第35話 コラボ終了!

 期待以上の出来で〈子月 なな〉を再現してくれてたおかげで何とかコラボ配信を乗り切ることができた。

 ”たまも”もリスナーも気づいた感じはなく大成功と言えるだろう。

 当の千鶴はといえば配信終了してからハイライトの消えた目をして「あれセクハラじゃん……」と呟いていた。見えないところで色々あったのだろう。深くは突っ込まないが。

 「それじゃあ、今日のコラボありがとね~」

 配信前より声を弾ませて”たまも”が千鶴にあいさつをしてきた。

 「……こちらこそありがとうございました」

 「どうしたの? ”なな”ちゃん元気ないよ?」

 「いえ、そんなことは……」

 「まぁ初めてのオフコラボで疲れちゃったよね。今日はゆっくり休んでね」

 「はい、ありがとうございます」

 なんだか配信前より二人の距離感がかなり開いたような気がする。

 「”たまも”さん今日はありがとうございました」

 「あ、お兄さん。こちらこそありがとうございました。おかげで良いコラボが出来ました」

 「いえいえ、こちらこそ。また機会がありましたらよろしくお願いします」

 「そうですね。楽しみにしてます!」

 「それでは僕たちはこれで……」

 「もう遅いので”なな”ちゃんだけでも泊っていきません?」

 チラッと千鶴を見るとなんとも気まずそうな顔をしている。

 「せっかくですけど僕の家近いんで今日は帰ります」

 「そうですか。分かりました。改めて今日はありがとうございました」

 二人でお礼を言い”たまも”の家を後にした。


 終始機嫌の良さそうだった”たまも”とは対照的に千鶴の方は帰りになった今は完全に燃え尽きて白くなってしまった。

 「そんなに疲れたのか?」

 「疲れたなんてもんじゃないよ。ライフごっそり削られた感じする」

 「まぁ今日の視聴者数めちゃ多かったしな」

 今日の視聴者数は多い時で1万人を軽く超えていた。普段の”なな”の配信では1~3千人程度だ。それでも多いほうだと思っていたが今回は初の1万人超え。緊張するなというほうが無理なことだ。

 「それもあるけど……途中から”たまも”さんのセクハラが……」

 「セクハラ? 何かされたのか?」

 「う~ん、女の子同士だったら普通の感じのスキンシップだったんだけど何か手つきがエッチかったっていうか微妙に嫌悪感がするというか、とにかくゾワッとする感じ」

 「お、おう、そうか。よく耐えたな」

 「マジでもう勘弁」

 「”たまも”にそんな趣味があったとはな」

 普段会話してる感じではそんな気配は微塵も感じていなかった。

 「大学でも女の子好きって子いるけどあそこまでされたのは初めてだったわ」

 「身近にいるのかよ」

 「意外といるよ。男無理~って子。過去に男関係で色々あったらしいけど」

 「そうなんだ」

 「まぁセクハラ自体は耐えれたんだけど配信中にってのがきつかったわ~」

 「お疲れさん。苦労かけたな」

 「ホントね~。これはお給料弾んで貰わないとなぁ」

 「露骨に要求してくんな」

 すると鞄でバシッと俺を殴り付けてきた。

 「何言ってんの? 色めっちゃ付けて貰わないと困るんだけど!」

 「分かった、分かったって」

 「マジ頼むよ! 先月貰った給料もコンビニのバイトかよ! って位の金額だったし」

 「それはしょうがないだろ! あんま一杯渡すと親にも怪しまれるだろうし若いころから高額の金を持つのは関心しないぞ」

 「はぁ? 兄貴だって十分若いじゃん! それに貯金してるし問題ないですー」

 「それとこれとは関係無いだろ」

 「あーもう、うっさい! パパみたいなこと言うなし! ウザい!」

 「こら! 先に行くなよ。ちゃんと話聞けって!」

 「うっさーい!」

 こっちの心配もいざ知らずさっさと行ってしまった。

 先に帰っても家の鍵持ってないだろうに……。

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