第7話:私の恋の話

 私はその日、彼女に私の恋の話をした。好きな人に付き合いたいと言われて、ショックだったこと、普通の恋が出来ない自分が嫌だったこと、白狼さんのことは好きだけど付き合いたいとは思わないことなど。全て。彼女は否定せずに黙って聞いていた。全て話終わると、彼女は言った。「やっぱ理解出来へんな」と。言葉の割には優しい声だった。そして彼女は続ける「おもろいな自分」と。その自分は自分自身ではなく、私のことを指していた。


「あ、おもろいっていうのは失礼か……すまん。興味深い? うーん……これも失礼か?」


 なんて言ったええんやろとぶつぶつ言いながら、彼女は頭をかく。自分では見えない世界だから恋愛の話が好きなのだと、彼女は言っていた。恋愛の話は自分にとっては、異国に旅をした人のお土産話みたいなものだと。私の話に対する面白いもそういうことなのだろう。先の話を聞いていなかったら酷いと怒っていたかもしれないが、彼女の「面白い」や「理解できない」は馬鹿にしているわけではなく褒め言葉なのだろうと解釈したことを本人に伝えると「自分物わかりええなぁ」と眼を輝かせた。


「せやねんせやねん。あたしにとって『理解出来ない』は最高の褒め言葉やねん。普通なんてつまらへんやん? 人と違うことは当たり前のことやし、違うからこそ面白いんや。君とはええ友達になれそうやなぁ」


 そう言って彼女はスマホを私に差し出した。そこに表示されていたのはLINKというコミュニケーションアプリの友達登録用のQRコード。読み込むと『白狼夜月』という狼のアイコンのアカウントが出てきた。恐る恐る、友達登録する。するとすぐに『よろしく』と狼のキャラクターのスタンプが送られてきた。『よろしくお願いします』と返すと「堅い堅い」と目の前にいる彼女がおかしそうに笑う。


「よろしく。莇」


「……うん。よろしく。夜月」


 こうして私は、彼女と友達になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る