第18話 日曜の朝

 向島の東側の窓から差し込む僅かな光に目をこすりながら、目覚めた原島の顔をもうすでに目覚めてから30分もまえからジョージィは、鼻と鼻が付くほどの距離で優しく、見続けていた。


「おはよう、ジョージィ、もう起きてたの?」

「そう、ずーっとまえから」


「まだ早いよ」

「でも、待てないわ」


 そう言うとジョージィは、原島の顔に自分の頬をすりつけように強くおしつける。

 原島のわずかに伸びたひげの感触が、ジョージィの気持ちの高ぶりを一層かきたてる。

 長い長いキスのあと、原島の顔を両手で挟むとそのひげの感触を、自分の胸に移動させた。胸の乳房にうけた衝撃をさらに下へと誘うと、もうそこには理性の全てが失われ、もっと強い衝撃を原島の舌に求めた。


 原島も応える、舌と舌を絡めたキスと同じように、ジョージィの体の奥部にまで舌を差し込んむと、隅から隅まで一部の隙間もなく舌と唇を移動させ続けた。

 原島の肩にはジョージィの指がくいこむほどに強く、耳には喘ぎ声がいっそう大きくひびき、その愛の行為はいつまで続いたのか、時間の感覚さえ麻痺させていた。


「大丈夫?」「何が?」「仕事よ」「今日は日曜日だよ」

 すでにジョージィは曜日の感覚さえも狂っていた。


 テーブルの上に置かれた揃いのマグカップで飲むコーヒーの香りが、ようやくふたりを現実の時間に戻してくれた。


 「リリリ、リリリ」と目覚まし時計の音が響き、ジョージィは「今は朝だったのね」と言った。

 ジョージィには昨夜の延長に感じていたらしい。

 ふたりは見つめあいながら、笑いを口と口を重ねることでおさえた。


 今度は、「ルルル」、ルルル」と、電話の音が鳴った。

 管理人室から宅急便の知らせであった。


「これ、原島さんでよろしいでしょうか?」管理人が差し出した荷物の宛名は

〈ハラシマ・ジョージィ サマ〉 となっていた。

「うん、うちのだよ」

 管理人さんには荷物の受け取りを以前からお願いしてあったので、問題は何もないのだが「ジョージィ」の名前を初めて見た管理人が、確認のためいった言葉であった。


 部屋に戻った原島は「はい、ハラシマ・ジョージイサマ」といたずらっぽく差し出すと「もう、私の心はこの名前になってるの、いいでしょ?」

 悪いはずがない。また、抱きしめてしまった。


「で、それは何?」

 ジョージイは笑って寝室に消えると、5分くらい経って原島の前に現れた。

 そこにはセクシーなランジェリー姿のジョージイがいた。

「どお、いいでしょ? アメリカの通販サイトでみつけたの」

 確かに日本人には絶対無理だろうと思われるセクシーさである、アメリカのグラビア雑誌のようであった。


「すごくいいよ、でも今はまだ?……」

「ばかね、これは今夜着るのよ」


 幸せな夜は今夜も続く。






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