第6話

「ゴトー! 聞いておくれよっ!」

「何だ、パクリダ」

「政府の奴らが勝手に我を退位させやがった!!」


 パクリダは憤怒も露わに叫んだ。


「政府の奴ら、全国の革命の混乱に押されて、我を、勝手に、皇帝から、退位させたのだ! 許せん!」

「そうか。で、どうなるんだ?」

「どうなるもこうなるもあるか。共和政が宣言されてしまったのだ。その名もワイワイ共和国だと! ふざけている。我の居場所はもうこの国には無い。逃げるしか……」

「そりゃ大変だな」

「お前も大変だからな! 我が庇護してやっていたのだから、お前の居場所も無くなるんだぞ!」

「何っ、それは困る」


 ゴトーは急に慌てた。


「どうすんだ、パクリダ。俺をどうにかしろ」

「この、図体ばかりでかくて役に立たん奴め。とりあえずランラン共和国に連絡だ。亡命先を確保するぞ!」


 パクリダとゴトーはばたばたと準備を始めた。


 一方、政府は共和政の成立で大盛り上がりしていた。


 革命を主導した評議会の総督カレーは、国防相に任命され、共和政の秩序を守る役目についた。

 アムリン団やジュリも会議の場について、今後について話し合った。


「やはり評議会が、立法権、行政権、司法権の三権を掌握すべきだと、私は思う」


 アムリンは言ったが、カレーは難色を示した。


「それでは革命独裁になってしまう。我々が目指すべきはあくまで共和政なのだよ」

「労働者に権利が渡ってこそ、真の平和が実現されるのだ」

「駄目だ。三権分立は守られるべきだ」


 ジュリはおろおろと両者を見比べていた。

 アムリンは立ち上がった。


「どうやら我々の協力体制はここまでのようだな。私は出て行く」

「ふん。勝手にするといい」


 アムリンは会議場を去った。

 ジュリは迷ったが、アムリンを追いかけた。


「あ、アムリンさーん!」

「何だ、ジュリ。引き止めに来たのか?」

「いいえ。私もアムリンさんに賛成です。私をアムリン団に入れてください!」


 アムリンは立ち止まって、振り返った。

 それからにっと笑った。


「それは大歓迎だ。ようこそ、アムリン団へ。……ともに、カレーたちを倒そうじゃないか」


 ここに、早くもワイワイ共和国の革命側の勢力の分裂が明らかになった。


 そうこうしているうちに、キラキラ連合王国との和平交渉も進み、戦争は正式に終結した。ドンドコ帝国は多額の借金を背負ったが、とにもかくにも戦争は終わったのだ。


 民衆は大いに喜んだ。


 ところが、そうでない者も存在した。


「……何だ、これは」


 終戦したので家に帰ってきたムネミツは、呆然としていた。


「敗戦を喜んでいる奴らが大勢いる。信じられない! 俺たちの苦労は何だったんだ!」


 ここに、ワイワイ共和国の民衆の分裂もまた明らかになったのである。

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