第36話 切り抜き
YouTuberには切り抜きという文化がある。
Vtuberなどは特にライブ配信が中心の活動な為配信時間も長くなりがちだ。1時間や2時間はざらで長い時には5~6時間配信していることもある。
その中で面白かったシーンや気に入ったところを切り取って数分の動画にまとめたものを切り抜き動画という。自分で作ったりもするがファンのリスナーが作って公開してくれていたりするので、そこで興味を持ってくれてチャンネル登録をしてくれる人も少なくない。
そんな重要な切り抜き動画だが昨日の”たまも”とのオフコラボが早くも切り抜かれていた。
タイトルは「【悲報】子月なな急に真面目になる」というものだ。
俺的には千鶴の擬装は完璧だったと思ったが悲報? 真面目?
どんな内容なのだろうかと視聴してみたがこれと言っておかしな箇所は見られなかった。しかし、コメントでは「確かに」や「緊張してたんやろ」など同意するコメントが多く見られた。
「いうほどか?」
一人で考えても埒が明かないので康介に連絡してみることにした。
『確かにいつもより真面目、というか普通過ぎるって感じだったかな。いつものぶっ飛んでる感じが無かったね』
『俺いつもそんなにぶっ飛んでるか?』
『無自覚だったんだねwww。いつもは女の子だと絶対言わないようなことを言ってたり暴力的な発言が多かったりするね』
言われてみればゲーム実況なんかのときにはイラついたりしたら汚い言葉を吐いていたような気がする。とはいえあまり意識して言っているというわけではなく普段どうり、それこそ康介と話すときとあんまり変わらず話していた。
反省すべきだろう。
『振り返るとその通りだな。今度から気を付けるわ』
『いや、変えない方がいいね。今回のオフコラボでも思ったけど普通にしすぎると他のVtuberに埋もれちゃうと思うよ。ぶっ飛んでる方が視聴者的には面白いからね』
なるほど。納得だった。コメントを見ても「前の方が面白い」などのコメントが目立った。康介の分析は正しいだろう。
『確かにな。ありがとう参考になったわ』
『全然いいよ。頑張って』
康介との連絡を終えて改めて切り抜きをチェックする。
「言われてみれば確かに違うな」
俺が千鶴の擬装が完璧だと感じていたが実際にはまだまだだったことに少し落胆してしまう。それでもやはり”なな”は俺にしか出来ないと思うとそこまで悪い気はしない。
「でも、俺って普段そこまで口悪かったか?」
少し反省しつつもこれからも面白い配信をする為にはあまり治すわけにもいかない。
どうにも複雑な気持ちになってしまうのだった。
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