

「オーケー」


「あれ夢遊ちゃんと高野ちゃん 今日出勤だったんだね」

 ロッカー内にいた里菜が、高野と夢遊に声をかけた。

「はい 今日いました」

「私は出勤でなかったんですが ちょっと用があってここに」

「なるほどね 夢遊ちゃんは出勤ではなかったんだね」

「そうなんですよ」

「ちなみに何か今日はあったとか?」

「実はまあ話が長くなるので のちほどで」

「分かったよ 帰りに話しながら行こうか」

「はい ちなみに真央さんは今日休みですか?」

「真央は今日 早がありでもう帰った」

「珍しいですね」

「そう? まあいつも一緒だからかな 多分」

「はい そういう感じですね ちなみに何か実践とかしてみました?」

「やってみたよ ゲストがそれでかなり来てさ 楽しくできたよ」

「良かったですね」

「そうそう でもさなんかスーツ来たやつらにこそこそ見られて 何か書かれてたかなと思って そこが気になってた」

「なるほど 実は今日取締役がパークを巡回してたらしいんですよ」

「えっまじか だからスーツ着てた人がいたんだ」

「そうなんですよ」

「高野ちゃんも驚いたよね?」

「はい もう驚きました パーク巡回してるということに」

「だよね とりあえず外でようか」

「でましょう」


「お疲れ様 みんな遅かったね」

「まーくんさん 待たせてすみません」

「大丈夫だよ」

 正樹はエントランス前で何分か待っていたところだった。

「まーくんさんお久しぶりです」

「久しぶり 松本さんだっけ?」

「はい 松本です」

「そうだったね」


「そう言えば さっき夢遊ちゃんが話してた今日のことってどんなこと?」

「実は すごい映画みたいな感じの展開になるんですけど」

「うんうん」

 里菜は、興味深く話を聞いていた。

「取締役たちが怪しいという話になり 取締役たちの部屋に行きました」

「えっまじ?行ったんだ」

「そうなんです 高野さんかなりやばかったですよね」

「そうそう まじ焦ったからね」

「まーくんさん泣いてましたし」

「いやいや 泣いてないよ」

「まあ冗談なんですが それで怪しいものがないかを捜索したら怪しいものが出てきたという感じで」

「何が出てきたの?」

 里菜は、気になり何が出てきたかを尋ねた。

「買収合併の書類とお金関係?あとは ブランドニューオブアメリカ買収危機みたいな下書きの紙が出てきました」

「まじ?やばいね」

「はい ちなみに本間さんたちも同じこと考えてていました」

「本間さんも?てか呼んでほしかったし」

「すみません」

「本間さんも来てたんだ」

 本間がいたことに里菜は、反応していた。

「はい 本間さん好きなんですか?」

「なわけないじゃん 夢遊ちゃん何言ってるの?」

 本間のことが少し気になってるかもという里菜に、夢遊は質問していた。

 そんな里菜は少々照れ隠しをしている感じだった。


「すみません まあそういう感じでした」

 夢遊は里菜をちょっとからかってしまい、少しばかり謝った。

「取締役が怪しいということはあるかんじね」

「そういうかんじですね これからどういう風にしていくかというのを考えていくばかりですが」

「そうだね てか今日はご飯行く?」

 里菜が、夢遊たちに言った。


「行きましょう 高野さん行きますか?」

「私は行けるよ」

「分かりました まーくんさんは行けますか?」

「自分も行けるよ」

「分かりました じゃあいつものガストでいいですか」

「大丈夫だよ」

 里菜が返事した。

「大丈夫」

 高野も返事をした。

「大丈夫」

 正樹も返事をした。

 全員は、いつも行くガストへと向かった。



次の日 本間は日本エリアの予測プランを立てていた。

「本間さん 何か手伝うことありますか?」

 唐崎が本間に何か手伝うことがあるかを聞いた。

「特にないよ 取締役たちにこういう情報が入ってなければいいが」

 本間は、多少日本エリアのことを懸念していた。もしかしたら、取締役たちに情報がいってるかもしれないということを。

「まあ多分大丈夫だとは思いますけどね」

「本当に大丈夫か?」

 唐崎の大丈夫ということにも心配にはなった。


 革靴の音が聞こえ、本社に響き渡っていた。


「なんかこっちに誰かがやってくる感じですね」

 唐崎が、革靴の音を気にしていた。

「ああたしかに」

本間も少しばかり反応していた。





 「ここがテーマパークマーケティング本部か ここで日本エリアを作ろうとしている計画を立てていると聞いた 責任者は誰だ」

  若い取締役の1人が言った。

 「一応ここでは私ですが」

  本間は、自分がここでは責任者なので取締役にそう伝えた。

 「君か?そもそもわがテーマパークでの「伝統」「継承」があるのにも関わらず そんな勝手なことをされては困る」

 「はい」

「申し訳ないが やめてもらいたいルールにはきちんと従ってもらう」

 「なるほどです」

 「最終警告に来た もし今後このようなことをしたらただじゃすまない 君の部下にもそう言ってくれ」

  若い取締役は、本間に最終警告文書を通知し、その場を去った。

 

 「てか まだこんなことしてたんですか」

  同じ部署の若い男性社員が1人本間に意見した。

 「そうだね 一応進めてた」

 「またこういうことになるの嫌なので 今すぐ本当にやめてください」

  1人の若い男性社員は本間に先ほどの取締役が言ってるような感じで言っていた。

  本間は、若い取締役と同じ部署にいる男性社員の2人に言われ黙ったまま何も言わなかった。

  テーマパークマーケティング本部内は不穏な空気が漂っていた。本間たちの危機に迫っていた。


  



「こんにちは ようこそゴーストエリアへ とても楽しい場所となっております」

  いつにもまして 高野は、楽しくゲストたちにゲストサービスをしていた。

「高野さん なかなか楽しそうにやってますね」

「そう?夢遊ちゃんが提案したんじゃん だから私は頑張ってるよ」

「ありがとうございます 私も頑張りますね」

  夢遊も高野に続き、頑張って楽しくサービスをするように心がけていた。

「いいね 2人とも実践してるね」

  神谷が2人の所にやってきた。

「はい こうしていかないと日々のモチベーションも上がりませんしね まあ実際は

 このテーマパークが変わっていくことが目的ですけどね」

「まあね こういうサービスで変わっていければだよね」

「おお 早速実践してるね」

 若木もやってきた。

「はい 若木さん なんとかやってます 夢遊ちゃんに負けないようにしてます」

「競争してませんよ」

 冗談交じりで高野は言った。

「そっか まあいいね」

 すると、ゴーストエリアにスーツを着た人が向かっていた。


 4人は、話しながらサービスをしてこれからのプランを考えていた。

「これからのプランなのですがちょっとセリフにアレンジ加えていこうかなと思いまして」

「アレンジ?」

 夢遊がアトラクションのセリフにアレンジを加えたいと提案した。

「アレンジね まあできなくはないけど うーんどうしようか」

 神谷は突然の夢遊の提案に悩んでいた。

「いいんじゃないですか? もしいろいろ言われたらまた何か策を考えましょう」

 高野は、夢遊のアィディアに賛成であった。同時に、もし反対があったら、策を打ち立てようとしていた。

「頑張っていきましょう」

 夢遊は、前向きに取り組んでいくように試みることにした。


「失礼します お話し中失礼します 皆さんがゴーストエリアの方たちでしょうか?」

 スーツを着た男性が、4人に話しかけてきた。

「はい そうですが」

神谷は、代表して答えた。


「知っていると思うが 前取締役たちが パーク巡回をした その際にゴーストエリアのキャストや社員がなんかやろうとしているというのを耳にした それが問題になっている」

