第11話

 カロはアムリン団が敗れたあたりでワイワイ共和国に帰国していた。そしてルンルン地方で軍部に入り直し、持ち前の手腕でルンルン地方の軍部を掌握してしまっていた。

 そもそも、反革命である自由軍団が大暴れしてしまったことにより、反革命の勢力は勇気づけられていた。

 クーデタによるワイワイ共和国打倒の下敷きは出来上がりつつあった。


 カロが探していたのは宣伝係だった。

 ルンルン評議会共和国が倒された際、それに協力した文筆家がいると聞いて、急遽駆け付けたのだった。


「協力ですか? いいですとも! このサエブキ、ワイワイ共和国打倒のためにカロ様についていきます」

「それは心強い。頼りにしているよ」


 かくして、ルンルン地方で、カロ率いるクーデタが起こった。


 軍部が全権を掌握、町には武装した軍人が闊歩するようになった。


 サエブキはクーデタを支援するようにというビラを作って配布していた。その、妙に気色悪い文体のビラは、悪評とともに広まって行った。


 ケーキ国防相の頭は爆発寸前だった。


「今度は反革命のクーデタ!?」

「大変ですなぁ、ケーキ殿」

「言ってる場合か、ミナシ。軍部相手では自由軍団は当てにならん。ワイワイ共和国軍に出撃命令を下すよ!」

「嫌だね」

「何だって?」

「軍が軍を攻撃できるわけないでしょ。僕はやりませんよ」

「な、しかし、ワイワイ共和国軍にはミナシがいないと……」

「知ったこっちゃありませんね。命令を拒否します。それじゃ」


 ミナシはぷかぷかとタバコをふかしながら出て行った。

 だが、ミナシは全てを投げ捨てたわけではなかった。


 独断でルンルンに向かい、労働者にストライキをするよう助言して回ったのだ。

 ルンルン評議会共和国の記憶も新しいルンルンの人々は、二つ返事でこの勧めに従った。

 こうして、カロ政権は機能不全に陥った。


「何か思ってたんと違ったわ」


 カロはさっさとクーデタ代表を退陣し、再びランラン共和国に亡命した。

 一方、サエブキは諦めずにストライキをやめるようビラをまいて回っていたところを、遅まきながら到着した軍によって捕らえられた。


「てなわけで、一揆は終わりました。よかったですね、カレー殿」

「何が『よかったですね』だ。命令に従わなかったくせにー!」

「終わりよければ全てよしですよ」

「お前な……。これは仕方なしなんだからな!」

「? 何がです?」

「お前を命令不服従で軍から追放するよ」


 ミナシは危うくタバコを落としかけた。


「そりゃなくないっすか? 俺けっこう頑張ったのに」

「だから、仕方なしなんだよ。国防相である以上、軍の決まりは守らなくちゃならないんだよ」

「あー」


 ミナシは再びタバコをぷかぷかさせた。


「まー、それなら、しょうがないっすねぇ」


 この後、ミナシは軍を去り、消息を絶った。

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