追悼33 不確かな門出
綾小路「今日、集まって貰ったのは、今後の事を決める為です」
財 津「やるべきことをやるだけ、じゃない」
蜷 川「物的証拠が乏しい。現状での裁きは神の領域かと」
三 上「神?裏で動く時点で悪魔の領域でしょ。時間と共に人の記憶から消される。
被害者の無念と苦痛を嘲笑うようにね。」
蜷 川「裁く側にいた者として感情論は禁物、だと思っていた。しかし、この国の裁
きは加害者側にたち、更生させることで次なる被害を食い止めようとしてい
る。しかし、再犯率は一向に下がらない。中には刑務所にいる方が楽だと言
う者までいる。それ程、刑務所と言うのは、規律さへ守っていれば居心地の
いい所だと言うことでしょうかねぇ。私は経験していませんが」
三 上「単なる話し合いや罰を与えて物事が解決するなら、平安だった時代から伝わ
る目には目を歯には歯を、なんて言葉は受け継がれないでしょう」
蜷 川「等価交換。犯した罪にはそれに等しい罰が好ましい。導入当初は、一人殺す
も二人殺すも同じだと羽目を外す馬鹿もいるでしょうが浸透すれば抑止にな
ると思いますよ」
神宮寺「話が少しずれていない。僕は昔、悪さをしていたのに今は、って奴が許せな
い。それは他人事だから言える事。他人事とは無責任、危害がないか善人ぶ
っている奴の言い分だと思うんだ。更生とは、罪に向き合い反省し、二度と
行わない懺悔がなければ意味を持たない。そこには取り返しのつかない物が
あってこそ贖罪が成り立つと思っているんだ」
三 上「私もそう思うわ。刑が軽いから安易に犯罪を犯す。犯した刑と処罰を天秤に
かけ自我の欲求を満たす者が多いのが許せないのよ」
財 津「みんな、熱いねぇ。やり得は許さない、か。いいねぇ~」
綾小路「みなさんの意見は同じようですね。では、見切り発車にも異論はないと言う
ことで宜しいでしょうか」
財 津「異議な~し。ほら、皆も手を上げて、はい、はい、はい」
神宮寺はにこやかに、三上は腹だたしそうに、蜷川は、理不尽な裁きに思いを馳
せ、手を上げた。
綾小路「では、賛同を得たと言う事で具体的に処罰行動に移る事にします」
財 津「いよいよだな。で、どうする」
綾小路「蜷川さんならどうなされますか」
蜷 川「私ですか…。主犯格の二人を裁きますよ」
三 上「ふたりだけ?」
蜷 川「狭い町です。ふたりへの処罰は何某かの影響を与えると思いますよ」
神宮寺「そうかなぁ。無感情で自己本位の奴らだよ。最初はビビるかもしれないけど
のど元過ぎれば、でしょう」
財 津「神宮寺君はどうしたいわけ」
神宮寺「関わった者、全員を一ヶ所に集め、バーン」
三 上「そうできれば、いいのにね」
蜷 川「五十歩、百歩。眼糞鼻くそ、ですかねぇ」
財 津「蜷川さん、そうとうストレスが溜まっているみたいですね」
蜷 川「世間の事に疎ましかった。裁判官を辞めて世間の出来事を見るようになって
より理不尽さを覚えた。同時に何もできない虚しさもね」
三 上「私は何もできない苛立ちを格闘技にぶつけるしかなかったわ」
財 津「怒りの鉄拳ってやつ。頼むからこちらに向けないでよ」
三 上「約束できな~い」
財 津「怖」
神宮寺「で、どうする」
綾小路「さすがに全員とは行きませんが主犯格は裁くのが妥当かと。校長・副校長、
政党・マスゴミ、あげればきりがない。それを裁けないのが残念です。です
から、私たちの出来る範囲で実行し、臨機応変に行うことが望ましいかと。
なにせ、初めての事ですから、何が最善策かわからないのが実情です」
財 津「そうだな、俺たちにとって初体験だからな。背伸びをせず、やれることから
コツコツと、がいいだろうね」
三 上「ガサツの初体験は、背伸びしてカッコつけたかあれやこれや考えて何もでき
なかったかのどちらかね」
財 津「理沙って俺の初体験の人だっけ」
三 上「図星かぁ」
神宮寺「まぁ、財津さんの初体験は置いといて、僕たちの初体験は見えるものを確実
にひとつひとつ処理することでいいんじゃないかな」
財 津「成長したねぇ、神宮寺君」
神宮寺「ありがと」
綾小路「では、主犯格の中野美帆と城井優斗を裁くことで宜しいでしょうか」
財津・三上・蜷川・神宮寺は「異議なし」と同意した。
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