 4人は、取締役の話に耳を傾けていた。取締役は、4人が新たなことをやろうとしていることを大げさに伝えていた。

「ここのテーマパーク全部署に通達したはずだ「伝統」「継承」を大切にしていくこと 奇抜なアィディアなど必要ないということを 申し訳ないが今日はそれを言いにきた これが最後の警告だ」

 取締役は、最終警告文書というのを神谷に差し出した。

「次何かそういう情報をちょっとでも耳にしたら ただではすまない」

「でも」

「何か?」

 夢遊は、「でも」というのを言いかけ、そのあとは何も口にしなかった。

「いいえ なんでもありません」

 夢遊は、「なんでもない」というのを取締役に言った。

 取締役は、その後、その場を後にした。

「なんなんですかね あいつ」

 高野は少しばかりイライラしていた。

「そうですよね」

 夢遊も同様に怒っていた。

「いろいろめんどくさいね」

 神谷は、取締役の最終警告文書がめんどくさいものだと感じた。

「ですよね ここからやっぱり反撃はしたいですよね」

 若木が強気な姿勢をしていくように示そうとした。

「取締役たちを暴いていきましょう」

 夢遊は、取締役に強気な姿勢で臨むことにした。

「夢遊ちゃんいつくらいにあいつらに挑んでいく?」

 高野が夢遊に聞いた。

「高野ちゃん積極的だね」

 神谷が、今すぐにでも戦うのかいうくらいと思うほど高野がすぐに質問したので、神谷は、

 それに驚いていた。

「だってこんなこと言われるの嫌じゃないですか」

 高野は先ほどの文書のことが気になっていて、悔しい感じになっていた。

「そうだよね 高野ちゃんもそこは悔しい感じと思うよね」


「じゃあ早速 あの取締役たちに反撃するための準備を始めていきましょう」

 夢遊は取締役たちの反撃プランを練る提案をした。全員は、納得して一緒に

 考えはじめた。


「あっまーくんにも声かけてくる」

 高野が、正樹に声をかけに言った。

「分かりました」

「今日もいつもの店で打ち合わせするの?」

 神谷が質問した。

「はい しましょう」

 夢遊が、神谷に答えた。

「分かった 若木さんも今日って大丈夫ですか?」

「あっ大丈夫ですが 今日ちょっとシフト確認してからでもいいですか?

作成の確認したあとなら大丈夫です」

「あっいいですよ」

「ありがとうございます 僕もシフト作成のあとの楽しみがないときついので こういうの

があって 良かったと思います」

 若木は、最近のシフト作成がきつかったので、少しでも楽しみがほしかった。


「じゃあ残り時間の仕事頑張りましょう」

 残りの勤務時間は、頑張ろうという風に、高野は言った。





「はい ありがとうございます 行ってらっしゃい」

 里菜は、相変わらず楽しいサービスをしていくように維持してゲストサービスをした。

「里菜 なんかすごいゲストサービスだね」

 真央が、里菜のゲストサービスに関心を持っていた。

「ありがとう」

「こんなに ゲストが来るとは私も驚いてるよ」

 里菜自身も、ゲストが以前よりたくさん来ることに驚いていた。


「すみません スポーツドリンク3つ下さい」

 新たなゲストが改めて来た。

「かしこまりました お会計 900円です」

 里菜が来たゲストの方にゲストサービスをした。


「休んでる暇もないくらいゲストが来るようになったね」

「真央 たしかにそれね かなり来るね」

 真央 里菜の2人は、ゲストがたくさん来ることに、再度驚いていた。



 すると、真央と里菜が、いつも通り話していると、スーツを着たでぶの中年の男性が来た。

 スーツを着た男性は、取締役であった。

「君たちはフードオペレーション部のキャストかな?」

「ああはい そうですが(なんかきもいやつ来たわ しかもくそでぶだし)」

 真央がいきなり来たスーツの男性に心の中で、きもいやつだと感じていた。

「やたらにゲストが来てるみたいだが これはどのようにしてサービスをしているかな?」

 突然の取締役の質問に2人は戸惑っていた。

「まあ説明しにくいですが ドリンクを持ちながら 大きく手を振って おすすめです 期間限定です 100人の方がたくさん買われてます いかがでしょうか?という感じです」

「なるほど これはマニュアル通りではないよね?」

「ああはいまあ」

 里菜が、マニュアル通りでないことを指摘され、口を閉ざした。

「ドリンクを持って しかも大きく手を振るなんてマニュアルには書かれてない 同時に

 君が持っているドリンクをお客さんに渡すのか?ずっと手に持っているそれは 衛生上よくないだろ?」

「そうですが まあそれでもゲストはたくさん来られてますし」

 取締役に指摘されたが、このやり方でゲストがたくさん来ているということを里菜は伝えた。

「それでもマニュアル通りではないことは確かだ マニュアル通りお願いします」

 取締役は再度、里菜にマニュアル通りやることを求めた。

「分かりました(なんなのこいつ まじうざい)」

 心の中で悔しさを感じながらも、「分かりました」と返事をした。

「とりあえず ここに文書を通達しておく「伝統」「継承」を大切にしている

 わがテーマパークで勝手なことは許されない この文書は黄色信号だ 次何か

 マニュアルから逸脱した行為を見かけたらただではすまない」

 里菜と真央は取締役からの最終警告文書を通達された。

「はい(むかつく)

 里菜は、歯を食いしばりながら、「はい」言った。

「はい」

 真央も同様に、返事をした。

 取締役が去り、少しばかり変な空気であった。



「てかなんなのあいつ?たしか取締役だった気がするような」

 真央は、一連の流れを見ていて悔しい気持ちが強かった。

「たしかにむかつくね やっぱり取締役か ここは社員がほぼいないようなものだから

 なかなかね 本当あのでぶむかつく」

 里菜も同じようにむかついているのは変わらなかった。

「本間さんもいないし 私たちじゃどうにもならないけども」

 真央は、以前までいた本間がここにいないことにちょっと困っていた様子でもあった。

「そうだね」


「里菜さん 真央さんお疲れ様です」

「ああ夢遊ちゃん どうしたの?休憩?」

 夢遊が、里菜と真央の所に来た、急に来た夢遊に里菜は休憩かと思い、「休憩?」

 と聞いた。

「もう上がっていいと言われ 10分前に上がりです あの今日2人空いてますか?」

「今日?私は空いているけど 真央はどう?」

「私も空いてるよ」

「分かりました 実は今日 取締役たちへの反撃するための会議をいつものレストランでやります」

「えっまじ?反撃ちょうどしたい所だったからありがたい」

 真央は、先ほどの取締役をもうすぐにでも懲らしめたいと考えていたので、夢遊からの誘いはラッキーだった。

「そうなんですか あとで話聞かせてもらいますね」

「うん あと実は里菜がさっき被害にあって ね?里菜」

「だね むかついたし」

「そうだったんですか まあ詳しいこともあとで話しますね 18時頃に来てください」

「分かったよ シフト終わったら里菜と向かうね」

「だね 夢遊ちゃん早めに行けるようにするね」

「オーケーです」

 里菜と真央は、アルバイト終わりにいつものファミレスに行くことになった。


「じゃあまたのちほど」

「うん またね」

 真央が夢遊に言った。

「またあとでね」

 里菜も、真央に続いて言った。





「社長 今よろしいでしょうか?」

 林が社長の所に行った。

「どうした?」

「どうやら 他のセクションでも何か新たなことをやろうとしてるやつがいるみたいです」

「おお そうなのかよくぞ教えてくれた 次も頼んだぞ あの本間という男に変な動きはないか?」

「今のところないです」

「そうか ああそうだ 君を取締役室の管理部門に異動してもらおうと思うのだが どうだね?」

「ぜひ喜ん お受けいたします」

「分かった あとはその前に このテーマパークを変えようとするものたちのことを終わらせてからいろいろと進めたいと思う」

「そうですね 私もその一心です」

「おお心強いな」

社長と林の2人は、悪魔のような笑みを浮かべながら話をしていた。

「あの林さんここにいましたか」

「山田さん どうされました?」

「いいえ 特に何もないのですが 私も今できることを模索中でして」

「そうですか 社長 山田さんには何を主にしてもらいますか?」

 林が、社長に山田の役割を聞いた。

「山田君にも同じように本間という男やその動きを見てもらおう?」

「分かりました 山田さん 共に頑張りましょう」

「はい 頑張りましょう」

 山田は、林と共に社長の指令に従った。

 いわば、スパイみたいなものでもあった。



「本間さんも呼ばないといけないな」

 夢遊は、本間も呼んでなかったので、呼びに行こうと思った。


「しまった オフィスの中は部屋までは入れない気がした とりあえず チャットアプリだけ打っておこう」






「あれ 夢遊ちゃんからだ 今日集まれますか?いつものレストランで 人はたくさん来ます とりあえず行くと返信しよう」


本間は、夢遊からチャットアプリで「今日集まれますか?」という誘いをもらった。

 すかさず「行く」という返事をした。


「ここで俺たちが一致団結して 行くしかない 取締役たちの悪事を暴くために」

 本間は、1人残っているオフィス内で、ひとりつぶやいていた。





「社長 取締役室がやはり何者かに入られたと思われます」

 副社長が取締役室などを見に行った際に、何者かに入られたということを感じた。

「やはりそうか」

「社長気づかれてたんですか?」

「そうだ 気づいてはいた ここ最近いろんなことが起こってるしな」

「そうですね」

「うむ だいたいはどういうやつらが入ったかは分かってはいるが」

「なるほど」

「もしかしたら あいつらはここに来て何か言ってくるかもしれないしな

面白くなってきたな」

 社長は、誰がここの取締役室に入ったかある程度、目星がついている感じでもあった。





「夢遊ちゃん いろいろ話すことまとめられた?」

「まあはい 少しは」

 高野と夢遊、正樹は集まる前にいつものカフェブラウンにいた。

「やっぱりそうだよね」

 高野は、夢遊のことを少し気にしていた。

「自分はもっと向山さんは自信持っていいと思うんだよね」

「急にまーくんどうしたの?」

「いや なんかあまり 自信なさそうだなと思っててさ」

「まーくんさんがそう感じていたとは ありがとうございます 自信持っていきます」

「それにしてもさ 取締役たちは一体何が目的かというのが謎だよね」

「分かります」

 高野が、取締役たちがどういう目的で、何をしているかということに疑問を感じていた。


「そこなんですよね いろいろ疑問に感じはします むしろ怪しいなとは思いますね」

「そうだよね みんなで考えていこう」

  疑問に感じている取締役たちについてのことを、みんなで考えるようにした。


「里菜さんと真央さんはまだ終わってない感じかな?」

「はい まだだと思います」

  高野が真央と里菜がそろそろ来るかが気になったので聞いた。

「そうなんだね 分かった」

「あっもう一人の梨菜ちゃんに声かけてなかった 忘れてた」

「だね 今連絡してみるのがいいんじゃない?」

  りなが2人いるので、夢遊は、アトラクションキャストの梨菜に連絡することにした。

  夢遊は、梨菜に「今日って集まれる?」と連絡した。


「梨菜ちゃんにとりあえず連絡したから」

  夢遊は、梨菜に連絡したことを高野に言った。

「はいよ」


「あっ夢遊ちゃんからだ 今日か 集まりね まあ帰りの電車だけど引き返していこうかな」

  梨菜は、すでに帰りの電車であったが、夢遊が集まりを企画してくれたので、引き返して行くことに決め、向かった。

 

 

  

 「やっと終わったね さて夢遊ちゃんのところに行こうか」

  真央は、ワクワクしていた。

 「だね キャストの仕事さ 慣れてるからはじめの頃より楽しくなってきたかも」

 「たしかにね 慣れてくると余裕出てくるしね」

 「分かる 本当そう思う 本当キャスト楽しい」

  里菜と真央は、キャストの仕事が楽しいと感じであった、新人の頃は、なかなか覚えることが多かったので、今では余裕が2人にあった。

 「それにしてもさ パーク巡回とか? 取締役たちがまわってるじゃん なんか本当意味わからないよね 目的もそもそも知らされてないし」

  真央は、取締役たちが最近パークを巡回している目的がいまいち分からずにいた。

「それな 意味わからない ああいうの本当めんどいよね」

ロッカールームは真央と里菜の2人だけで、ロッカールームで2人の声が響き渡っていた。

「お父さんからちょっと聞いたことがあるんだけど こういうテーマパークとかの業界って上に行くほど 考え方がかたい人が多いらしくて クリエイティブさが下がるらしいとか言ってた」

  真央は、自分の父親から、テーマパーク業界あるあるを聞き、里菜に話していた。


「そうなんだね まあ言われてみれば上の人たちはかたいというのは伝わってくるね」

「そうそう そういう感じ ここのテーマパークの取締役も同様にね」

  

2人がロッカールームで話をしていると、 誰もいないロッカールームの内に、誰かの靴音が聞こえてきた。

 

