第31話 仮入部

 翌日の放課後。

 とある部屋で、ニコニコ顔の丸めがねおかっぱ頭のお兄さん、もとい鶴丸先輩と、向き合っています。

 鶴丸先輩の横にはニコニコの中川さん。

 私と並んでいるのは、ナコ、ニコ、タチバナ、ピーチそしてタツ。

 

 どうしてこうなった?


 それは、今朝の登校そうそうに遡る。



 「ちょっと、仮入部ってどういうことよ!」

 「帰宅部乙、の詩音が、どうしたの?」

 私の顔を見るなり、双子に囲まれて捲し立てられた私は、なんのことだか?とキョトンとする。

 その様子を見て、ナコが後ろを向き、

 「ちょっと中川さん?本人知らないうちに勝手に入部させたんじゃないでしょうね?」

 「シッシッシッ。そんなことないですよぉ。私が詩音ちゃん第一、なのはナコさんも知ってるじゃありませんか、シッシッシッ。」

「それはそうだけど、だって詩音よ?一生のんびりしたい、が口癖の詩音よ?なんで、部活なんで、タリーもんやろうとするのよ?」

 「シッシッシッ。部活は青春の花、目覚めたんじゃないですかねぇ。タツ様と出会って、積極的になられたでしょ、詩音ちゃん。幽霊部員大歓迎のミス研だったら、好きなときに青春、できますからねぇ、シッシッシッ。」

 ハハハ、昨日のあれ、か。

 親にも勧められたし、でも、タツの仕事、手伝うのこれが最後だしなぁ・・・

 そんな風に、ぼんやり眺めていたんだけど・・・


 「ちょっと待ったぁ!なんだその話!聞き捨てならねぇ!!」

 と、どこからか飛び出してきたのがタチバナ君。

 「あわわわ、日向君と会ってから、せ、、、積極的、的、的・・・」

 真っ白い顔をして、魂が飛んで行っちゃってるピーチ君。

 「「その話、く・わ・し・く!!」」

 見事にハモって、中川さんに詰め寄った、というところで、朝礼のチャイムです。



 で、休み時間ごとに、やいやいと、中川さんに詰め寄っては、私をチラチラ見ながら、悩んでいる4人。それをぬらりくらりと楽しそうに対応する中川さん、だったけど。


 昼休み。


 「よぉ、詩音。昨日のことやけど、遅うなってすまんのぉ。お母さん優しそうやったけど、怒られんかったか?」

と、弁当持参でタツがやってきた!

 「「か、家族??」」

 タチバナ君とピーチ君、とっても仲が良いようです。


 ナコとミコが、私に目を向けると、中川さんが昨日のストーリーを再び披露。河童の伝説を3人で調べに行ったら、迷子を見つけて、私とタツで送ったって話。

 「いやいや、なんで体験で校外?ありえないでしょう?」

 はい、ないよねぇー。

 「ていうか、なんで3人?中川さんは部員としても1年でしょ?」

 だよねー。

 「てか、てか、詩音さん、本当に入部、されるんでしょうか!?」

 ピーチ君が聞いてくるけど、うーん、どうしよう。

 「まぁ、仮から一緒にはじめよか、言うててん。なぁ、詩音。」

 「ちょっとてめー!その汚い手を、し、詩音ちゃ・・ちゃん!からどけろ!近い、近い、勝手に他のクラスに入ってくんな!」

 「そやかて、詩音と儂はマブダチやし、なぁ?」

 「ままままままぶだちーーー!」

 「ああああ、でもでもです。ま、まだ、お友達です。いいえっ。お友達でいましょう、です。はい。そうです。永遠にお友達、です。それ以上じゃ、ありまっせん!」

 男子、なんかみんな元気だね。

 私も男の子の時、あんなんだったのかなぁ。いや、それはねえな。ハハ。


 「はぁ。で、マジな話、どうするのよ?」

 ミコが聞いてくる。

 「うーん、迷ってる。」

 「だったらさ、いいんじゃない?仮、でとりあえずお試ししてさ。でも一人で大丈夫かな?」

 「シッシッシッ。私がいますから。それに頼りになるタツ様も詩音ちゃんが入るなら入りますよ。」

 「「ちょっと、待ったーーー。オレ(僕)も入る(入ります)!!!」」

 うん、シンクロ。タチバナ君とピーチ君は、とっても仲よしで、クラブも一緒っと。こういうの、腐女子さんが喜ぶんだよねぇ。私にはわかんないけど。


 そう暖かく見守ってると、ちょっと、と言いながら、タツが私の服を引っ張って片隅に連れて行かれた。

 「なぁ、マジで中川はんの話に便乗しようや。どっか出掛けるときにアリバイあった方が、良い子のJK目指すんやったら必要や。こっちのことも中川はんやったら、うまいことやってくれるんは間違いない。なぁ、とれあえず入ってみいひんか?こっちも、付き合わせて悪いけど、な?」

 「まぁ、いいけど。あ、でも、付き合うのは・・・」

 「わかっとるわかっとる。今度だけや。あんたの家族を守る、それやなきゃ、あんたがでばってくれへんのは、重々承知や。」

 「だったらいいけど・・・」

 「よし、決まりや!なぁ、中川はん!詩音、くどきおとしたで!」

 後半は中川さんに叫んだタツ。

 なぜか、ギョッとした目がクラス中からこっちに向けられたけど、そりゃ突然大阪弁の大声が響いたら驚くよ。自重してよね。と、肘で脇をどついておいたよ。あ、女の子のすることじゃなかった。ナコたちのジト目が怖い・・・



 ということが、あっての、今、放課後です。

 なんだかんだで、ナコたちまで仮入部することになりました。

 ナコもミコもピーチ君も中学から、それぞれに部活やってるし、そこに入ると思ってたんだけどね。なんでも、兼部OKなんだそうです。幽霊部員大歓迎なミス研なら問題ない、って、この短い間にそれぞれの部長に掛け合ってきたみたい。

 タチバナ君は、なんか運動部入るつもりだったんだって。

 もういくつか体験して、バスケと野球で悩んでたみたい。

 でも、ミス研入るって断ろうとしたら、兼部していいからうちへって頼まれた、って言ってた。どうやら運動神経がとってもいいみたい。

 全部保留にしての、ここ、仮入部って、そんなにピーチ君と一緒の部が良かったんだね。そりゃ、ピーチ君、運動部ってあり得ないもんねぇ。


 てことで。

 人生初、クラブ、なるものに初入部しました。仮だけどね。

 あれ?思ったより楽しんでるね、私。

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