第36話 自覚と覚悟

部屋につけば、丸太を庭師に運んでもらい、止まり木を作成する。

魔法が役に立つ。粘土のようになる木が楽しい。バードが気にいる形になれば良いけど、これは本で勉強した知識だ。

「出来た」

よし、窓を開けて、

「バード」と呼ぶ。

腕から止まり木に移した。

「どう?」

と聞くと、元気良さげに

「ヴルフゥー」

と答えた…気がする。

また鳥を飼っている生活に戻った気がする。ウキウキしていると、リマが

「お嬢様がフリップ王子様とご結婚なされたら、毎日鳥を飼う生活になりますね」

と言った。

「えっ」

考えもしなかった。毎日バードといる生活。駄目でしょう、そんな期待をしたら、なのに頬が緩むの。そんな想像さえ罪です。だってフリップ王子様にはクリスティーナ王女様がいますもの。

「ヴルフゥー」

と鳴くバード。背中を撫でながら、落ちつくのよ、私。バードは悲しんでない。ただ鳴いただけよ。フリップ王子は駄目、だって王妃を目指してない私が、駄目。分不相応よ。

フリップ王子の横に立てる人は、王女、現実的に決まっている。

たとえ、ゲームの物語だとしても。ぱっとしない私じゃ似合わない。

だって、キャラが乗ってない私って

…つまらない令嬢だもの

「バード、あなたは大好きよ、私のヒーロー」

と言って背中を撫でながら、

「ごめんなさい、私には分不相応なの、隣に行く勇気もないわ」

ライラさんが王道と言って走る姿を思い出した。なんて強い子なのかしら、自分の気持ちに正直で、私に宣言して、なのに私は、苛立ちの正体を知ってるくせに認めようともしない。


「お嬢様、夕食の時間です」

「わかったわ、リマ。バード待っててね」

と言って、食堂に入り席に着く。フリップ王子様達を待つ。全員揃い、猪肉のソテーを食べる。

「美味しいな、この肉」

とみんな言っている。お父様が、

「これは昨日、ルイーゼが肉に果物を擦り下ろしておきましょうと言って実現した猪肉ですよ、昨日来なくて良かったです。皆様」

と言って笑った。そう昨日は、筋もあり、肉って感じだけど硬かった。お祖母様が食べづらそうにしていたのを見て果物の酵素を利用することにした。

「相変わらず、博識ですね」

とソリオ様に言ってもらえた。

「とんでもない、鳥関連の本ばかり読んでいるので」

と返した。和やかに食事が終わり、フリップ王子様がお父様と話がしたいと言った。

そして二人は、応接室に消えた。各自部屋に戻る。


バードは外に出たがっていたので、一旦外に出してあげ、空を見た。大きな翼を広げて飛ぶ。

私に何が出来るって言うのよ。

何も出来ないわ、好きなんて烏滸がましいわ。


ベッドでゴロゴロしてもこのモヤモヤは晴れそうもなかった。


応接室

フリップは

「マリノティス侯爵、ルイーゼ嬢に婚約者の打診をしたいと考えてます」

と言えば、侯爵は、淡々と

「今回の食糧支援の事は、気にしないで下さい。困った時は、お互い様なので、我が領は、お返しが欲しいわけじゃないですし、ルイーゼは、うーん難しいんじゃないでしょうか?アイデアも豊富だし、マリノティス領で伸び伸びやってる方が、私も安心だ。あの子を守ってあげれる」

と言った。

確かにこの一年が怒涛すぎてルイーゼ嬢が巻き込まれたら守れるか聞かれたら、すぐに返事が出来ない。

「侯爵、この一年信じられない事ばかりで、絶対が言えなくなりました。もしも、もしかして、が平気で現実なんだと知りました。だから、全力で守りますまでしか言えません」

と言えば、侯爵は、

「軽口や約束は、しない思慮深さはありますね、王子。口は災いの元、どこに刺客がいるかわかりませんよ、あなたが王になるのは、きっと早いでしょう。たくさんの仲間を作るのです。学園に行って、人材を見つけなさい。執務は、もっと窓口を広げて雇用したり老兵は意外とやると思いますよ」

と言われた。

「老兵って」

「元国王と元王妃ですよ。国王をやる気にさせるかもしれませんし、あなたが頼めば断れないでしょう。可愛い孫なんですから。ルイーゼのことは王妃や元王妃にご相談ください。私は、あの子に大変な思いはさせたいとは、思いません。ただ、あの子ならあなたは幸せになれるかもしれない。それはわかる気がします」

と言った。

「貴重なご意見ありがとうございます」

と言って、応接室を出た。


やっぱりルイーゼ嬢とマリノティス侯爵は親子だなぁと思う。信頼できると深く思った。侯爵の言った意味を一つ一つ実現していこうと思った。


一方、応接室では、冷めたお茶を飲みながら、物語を思う。ルイーゼやっぱり君を選んだよ。やはり悪役令嬢の娘をヒロインにしたんだね。君はどう思うかな。

と娘の未来を考えていた。

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