第2話 クラス選択



しばらくの沈黙があったが、デバイスの声が再び聞こえ出すと、俺の提案を受け入れたかの様な平然な声色で答えて来る。


『魂魄の素材を私で代用しますか?』


当たり前だ。こっちは何も知らずに使われたんだぞ。

俺が許容しない事を勝手にやられると、誰だってムカつくだろうし、不満に思うだろう。

ならば、俺が許可を出してやる。但し、既に俺の魂を使ったお前を代価にしてやる。


『承知致しました。魂魄の使用の為、このデバイスのデータは消去されます、また別のデバイスを使用する場合、最初期からの設定および説明が入ります』


「分かった分かった、さっさと消えろ」


最後に俺がそう言うと、デバイスは急に燃え出した。

青い炎を散らしながら、白い砂の地へと落ちて行く。

塵となって本のカタチが消えて、残ったのは真っ白い色をしたビー玉の様な光物だった。



「これが……魂魄か?」


じぃっと見つめてみると、白濁の硝子玉に、仄かに朱色がさしていた。

それを握り締めると、ウインドウの方を見る。


記録書記ブックマン魂魄ソウル』×1。

ウインドウにはそう書かれていて、俺はその項目に人差し指でタッチする。

すると、ウインドウはその項目に合わさって微かに光る。

『この魂魄を消耗しますか?』と、『はい』と『いいえ』の二つの選択肢が出て来る。

俺は惜し気も無くカーソルを『はい』の方に向けて選択する。

すると、次の項目が現れる。


『魂魄の調査………解明、新クラス及び新スキルが記録されました。クラスの選択をお願いします』


「……クラス?」


ウインドウは別の画面を開き出した。

それは、文字とキャラクターの絵図で書かれたものだった。


選択可能職種クラス

剣術師ブレイド

・初期装備・片手剣

・刀剣系スキルを中心に覚えるクラス

・剣術の職能クラススキル『決起の刃』を所有する。


銃撃者ガンマン

・初期装備・マスケット銃

・銃器系スキルを中心に覚えるクラス

・銃撃の職能クラススキル『硝煙の鋼』


暗殺者アサシン

・初期装備・投げナイフ

・隠形系スキルを中心に覚えるスキル

・姿を消す職能クラススキル『隠匿の影』を所有する。


呪術師ウィッチ

・初期装備・呪いの杖

・呪詛系スキルを中心に覚えるクラス

・呪詛強化の職能クラススキル『呪詛の詩』を所有する。


新職種ニュー・クラス

書術師ブックマン

・初期装備・魔術書

・事典系・観測系・魔眼系のスキルを中心に覚えるクラス

・多言語の職能『万物の声』を所有する。

・知識の職能『記録の記憶』を所有する。

・速読の職能『詠唱省略』を所有する。


「ブレイドにガンマン、アサシンにウィッチ……そしてニュー・クラスのブックマン……」


この中からクラスを選べば良いのか?

この中だと、新職種のブックマンと言うクラスが一番良さそうに見える。

何故かと言えば概要から二番目、スキルを覚えると書いてある。

他のクラスは拾得出来るクラスは一つしかないが、このブックマンは三つのスキルを覚える可能性がある。

このスキルと言う項目は、ゲームと同じ様に、攻撃とか補助とか回復とかに別れているのだろうか、だとすれば、スキルを幅広く習得出来るクラスが良いだろう。

更にこの項目三番目と四番目、スキルが既に所有している、と言う事になる。

これも他のクラスとは違ってスキルは三つも所持している。


選ぶとするならば、他のスキルよりも適している思われるこのブックマンを選ぶべきだ。

早速俺は、職種をブックマンに選択する。


『職種を書術師に設定しました。その他の設定を決めてください』

『オススメ設定』『自分で設定する』


再びこの二つの項目が出て来る。

自分で設定すると言う事は一体どういう事なんだろうか。

俺は気になって『自分で設定する』を選択する。

すると、画面にはアンケートの様な項目が出て来る。

その内容は、『男性or女性』『身長』『体重』『目の色』『眉毛』『口の形』『耳の大きさ』『体型』『骨格』『バスト』『ウエスト』『ヒップ』『性癖』『好きなもの』『嫌いなもの』『性格』『口調』『経験人数』……そんな設定項目が数えるだけでも百以上ありそうだった。


「あぁ……あー……ダルいダルい……」


俺は戻るボタンを押して『オススメ設定』に替える。

すると今度は『これで決定しますか?』と言う項目が出て来る。

俺は有無を言わさずボタンを『はい』に合わせて押した。


『登録完了しました』


その文字と共に、画面が切り替わる。


「……?」


首筋を擦る。

何か通り過ぎた様な感覚。

虫が張り付いた様な嫌悪感が過るが、何もない。


「ッ」


即座、俺の体は地面に沈み込んだ。

肉体の隅々に行き届く血液が活動を停止して鉛になったかの様な鈍重さが肉体に負荷される。


「あ、がッ」


首から先が熱い。

呼吸が出来なくなって、首が折れそうだ。

視界が白黒となる、青白い光が俺の前に柱となって立ち昇る。

眩い閃光と共に、俺の体は解放される。地面に四つん這いになって、俺は荒く呼吸を再開する。


「―――プロフェッサー。とお見受けします」


顔を上げる。

赤い外套を着込んだ、薄紫色の髪が靡く、白い肌の女性。

青色のマニキュアを塗った白くて細い指には、羊皮で作られた装丁に覆われた書物を持っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る