「さて夢遊ちゃんたちとご飯だね」

  里菜は、夢遊たちとのご飯を楽しみにしていた。

「まあミーティングもかねてでしょ」

「たしかにそうだけど」

  ご飯だけではなく、ミーティングもあるということをすかさず真央は、伝えた。

「だね さあ行こうか」


  すると、そのロッカールームの前には、着ぐるみを着た誰かが立っていた。


「えっ自由の女神ちゃん?」

「何で?ここに」

  里菜が、はじめの瞬間にここに自由の女神がいるのに驚きを隠せなかった。

  さらに、真央もいたことに驚き、「何で?」と声を出してしまった。


「あのここ通らしてくくれませんか?」

  真央が、ロッカールームの前をふさがる自由の女神に、直接質問した。

  自由の女神の格好をした着ぐるみは2人通れないようにしたままであった。

「里菜 どうする?」

「ここを通らない限り パーク出れないし」

  真央と里菜は、お互い困った顔つきをして、見合っていた。


  すると、自由の女神の格好をした着ぐるみは、2人にボードを見せた。

  そのボードには、日本エリアと新たな施策について知っているか?と聞かれた。


2人は、その返答に対して、首を横に振った。その後、同じように次のボードの

ページを開いた。そのページには、本当のことを言わなければ、お前らの仲間がどうなってもいいのか?と書かれていた。

2人は、突然びくっとして立っている足が震え、自然に座ってしまった。


「里菜?大丈夫?」

「真央も平気?」

 お互い心配した、どうしたらいいか分からなくなった2人は、どうすることもできなかった。

 そして、心に決めて、お互い顔を見合わせて、うなずきながら、声をあげた。

 

「誰か助けて」

「助けて」

 真央の後に、続いて、里菜も声をあげた。






「あれなんか今声しませんでした?」

「気のせいじゃないすか?」

 神谷は、ロッカールームから聞こえた声に反応した。そんな若木は、気のせいということを言った。



  自由の女神の格好をした着ぐるみは、ボードに書き始めた。


  2人は、顔を見合わせながら、その光景を不思議に感じていた。自由の女神の格好をした着ぐるみは、ボードに書き終え、そのボードを2人に見せた。そのボードには、声をあげたら、お前らもただじゃおかないと書かれていた。2人は、とりあえず黙ることにして、おとなしくした。そして、自由の女神の格好をした着ぐるみは、もう一度ボードに何か書き始め、2人に指示をだした。そこには、黙ってついて来いと書かれていた。

おそるおそる里菜と真央は、立ち上がってついて行くことにした。

 

 

 

「神谷さん テーマパーク運営報告書もう書かれました?」

「はい もう書き終わりました 営業報告書も書いたら終了です」

「分かりました とりあえずこれ記入したら遅番リーダーキャストに引き継いで上がりましょう」

「そうですね 夢遊ちゃんたち待ってますしね」

「はい そうですね」





「夢遊ちゃんそろそろ移動しようか」

 高野が夢遊に言った。

「ですね まーくんさんもう飲み終わりましたか?」

 夢遊は、正樹に飲み物を飲み終えたか聞いた。

「うん 飲み終わったよ」

「じゃあ行こうか」

 高野が促し、カフェブラウンを後にした。


「それにしても里菜さんと真央さんたち遅いね もうそろそろ来るはずじゃ」

「ですよね どうしたんでしょうか ちょっと心配ですね」

「だよね もしかしたらまだテーマパークにいるかも」

 高野は、もうそろそろ来るかもしれないという里菜と真央が遅いということが気になっていた。

 夢遊も2人を心配している感じであった。正樹はもしかしたらテーマパーク内にいるかもしれないという風にも思っていた。

「パークにいるのかな」

 夢遊は、ぼそっと1人言のようにつぶやいた。

「夢遊ちゃんどうする? 戻る?」

 高野が夢遊に直接聞いた。

「心配だし戻ろうか」

「ちなみにさ 連絡とかってした?」

 正樹が連絡をしたかどうかを、夢遊に確認した。


「はい 一応してますが かなり時間は経ってるので」

 夢遊は、ちょっと前に連絡をしていたが、2人からの返信はしばらくはなかった。

「そっか じゃあパークに戻ろうか」

 正樹は、パークに戻ることを提案した。


「高野さん戻りましょうか」

「うん そうだね でももう少し待ってみるのはどうかな?」

「それでもいいですが まーくさんはどうですかね?」

「自分も待つのはいいかなと思うけど もしかしたら何かあったかもしれないと考えると

 パークに戻って待つのが良いかと 心配しながら待つのもなんか疲れるしね」

 正樹は、心配しながら待つより、パークに戻って待つのが良いと提案した。

「ですか じゃあ戻りましょう」

「そうだね」

 夢遊、高野、正樹の3人はパークに向かいはじめた。





「さて じゃあ出ますか」

 オフィスから本間が出ようとしたら、他の誰かが、本間を行かせないように止めた。


「君が本間くんかな?」

「ああはい」

「そうか 日本エリアを作る計画と何か動きをしているということを聞いた」

 スーツを着た中年の男が本間にそのように声をかけてきた。

「ああはい」

「今ここでそれをやめるならば 俺は何もしない ただもしその計画を進めるなら」

「進めるならなんですか?」

 本間はその言葉のあとの事が気になったので、すかさず強気で質問した。

「もし君が進めるなら君の知り合いがどうなっても知らないぞ」

「えっ?」

「お前たち連れて来い」

 スーツを着た男が指示を出した。

 着ぐるみを着た自由の女神と着ぐるみを着たハリウッドくんが、サバイバルナイフを持って、里菜と真央にそのナイフをつきつけながら、連れて来た。


「里菜ちゃんと真央ちゃん?」

「本間さん助けてください」

 真央がそのように本間に呼びかけた。

「本間さん助けて」

 里菜も同様に呼びかけた。


「お前ら何が目的だ」

 本間が里菜と真央が人質に取られたので、イライラして叫んだ。

「よくぞ聞いてくれた 日本エリアの計画を止めるだけではなく われらが進めている計画の邪魔をしてくるからやつらを排除したいと思ったからだな」

「それが目的か」

「そうだ うちのテーマパークを勝手にいろいろ進められたら困るからな」

 本間は、そのように言われ黙ったままだった。


「こいつらを助けたいなら 俺たちの言うことを聞け」

「分かった」


「よしそれでいい まずお前が計画していた日本エリアのデータを渡せ」


「本間さん渡しちゃだめですよ」

 里菜が本間に取締役に指示を出され、渡そうとデスクの引き出しを開けようとすると、

 里菜が止めようとした。


「もう一つはお前らがこの前取締役室に入った際に コピーをしたものものだ お前らが入ったことが分かってる コピー機にも履歴が残ってるからな その2点を渡さなければ この着ぐるみたちに殺させる」


 本間は、取締役から要求をされ、背水の陣になり、どうしていくかというのを冷静に考えた。


(どうする?こいつらにそれを渡していいのか でも渡したら日本エリアの計画が)








