記録 19ページ目

今日、俺は空がきれいであることを再認識した。わー、空がきれいだなー。


「げほっげほっ」

「ごほっごほっ」

「うぉうぇ」


七家先輩、早苗さん、俺で川の字になり寝転がった。辺りには俺たちのうめき声が響き渡っている。


アホな人はとてつもなく足が速かった。何回もコケてるくせに。


挟み撃ちしたら頭の上を飛び越えられた。運動神経おかしいんじゃないの。なんなの、いつも溝にはまりまくってるくせに。


ドッペルゲンガーだったんじゃない? アホな人があんなに足が速いわけないよ。


俺の隣で七家先輩が恨めしそうに呟く。


「だから、無理だって、言った、のに、」

「なんか、すみま、せん」

「じぬゔうぅ」


あぁ色々とやばいなー。空が青いなー。ありがとう、お母さん。


やばい、思考停止してるよ。鬼ごっこで思考停止するとか思ってもみなかった。


もう降参しよう。七家先輩の言う通り、本気のアホな人に勝つのは不可能だ。


「降参しまーす」

「神月ー」

「美緒姉さまー」


……アホな人、どこ行った。


何回も呼んだが、アホな人は出てこない。俺たちは急いでアホな人を探し始める。平均台の下や木の後ろ、他の場所も探してみたがどこにもいない。


なんでアホな人が迷子になる可能性を考えずに、のんきに鬼ごっこなんかしてんだ。


あの人なら鬼ごっこしてる最中にどっか行くに決まってるじゃないか。バカなのか、俺は。


最後の頼みの綱は、アホな人と同じ学年の七家先輩。俺よりも1年多く一緒にいるのだから、アホな人についてなにか知っているかもしれない。


「七家先輩、神月さんがどこにいるのかわかりませんか」

「神月は予想外のことばかりするからね。俺にはどこにいるかなんて、わかりません」

「ですよね!?」


しかたがない。こうなったら虱潰しに探して……、待てよ。今の先輩なら、なにを求めるだろうか。


あんなに走ったんだ。喉が渇くのでは?


水飲み場はどこだ? 確かここから北に真っ直ぐ進んだところ。


「七家先輩、水飲み場に行きますよ!」

「なんで?」

「普通に考えてください。アホなひ……ゴホン、神月さんも人間なので走れば喉が渇くはずです」

「なるほどね、小野草君、名推理だね」


こんなんで名推理とか言ったら名探偵にしばかれるぞ。


早苗さんはいつの間にか気絶してるけど……、ここにおいていこう。





「……すみません、状況を説明してもらってもいいですか」

「水の飲み方が思ったよりも難しくてさ、びしょびしょになっちゃった」

「顔ならまだしも、なんで全身ずぶ濡れなんですか!?」


ねぇ、この人水飲んだだけなんだよね? 服着たまま水浴びしたわけじゃないんだよね?


どうやったらこうなるの。


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