第13話 12 闇への脱出 2



 彼の目は、いつも鋭かった。それは笑っている時でさえも変わる事はなかった。然し、そんなことはどうでもよかった。彼は、私にとって初めて出来た此の施設の友人なのだから。


 そんな彼ではあるが、結局はお別れすることになる。彼は随分前から此の施設からの脱出を計画していたようだ。そして私は、その脱出を目の当たりにする事になった。


 ある晩、彼に誘われて就寝時間の21時までお喋りをしていた。早く自室に戻れと職員に促され、彼は自室へ、私は寝る前のトイレへと向かった。トイレは、職員の部屋をまたいで私の部屋の反対側にあった。私が、少し長い小便をしていると、夜勤の職員を残して、2、3人の職員が、離れにある自分達の、それなりに豪華な居室へと帰っていく音が聞こえた。私は、手を洗ってトイレを出ると、先まで私と話をしていた友人が、職員室の扉の前に立っているのが見えた。


 どうも、扉を開けて職員室から職員が出てきてくれるように、嘆願しているようだった。そして、私が自室に戻ろうと、彼とすれ違うくらいの時に、職員室の扉が開いた。そして背後に聞こえたのは職員の短い悲鳴だった。

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