「よし着いた」

「てか意外と早かったですね」

「だね よし急ごう」



「てかあの2人どこいるんだろう?」

 正樹が、2人の場所をどこかというのを考えた。


「うーんどこか」

 夢遊は、頑張って推測し考えた。


「もしかしたら 本社?とか」

「だよね やっぱ本社か さすが夢遊ちゃん」

 高野が夢遊の勘を褒めた。

「どう入る?」

 正樹が聞いた。

「従業員の所から入って そこから本社の方に行けばいいかなと思います」

 夢遊は、正樹にそう言った。

「分かった じゃあ入ろうか」

「今の時間帯で入ってもまあ問題はないよね」

「大丈夫だと思いますよ」

「だよね てかまずさ里菜さんと真央さんのロッカールーム確認しない?」

「そうですね」


「従業員証を提示ください」

 30代くらいのキャストが従業員証の提示を求めた。

 

3人は、自分の従業員証を提示した。


 3人は、まずロッカールームに向かった。


「ちょっとまーくん待っててね」

「分かったよ」

 夢遊と真央がまだいるかを確認するために、夢遊と高野は、ロッカールームを

確認した。


「里菜さんと真央さんのロッカールームの場所分かる?」

「はい 分かります こっちです」

  夢遊は、里菜と真央のロッカールームを案内した。

「どうやら まだいるみたいだね」

「ですね 良かった」

「本社の中にいるのかな?」

「分からないけどそっちにいるかもしれないよね」

 



「さあ早く渡してもらおうか」

 取締役から本間は、渡すように急かされ、そのように言われた。

「少し時間をもらえないでしょうか?」

「時間か まあいいだろ じゃあ10分間だ」


「ありがとうございます その間にデータを用意するのでお待ちを」

  本間は、10分間時間をもらい、その間に、パソコンのある所を開き、時間を稼いだ。


 


「まーくんお待たせ」

「お疲れ様 2人はまだいた?」

「一応まだパーク内にいることは分かった ただ場所はたぶん本社かなと思うけど確信ができない」

「そっか」

「あれ?本間さんからだ」

「夢遊ちゃん何て返事来てた?」

 高野が夢遊に、どんな返事が来たかを尋ねた。

「読み上げますね かなり今やばい状況 前回の取締役室のものを渡せという要求と あとは里菜ちゃん 真央ちゃんの2人が人質にあってるだって」

「えっかなりやばいね 夢遊ちゃんどうしようか」

「どうしましょうか 里菜さん 真央さんが人質にあってるらしいからちょっとやばいですよね」

「たしかに まーくんなんかアィディアある?」

「うーん この状況はきわどいね 本間さんから新たな返事は来た?」

「いいえ 来てないです」

「ちょっと向かいながら考えようか」

「分かりました」

  正樹は、向かいながら、考えることを提案した。


「まさか 里菜さんと真央さんが人質にあってるとは本当驚くよ」

「分かるよ こういう状況ってなかなか怖いというか難しいよね」

 夢遊は、改めて、里菜と真央が人質にあっているという現実を受け入れて、驚きを

 隠せない感じでもあった。


「あっいいこと考えた」

 正樹が突然アィディアを思いついた。

「何か思いついたの?」

「うんうん」

「あの倉庫って入れないんだっけ?」

 正樹がある倉庫がキャストは入れないかどうかを高野に聞いた。

「うーんどうだったけ?ちょっと分からないけども」




「さあ10分経ったぞ 渡してもらおうか」

「分かった もう少し待ってもらえるか?(まださすがに来ないよな)」

「時間延長か 仕方ないじゃああと3分だ」

「分かった」

 本間は時間を稼ぐために、取締役に時間をもらった。



「まーくんどんなことを考えているの?」

「まあ面白いから見ててね」

「あの倉庫の鍵を借りに行かないとね」

「借りないと行けない感じだよね 社員に頼まれたといってごまかそう」

「そうだね 夢遊ちゃん本間さんから何か連絡あった?」

「ないですね もしかしたら今ピンチという感じかもしれないですし」

「それはありそうだよね」

「とりあえず鍵借りに行こう」



3人は、鍵を借りに警備員室まで行った。


「あのすみません A12の倉庫を借りたいのですが」

「ああ鍵ね はいよ 名前書いて行ってね」

「ありがとうございます」

 意外にも特に怪しまれずに、警備員室から鍵を借りれた・



「意外とすんなりだったね」

 高野は、鍵の扱いが厳しいと感じていたので、少し安心した様子であった。

「たしか夜は警備員が常駐してた気が」

 正樹が思いついたように言った。

「なるほど キャストが退勤するからか」

「うん あの受付キャストは19時で警備員に入れ替わりだからさ むしろタイミング良かったかも」

「よく知ってるね とりあえず急ごう」

 意外にも、正樹がその辺の事情を知っていたので、ほっとした。


「じゃあまーくん倉庫着いたから さっそく計画聞かせて」

「まーくんさんお願いします」

 正樹と夢遊は、正樹の計画を聞いた。

「あっ本間さんからです」

「なになに?」

 高野が本間からの返信の内容を尋ねたきた。

「さあ時間だ 渡して約束通りもらおう」

「分かった」

 本間は、取締役に日本エリアの計画書と前回取締役室に入った時の証拠品を渡した。


「本間さん渡しちゃだめですよ」

 真央が、本間がその2つを渡したことに、反対をした。

「分かってる でも君たちを助けるためには」






するとテーマパークマーケティング本部のオフィスの扉が開いた。


 そこには、アメリカをモチーフにしたキャラクター2人とキャラクターを誘導している

 キャストの格好をした高野がいた。


「お前ら何しに来た?」

 取締役がイライラした感じであった。


その光景に本間も唖然とした。

(まさか)


「すみません急に 実はちょっとここのオフィス内で明日の予行練習をしようと思ってて

 もともとその計画でした すみません」


「邪魔だ 静かにやれ」

 取締役はきれていた。


「あのすみませんあともう一ついいでしょうか?」

「なんだ?」

「その紙みたいなやつどんなのか見せてもらえませんか? ちょっと気になっていて」

「なんでだ?」

「どんなものなのかなとスーツ着ている人たちが持っている書類はなかなかかっこいいものですし」

「たく 仕方ないな すぐ返せよ」

「もちろんですよ」

高野は、さっと本間の所に行き、そっと渡した。


「てかそこにお前と一緒に来たぬいぐるみどもをどうにかしろ」

「分かりました」

 高野は、思うままに従った。

そのアメリカのモチーフの格好をした着ぐるみたちは、里菜と真央の所に行って

 助けようとした。

「何をしている こいつらは人質に取られてるんだ 勝手に助けようとするな

 お前らもなぜこいつらが来てから離れてるんだ」



 高野が連れてきた着ぐるみが、2人を助けようとした際に、取締役が連れてきた着ぐるみが、なぜか引き下がり、里菜と真央のもとから離れたので、取締役はきれた様子で、着ぐるみたちに言った。


「すみません 申し訳ないのですが その着ぐるみたちの時間過ぎてます なので返してあげてください」

 高野が、取締役たちが連れてきた着ぐるみたちに、その着ぐるみのコスチュームの返却時間が書かれた紙の内容を伝えたことにより、着ぐるみたちが自然に引き下がったということが分かった。

 

