第10話

 アムリン団は散り散りになった。

 ジュリは辛うじて逃げ延びたが、心に大きな傷を負っていた。

 武力による革命を主導したのは自分だ。本来なら自分が処罰されるべきだったのに、のうのうと生き延びてしまった……。


 アムリン団の蜂起の失敗は、ワイワイ共和国全土に激震を与えた。


 その余波はルンルン地方にも及んだ。


「やはりな」

 教授は言った。

「ワイワイ共和国政府は、反革命に転じたらしい。そうとなれば、ルンルンがそれに従う理由もない」


 よっしゃ、とタローが奮起した。


「そしたらいよいよ、俺たちだけの国を作るってわけだな!?」

「そうだ。ここにルンルン評議会共和国を樹立しようではないか」


 こうしてルンルン地方では再び大規模なゼネストが起きた。タローはルンルン評議会共和国の成立を公式に宣言して、ワイワイ共和国からの独立も明言した。


 これを知った国防相カレーは髪を振り乱した。


「次から次に、何なんだよぅ一体!」

「大変ですなぁ、カレー殿」


 ミナシはヘラヘラとタバコを吸っていた。


「どうします? 俺らワイワイ共和国軍を使いますか?」

「いや──あいつらの独立は認めないよ。これはあくまで国内での反乱だ。派遣するのは自由軍団で充分」

「左様ですか〜」


 ミナシはぷかっと煙を吹かした。


 そうして自由軍団がルンルンに派遣された。


 自由軍団はザッザッとルンルン評議会共和国内に踏み入り、ゼネストの様子を見て回った。


「おい、そこの労働者!」

 ムネミツは声をかけた。

「この反乱の首謀者はどこにいる?」

「大学ですよー」

 答えたのはサエブキだった。彼は停止した工場内にタイプライターを持ち込んで、書き物をしていた。

「では、案内しなさい」

「いいよ」

 サエブキは言った。

「誇り高きドンドコ民族が革命に巻き込まれるなんて、俺は断固反対だからね」


 サエブキの協力によって、教授とタローはあっさり捕まった。

 ルンルン評議会共和国は一夜にして終焉した。


「はあ、やれやれ。馬鹿らしい。革命なんかより、みんな俺の文章を読んで興奮していればいいのに」


 タイプライターを抱えながらぶらぶらと帰宅しようとしたサエブキだったが、「ちょっと、そこの君」と声をかけられたので、振り向いた。


「何?」

「私はカロという者なんだが」

「えっ? カロ様!?」


 サエブキは危うくタイプライターを落としかけた。


「ドンドコ帝国軍を率いていたカロ様ですか? 亡命されたのでは……」

「戻ってきたのだよ。ワイワイ共和政を終わらせて、ドンドコ帝国を復活させるためにね!」


 かつて策謀家として手腕をふるっていたカロの帰国。


 革命勢力によって推されていたワイワイ共和国は、今度は反革命の危機に瀕していた──。

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