追悼21 知育なき性欲ー影狼の法廷(触法少年編)

 綾小路は、携帯で少し話した後、皆を見渡した。


 「実はもうひとり仲間がいます。間に合ったみたいなのでご紹介します」


 ノックの音の後、入ってきたのは、筋肉質のモデルのような女性だった。


 「紹介します、三上理沙さんです」

 「宜しく」

 「彼女は、職質の神と言われた元・警察官です」

 「おっ、むさ苦しいどぶ板に咲く一輪の花か、いいねぇ」


 三上理沙は、北海道警で知られる程、職質で好成績を上げていた。ある日、彼氏と大喧嘩し、いつもの勘が大きく鈍っていた。その時、職質した危なそうな男は、道内での実力者で在り、警察OBを受け入れる警備会社も営む経営者の次男だった。理沙の勘は見事に外れ、おまけに苛立っていたのもあり暴言も少なくなく、結果、その経営者の怒りを買い、理沙は署長命令で閑職に負われた。村意識の常識の掟は、絶対だった。理沙にとっては、人生初の大失態だった。そこへ綾小路が現れ、拒み続けたが地下室での書類整理と言う名の無駄な仕事に飽き飽きし始めた時期と重なり、今回限りという約束で参加したものだった。

 三上理沙の父は、合気道の達人で在り、理沙もその父の道場で鍛錬し、合気道の世界ではその名は知れ渡っていた。同時に理沙は、合気道で治め、留目を刺す空手を習得した。警察では柔道の猛者としても大会入賞者の常連であり、就職の際は、警察と自衛隊の特殊部隊で悩んだ経歴を理沙は持っていた。


 蜷 川「これで警察の情報が手に入るという訳か」

 三 上「それは無理。今回の件は箝口令が敷かれ、誰も話題にもしない、いや、出来ない状態よ。お力にはなれないわ」

 蜷 川「警察ぐるみの隠蔽か?」

 三 上「単なる事件で誰しも将来を棒に振りたくないでしょ」

 蜷 川「単なるとは何事か!」

 三 上「だから、ここにいるのよ」

 蜷 川「…」

 三 上「私なりに探ってみたけど、資料室権限で覗こうとしたが無理だった。資料そのものが別の所に隠されているみたいで。本当の死因さへわからないままよ」

 蜷 川「お手上げじゃないか?」

 神宮寺「まぁまぁ。だから、僕たちが関わっているんじゃない、ね」

 財 津「そうだな」

 神宮寺「と、言うことで続けるね。一見無駄だと思えるモノも、角度を変えてみると真実が隠れていることはよくある事だよ。世の中に無駄はないということで、これを見て。関係者と思われる者の投稿を時系列に並べてみたんだ」

 財 津「いいねぇ、神宮寺君」

 神宮寺「ありがと。あっ、混雑するかも知れないけどbakusai.comの北海道版があってね、ここに興味深い投稿があるんだ、これも時系列でまとめたから見てよ。ただ、辻褄というか可笑しな部分もあるけどそのまま流すね、カッコ内は僕の見立てね、参考にはしないでね、何せ、隠語や暗号めいたもの、知育に難点がある者たちの投稿だから。それに気になるものがあるんだけど確信が持てないから、悩んだけど、見つかった事実は事実だから上げちゃった」

 財 津「何よ、それ?」

 神宮寺「桜子さんのツイートなんだ。私も今色々された先輩に裁判に勝つために証言中です、って言うもの。でも、その前後の動きとなる発信を見つけられないんだ。だから、参考までに。誘導とかじゃないからね。」

 財 津「わかった」

 神宮寺「うん?と思う所はあるだろうけど、bakusai.comとTwitterなどのやりとりが同時でさぁ、その都度、相手が違う事もあるから。それに、思い付き、面白がっての煽り、嘘、なども混じっているだろうから」

 財 津「仕方ないよ」

 神宮寺「じゃ、モニター画面を見て」

 財 津「OK~」

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