「そんなことないだろ?」

「いいえ そうですよ」

「なので 返却時間までに返却してくださいね」

 高野が、その着ぐるみたちの時間を取締役に伝えた。

「分かった だがこの人質どもの監視は俺がやる 着ぐるみたちがいなくても俺がいるからな」

取締役は、人質に取られている真央と里菜の監視は自分がやると言っていた。

 


高野は、自分が連れてきた着ぐるみたちに本間の所に行って指示をだした。


「えっ何々?」

 着ぐるみたちが、本間の所にやってきた。

本間は、何だろう?という表情を顔にだして、不思議そうにしていた。

 

着ぐるみたちは、何やら本間に小さい紙を渡していたのだ。

「紙?」

 すると、その紙に書いてあったのは、夢遊です。と書かれた紙だった。

 さらに、もう一人の着ぐるみも、紙を渡した、そこにも、正樹です。と書かれた紙だった。

「おお まじか」

 小さい声で、本間は言った。

「お前らこそこそと何をやってる?」

 取締役がその、一連の内容を少しだけ見ていた。

「何もやってない」

 本間は、取締役に反論をした。


「ずいぶんと威勢がいいな 人質になっているこいつらをすぐにでも殺せるんだぞ」


  そのように、言われた瞬間、本間は何も言い返すことができなかった。

  オフィス内も静かな雰囲気が漂っている感じであった。


「まあいい とりあえずはおとなしくすることだな」

 取締役は、本間たちにそう言った。



「若木さんそろそろ上がりますか」

「ですね 上がりましょう」

 神谷は、若木に退勤することを伝えた。

「夢遊ちゃんたち待ってますしね」

「はい 神谷さん場所はいつもの所ですよね?」

「そうですね」

「分かりました 向かいましょう」

 神谷と若木は、前回、夢遊たちとミーティングをした場所に向かう準備をした。




「本間お前に一つ聞こう 日本エリアの計画を断念 新たなことを取り入れた変な真似をするかしないかどっちだ?」

取締役は、本間がこれまで計画していた日本エリアと夢遊たちが取り入れようとしたものをやるかやらないかの選択肢を与えた。

 少しの沈黙が漂い、本間はまた考えた。


「もしお前がここで素直にやらないと言えば こいつらを助けてやる

 しかもここでやらないと言って 日本エリアの計画を進めても無駄だからな

 こちらは それを阻止できる体制だ なんせ俺たちは取締役幹部だからな」

選択肢をだされ、すぐに答えは出せなかった。


(どうする?ここで終わりか 日本エリアはなしにするべきか 里菜ちゃんと真央ちゃんを助けるのが先だよな)



「分かった日本エリアの計画は中止にする これでどうだ? そしたら

 この2人を助けてくれるんだな?」

「ああそうだ じゃあ約束通りこいつらを助けてやろう」


「本間さん」

 真央が解放された瞬間、泣きながら来た。


「本間さん」

里菜も解放された瞬間、泣きながら来た。



「これでお前の役目は終わったはずだ もう要求はないだろ?」

「そんなこと俺は一言も言ってないぞ」

「今はお前ただ一人だ 一人で何ができる?」

「そんなこと言ってもいいのかな?」

 取締役はインカムを使い始めた。

「お願いします」

 インカムを使うと、続々と黒スーツの者がやってきた。


「えっ?」

 本間は、驚いた。


「30人でお前らだけだ これで文句はないだろ?」

 

  全員は、うつむいた感じで、何も言えなかった。

 

「えっ林さん 山田さん何でそちらに?」


「こいつらは 時期取締役だ そんな言い方してもいいのかな?」


「社長こちらです」

副社長が社長をエスコートして行った。


「君が本間くんかな?」

 社長が尋ねた。

「はい」

「改めて 言わしてもらうと君の計画はわがテーマパークへの破壊でしかない」

 社長は、「破壊」という言葉を言い放ち、本間の計画がブランドニューオブアメリカにふさわしくないとも言っていた。


 本間はイライラしながらも黙ったままだった。

 すると、夢遊が社長に対して、反論した。


「お言葉を返すようですが 私たちがいくつかやろうとしているものはやめようと思いま

せん」

 本間や他の人たちも、その様子を見て少しばかり唖然としていた。

「君 社長に向かって何てことを」

 副社長が夢遊に強く注意をしてきた。


「いえ 本当のことです 日本エリアも新たなことをやろうとするのも やめません」


 夢遊は、はっきりと伝えた。

「キャストの君が何を言う?」


 社長が反論した。

「そういう風にあなた方は言ってますけども 悪いことしてましたよね?」


 夢遊が、取締役たちに悪事をしていたことを確認するように尋ねた。


「おお 言ってくれるね その証拠はあるのかな? 君たちこそ勝手に取締役や社長室に入っていろいろあさったりしたよね?」


社長が夢遊の話にさらに反論した。


「それは」


 夢遊は、社長の言葉につまった。


「それはあなた方が悪い疑いを持たれることをしてるからでしょう」

 

本間は、夢遊のあとに続き、言葉をつなげて言った。


「じゃあその悪いことと言うのは何かな?」

 

取締役の一人が、本間に反論してきた。


「ここで今からあなた方にお話しします」


 本間が、取締役たちに、これから悪事を暴くことを伝えた。


「まず この紙を見てください」


 取締役たちの何人かが社長や副社長がまじまじと見つめた。


「そんなただの紙切れがなんだって言うんだ」

 本間が、紙切れを見せた時に、取締役が反応した。


「はい ただの紙切れです けどもこれはただの紙きれではありません これは実際にお金を使ったと思われる領収書です 3000万とここに記載してある」


「3000万?」

 副社長が思わず聞き返した。

「そうです 3000万です つまりこれは社内の誰かが利用したと思われます

 財務課に聞いたところ 特に申告がなかったと聞いております」


「君 ここに犯人がいるということか?」


「まだそんなことは一言も言っておりません 社内の誰かではありますが こんな大きなお金をいち社員が動かせるわけでもない 同時にキャストも動かせるはずがない」


「じゃあ一体誰だって言うんだ」

 副社長がイライラして本間に犯人が誰かというのを聞いた。


「そんなに言うならもうここで はっきり言いますね」

 本間は副社長に、そのように言われたので、言うことにした。


「まあここにいるとは思えないが」

 副社長が、改めて否定をした。


「このお金を不正に利用したのは 社長あなたです」

 取締役や副社長がざわざわし始めた。

「君 社長がそんなことするわけないじゃないか」


「証拠は この領収証以外にもあります 社内PCの閲覧履歴を印刷させていただきました」

 本間は、前回取締役や社長室に行った際に、PCも確認していた、会社のお金を使いこみしていたという証拠をおさえるために印刷していた。さらにPCの閲覧履歴を見ると社長が自分のIDでログインし、さまざまなものを購入していたことも発覚したのだ。


