記録 6ページ目

昨日もボヤ騒ぎがあり、ブチンと堪忍袋の緒が切れた俺は朝早くにお隣さん、あの頭おかしい人に苦情を入れることにした。


インターホンを押しあの人が出てくるのを待つ。


……出てこない。


その後に十回は押し続けたが全く応答がない。


あの先輩、まさか強盗に入られてアホなことしでかして殺されたとかないよな。


あの先輩ならおかしくないという結論に至り、一応断りを入れてからドアノブを回した。


えっ、空いたんだけど。恐る恐る中を見てみると部屋はかなり散らかっている。

……まるで強盗が入ったようだ。


俺は意を決して、なぜか近くに転がっていた歪んだ野球バットを手に忍び足で奥へと歩いていく。


静かに一番手前のドアを開ける。慎重に辺りを見渡すが誰もいない。


このマンションは全ての部屋が同じ構造だ。それなら、このまま真っ直ぐ進めばリビング。


ゆっくりとリビングのドアを開けると、この部屋もかなり散らかっていた。俺は思わず金属バットを固く握りしめる。




その時、かさりと音が鳴った。



「ぎぃやぁぁあああ!!」


俺は反射的に金属バットを振り下ろす。


「って、先輩!? えっ、大丈夫ですか」


よく見ると、先輩が赤い。


「うわぁぁぁああ!! 血!? えっ俺が金属バット振り下ろしたせい? えっ!?」


大パニックである。そんな俺の手の中でポキッと音が鳴った。


「はぁぁああ!? 金属バット折れたよ。なんで、先輩そんなに体固いんですか?」


「ううぅぅぅ、おぅえぇぇぇぇ」


隣で先輩が吐く。俺の顔は青ざめたを通り越して土色をしていることだろう。


「救急車!? 救急車呼びますね!」


「君、私もうダメかも……。お腹痛い」


迷わず119させていただきました。全部俺が金属バット振り下ろしたせいだから。ごめんなさい、先輩。


あぁ、俺刑務所行きか。この歳だと少年院かな。もうなんでもいいや。



遠くで、 救急車のサイレンの音が聞こえた。






その後、先輩が救急車で運ばれ病院で検査を受けた結果、俺は全く悪くなかったことがわかったのだが。


全部、先輩のせいでした。はい。あの人がアホなせいでした。



ねぇ、殴っていい? あの人ほんとになんなの?



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