追悼42 無敵の触法少年

 審議を一通り終えた財津たちは、おのおののやり方で休息を取っていた。綾小路は顧問弁護士の北大路勉に連絡を取っていた。


綾小路「モニターを見て頂いた感想をお願いします」

北大路「狡猾な子供たちだな。えげつない」

綾小路「そうですね」

北大路「はぁ~。仕事、するわ。該当するものとして強要罪、児童ポルノに関わる法

    令違反、児童ポルノ製造の法律違反に問われる可能性はあるものの嫌疑不十 

    分で桜子さんの死からかけ離れた裁きの実態に絶望感を覚えるでしょうね。

    14歳未満の少年だから厳重注意で済ませることが多い。刑事司法が被害者

    の目線でなく、加害者の更生を睨んで制度がつくられている。その歯痒い現

    実の最たるものが今回の事件だ」

綾小路「私たちが問題視している触法少年の扱い方ですね」

北大路「刑罰法令に触れる行為をして警察に補導された14歳未満の者は児童相談所

    に送るか厳重注意で終わる。家庭裁判所で見直すこともないだろう。触法少

    年に関しては厳しい罰より更生に期待するというのが法の考え。では更生に

    関して洗脳に近い効果あるシステムなど皆無だ。期待の裏には期待できな

    い、また同じことを繰り返し、あらたな被害者を産む恐れに関しては見て見

    ない振りをして誤魔化しているとしか思えない」

綾小路「法の限界ですね」

北大路「私の口からは言えない」

綾小路「すみません」

北大路「いいよ。反論できないから。それにも増して、学校で起こる問題に対し、学

    校と教育委員会やそれに関する機関のお粗末さが醜いほど愚かな状態だ。警

    察に警察を捜査する公安があるように教育機関に私設財産や国会議員が手を

    出せない絶対的権力を持つ機関の必要性が急務だと感じるねぇ」

綾小路「難しいですね、現状では。児童相談所が学校をぶっ壊すほどの力を得なけれ

    ば無理でしょうね。学校法人の人事は何も起こさない者の評価ではなく、問

    題を軽視しない者が重職に就くようにしなければ解決の糸口も見えません」

北大路「加害生徒達を特定し、その親御さんに対して教育・監督すべき義務を怠った

    として損害賠償請求を行う。さらに不適切・不十分な対応をした学校に責任

    を問うべきだ。国や自治体は学校擁護ではなく、正す側となり、対象の学校

    の犯した過ちを二度と今後起こさないと理由から真摯に受け止め、襟を正

    す。また、校長・副校長・学年主任・担任、保護者たちと関わる比重の大き

    さで賠償の義務を生じさせるべきだ。金を払いたくなければ隠すな。真摯に

    取り組め。隠蔽が発覚すれば追徴金やそれこそ刑事罰も含めて更生をして貰

    う、そうでなければ、同じことが繰り返されると私は思いますよ」

綾小路「それが難しい。残念なことです」

北大路「話は変わるが、最近映画もドラマも面白みがない。やれコンプライアンス違

    反とかを言い訳に喫煙や暴力シーンなどがカットされる。可笑しく思わない

    か。ペット化した猫をみれば分かる。飼い主の行動を好奇心から観察し、取

    り敢えずやってみる。やった結果、飼い主に怒られ、是非を覚える。猫は二

    歳児三歳児だ。親の真似をし、起こられ学ぶ。小さな罪を犯すことで大きな

    罪を抑止する、そう善悪を学習するんだよ。格闘技が許され、暴力は否定さ

    れる。大人は言うルールがあるとね。子供には目に映ることが全てだよ、ネ

    コのようにね。学校でというより保育園、幼稚園で起こる問題を皆で話し合

    う。起こるのではなく何故悪いかを学ぶために。そこに現代・近代人が作り

    出した邪教は無用だ。教育員会はこの邪教に侵されているからカルト宗教が

    蔓延る。教育従事者の第一の条件は日本第一であり、友好があるもので卑下

    や無茶苦茶な理屈の上での反省ではない。順位を決めれば子供が悲しむか

    ら、社会に出れば貧富の差は歴然とある。子供の時に競争から悔しさや得手

    不得手を知る大切さがどんどん聞こえのいい主張に削がれていき、結果とし

    て、不遇は自分のせいでなく、社会のせいだと思わせる人物を量産する。軍

    国主義には反対するが、お国の為にの思いは結果として、隣三軒両隣や他人

    の子も叱れれる大人、それが正しければ子を擁護する前に出来ない恥を知る

    大人を育てると僕は思うよ」

綾小路「子供がどう思うかではなく、悪さをすれば話し合える大人を作るべきです

    ね。ポルノ禁止法を訴える者もいますが、その行為を持つのが正常な生殖活

    動であり、生きている証のひとつですからね。ポルノがあろうがなかろうが

    人の性欲は正常なこと。抑制・規制することで興味を掻き立てたり、知らな

    い事での不幸が生じるのも事実です」

北大路「ヌーディスト海岸でレイプが頻繁に起きるか、起きないだろう。好奇心を抑

    制するか発動するかのスイッチを幼い頃から行う事で殆どが解決する。馬鹿

    な議員は、ポルノに出演する女性は犠牲者だと騒ぐが、ポルノが市民権を得

    ている中、貞操観念も昔とは違いオープンになっている。ポルノ制作企業を

    取り締まってる。実際にネットなどで投稿されているのは個人の投稿が多い

    のも事実。それで金を得ている者も今は少なくない。売られてとか無理やり

    とかは犯罪として取り締まればいいだけだ。献金・お布施・投資詐欺の実態

    を学校で教える事であり、警察にも生活を脅かす案件には民事であれ、介入

    できる権限を与えるべきだ。信仰の自由は、侵攻の自由ではない。間違った

    信仰・侵攻は毅然とした態度で向き合う勇気が必要だ」

綾小路「献金には報告義務と上限があるように、お布施も年収の1%以下と定めるべ

    きでしょうね」

北大路「失敗は成功の母。失敗することで人は成長する。その機会を主義主張で奪う

    事の方が罪だ」

綾小路「先生、話がそれたようで」

北大路「済まない。今回の事件のように臭い物に蓋をするような出来事を有耶無耶に

    させられるのについムカついてね」

綾小路「根底に差別や平等など反論しにくい話題を盾にして凶悪な心を育む無関心と

    いう矛先を鋭利なものにしているのが今の世の中でしょうか」

北大路「矛盾、か。矛盾が理解できれば、洗脳や詐欺にあう人が激減するだろうな」

綾小路「私もそう思います」


 綾小路は、今回の事件の根深さとやるせなさを実感し、仲間の所へ戻った。財津たちはリモート参加の陪審員の判決を見て盛り上がっていた。

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