「これがその証拠です」

 副社長をはじめ、証拠をつきつけられた瞬間、取締役たちも黙っていた。


「そして さらにはこんなものまで見つけました ブランドニューオブアメリカ買収危機と書いてあるこの紙をご存じないでしょうか?」

「これは?」

 副社長がはじめて見るかのように、驚いていた。


「これは実際にニュースにも流れてましたが 実際ブランドニューオブアメリカは買収危機ではないのにも関わらず 会社がいかに買収であるかのような演出をした そのために広告会社に依頼をしようとしたが はじめは断られた けれども広告会社を脅迫し無理やりその広告を作成させた 違いますか? しかも本当はブランドニューオブアメリカが買収されるのではなく ブランドニューオブアメリカが買収をするということじゃありますせんか?それはつまり敵対買収と思われないように 自分たちのことが公にでないように工作をした」

 本間は、証拠をつきつけながら推測していった。


「えっまさかこっちが買収しようとしたとは」

 夢遊が真実を聞いて唖然とした。


「なかなか面白いね」

 社長は、嘲笑しながら本間に言った。





「なぜこんなことをしたのですか?」

  本間は、さらになぜ社長たちがこんなことをしたかというのを尋ねた。

 

 「わがこのテーマパークは開業かつては盛り上がっていたんだ けれどもここ最近は業績が伸び悩んでいた その理由は「伝統」と「継承」を守りたいがための私たちの

  エゴであったと思っている」

  社長は、本間に悪事を暴かれはじめ、さらに動機を聞かれたので、たんたんと話はじめていった。

 「たいした理由ではないが この方がパークを守るためにいいと思ったんだ」

 

  本間や、オフィスにいる全員が真剣に話を聞いていた。


 「あなた方のその言い分は分かりました 確かに最近ゲスト数も減少していることはうすうす感じていますしあなた方が言っている業績が多少下がっているという重なる部分もあるでしょう けれどもそんなことを理由に全てではない事実をつくり 他の会社に敵対買収までしようとして自分たちの悪事を隠すのは違うと思います」

 

  本間は、強めの口調で、間違っていること指摘していった。


 「証拠をつきつけられた以上 ここは認めよう」

「社長」

  副社長が実際の真実を知り、衝撃を受けていた。


 「ゲスト数も減っているのに なんでじゃあ新たなことをやろうと思わなかったんですか?」

  夢遊が、社長に率直に質問した。


 「同じことを言ってしまうが「伝統」と「継承」を守るためには

  仕方なかったんだ 昔ながらのテーマパークを大切にという感じでな

  しかもそういう昔のようなテーマパークを好きな人もいるからな」

 

  それを聞いて夢遊が、バカにしたように言い放った。

 

「全員とは言わないですが こうやってごまかしたりずるいことやるのは違う思います自分たちのことだけを考えて人のことを考えない テーマパークの経営者として最低です」


 夢遊は、最低というワードを強く強調して、取締役たちに言い放った。


「僕らは 全てのゲストのためにやっているんです 自分のことだけではなく」

 本間は、取締役たちにさらに説得していった。


「これは僕の予想ですが 新たなことをやろうとする動きは少しあったのではないでしょうか?」

 本間は、少しばかり新たな動きがあったかもしれないと推測した。


 社長や副社長、取締役たちは黙って聞いていた。




その頃、梨菜は、電車で引き返しいつもの店だと思い、そこに着いていた。


「あれ?いない?どうしたんだろう」

 梨菜は、夢遊たちがいなかったので、少し困惑していた。

「とりあえず連絡してみよう」





「あなた方のことは明日人事に報告させていただきます」

 本間が、取締役たちにそのように言うと、彼らはなぜか多少イライラしていた。


「お前らふざけるなよ」

 社長が本間や夢遊たちに殴りかかろうとしたので、夢遊は、オフィスにあった

 水をぶっかけた。

「あんたがだよ」

 夢遊は、一撃で社長に水がかかり、「あんたがだよ」と言葉を言い放った。

 

 

そして、テーマパークの長い一日が終えた。取締役たちや社長や副社長などはぞろぞろと

オフィスを出て行った。






「本間さんかっこ良かったですよ」

 夢遊が、本間にかっこいいと言った。

「夢遊ちゃんこそなんか最後活躍してたじゃん」

「まあちょっとむかついてたんだ」


「本当かっこ良かったよ 夢遊ちゃん」

 高野も感心していた。

「あの私たちを助けにきてくれてありがとう」

「ありがとう」

 真央と里菜が助けにきてくれたことを感謝していた。

「いえいえ」

 夢遊が、そのように言った。

「やっぱ僕らはチームだね」

 正樹が、まとめて言っていた。

「まーくんさん良いこといいますね」

「それほどでも」

「何照れてるんですか」

 夢遊が、正樹を少しからかった。


「あっ梨菜ちゃんに言ってなかった」

「ああそうだね 連絡来てる?」

「はい 来てました」



「夢遊ちゃん」

「ああ梨菜ちゃん えっ戻ってきたの?」

「うん みんないないからやっぱりここかなと」

「なるほどね なんかいるところだいぶ分かっちゃうよね」

「まあね 意外とテーマパークにいることが多いなと思うしね」

「そっか まあ当たってるかもしれない」



「あれ?みんなここにいたの?」

「神谷さん」

 夢遊が反応した。

「僕らもまだパークにいたからさ」

「若木さん」

 高野も反応したように言った。


「なんかあったの?」

 神谷が不思議そうに聞いた。

「まあいろいろです 話すと長くなるので」

「そうなんだね」



「じゃあみんなで改めてご飯に行こうか」

「行きましょう」

 本間と夢遊が先頭を切って行った。

「お腹空いたよね」

「分かる」

 里菜と真央も空腹であった。


 全員は、改めてご飯に行くことにして、パークを出た。


 次の日、本間は前日の件を報告した。取締役や社長、副社長は自宅謹慎となった。



 今回の件は、ニュースや新聞でも取り上げられ、かなり話題になっていた。それは日本

 でも有名なパークであるという理由もあるからだ。その間に、パークは経営者なしの体制になっていた。





「夢遊ちゃん昨日はお疲れ様」

「お疲れ様です かなり疲れました」

「だよね 悪い大人たちが最近多いよね」

「ですね いろいろ大変ですね」

「ああそう言えばさ 若木さんが他のアトラクションに異動になる まあ言うて 隣だけどもここの管轄じゃなくなる」

「あっそうなんですね」

「うん まあまた戻ってくるとは思うよ」

「ですか まあそう信じます」

 若木は、他のアトラクションに異動になった。





翌日のブランドニューオブアメリカは、調査もありつつ、いろいろざわざわしていた。


ゲストも少しずつ、戻り、メディアの力は意外と影響を与えていた。

 夢遊たちが、変えたかったことなどは取締役の件もあってから、さまざまな部署はいろいろ見直しはじめていた。夢遊と本間は2人で問題点をまとめた。梨菜が感じてたごみ問題、夢遊が気づいていたキャストのたばこ問題、マニュアル通りにやることではないようにする、キャストのゲストサービスの在り方など問題は全く異なるが、それらを担当する部署にまとめた紙を提出し、それぞれの部署は、慎重に受け止めることにした。







