追悼32 腐った林檎は、頂けない。

 一旦、結論に近づいた様に思われた内容は、マスゴミの報道や第三者の推察によって家族が崩壊し、追い詰められた母と兄は精神的な疲労からくる居眠り運転が原因とされる事故で無くなるという居た堪れない過去を持っていた神宮寺の反逆精神から導き出されたものだった。

 しかし、執事・綾小路、元道警・職質の神の三上、元裁判官の蜷川、そして元特殊作戦群リーダー格の財津も怒りどころか、事件の本質を心に刻み込み惑わされることはなく、事件への神宮寺の思いを感じ取っていた。とは言え、新たに真相に向けて洗い出さなければならない闇に蔓延るどす黒い霧は真実を覆い隠すだけでなく、未決事件へと本件を追いやっていた。

 裁けぬ闇を裁くはずのチームは、頭を冷やす意味合いも含め、前文部科学大臣の萩生田光一の指示で動くはずの調査員会の結果を待つとともに個別に事件を洗い直していた。奇しくも新型ウイルスに感染症が世間を騒がせ、菅田総理の政権は、感染症の対応の遅れを取ったとマスゴミに責任を押し付けられ、退陣に追い込まれた。菅田前総理はNHKやマスコミの報道の仕方に批判的であり改革に前向きだったゆえに、未曽有の対応を既存の対応のように国民に信じ込ませ、出来る範疇で対応していた菅田政権を終わらせた。誕生させたのは、外圧に弱く薄弱な考えしか持たない無能な岸部政権だった。形は異なるが反政府を唱える北海日道新聞の支持者を守るため、前文部科学大臣の萩生田光一の指示に関心を示さず、見過ごすことで世間から忘れさられることを良しと考え、動かないことで時間の浪費を示唆していた。現文部科学大臣は細田派の末廣慎之助は、安倍川総理経験者派閥に近い人物だった。

 日本を人口・経済の大国となった中酷の属国化を企む岸部政権下では、冷や飯を食わされる存在であり、決定権の全てを闇の総理である毛木幹事長に握られ、反政府を唱える団体や組織に手出しできない立場に追いやられていた。

 感染症に慣れ始めた頃、露西亜によるウクライナ侵攻が勃発。世間の注目は、起こりえないとされた第三次世界大戦や核戦争の現実化を身近な物として受けたらざる得なくなり、戦争を招くとされた憲法九条の改正は、戦争を防ぐためのものとして世論は急速に感じ始めていた。日本にとっての露西亜は、中酷。その中酷への批判的視線は論外。擁護、賞賛する記事だけが世界の思惑をよそに日本を闊歩していた。

 反政府団体・組織は、大手広告代理店の言う通り、国民の大半は偏差値40以下の国民であって欲しい。考える苦労を拒み、プロパガンダの報道を信じ、お花畑の考えに洗脳される。そんな国民に悪は悪と印象付ける事件の決着は、中酷に害された岸部政権には不都合極まりないことだった。

 ネット右翼と呼ばれる者たちによって、隠蔽された真実の闇が暴かれる時代。大阪湾が世界が警戒する中酷の提唱する一帯一途構想に弱みを突かれ、飲み込まれる。本来なら大事件であるにも関わらず報道は一切されず、唯一されたものは、日本が大阪湾を見殺しにした。その救済に中酷が手を差し伸べたというものだった。中酷の上天電力がカジノ利権や太陽光発電の利権に大きく関わっている事実も隠蔽されたままだった。大阪と上天電力の繋がりは、当時の府知事であった本橋亨だった。本橋は、タレントとして知名度を上げ、府知事となる。そんな本橋に肉体的、経済的蜜の罠を仕掛け、取り込みに成功。異例の訪中を幾度も繰り返し、その密度を高めていた。中酷が恐れるのは日本国民が本気で国難を考える事。そこから目を反らさせる張りぼての経済的虚言をマスゴミを駆使して流させていた。本橋は、中酷が日本を侵略しやすいように露西亜のウクライナ侵攻を闘って死ぬより白旗を上げろと唱え、国際問題にまで発展し掛けない問題を引き起こしていた。その本橋が立ち上げたのが大坂で大人気の一新の会だった。一新の会は本橋との関係に触れられたくなかった。しかし、報道されなくてもネットでは事欠かない。その火消しは徒労に終わる結果が見えると論理的に説明していた代表格の者は、あれは、副長がやったことと責任転嫁を堂々と行う結果に。関係ないの主張は、やったことと認めた時点で自らも知っていなければならない立場である事を忘れ去る程、自らに降りかかる事柄に弱い事を見せつけていた。これが今の日本の政治や報道の実態だった。


