追悼40 立証できない反省が刑罰を決める矛盾
甲板に残された優斗と美帆は、対照的だった。優斗はこの先を案じ恐怖心で押しつぶされそうになっているのに対し、美帆は鉢になり落ち着き払っていた。
優 斗「どうなるんだよ~俺たち」
美 帆「どうにもならないんじゃない」
優 斗「何、落ち着いているんだ、やばいぞ、この状況」
美 帆「どうにでもなればいいのよ」
優 斗「馬鹿な子と言うな、俺はやりたいことがまだまだあるんだ」
美 帆「女とやる事?全く変わってないじゃない」
優 斗「やりたがっている気持ちを後押ししてるだけだ。何が悪い」
美 帆「男ってみんなそうよ。やりたいだけ。もう、うんざり」
優 斗「そうだ、自分で決めろって言ってたな、良し、絶対、無罪だ」
美 帆「馬鹿はしななきゃ治らないって本当なんだ」
優 斗「死ぬ?死にたくない、絶対無罪だ、なっ、そうだろ」
美 帆「どうでもいいよ」
優 斗「良くない!逃げるぞ」
美 帆「無駄よ」
優斗は、拘束を解こうと必死で藻掻くも願いは叶うはずもなかった。
優 斗「この椅子、びくともしない」
美 帆「諦めな。許す気があるなら、身動きできないようにはしないから」
優 斗「じゃ、さっきの裁判ごっこは何なんだ」
美 帆「あいつらの言い訳づくりでしょ」
優 斗「何の?」
美 帆「桜子の復讐よ。それと自分たちのこれからの行為のね」
優 斗「行為って何だ」
美 帆「あんた、本当に馬鹿ね」
優 斗「行為って…。お前、分かるのか…、いや、言うな、言わないでくれ」
美 帆「分かった?」
優 斗「そもそもお前が悪いんだ、俺じゃない。そうだ、悪いのはお前だ」
美 帆「そう訴えたら。私はそれでもいいよ」
優 斗「じゃ、そうさせて貰うわ、悪く思うなよ」
美 帆「安心すれば、化けて出る事もないだろうから」
再び、裁判官と弁護人が現れ着席した。それを確認すると優斗は、大声を放った。
優 斗「裁判長、発言します。桜子が亡くなった原因は、すべて美帆のせいです。
なっ、美帆。だから、俺は悪くない。まぁ、少しは嫌なことをさせたかも知
れないけど殆ど桜子の同意の上の事だ。悪いのは、俺を唆した美帆だ」
蜷 川「被告人女子、被告人男子の申し立てに異議は」
美 帆「好きにすれば」
優 斗「何、言ってんだ。認めろよ。俺を助けてくれるんだろ」
美 帆「はいはい、私が悪~御座いました。これでいいんでしょ」
優 斗「なt、聞いただろ。俺は言われたままやった。そうだ俺は犠牲者だ」
蜷 川「そうですか、では、自分たちの判決、お聞きします。被告人男子から」
優 斗「無罪、無罪だ、裁くとしても未成年だ、少年法を重視しろ」
蜷 川「被告人男子の言うのは更生を前提にした触法少年のことですね」
優 斗「触法…、それって少年法のことか」
蜷 川「そう思っていいでしょう」
優 斗「じゃ、悪くても少年院だろ。なら、なぜ、こんな頑丈な椅子に座らせている
んだ、解放しろ」
蜷 川「加害者の更生を重視する刑罰に反し、ここでは声を上げられない被害者に寄
り添うものである。目には目を歯には歯を、だ。被告人の反省の意志を鮮明
にしない限り、当法廷は更生できないと判断する」
優 斗「何を身勝手な言い分を言ってやがる。そんなの俺は認めないぞ」
蜷 川「被告人男子に認否の権利はない」
優 斗「ううう…。じゃ、じゃ、じゃ、お・俺が悪かった。どんな事をしても償うか
ら、な、な、許してくれ」
蜷 川「では、被告人男子は罪を認め償うということですね」
優 斗「そ、そうだ。だから、解放してくれ、な、な」
財 津「裁判長、被告人男子は罪を認めています。どんなことをしても償うと言う被
告人の気持ちを是非、尊重して頂きたい」
蜷 川「被告人男子、弁護人の主張に反論はないか」
優 斗「ないない、やっぱり俺の弁護士だな、いいことを言うじゃないか」
蜷 川「では、改めて被告人男子は自ら罪を認め、償う事を認識した」
優斗は、夢から解き放たれ、安心し憔悴から項垂れたのと同時に、股間を濡らし始めた。
美 帆「えっ、お漏らし?汚~い」
蜷川は、ガベルを叩き、場面を転換させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます