追悼08 この世の春は、我が物ー影狼の法廷・触法少年

 地方では、現場の学校の教師から校長、教育委員会など、顔を知った者同士の狭い世界だ。教師も教育委員会の事務局もみんな地方公務員であり、誰々は昔どこそこでお世話になった、同僚だった、上司と部下の関係だった、などズブズブのしがらみに縛られている。この様な関係の中で責任を取って、例えば退職・退任したとしても有力OBとして彼らの責任を厳しい目を持って糾弾など出来ない。罪を犯しても彼らに共感する者も少なくない。人の繋がりは地方に留まらず更に上層部へと飛び火し、結果として、揉み消される歪んだ世界の醜さが垣間見える。三権分立の考えを今一度、考える時期であり、無用な第三者委員会という隠れ蓑は、拭い捨て、司法機関が権力と捜査件を持ち、その権力を国民が厳しい目で監視するしかないのではと危惧される。


 誤っていけないのは、教師たちは試行錯誤しながら対応方法や考え方を学んでいる。教師を安易に悪者にするのはお門違いと言うものだ。そう、問題発生時の確固としたマニュアルなどがないのが原因だ。加えて、教師は、朝のホームルームに始まり日中の授業、部活動の指導、生徒の生活指導や保護者対応、さらには内申書や教育委員会などへの報告書の作成など書類仕事も重なり、朝7時から夜10時過ぎまで働きづめになることも珍しくないほどの激務。部活動で休日がつぶれることも多い。だからこそ、問題に対する対応は、校長や副校長が保護者会と連携し行うべきであり、名誉職ではないことを自覚するべきだ。


 旭川中央警察署が調査に入り、「イジメがあった」とし、加害者ら少年少女に厳重注意処分を課した。これで終わりではなかった。学校と保護者の間で「謝罪の会」が弁護士同伴の元で実施されようとしていた。加害者として関わった他校は同意するも、名嘉山副校長・校長がいる北勢中学校は、弁護士同伴を拒否し、本来、民間での話し合いでの軸となる弁護士の存在すら否定しにかかった。弁護士や保護者は、市の教育委員会に訴えたことで指導を受け、名嘉山副校長の北勢中学も渋々、受け入れられるも録音禁止、学校の先生は不参加、当事者のみでやってくれと言うものだった。

 「臭い物に蓋をする」

 「人の噂も七十五日」

と、捜査をするとした機関・組織は、何も動かず、動けず、ただ悪戯に時間を消費し、世知がない人々の記憶から、事件・事案を消し去ろうとする。本来、マスコミが追及すべき役割だが、不利益を担う側の収益で運営する以上、記者魂など無用の長物とされ、どこへやら。


 進展を見ないまま、時間だけを費やしていた。

 

 母ひとりで娘を育てる静江には、すぐさま他の遠くの地域で暮らすだけの経済的余裕はなく、学区を変えるのみの引っ越しを余儀なくされた。

 桜子の症状は重く、精神科に通いながら治療を受けていたが、桜子はPTSDのフラッシュバックなどの症状に苦しめ続けた。

 マスゴミは糞にも劣る報道に躍起になり、住民は狭い地域での出来事に箝口令でも引いた様に話題にも取り上げなくなっていた。


 「やっと、鎮まってきたか。そろそろ、ひっそり身を引くか」

 「いよいよ、念願の国政ですね」

 「ああ、このまま市長の座にしがみ付くより、賢明だろう」

 「はい」

 「そうだ、兼昆敬校長にも辞任し、貰うものを貰って、新たな生き方を堪能するように伝えておかないとな」

 「それは、お優しいことで」

 「あははははは」


 仁支川紘一・旭川市長と兼昆敬校長は、今が潮時と問題を放棄し、身勝手にも我が世の春を目指して現場を離れた。


 

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