記録 20ページ目
風邪をひかれると困るため、アホな人を強制的に先生に引き渡した。別れ際、一生の別れかと思うくらい大号泣されたが、俺は知らない。今頃、アホな人は引率の先生とバスで静かにお留守番していることだろう。自業自得である。
ペアである先輩を先生に回収された俺は、七家先輩と早苗さんと一緒にいることにした。
ふと空を見上げると、太陽が真上にある。そろそろ昼食の時間だ。
「小野草君、茉奈ちゃん、そろそろお弁当食べよっか」
俺の心を読んだかのように、七家先輩が昼食を食べようと提案する。
あっ、そういえば弁当忘れたんだったな。だが、今はアホな人がいない。つまり、弁当をこっそり買える!
「あの、俺弁当を買ってきます」
「やめときな、バレるよ」
「こっそり買ってくるので大丈夫です」
「あー、小野草君は知らないかぁ、あの先生」
え、何、怖い。この学校でまともな人を見たことがないから尚更怖い。想像を上回る人しかいないじゃん、この学校。
「校長先生の能力のことだよ」
なにそれ、急なバトル漫画みたいな展開。能力って何? 超能力? 現実にそんな力存在しないよ。でも、この学校なら超能力を持つ人、一人や二人いそうだわ。
「校長先生はね、遠足のときだけ豹変するんだ」
「豹変?」
「ルールを破ってるやつがいるところに何故か確実に出没して、バスまで強制連行される。そして、皆が帰ってくるまで惚気話を聞かされる」
「うわぁ」
先生の惚気話とか聞きたい生徒いないよ……。それを皆が帰ってくるまでって、殺しにきてるだろ。
「遠足に来た時限定なんだけどね。学校ではなにしても大丈夫なんだけど。いつも、にこにこ笑ってる」
「他の先生が過労死しちゃうので学校でもできる限りルールは守りますよ」
「小野草君は優しいねぇ。俺なんか授業中に脱走しまくってるよ?」
「やめてあげて!?」
惚気話を聞くのは精神的に参りそうなので、お弁当は諦めることにする。一食くらい抜いても死なないし。死ななければなんとかなる。
……俺、今アホな人と同じようなこと考えた? 嫌だ、それだけは絶対にいやだ。
「どうしたんだ、そんな顔をして」
「早苗さんってキャラ濃いのに、存在感があまりないですね」
「……愛のムチをご所望で?」
ヤバい、目がガチだ。アホな人がいなくなって嬉しかったけど、他にもやばい人がいたわ。
この学校に入った時点で、俺、詰んでない? 詰んでるな……。
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