 その翌日、テーマパーク幹部や経営者なしの体制という形で、パーク内部の社員たちは

 いつものように仕事をしていたが、人事部は、今回のパークの事件をきっかけに人員を整理するため、急きょ人事異動などを取り決めていた。前日のことも含めていろいろ忙しかったが、各部署に午後通達した。


「本間さん 日本エリアどうしますかね」

 唐崎が日本エリアのことを心配していた。

「本当どうするかね」

「そう言えば 林さんと山田さんも謹慎ですか」

「まあそうだね」

 小山田が本間に聞いた」

「唐崎 日本エリアのことはとりあえずパークが落ち着いてから再開しよう」

「分かりましたよ」

  唐崎が、日本エリアをまたやることにワクワクしていた。


「本間くんちょっといいかな?」

「ああはい」

 本間は上司の山本に呼ばれた。


「昨日はまずお疲れ様だったね いろいろ報告をしてくれてありがとう おかげさまで

 なんとかパークは少し落ちついていってるみたいだ」

「良かったです」

「それとだな 君に伝えたいことがある」

「はい」

「これを」

 本間は、上司の山本にあるものを渡された。渡されたものは、人事異動通知書だった。

「異動ですか」

「うん そうだ よくみてごらん」

「えっ 職位が代表取締役社長 異動先 社長室」

「私も驚いたよ 今回のこととあとは日本エリアのことをうすうす聞いていたみたいで

 人事部もいろいろ期待できると思ったんだろう まさかいきなりCEOとは驚くよ」

「僕もです」 

 本間は、驚きを隠せず、まさか自分が社長に昇格するとは思わなかったと感じた。

「ちなみにもう他の社員やキャストにも知れるようになってるらしいから」



「本間さんおめでとうございます」

「うんありがとう」

 唐崎が言った。

「本間さん異動されるんですね」

 古田が悲しくなっていた。

「本間さん 日本エリア進めますよね」

 小山田が日本エリアのことが気になっていた。

「もちろん」

 本間は、日本エリアを進める計画を決めた。

「ちなみに日本エリアの計画を進めるまでは 携わって行くからよろしく」

「分かりました」


「あっなんか山田さんと林さんは社員から降格し裏方の作業キャストになるらしいですよ」

「まじか」

 同じ部署であった、山田と林は、取締役たちと一緒に動いていたことにより、社員かた

 キャストに降格した。この2人がやる仕事内容は、地味でなおかつ工場みたいなものだった。



「本間さんがまさかの昇格」

 真央もたまたま廊下を通りかかり見ていた。」

「だね 社長に」

 里菜も同様に驚いていた。

「これで遠い存在になってしまった」

「何 真央落ち込んでるの?」

「落ち込んでないし」

「てか告白はよ?」

「いきなりなんだし」

「だって好きと聞いてたからさ」

「里菜もでしょ?」

「さあどうでしょう」

 


「夢遊ちゃん本間さんが社長に就任」

「まじすか それはすごい」

「だよね これは自分も驚いた」


すかさず、夢遊はオフィスを出て、本間の所へ行った。



「本間さん」

「おお夢遊ちゃん」

「おめでとうございます」

「すごいもう知ったんだね」

「はい」

「なかなか自分も驚いたよ」

「ですよね これから楽しみですね」

「うん 夢遊ちゃんがパークを変えようとするのは本当に素晴らしかった ずっと思っててね 新たなサービスを取り入れようとしていったことなどね」

「ありがとうございます」

「自分は日本エリアを取り入れて社員として何かを形にすることだけではないとおもっている」

「はい」

「ゲストを含め より多くの人に喜ばせることを考えていくことやゲストの小さなことを察して気づける能力はすごいよ」

「あっありがとうございます」

「ここからどんどんまた頑張っていこう立場が変わっても君とテーマパークを変えていくことは変わらないから」

「はい もちろんです」

  本間は、夢遊に思いのたけをぶつけた。

「じゃあまたね 頑張ろう」

「頑張りましょう」

  本間と夢遊は、分かれた。



「夢遊ちゃん戻ってきたんだね」

「はい 遅くなりました」

 高野が、オフィスにいた。


「全然大丈夫だよ これからなんか新たな感じで楽しみに感じるね」

「はい そうですよね なんか そう感じます」

「だよね 日本エリアもなんか実現されそうだしね」

「はい たしかに 日本エリアこれからですしね」

「うんそうそう さあパーク出ようか」

「はい 行きましょう」

「ブランドニューオブアメリカ変わったんですかね?」

「えっ急にどうしたの?」

「何ていうか 取締役たちの悪事を晴らしたけども全体的に私たちが何を変えたかというのが疑問で 部署には提出しましたが」

「変わったと思うよ 取締役たちのああいうかたい考え方を変えたことじゃないかな?」

「そうですかね」

「うん 自信持って」

「ありがとうございます」

「問題点の書かれた提出した紙はこれからいろいろ決まって行くとは思うけども 行動してないよりはまだいい方だよ」

「ですよね」

 高野は、夢遊が変わっていないかもと少し心配していたので、改めて変わったことを夢遊に伝えた。

「夢遊ちゃん お疲れ様」

「ああ 梨菜ちゃん」

「いろいろ大変だったね」

「まあね ここを乗り越えたからとりあえず良かったよ」

「そっか」

「うん」

「いろいろ私も協力してくからさ」

「ありがとう」

「梨菜ちゃん 今度ヘルプ行くかも」

「高野さん まじすか 楽しみです」

 梨菜は嬉しそうにいきいきとしていた。

「また3人で頑張りましょう」

 夢遊が2人に言った。

「頑張ろうね」

「頑張ろう」

 高野と梨菜が、「頑張ろう」と言った。


夢遊は、ブランドニューオブアメリカで働けたことを光栄に思っていた。

これからまた今日からパークの日常が始まるというワクワク感を持って、夢を与える

とを考えていくのであった。


パークを歩くと、さまざまなゲストの笑顔が見えた。もともと気にしていた問題が払拭されたかのようにゲストの笑顔がたくさんあった。


また明日から今日ここで、たくさんの喜びを与えていくために頑張ることにした。



「いやーそれにしても社長室は大きい さてPC作業の続きを」

 本間は、PCで作業の続きをした。

「失礼いたします 本日から本間社長の秘書をいたします 仮和田 亮と申します

 お願い致します」

秘書である仮和田が社長室に来た。

「うん よろしくね」

「よろしくお願い致します さっそくですが 今後のスケジュールについて確認をしたいので 今お時間ありますでしょうか?」

「うん 大丈夫だよ ちょっと待ってて これを印刷したら行く どこに行けばいいのかな?」

「かしこまりました 第一会議室です ではお待ちしております」

「分かった 行くね」

 本間は秘書に印刷してから行くという旨を伝えた。そして印刷物を机に置き、第一会議室へと向かった。机の上に置かれていた印刷物は、日本エリア計画書と第二テーマパーク案というタイトルで書かれた2枚の紙が置かれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブランドニューオブアメリカ リュウタロウ @suzu06199

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