第9話 戦いの旅・・・?

 月曜日。

 まぁ、なんとも姦しい。

 今、ぼけーっと自分の席で座っているところへ、双子や中川さんタチバナにピーチ、なんていう、そんなメンバーに囲まれて、やいのやいの言われている。

 そんなやいやい言われても、私に、俺に、どうしろって言うんだか・・・


 時は金曜日に遡る。

 自称龍神、日向龍雄の住む家へと招かれて、なんだかんだで、前世の暴露をしてしまった時のこと。

 彼は、どうしてもシオンの力を知りたい、という。

 本当にシオンの力が今の私に使えるかは謎だけど、確認しておきたいっていう気持ちもないわけじゃない。

 そんなこんなで、彼の言うとおり、彼の本拠地で、模擬戦、というのか、本気でやり合おう、なんてことになったんだけど、関西、泊まりがけ、温泉・・・


 高1女子一人で、そんな遠方に、しかも男子に誘われて、ホイホイ行くのはいかがなものか。そんな風に常識人のJKたる私は一応思ったんだけど、ね。

 そこはそれ、中身シオンなわけだし、少々の荒事なら負ける気はしない、ていうか、なんとなく龍神様(笑)と話してたら、女の子部分の感覚がドンドンなくなっていって、普通に旅ばっかりしていたS級冒険者の俺のつもりで了解していた、つうことで・・・

 一応の常識を駆使して、家の人がOK言ったらね、なんていって、一応保留で帰ったものの最悪、龍神パワーで日帰りできる、って言うし、まぁ、保留はお泊まりだけってことで・・・


 私の話を聞いた両親。

 二人の趣味がツーリング、ってのは、うん、知ってた。

 なんでそんな話になるか、ていうと、どうやら彼のホームグラウンドたる龍神村ってね、ツーリングの聖地の1つ、らしい。

 その名もズバリ龍神ドライブウェイ。

 うさんくさいけど、マジです。

 昔、一度二人で走ったことがあるらしい。

 で、高野山っていう何か有名な山があって、そこに続いている霊験あらたかな場所なんだって。なんていうか、恋人と二人でパワースポットに行った思い出、ていうか、そんな思い出話で両親が盛り上がってしまって・・・

 なぜか、その盛り上がりのままOK出ちゃいました。

 あ、ちなみに二人はOK出したんだけど、お姉ちゃんがね。

 私が一人でそんな場所に行くことは許さん!な感じになっちゃって、結局は二人で行く(龍神様には許可取り済み)ことになったんだけどね。



 この話、仲よしの双子の親経由で、双子にも休みの間に到達していた、ということで、現在。絶賛尋問中。


 「なんで、詩音があんなやつの実家に出向くことになってんのよ!」

 「二人で温泉でしっぽり、なんて、まだ詩音には早いです!」

 そんな風に大声でわめくもんだから、注目が半端ない。

 面白半分で、茶々を入れるクラスメートなんかもいたりして、ちょっとしたカオスです。



 「おい、詩音、旦那が来たぞ!」


 はい?


 クラスメートが、このややこしいときにやってきた日向龍雄をめざとく見つけて、そんな風に教えてきた。

 てか、誰が旦那じゃ!


 「おお、なんか賑やかやのぉ。」

 「うるさい。」

 「ヒヒヒ、えろう荒れてるやんか。」

 「ややこしいから消えろって。」

 なんて感じで、金曜のままのノリで会話してしまって。

 ハハ、やっちまったか?

 周りがどんびいてる・・・


 「ちょっと、詩音、どうしたの?」

 「なんていうか、どこまで仲良くなったのよ・・・」

 「いや、これは、その、何でもないっていうか。その、えと、あの、そう、大阪弁よ大阪弁!なんか変につられるっていうか、つられないようにってお話ししようとしてたらね、口調がどんどん分かんなくなっちゃって。」

 「・・・アハ、そうか、そうよねぇ。ビックリしちゃったよぉ。確かにたまに俺ッ子なるもんねぇ。パニクったときの発作だもん、ねぇ。」

 いや、ミコよ、その理解もどうか、と・・・


 「それにしても、ちょっと日向!聞いたわよ。何、詩音を旅行に誘ってるのよ。」

 「しかも温泉って、何エロいこと考えてるの!」

 「てめえの毒牙から、詩音ちゃんは絶対守る!」

 「グフフフ。」

 「ふ、不純異性交遊は、認めません!ですぅ。」

 以上、ナコ、ミコ、タチバナ、中川さんピーチの発言。

 いやいや、あんたたちの頭の中が心配です。


 「なんや、あんたらも行きたいンか?そやったら来たらええやん。」

 「「「「へ?」」」」

 「そやから、このぐらいの人数泊まる旅館あるさかいみんなで来たらええやんか。」

 「いいの?」

 「そりゃそうや。あ、旅費は自分持ちやで。宿は飯代だけでいいようにしといたるさかい。」

 「それは大丈夫だけど。」

 「じゃあ問題あらへん。なぁ、詩音。」

 「え?私は別に・・・て!」

 私は慌てて龍神を隅に引っ張ってささやいた。

 「なぁ、模擬戦のこと。」

 「ああ、そんことかいな。うまいこと時間作ったらええ。結界の中でやるから、誰にも見つかれへんで。」

 「そういうこと。」

 「そりゃそうや。お姉ちゃんにも、バレたないんやろ?そのぐらい考えてるっちゅうねん。」

 「なんか、ありがとな。」

 「何言うてんねん。こっちがあんさんの力知るために頼んでんや。任せとき。」

 「分かった。」


 こそこそやっていたら、みんな、そろそろ文句を言い出したので慌てて、戻る。


 「じゃ、そういうことで、ゴールデンウィーク龍神村ツアーや。参加はええけど、みんな未成年やさかい、保護者の承諾だけはちゃんと取るんやで。」

 「「「「オーッ!」」」」


 思ったより大事になったけど、大勢の方が楽しい、か。

 すっかり旅行気分のみんなを眺めつつ、なんだかほっこりする俺だった。

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