第2話 伊勢長島の戦い

 1574年(天正2年)6月23日、織田信長は美濃から尾張国津島に移り三度目の長島攻めのため大動員令を発し、織田領の全域から兵を集め、7月には陣容が固まり陸と海からの長島への侵攻作戦が開始された。


 陸からは東の市江口から織田信忠の部隊、西の賀鳥口からは柴田勝家の部隊、中央の早尾口からは信長本隊の三隊が、さらに海からは九鬼嘉隆などが動員され、畿内で政務にあたる明智光秀や越前方面の抑えに残された羽柴秀吉など一部を除いて主要な将のほとんどが参陣し、7-8万という織田家でも過去に例を見ない大軍が長島攻略に注ぎ込まれた。主な陣容は以下の通り。


 市江口

 織田信忠、長野信包、織田秀成、織田長利、織田信成、織田信次、斎藤利治、簗田広正、森長可、坂井越中守、池田恒興、長谷川与次、山田勝盛、梶原景久、和田定利、中嶋豊後守、関成政、佐藤秀方、市橋伝左衛門、塚本小大膳


 賀鳥口

 柴田勝家、佐久間信盛、稲葉良通、稲葉貞通、蜂屋頼隆


 早尾口

織田信長、羽柴秀長、浅井政貞、丹羽長秀、氏家直通、安藤守就、飯沼長継、不破光治、不破勝光、丸毛長照、丸毛兼利、佐々成政、市橋長利、前田利家、中条家忠、河尻秀隆、織田信広、飯尾尚清


 水軍

九鬼嘉隆、滝川一益、伊藤実信、水野守隆、島田秀満、林秀貞、北畠具豊(織田信雄)、佐治信方


 7月14日、まず陸から攻める三部隊が兵を進め、賀鳥口の部隊が松之木の対岸の守備を固めていた一揆勢を一蹴した。同日中に早尾口の織田本隊も小木江村を固めていた一揆勢を破り、篠橋砦を羽柴秀長・浅井政貞に攻めさせ、こだみ崎に船を集めて堤上で織田軍を迎え討とうとした一揆勢も丹羽長秀が撃破し、前ヶ須・海老江島・加路戸・鯏浦島の一揆拠点を焼き払って五明(現愛知県弥富市五明)へと移動しここに野営した。

  

 2021年からタイムスリップした僕は空の上から合戦の行方を眺めた。きっと、カラスか何かだと思ってるはずだ。


 翌7月15日には九鬼嘉隆の安宅船を先頭とした大船団が到着。蟹江・荒子・熱田・大高・木多・寺本・大野・常滑・野間・内海・桑名・白子・平尾・高松・阿濃津・楠・細頸など尾張から集められた兵を乗せて一揆を攻め立てた。また、織田信雄も垂水・鳥屋尾・大東・小作・田丸・坂奈井など伊勢から集められた兵を大船に乗せて到着し、長島を囲む大河は織田軍の軍船で埋め尽くされた。


 海陸、東西南北四方からの織田軍の猛攻を受けた諸砦は次々と落とされ、一揆衆は長島・屋長島・中江・篠橋・大鳥居の5つの城に逃げ込んだ。


 大鳥居城・篠橋城は、織田信雄・信孝らに大鉄砲で砲撃され、降伏を申し出てきたが、信長は断固として許さず兵糧攻めにしようとした。8月2日夜中、大鳥居城の者たちが城を抜け出したところを攻撃して男女1,000人ほどを討ち取り、大鳥居城は陥落した。


 8月12日、篠橋城の者たちが「長島城で織田に通じる」と約束してきた。この約束は偽りであり、兵糧が尽きた為、長島城へ移りたいが為の方便だったが、兵糧攻めを狙う織田方にしてみれば、攻略中の城が減り、長島城の人数が増えるのは好都合であった為、織田軍はその要求を受け入れ、篠橋城を出た一向宗たちを長島城へ追い入れた。この後も長島には何の動きも起こらず籠城戦が続いたが、人数が増えたせいで兵糧の減りが早まり、結果的に城中では多くの者が餓死した。


 兵糧攻めに耐えきれなくなった長島城の者たちは、9月29日、降伏を申し出て長島から船で退去しようとしたが、信長は許さず鉄砲で攻撃し、この時に顕忍や下間頼旦を含む門徒衆多数が射殺、あるいは斬り捨てられた。これに怒った一揆衆800余が、織田軍の手薄な箇所(織田一門衆の一部の隊等)へ、裸になって抜刀するという捨て身で反撃を仕掛けた。『日本史』によれば、これは伏兵だったという。これによって信長の庶兄である織田信広や弟の織田秀成など、多くの織田一族が戦死し、1,000人ほどの被害が出た。ここで包囲を突破した者は、無人の陣小屋で仕度を整え、多芸山や北伊勢方面経由で大坂へと逃亡した。


 この失態を受けて、信長は、残る屋長島・中江の2城は幾重にも柵で囲み、火攻めにした。城中の2万の男女が焼け死んだという。同日、信長は岐阜に向け帰陣した。

 帰陣中を狙い、僕は上空から信長の首筋目指して苦無を投げた。頸動脈から血が噴き出した。

 天下を獲ってやる!

 僕の冒険ははじまったばかりだ。

 

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僕の家の秘密  鷹山トシキ @1982

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