 財津たちが最後に集まってから早いもので一年以上が経ち、再び招集が掛かった。


財 津「久しぶり、元気だった」

三 上「お気楽トンボ全開ね」

蜷 川「そのやり取り、いまや懐かしく感じますねぇ」

三 上「神宮寺も元気そうでよかった」

神宮寺「あ、ありがとう…、あの…」

財 津「よせよせ、神宮寺君。こうして集まったんだ、仕切り直しだ、な神宮寺君」


 財津は、神宮寺の気持ちを察し、神宮寺の不安・後悔を払拭した。


綾小路「皆さんに集まって頂いたのは、文部科学大臣の声も虚しく、進展するどころ

    か忘れされようとしていることです」

蜷 川「当事者でなければ、仕方がない。それが現実です」

綾小路「皆さんはもうご存じだと思いますが、危険な事なことから目を背け、目先の

    利益を貪ろうとする無能な餓鬼政府とマスゴミの状態に全くの改善の余地は

    見受けられません」

財 津「もともと期待などしていないけどね」

蜷 川「それがいけないのです。関心を寄せないから期待されない動きが正当化する

    のですよ」

財 津「おっしゃる通りです。すみません」

三 上「あら、会わない間に丸くなった?」

財 津「丸くなったと言うより、世間も政府も正義というものからズレていると改め

    て感じたからかなぁ」

神宮寺「あきらめ、みたいに聞こえるよ」

財 津「おっ、ビンゴ。一体感を感じるなぁ」

蜷 川「絶望感に一体感を覚えるのは如何なものかと」

財 津「これは失敬」

綾小路「真実・事実を見極める時間は、事件の風化を招きます。しかし、被害者にと

    って、いや、追い込んだ加害者のやったことを風化させるわけには参りませ

    ん」

財 津「でも、どうするんだ。正直、この一年、動いた結果、神宮寺君が調べた内容

    に異論を唱える部分は見当たらなかった。でも、決定打はないのが現実だ」

三 上「加害者は過去の出来事として罪を自覚することもなく、新たな人生を謳歌し

    ているわ。理不尽にもね」

神宮寺「僕は、それが許せない。犯した罪は罪。償いがないものは償わさせたい」

財 津「男の子から男になったねぇ、神宮寺君」

神宮寺「馬鹿にしている?」

財 津「頼もしく思っているだけさ。これでこのチームの存在価値を皆で共有でき

    る、そうじゃない」

蜷 川「法に携わる中での矛盾、限界をこのチームは行う。過ちを恐れず、背負う、

    その覚悟がなければこのチームの存在価値はない。この一年の政府や報道、

    世間の関心を見つめる中で強く感じますたよ」

財 津「蜷川さんから迷いがなくなっている、いいですねぇ」

蜷 川「失敗を恐れて尻込みしていれば新たな被害者や似たようなものが積極的に動

    く。これは私たちの戦争だ。あってはならないことだが誤射は仕方がない」

財 津「いやいやいや、誤射は駄目でしょう、でも、やってしまったら、教訓にす

    る、それしかないな、神じゃないから」

神宮寺「悪魔も神も紙一重、ってことだね」

蜷 川「その紙一重は重く受け止めましょう。みんなで」

綾小路「そうですね」

財 津「で、どうするんだ、具体的に」

綾小路「利権や欲が正義を揺るがすのであれば、利権や欲を欲する者に恐怖を与える

    ことが抑止になるかと」

蜷 川「核の脅威には核ってことですね。米国の大統領が言ううように」

三 上「話し合いなどお花畑の考えよ。自由な考えは、それだけ多くの障壁が生れる

    のよ。でも、善悪の分別は明快よ。理不尽な被害者の有無よ」

神宮寺「僕も同意。目には目を歯には歯を。それが抑止力になると思うよ」

綾小路「この一年余り、皆さんは世の理不尽さが身に沁みたように見受けられます」

三 上「それは綾小路さんも同じよ。以前より、感情的になっているわ」

綾小路「それは失礼な。私は至って冷静です。まぁ、苛立ちは増しましたが」

三 上「それを感情的って言うのよ」

財 津「まぁまぁ、おふたりさん落ち着いて。白黒をつける。それでいいんじゃな

    い」

三 上「あんたが言うとどうも軽く聞こえるわ」

財 津「相変わらず俺に手厳しいな、理沙(三上)は」

神宮寺「はいはい、そこまで。で、どうします、綾小路さん」






   



 

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