第37.5話 内定
翌日。
朝起きてアンケートを確認すると予想以上の回答が集まっていた。昨日の配信でアンケートについて話してから回答数が伸びたみたいだ。
正直一人で捌ける量をはるかに超えている。今日の配信で結果を発表しようと思っていたがこれでは出来そうにない。
「仕方ない。千鶴に手伝ってもらうか」
こんな時こそバイトの使い時だろう。
Discordで千鶴にメッセージを飛ばした。
【千鶴視点】
私は予想以上に疲れたコラボ配信を終えて家へ帰ると一つ考えることが出来た。
私は今22歳。つまり大学4年生。去年大手の通信会社に内定をもらい、4月からは新入社員として社会に出る。……その予定だった。
考えていることは自分で考えてみても本当にバカなことだと思う。このまま社会人となれば安泰だろう。給料もいいしちゃんと休みもあるはずだ。兄貴のようなブラックな会社だといううわさも聞かないしまず間違いなくこのまま就職するのがいいだろう。
両親も喜んでくれた。兄貴が仕事を辞めたこともあったが私が大きな会社に内定を貰ったことが相当誇らしかったのだろう。「よくやった!」とこれまでにないほど褒めてくれた。だけど今私はそんな両親を裏切ろうとしている。この段階で内定を蹴る人なんていないだろうからいろんな人に迷惑をかけることとなるだろう。両親や学校、そして何より兄貴に一番迷惑をかけてしまうかもしれない。
それでもこんなに楽しい世界があると知った。私にはまだまだ役不足だったけど半年前まではモニターの向こう側の出来事だったことが今はすぐ目の前だ。
ピロン
スマホから通知音が鳴る。兄貴からだ。アンケートの集計を手伝って欲しいとのことだ。私は返信をする前にリビングへと向かった。
【〈にゃん太〉視点】
非常に困ったことになった。基本的に友達の少ない私だがそれでもお話しする相手はいる。絵師としてデビューして知り合った同じ絵師のマクロちゃんだ。
マクロちゃんは人気Vtuberの”たまも”のデザインを担当している女の子だ。そんなマクロちゃんも不定期でお絵かき配信をYouTubeでやっていて顔出しはしていないものの自分を模したキャラクターでお話しながらお絵かきをしている。
そんなマクロちゃんから一緒に配信をしようと以前から誘われていたのだが先日の”なな”と”たまも”のコラボ配信を見てからというもの以前にもましてぐいぐい誘ってくるようになった。
でも私は世間からは男だと思われているので配信になんか出た日には声で性別が違うとすぐにバレてしまう。別に隠してるわけではないけどエッチな同人誌を書いているので少し恥ずかしい。
『一生のお願い! 出てくれない? コラボとか憧れちゃう!』
この間の配信中にも私と一緒にお絵かきしたいと言っていた。いつも人に流されやすい私としてはこのまま断り続けるのも心苦しい。
”なな”さんに相談してみよう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます