第32話 女神再び

っそ!」


 お馴染みの白い謎空間です。

 いきなりだよ。これだからワガママは困る。


「約束守らないあんたが悪いんでしょ。来週って言ったのに何日経ってると思ってるのよ」

「二週は経ってないんだから今日だって来週のうちでセーフだろ」

「違うでしょ。来週って言ったら七日後が普通ですー。あなたが悪いんですー」


 くっ、コイツは小学生か!


「しょうがないだろ、こっちだって仕事だったんだから。それくらい勘弁してくれ」

「いや、許さん。ちゃんと謝れ」

「はいはい、申し訳ありませんでした」


 棒読み台詞の後に頭を下げてみる。


「ふん、仕方がないから許してあげましょう。私が心優しき女神であることを感謝なさい」


 どの辺に心優しさがあるのか聞いてみたいもんだ。

 馬より器量が小さい女神って何なんだよ。


「…そんなことより何か話があるんだろ。さっさと済ませたいんだが」

「はっ、そうだったわ。あなた小鬼ゴブリン共は倒したのよね?」

「ああ、倒したぞ」

女神わたしの加護の力がどれだけ凄いかよく分かったでしょ」

「いや使ってないから分からん。てか何ができるのか分からん力なんか使いようがないだろうに」


 何かキョトンとしてるぞ。


「え?じゃあどうやって倒したのよ」

「お前のポンコツお姉さまがくれた超能力で」

「超能力?何それ?美味しいの?」

「いや、食いもんじゃねーし」


 何言ってんだコイツは。


「さっき鑑定も受けたのよね?」

「ああ、受けた」

「何て出たの?」

「何も出てない。特筆した才能は無いそうだ。今の仕事を頑張れってさ」


女神わたしの加護があれば殆どの魔法が使えて鑑定で引っ掛かるはずなのに)


「何で?」

「俺が聞きたいわ。まあポンコツ様の言ってた剣聖とかを断ったからじゃないか」

「ちょっと待って」


 慌ててジンのステータスを確認してみると確かに『超能力者』、その下に『女神の加護』の表示がある。


(何で出ないのかしら?……あっ!)


「適性が出ない理由が分かったわ。適性は出ていないんじゃなくて出ているけど分からなかったのよ。そして封印されたままなのよ」


「ちょっと何言ってるのか分かんないんですけど」

 思わずトミーになってしまった。


「何で分かんないんだよ!」

 おなべちゃんがそこにいた。世界が異なっても通じるネタだった。


「つまり、あなたの力はこの世界の概念にないから翻訳されずに元の世界の言葉で表示されたのよ。この世界では模様にしか見えないような元の世界の文字でね。それにあなた加護の力を使ってないから封印されたままになっているのよ。フフフ、私にかかればこんな問題は何の障害にもならないわ。さすが私さすわた、なんて賢いのかしら」

「つまりお前のせいじゃねぇか。ちゃんと翻訳しろ!そんで使い方説明しろ!」

「うっ、やっぱり」


 絶対、自分のミスだと思ってないな。


「それよりどうするのよ。適性が何も無いんじゃ誰も使徒だなんて認めてくれないじゃない。せっかく実績作ってあげたのに」

「ちょっと待て。今『作ってあげた』って言ったか?あの小鬼共に関係してるのか?」

「当たり前でしょ。あんなに都合よく小鬼とホブゴブリンが一緒にいるわけないじゃない。纏めて倒しやすいように私が舞台を整えてあげたのよ。感謝なさい。名付けて『使徒爆誕計画』」


 ダメだなコイツは。

 完全にポンコツの上位互換だ。

 諦観の念とはこの事か。

 悪気は無いにしても悪質なのは間違いないな。

 ラント達死にかけたんだから怒ってもいいよな?


「超能力があったから何とかなったようなものの、一つ間違えば全滅するとこだったんだぞ。余計な事してんじゃねえ!」


「ムキィー!!だって、そうでもしなきゃ私の世界が魔族に乗っ取られちゃうじゃない!あんたは使徒なんかやりたくないって言うし!どうしたらいいのよ、ふえ〜ん」


 泣かせてしまった。う〜ん、バツが悪い。これはズルいよな。


「しょうがねえなぁ。分かったから泣くのは勘弁してくれ。取り敢えず話聞くから一通り話してみろよ」


「本当?ちゃんと使徒になってくれるの?絶対だよ、絶対だからね!」


 泣き止む前に舌出したのは見なかったことにして話を聞くことにした。

「チョロ」って言ったの聞こえてるぞ。


 ホント、勘弁してもらえんかなコイツ。





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