第13話 初仕事
「そんなんじゃ、割のいい仕事はなくっちまうぜ。しかし、その年で新人とは珍しいな。みんなあのガキどもの頃から初めて、俺がお前の年には三ツ星になってたもんだ」
「普通はそうなんだろうな。俺もずっと冒険者になりたかったんだが、ちょっと訳アリでね。漸く念願が叶ったのさ」
丁寧に話すとなめられるらしいので口調はタメ口だ。アレックス情報です。
「今日の仕事が決まってないなら狩りに付き合わねぇか?なに、森の浅いところで
「ギルドを通さなくていいのか?」
「手の空いてる冒険者がその場でつるんで近場で狩りをするのは良くあることだ。まあ、次の仕事までの繋ぎだな。狩りの届けだけ出しとけばギルドの実績も残るし、
街の外壁補修や畑の雑草取りよりは面白そうだな。
「分かった。付き合おう」
「そう来なくちゃな。俺はマッティオ。ここじゃあマットで通ってる」
「ジンだ。何も分らんが宜しく頼む」
差し出された右手を握る。
「アレックスさんはどうします?」
「お役には立てそうにありませんが、ご一緒させて頂いてもよろしいですかマッティオ様」
「俺はいいぜ。礼金は一人分しか払えねぇけどな。あとその様ってのはやめてくれ。背中がムズムズしやがる」
「あ、それ俺もお願い。アレックスって呼ぶからジンでお願いします」
「同行させていただければ問題ありません。呼び方は…努力させて頂きます」
「「……」」
う〜ん、真面目か。
衛兵にギルドの登録証を見せて街を出る。アレックスは商会の登録証出してた。
俺が街に来た時とは違う道を進むと、ちょっとした草原の奥に森が見える。この辺が狩り場かな。遠くには別の冒険者も見える。
「もう少し奥に行こう。この辺にも巣穴があるはずだから探しながらな」
「おっ、いいのがいた」
森の近くまで来たらマットが蛇を捕まえて麻袋に入れた。蛇も売れるのか?
「あれ、巣穴じゃないか?」
「いい目してるなジン。早速、出番だな」
麻袋の口を巣穴の入り口に付けて逆さに振る。そのまま入口に付けていると勢いよく袋が膨らんだ。
「ほい、一丁上がりだ」
マットが持ち上げた袋から兎を取り出した。巣穴に入ってきた蛇に驚いて飛び出してきたようだ。
「巣穴にいる角無しにしか使えん小技だ。でも楽だろ?こいつはこのまま生かして持って帰ろう」
確かに楽そうだが蛇触りたくない。
森の生き物には角有りと角無しがいるらしい。あと森の奥には魔物。角有りは角無しより大きくて凶暴なんだそうだ。人に向かってくるから追いかけるよりは狩りやすいのだがそれなりの腕がいるみたい。森の浅い場所にはあまり出てこないから今日は見れなさそうだな。
その後も鳥や兎を見つけた端から捕まえる。マットは弓の腕前も大したもんだった。星を聞いたら五つ星になったばかりだそうだ。大先輩。今は長期の商隊護衛が終わって次の仕事までの充電期間だそうだ。
俺は見つけたらマルロにもらったダガーでサクッと。
「お前、新人なのにいい腕だな」
大先輩に褒められちった。
「登録が今になっただけで結構練習してたからね」
首の骨を『コキッ』とした方が手っ取り早いけど、
「結構、獲れたな。これだけあれば二、三日は吞めるだろ」
大先輩はダメな大人でした。そういえば昨日も朝から吞んでたな。
そろそろ帰ろうかと話をしていると、そいつが現れた。
「チッ、角有りの
よく見ると剣で斬りつけられたような傷がある。出血してるから古傷じゃない。
「お前ら退がってろ。突っ込んでくるぞ」
マットが斬りつけたが勢いは収まらず、こっちに突進してきた。
その迫力に呑気に感心していると、どこから取り出したのかアレックスが投じたナイフが猪の左目に刺さった。ついでにコッソリ念力で前足を捻ってやるとバランスを崩して倒れ込んだところにマットが剣を突き立てて息の根を止めた。
「こいつはいい拾い物したな。これで一週間は呑める」
やっぱり基準は酒でした。ダメダメじゃん。
因みに獲物の声は聞こえなかった。それが分かっただけでも一安心だな。
馬と何が違うんだろ。謎だ。
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