第11話 女神
俺の前には神々しく美しい女性が立っていた。恐らく女神スクラなんだろう。でも彫像の造形よりは色々幼い感じだ。ポンコツとは別人(別神?)のようだ。声が違うし話し方が穏やかだ。
「幼いってどういう事よ。何処見て言ってるのよ。私は
前言撤回。一瞬で地が出ました。何て質の悪い鍍金だ。こいつもポンコツと同じでした。
「ポンコツて何よ。あなた本当にお姉さまが送ってきた勇者なの?」
「ん、勇者?何のことだ?」
「何の事って、ヴェルダ姉さまから聞いてないの?今この世界は魔族が少しずつ力を蓄えて人族の領域を侵食してきているのよ。それを防いで人族を護るのが勇者の務めよ」
「知らん。まーったく知らん。俺は奴の償いの気持ちを受け入れて
「嘘・・・。でも勇者の力は」
「断った。剣聖も賢者も大魔導士もいらんときっぱり断った」
「だから中々教会に来なかったのね。姉さまが送ったって言うから神託まで降ろしちゃったのにどうするのよ!」
「いや、そこは自分でキチンと確認しなきゃ駄目じゃね?あのポンコツのする事だぞ?」
「ぐぬぬ・・・。じゃあ、貴方は何しにここに来たのよ」
「教会に来ればフォローするって、お前のポンコツお姉さまに言われてたから様子を見に来ただけだが」
「くっ、こんな使えそうもない奴を何でお姉さまは選んだのよ!」
「選んでないよ。手違いで殺しちゃったって言ってたから」
「・・・・・そ、それはかなりマズイ事態じゃ」
「だろうね。でもお陰でこうして自由にやらせてもらってる」
「大体の状況は分かったわ。勇者の力は諦めましょう。その代わりあなたに私の加護を授けましょう。だから魔族を退けてちょうだい。勿論、方法は貴方が考えてね」
「えー、そんな面倒くさそうなのやりたくないなー。俺は自由気ままに暮らしたいだけなんだから。大体そんな丸投げで人類の未来なんて背負えないぞ」
「ないなーじゃありません。ないなーじゃ。あなたに拒否権は有りません。必ず神託の名誉にかけて人族の為に魔族と戦ってもらいます。続きはまた来週にでも来てちょうだい。じゃあ、今日はここまでで」
「チョ、待てよ。まてっt」
目を開けたらそこは女神像の前でした。騒ぎは起こってないから周りの人は知覚できない時間を過ごしたようだ。あの世界とは時の流れが違うのだろう。
しかしポンコツの次はワガママって、あの世界は人材不足なのか?深刻なのか?
続きはまた来週ってサ〇エさんかよ。あー日曜日が終わっちゃう、やだなーって暗くなるだろうが。
立ち上がって入口まで戻るとアレックスに声を掛ける。
「お待たせしちゃってすいません」
「い、いえ、お気にならずに。もう宜しいのですか」
「ちょっとゆっくりお祈りしすぎちゃったかな。ありがとうございました。あれ?顔色悪くありません?具合悪そうですよ」
「大丈夫です。大丈夫ですから」
「そうですか?でも、今日は宿に戻りましょう。急ぐ用事も無いし。さあ、明日は依頼受けてみなきゃな。そうだ、女神の加護って聞いたことあります?」
「スクラ様の加護ですか?言い伝えでは大いなる癒しと共に魔を滅する偉大な力であると言われてますね」
「魔を滅する力ですか。それは凄いですね」
「女神さまの加護がどうかしましたか?」
「いや、お祈りしたら加護を授かれたらいいのになんてちょっと思っただけですよ。こんなお祈り一回で調子のいいお願いですよね。ハハハ」
俺たちはそんな話をしながらにぎやかな道を宿に向かった。
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